世界最高峰のワインとして熱狂的ファンの多い「オルネッライア」から、新ヴィンテージがお目見え。唯一無二と称される、その深い味わいの魅力をご紹介。
グラスの中からふわりと立ち上るのは、ブルーベリーやカシスなどの凝縮した果実と、スミレやバラの華やかな香り。奥にはハーブやシダ類が隠れ、その複雑な香りの世界に一瞬にして魅了される。ベルベットのようなタンニンと、どこか明るさを感じさせる豊かな果実味は「スーパータスカン」の筆頭、「オルネッライア」ならではのもの。果実に溶け込んだ繊細な酸味も、類まれなる美しさを持つワインであることを物語っている。
「スーパータスカン(スーパートスカーナ)」とは、イタリア・トスカーナの地で生まれる最高級ワインのこと。カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなど、ボルドーと同じ品種を使用したブレンドスタイルで、「ボルドーの5大シャトーに比肩する」と称される。ボルドーほど長く熟成させずとも、極めて優雅な味わいが楽しめることから、1990年代に世界的に人気に火がついた。1981年にトスカーナの海辺の町、ボルゲリに誕生した「オルネッライア」は、同じくこの地を拠点とする「サッシカイア」とともに、この地が新たなワインの銘醸地であることを世界にとどろかせたのだった。
ボルゲリは地中海からわずか10kmの地にある昔ながらの風情のリゾート地で、夏になると浜辺の町には浮き輪を売る雑貨店やアイスクリームショップが立ち並ぶ。心地よい海風が吹くが、この涼しい風が、内陸部にあるオルネッライアのブドウ畑によい影響を及ぼすのだという。また、畑の背後にある丘陵がアルプス山脈からの冷たい風を遮って、ブドウを守ってくれる。穏やかな気候で育つ凝縮感のあるブドウが、「明るさを湛えた、類まれなる美しい味」の秘密なのだ。
オーナーはトスカーナの名門、フレスコバルディ家が擁するテヌータ・ディ・トスカーナ。フレスコバルディ家は1000年以上続くイタリアの貴族で、ルネッサンスの時代に多大な貢献をしたことで知られる。ワイン造りは700年以上に及ぶというが、イタリアの文化と芸術を守り続けた名門の美意識が「オルネッライア」にも貫かれている。
醸造責任者はアクセル・ハインツ氏。芸術家と職人の魂を併せ持つ、誠実な人柄の人物だ。栽培・醸造チームを率いて日々ブドウと向き合い、常に「世界一のワイン」を目指す。ブドウはすべて手摘み、収量を抑えて丁寧に選別し、熟成の頂点にあるブドウだけを仕込む。それも、70を超える区画ごとに別々に醸造され、小樽(こたる)で仕込まれる。熟成の過程も、ハインツ氏が注意深く見守り、ワインの成熟を待つのだ。
今回リリースされた2018年と2019年のヴィンテージはこのようにして生まれたもの。丁寧に、大切に造られたワインのリリースは、さながら“姫君たちのデビュタント”のようでもある。
年末年始の華やかな時間、大切な人々と楽しみたいのは、こんな極上のワイン。きっと、心穏やかで優雅な時間を約束してくれるに違いない。
オルネッライア2018、DOCボルゲリ・ロッソ・スペリオーレ
レ・セッレ・ヌオーヴェ・デル・オルネッライア 2018
ポッジョ・アッレ・ガッツェ・デル・オルネッライア 2019
レ・ヴォルテ・デル・オルネッライア 2019
Text: Kimiko Anzai Editor: Kaori Shimura