プラダの再生ナイロンが、モードと地球の未来を動かす

SDGsの「今」Vol.5

2022.01.14

プラダの再生ナイロンが、モードと地球の未来を動かす

エシカルやトレーサビリティの追求など、SDGsをめぐるラグジュアリー界の最前線をご紹介する連載企画。第5回目は、象徴的なナイロン素材を通して、持続可能なファッションビジネスを牽引(けんいん)するプラダに注目しよう。1980年代、工業用ナイロンで仕立てたバッグを登場させ、ラグジュアリーの常識を打ち破ったプラダ。そんな革新者が未来を見据え、2019年から推進しているのが、「プラダ Re-Nylon」プロジェクトだ。ブランドが扱うすべてのナイロン素材を、海洋廃棄物から作られた再生ナイロンECONYL®(エコニール®)へ100%転換する公約を掲げ、そのミッションを遂行している。プラダが地球のために考える、再生可能な真の豊かさとは?

反骨精神を宿し、進化を続ける「ナイロン」

世界の誰もが知る、プラダのナイロン素材のバッグ。モードの意識革命を巻き起こした記念碑的名品が誕生したのは、1984年のこと。それは、ランウェイでは装飾過剰な80sルックが台頭し、高級バッグといえばレザー製品が主流だった時代。皮革製品を扱う老舗、プラダ創業家の3代目として、1978年からメゾンを引き継いだミウッチャ・プラダは、大胆にも工業用ナイロン素材で黒のバックパックをクリエイトした。当時の高級志向とは真逆の、前代未聞の発想だった。

今でこそプラダの代名詞となった、運命的なナイロン素材の名は「ポコノ」。軍隊向けのテントやパラシュート製品に使用されていた特殊なマテリアルであり、軽く丈夫で、はっ水性に優れながらも美しい光沢感を特徴とした。型破りな3代目ミウッチャはそんな未知の素材に着目し、老舗の職人技と融合してみせた。やがて、モダニティ極まるナイロンバッグは、業績が低迷していたプラダ復活の起爆剤に。この伝説のバッグをきっかけに、プラダは世界的人気ブランドへの道を駆け上がった。

ナイロンはつまり、プラダのDNAそのもの。ナイロンがハイファッションの主役に躍り出てから37年経った今も、既存の体制に挑戦し続けるプラダ・スピリットは健在だ。2019年には、新たに「プラダ Re-Nylon」プロジェクトを始動。神話的な黒のバックパックをはじめとするアイコニックなバッグの数々が、100%再生ナイロン素材を用いて地球に優しく生まれ変わった。

1980年代の名品バックパックをサステナブルにアップデート。
1980年代の名品バックパックをサステナブルにアップデート。「プラダ Re-Nylon」製品にあしらわれた新しいロゴにも注目を。おなじみのトライアングルロゴを想起させる三角形が、ループする矢印へ。新ロゴが循環型サプライチェーンへの移行を示唆する。

海洋ごみが、時を超えるアイコンへ生まれ変わる

シルクのように艶やかで美しく、レザーに匹敵する品格をもつプラダのナイロン。そんな誇り高き生地を持続可能な素材で再現するにあたり、イタリアの大手繊維メーカー、アクアフィル社がパートナーに選ばれた。「プラダ Re-Nylon」に使われるのは、アクアフィル社が開発した再生ナイロン繊維エコニール®。世界中の海や埋立地から回収されたプラスチック廃棄物や漁網、工場から回収された繊維廃棄物など、100%廃棄物から再生された環境配慮型素材だ。集められた廃棄物は、ナイロンを最大限取り出せるよう分類・洗浄された後、解重合処理され、浄化され、新しいポリマーに変換され、そして糸となり、新しいナイロンへと再生する。エコニール®の繊維は、品質を損なうことなく無限にリサイクルできる、真にイノベーティブなマテリアルだ。

その風合いは軽くしなやか。優れたはっ水性や耐久性、美しい光沢も、従来のプラダのナイロンと遜色ない。廃棄ナイロンを原料とすることから、エコニール®に転換することで天然資源の保護にもつながる。石油由来の通常のナイロン製造に比べ、エネルギー消費量は約60%削減でき、地球温暖化を招く要因であるCO2排出量は約90%削減できるという。今や地球規模で広がっている海洋汚染問題。環境への負荷を減らし、海洋ごみを無限に再生させるエコニール®が、社会にもたらすメリットはまさに革命的。そんな再生ナイロンを根幹に据える「プラダ Re-Nylon」コレクションは、サステナビリティーと機能性、デザイン性を高い次元で融合させた、新時代の循環型ラグジュアリーのかたちと言えよう。

バッグから始まった「プラダ Re-Nylon」コレクション。
バッグから始まった「プラダ Re-Nylon」コレクション。2020年秋冬シーズンには、ウェアやシューズもローンチした。Photo: © PRADA
現在展開中の「プラダ Re-Nylon」コレクション。
現在展開中の「プラダ Re-Nylon」コレクション。流行に左右されないミニマルデザインが人気の秘密。その売り上げの一部は、環境保護事業に寄付されている。左から、バックパック(H32cm)¥198,000 スニーカー(ヒール4.5cm)¥116,600 ブルゾン ¥269,500(すべて予定価格)

ユネスコと提携。学生たちと海洋保護に向き合う

さらに、プラダ・グループはユネスコと連携し、2020年から海洋サステナビリティーに関する教育プログラム「SEA BEYOND(シー ビヨンド)」を推進している。「プラダ Re-Nylon」の売り上げの一部で支援されている同プログラムは、若い世代の海洋保護に対する意識向上を目指し、世界10都市の中高生を対象に開始されたもの。対象校の生徒たちは4カ月間にわたって海洋汚染問題や海洋リテラシー全般について学び、海洋保全の啓発キャンペーンを自ら企画するプロジェクト内容に。これまでに約300人の学生に向けて実施してきたが、今年からは学生だけでなく地域コミュニティーやプラダ・グループの従業員まで対象を広げ、教育の側面からもサステナビリティーを支えていく。

「SEA BEYOND」の最終プログラムでは、学生たち自身が海洋保全に関する啓発キャンペーン作品を制作し、コンペティションが行われる。
「SEA BEYOND」の最終プログラムでは、学生たち自身が海洋保全に関する啓発キャンペーン作品を制作し、コンペティションが行われる。

ファッションの枠を超え、サステナブルな選択に対する自社の公約を実現していくプラダ。「プラダ Re-Nylon」プロジェクトの発表以降に製造されたナイロン製品はすべて、公約どおり、再生ナイロン素材に転換されたという。個人が所有する物の豊かさよりも、環境や人権に配慮した、心の豊かさを問う時代へ移行しつつある昨今。先駆者プラダのイノベーティブな取り組みに、エシカル消費の未来がのぞく。そのシンボリックなトライアングルロゴが、サステナビリティーの証しとして世界的に認識される日はきっと近いはず。

問い合わせ先/プラダ クライアントサービス 0120-45-1913

※掲載商品は、すべて税込価格です。

Text: Etsuko Aiko
Editor: Kaori Takagiwa

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