鋳造職人が吹き込む、ジュエリーへの息吹

ルネサンス期から引き継がれる「ロストワックス鋳造法」。ヴァン クリーフ&アーペルでも、多くの美しきジュエリーを生み出している技法だ。この工程を担う、鋳造職人の卓越した技と、メゾンならではの独自の制作風景をのぞいていこう。

世界で最も古いジュエリーの製造法に、「ロストワックス鋳造法」と呼ばれるものがある。15世紀のルネサンス期イタリアで、金細工師・彫刻家として名を残した、巨匠ドナテッロ。彼が、すでにこの技法を使っていたことは、16世紀を代表する彫金師、ベンヴェヌート・チェッリーニの書記にも記録として残されている。現在、さまざまな改良が加えられてきたものの、このロストワックス技法を支えている基本技術や規範となるものは、チェッリーニが生きた輝かしい時代に生まれたものなのだ。

ヴィンテージ アルハンブラ ブレスレット 5モチーフ(ホワイトゴールド)¥825,000/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

ヴィンテージ アルハンブラ イヤリング(ホワイトゴールド) ¥786,500 /ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

ヴィンテージ アルハンブラ リング(ホワイトゴールド)¥544,500 /ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

ヴィンテージ アルハンブラ ペンダント(ホワイトゴールド)¥544,500 /ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

ヴィンテージ アルハンブラ ロングネックレス、20モチーフ(ホワイトゴールド)¥3,286,800/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

メゾンを象徴する幸運のシンボル「アルハンブラ コレクション」にも、このロストワックス技法が使われている。今回の新作では、ホワイトゴールドに繊細な縞模様を彫刻したギヨシェ彫りがほどこされ、太陽の光のような放線状の輝きが特徴だ。また、アルハンブラ コレクションのオリジナルのスタイルを踏襲し、モチーフのひとつひとつにビーズの縁取りをあしらうことにより、さまざまな形状が織りなす光線のハーモニーを作り出している。

(左)ワックスモデルから鋳型を制作する工程。(右)鋳型に溶かしたイエローゴールドを流し入れ、冷却後にリングのパーツを取り出す。

ペルレ クルール アントレ レ ドア リング ¥1,135,200(イエローゴールド、ダイヤモンド、マラカイト)

このロストワックス技法の制作工程を見てみよう。ワックス(ろう)を使ってジュエリーの原型を作る技法は、まず、宝飾職人によって、ジュエリーの対象となる部分のワックスモデル(ろうで形作られたモデル)が制作される。その後、鋳造職人に引き渡されると、鋳造職人はワックスの原型をもとに、石膏の混合物を流し入れて鋳型を作る。それを、高温で熱するとワックスの原型は溶けだし、あらかじめ作っておいた湯道から流れ落ちる。石膏内に指輪型の空洞ができ、このようにして“なくなった(ロスト)”ワックスの空間に型が形成されると、その空洞に先ほどの湯道から溶かした金属が流し込まれる。空洞が金属で満たされることにより、ジュエリーの型が作られるのだ。鋳型が冷えると、その鋳型は壊され、ついに、中から金属の作品が取り出されることとなる。

鋳型に流し込まれる前に、ゴールドが溶かされる過程を垣間見ることができる映像。

ロストワックス鋳造法は、古代に生まれた技法だが、ヴァン クリーフ&アーペルの技法と他の宝飾品工房の技法とでは、その内容に少し違いがある。

鋳造職人が行う作業はとても専門的であり、完成作品に大きく影響を与える工程だ。石膏鋳型が壊されるたび、鋳造職人はまたゼロから同じ作業を始めることとなるが、このような辛抱強い作業が、メゾンの完全性や独自性を生み出していく。また、特定のモデルや、一連のアイテムの鋳型を残しておきたい場合は、耐久性のある樹脂製の鋳型が使用されている。これは、ジュエリー作品の保存資料としても使われ、長き伝統や技術を残すための一端を担っている。

さらに、ヴァン クリーフ&アーペルの大きな特徴は、ひとつの工房に、すべての分野の職人が集い、ともに知識の交換をしながら制作を進めていくシステムにある。これは、まさに、前述したルネサンス期の巨匠たちの制作方法と同じ手段で、現在もこのように作品を作り上げているメゾンはまれなのだ。ルネサンス期の技法を、メゾン独自の美学とともに築き上げてきた、鋳造職人の技。幸せを運ぶ、ヴァン クリーフ&アーペルのジュエリーは、多くの職人の情熱と卓越した技術により、これからも生み出されていく。

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ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク

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Editor: Asako Kanno