老舗の鍋には気鋭の造り手のワインを。 「外し技」が生む新感覚マリアージュ

長くワインに親しんでいると、「フランスやイタリアも素敵だけれど、ときには何かエッジが効いたものを」という気分になることがある。そんなときに知ったのが「ニュー・カリフォルニアワイン」だった。それまでは「カリフォルニアワイン=濃厚な果実味」という印象が強かったのだが、この「スクライブ」はまったく違った。果実味は豊かながらも、酸味が繊細でピュア。ひと口飲むと爽快感に包まれ、とてもエレガントでスタイリッシュな印象を受けたのだった。

「2019 スクライブ リースリング ソノマ」750ml ¥6,050。グレープフルーツやレモン、白い花の香り。酸味はキリリとしてミネラル豊か。ほんの少し甘酸っぱいニュアンスが心地よい。問:ワイン・イン・スタイル ☎03-5413-8831

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カリフォルニアでは、10年ほど前から「テロワールに忠実なエレガントなワイン」を志す若い生産者が増え、サンフランシスコやニューヨークのソムリエの間でたちまち話題となった。元『サンフランシス・コクロニクル』のワインライター、ジョン・ボネ氏が著書『ザ・ニュー・カリフォルニア・ワイン』で気鋭の生産者たちを紹介したことから一気にブレイク、世界的に注目が集まったのだ。

その筆頭ともいえる生産者が「スクライブ」だ。4代にわたってカリフォルニアで農業を営むファミリーに生まれたアンドリューとアダムの若いマリアーニ兄弟が、有機栽培でブドウを育て、ナチュラルな味わいのワインを生み出している。

彼らは2007年にソノマ南部に荒れ果てた土地を見つけ、ブドウの害になる植物をすべて撤去するなど、自らの手で土地を開墾し、新たに植物や小動物、虫たちが健全な生態系をなす環境を作り上げた。ブドウはこの自然の中で、限りなく美しい味わいに育つのだ。

「明石 鯛しゃぶ(3〜4人前)」¥11,500。ほかに、1〜2人前¥6,000も。出汁は利尻昆布と鰹節の一番出汁。味わいがとてもピュア。九条ネギや湯葉、生麩がセットされているところも京都らしい。問:京懐石美濃吉本店 竹茂楼 ☎075-771-4185

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このナチュラルなワインに合わせるなら、素材のよさが際立つものがいい。それも、老舗の端正な味わいの「鍋」なら、新しい感性のワインが老舗の品格に寄り添い、今までにない新鮮なマリアージュの世界を楽しませてくれる。

選びたいのは京都の老舗料亭「竹茂楼」の「明石 鯛しゃぶ」。今も明石からやってくる「担ぎ屋」の新鮮な鯛にこだわり、大きさは身質がしっかりとした2kg以上のもの。それも、鯛には繊維があるので、口にしたときの食感を考え、食べやすいサイズに切っているという。これを淡い琥珀色のお出汁でいただくと、えも言われぬおいしさ! 創業300年の懐石料理の名店らしく、このうえなく上品な味わいだ。これに「スクライブ リースリング ソノマ」を合わせると、鯛だけでなくお出汁にまで寄り添うから不思議。昆布と鰹のうまみがリースリングの優しい甘さとリンクして、奥深い味わいだ。「端正な老舗の料理に新進気鋭のニューカリフォルニア」の新鮮な組み合わせが、また新たな美食の世界を教えてくれる。

これから冬の華やかなシーズンを迎え、久しぶりに大切な人々と集う機会も多くなる。そんなとき、この組み合わせでおもてなしをすれば、きっとテーブルには明るい笑顔があふれ、会話が弾むに違いない。

Text: Kimiko Anzai Editor: Kaori Shimura