より公平な未来のために。新生クロエの壮大な挑戦

SDGsの「今」Vol.6

2022.02.10

より公平な未来のために。新生クロエの壮大な挑戦<

SDGsをめぐるラグジュアリー界の最前線をご紹介する連載企画。第6回目は、2020年12月よりガブリエラ・ハーストをクリエイティブ・ディレクターに迎え、サステナブルなアプローチへと舵を切ったクロエに注目しよう。持続可能なものづくりのノウハウと先見性を持つガブリエラの指揮によって、名門メゾンは目覚ましい変革の最中にある。環境に優しい素材にこだわり、最新コレクションでは、全体の58%に至るまで低環境負荷型素材への移行に成功。同時に、フェアトレード認定企業やインディペンデントな職人たちとのパートナーシップも拡大。多岐にわたるポジティブな社会的・環境的影響や透明性が評価され、昨秋にはラグジュアリーブランドとして初の「Bコープ認証」を取得した。新生クロエが突き進む“Honest Luxury”の在り方とは?

クロエ クリエイティブ・ディレクター、ガブリエラ・ハースト。
クロエ クリエイティブ・ディレクター、ガブリエラ・ハースト。ウルグアイで牧場を営む家庭に生まれ育つ。2015年、自身の名を冠したブランドを創設し、NYコレクションでデビュー。エシカルな服づくりで脚光を浴び、2019年9月にはデッドストック素材を活用し、プラスチックフリーを貫きながら、ショウの全要素を再利用するという業界初のカーボンニュートラルのランウェイを達成。2020年12月より現職。Photo: ©Michael Avedon

ガブリエラ就任で動き出した、ラグジュアリーの新基準

ウルグアイ出身のファッションデザイナー、ガブリエラ・ハーストが歴史あるフレンチメゾン、クロエの新クリエイティブ・ディレクターに就任したのは、今から約2年半前のこと。就任発表からたった3ヶ月足らずで、2021-22年秋冬のデビューコレクションを見事作り上げたガブリエラ。リサイクルやリユース、天然素材を活用するなど環境負荷の低い素材にシフトすることで、その前年の秋冬に比べて環境負荷を1/4相当に軽減。サステナビリティー向上へといち早く前進させた。

環境保護と社会的取り組みに対するガブリエラの姿勢は、妥協を知らない。素材からパッケージに至るまでサステナブルなサプライヤーを選定し、ミャンマーのマングローブ植林活動への支援を通して、カーボンオフセットを目指した。さらに、ジャケット・ダッフルバッグ・寝袋の機能を備えた防寒アウターウエアの制作・提供によってホームレスを支援するオランダの非営利団体、シェルタースーツとのパートナーシップも実現。クロエの過去のコレクションの残反からシェルタースーツを制作したほか、バックパックも販売し、その売り上げで同団体を支援した。ガブリエラは力強く言う。「ビジネスの目的と存在意義を組み合わせること、パンデミック後の世の中において他者の苦難を理解し手助けを行うことは、クロエの使命のひとつ。ラグジュアリーブランドには、その義務があります」。

ホームレスのための多機能アウターウエア制作によって、難民に仕事を与え雇用を生み出すシェルタースーツの活動。
ホームレスのための多機能アウターウエア制作によって、難民に仕事を与え雇用を生み出すシェルタースーツの活動。2021-22年秋冬ランウェイでは、アップサイクル素材をメインの生地として、同団体との協業によるシェルタースーツとバックパックが披露された。このコラボを通じて、屋外で眠ることを余儀なくされている約1000人の人々を守ることができたという。

人間性や地球環境を犠牲にすることなく美しいファッションを創造し、ファーストコレクションにおいて瞬く間に、モード界にインパクトを与えたガブリエラの手腕。環境保護や持続性への彼女の強いこだわりは、幼少期には電気もなかったウルグアイの牧場での生い立ちと、のちに牧場の経営を引き継いだ経験が影響している。大自然とともに育った彼女にとって、エコロジカルやエシカルな視点は、ごく自然で本質的な価値観なのだ。

人の手のぬくもりと透明性をもたらす「クロエ クラフト」

3シーズン目となる2022年春夏コレクションでは、環境負荷削減をさらに推進し、コレクションで使用する低環境負荷型素材の割合を58%にまで拡大。環境や持続性に配慮した素材と手仕事のぬくもりを融合させた。目下の話題は、フェアトレード認定団体やインディペンデントな職人の手で作られる製品を増やすことを目指す新たな取り組み、「クロエ クラフト」の導入だ。過去のコレクションの残布をアップサイクルしたマクラメ編みや精緻なクロシェ編み、手染めなどハンドメイド技巧を駆使したクリエイションが、独創的なクラフト感を印象づける。機械で大量生産するのではなく、ひとつひとつ人間の手で丁寧に作り上げることで、顧客とローカル生産者との結びつきを強化し、特別なものにすることも「クロエ クラフト」の醍醐味。業界の透明性を高め、トレーサビリティを向上させることは言うまでもない。

