銘醸ワインと老舗の味が織りなす美味。 いつもの週末をエレガントに
時折、無性に食べたくなるのがとびきりおいしいローストビーフ。ふと浮かぶのが、東京・人形町の和牛の名店、精肉「日山」の「国産黒毛和牛 ローストビーフ」だった。味つけはシンプルに塩とコショウだけ。グレービーソースもついていない。だが、肉のうまみがしっかり感じられ、和牛本来のおいしさが堪能できる。脂のニュアンスもほどよく、品のいい味わいだ。
日山は、牛肉の卸しと小売りを本業とする1912年(大正元年)創業の老舗。同系列の人形町「すき焼割烹 日山」は、その味の確かさにファンの多い名店だ。牛肉の目利きであるだけに、肉そのものの上質さはお墨付き。「国産黒毛和牛 ローストビーフ」は、特定の産地や等級にとらわれず、「職人の目にかなった牛モモ肉」を使用しているという。
精肉「日山」の実店舗では、ローストビーフ用のかたまり肉を販売しており、これが常連客に人気だったことから、「自宅でなかなか料理ができない忙しい方にも、おいしいローストビーフを食べていただきたい」との思いで商品開発に取り組み、ようやく納得したものが2年前にできあがった。「目利きの誇り」が感じられる逸品だ。
せっかくの上質なローストビーフ。ならば、合わせるワインも中途半端なものではいけない。かといって、家でリラックスして楽しむのだから、上質でもどこか肩の力が抜けるものがいい。
選んだのは、フランス・ボルドーのメドック格付け第3級「シャトー・ラ・ラギューヌ」のセカンドラベル「ムーラン・ド・ラ・ラギューヌ 2015」。カシスやラズベリーの香りが際立ち、タンニンも滑らか。ファーストラベルの「シャトー・ラ・ラギューヌ」同様、スパイスやバニラの香りが豊かで、エレガントな余韻が心に残る。ボルドーのセカンドラベルの中でもコストパフォーマンスの高さでは群を抜いている。
ワインを造っているのは世界的にも注目される女性醸造家のカロリーヌ・フレイさん。「シャトー・ラ・ラギューヌ」のオーナーでもあり、彼女が造るワインの優美なスタイルには定評がある。
彼女はボルドー大学を首席で卒業した才媛で、実はこのシャトーは、大学卒業のお祝いに彼女の父が購入したもの。早い話が超お嬢さまなのだが、それだけで終わらないのが彼女のすごいところ。「多くの人々に『シャトー・ラ・ラギューヌ』の魅力を気軽に楽しんでほしい」とサードラベル「マドモワゼルL」を新しく造り、ボルドーワインの世界に新風を吹き込んでいる。
ひんやりとした秋の空気に包まれる頃には、ふくよかで優しい果実味にあふれたボルドーの赤が恋しくなるが、「ムーラン・ド・ラ・ラギューヌ」は、そんな季節によく合う。秋にふさわしい静かな落ち着きと優雅さをもたらしてくれるのだ。とっておきのローストビーフとともに楽しめば、いつもの週末も、きっと華やかな空気に包まれるに違いない。
Text: Kimiko Anzai Editor: Kaori Shimura