「クロエ クラフト」による職人技が光る2022年春夏コレクション。
「クロエ クラフト」による職人技が光る2022年春夏コレクション。(左)マダガスカルを拠点とするフェアトレード団体、アカンジョとのコラボレーション。前シーズンの残布をシュレッダーで裁断し、マクラメ編みによって斬新な表情に。 (右)リサイクルカシミアを用いて、アイコニックなスカラップ状にクロシェ編みを施したドレス。

海洋ゴミがサンダルに。バスケットにはケニアの作り手の名を

スタイルの鍵を握る春夏アクセサリーの数々にも、社会的責任や環境保護への想いが発揮されている。新シューズライン「Chloé Lou」は、海に廃棄されたビーチサンダルをアップサイクルするケニアの団体、オーシャンソールとのコラボサンダル。また、環境サステナビリティーの大手コンサルティング会社、クアンティスとの協業により、2022年スプリングコレクションにて低環境負荷の新スニーカー「NAMA」が発表され、春夏シーズンでは新色も登場。

(左)廃棄されたビーチサンダルをアップサイクルした「Chloé Lou」。 (右)新作メッシュスニーカー「NAMA」は重量の40%に再生素材を使用。
(左)廃棄されたビーチサンダルをアップサイクルした「Chloé Lou」。 (右)新作メッシュスニーカー「NAMA」は重量の40%に再生素材を使用。従来の自社スニーカーと比べ、原料の抽出から製造までを通じて温室効果ガス排出量を35%低減。ブラック、ホワイトなど定番カラーもあり。¥99,000

人気のバスケットバッグもしかり。バスケットウィービングにおいては、同じくケニアを拠点とするフェアトレード認定団体ミフコとの長期的なパートナーシップを継続中だ。同団体の職人(大多数が女性)に対するエンパワーメントの一環として、それぞれのバッグには作り手の女性の名前が刻印されている。

(左)クロエのバスケットウィービングを担うパートナー団体ミフコにて、職人として活躍する女性の姿。 (右)バスケットバッグには作り手の名前を綴ったタグも飾られて。
(左)クロエのバスケットウィービングを担うパートナー団体ミフコにて、職人として活躍する女性の姿。 (右)バスケットバッグには作り手の名前を綴ったタグも飾られて。

Bコープ認証を取得。先駆者クロエが見つめる未来図

ガブリエラ・ハーストのクリエイティブ・ディレクター就任から、わずか2年半足らず。そのスピーディかつ多岐にわたる社会的・環境的取り組みは各界から称賛され、2021年10月より「Bコープ認証」を取得。ラグジュアリーブランドとして初の快挙を成し遂げた。「Bコープ認証」とは、2006年にアメリカの非営利団体B Labが制定した国際的認証制度。労働条件や地域社会、CO2排出量などに関する300以上もの厳格な評価基準を満たす、社会や環境に配慮した公益性の高い企業に与えられる。「Bコープ認証」取得によって、ファッションの枠を超えるクロエのポジティブな影響力は揺るぎないものに。

非営利団体B Labが定めた「Bコープ認証」。
非営利団体B Labが定めた「Bコープ認証」。企業の社会的・環境的影響や透明性を評価する、最も厳しい審査基準を設けられた国際的認証制度のひとつ。

新生クロエが掲げるミッションは、“Woman Forward. For a Fairer Future”(より公平な未来のための、女性の前進)。その実現のために、2025年までの達成目標として具体的なマニフェストを示している。コレクションで用いる低環境負荷型素材の割合を90%に、フェアトレードによる資源調達を全体の30%に拡大し、クロエ社の時間1%分をジェンダー平等へのボランティア活動に充て、さらに「1% FOR THE GIRLS」と題したインパクト投資を設立するという内容だ。

現代、私たちは必要のないものを過剰に生産し消費していると、ガブリエラは指摘する。そのアイテムは真に必要なのか、長く愛用し受け継いでいきたいものなのか。また、その素材はどこから来て、誰が生産したのか。環境や人権に配慮したエシカル消費がスタンダードになりつつある今、私たちの目の前にはサステナブルな選択肢が広がっている。その答えは、変革者クロエが導くより公平な未来にあるはずだ。

問い合わせ先/クロエ カスタマーリレーションズ ☎03-4335-1750

※掲載商品は、すべて税込価格です。

Text: Etsuko Aiko
Editor: Kaori Takagiwa

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