個性派チーズとワインで 唯一無二のマリアージュを楽しむ
ワイン&チーズはマリアージュの定番中の定番。ワインを開けるとき、とりあえずチーズがあれば、おいしく、楽しいワインタイムが過ごせる。
そんななか、いつものレベルをはるかに超える、エッジーなワインとチーズに出会ってしまった。それが、刻んだ奈良漬入りのクリームチーズとオレンジワインの組み合わせ。コクと深みのあるチーズにドライなニュアンスのオレンジワインが寄り添い、感動的なおいしさで、完全ノックアウトされてしまった。
チーズは「SALON DE AMBRE(サロン・ド・アンブレ)」の「奈良漬×クリームチーズ」で、コクのある国産クリームチーズに極上の瓜の奈良漬と酒粕を混ぜ込んだもの。酒粕の香りがふわりと漂い、風味豊かで奥深い味わいだ。
実はこのチーズ、福岡県の奈良漬の人気店「奈良漬さろん安部」の2代目・安部雄一郎さんが開発したもの。もともと福岡は“酒処”で、昔から上質な酒粕が手に入る土地だった。家庭ではこの酒粕を使って奈良漬を作るのが昔からのならわしだったという。安部さんの祖母が近所でも評判の奈良漬名人で、その味が人気を博したことから、奈良漬の専門店を開いた。
「奈良漬さろん安部」では昔ながらの製法を守り、粕の仕込みから漬け込みまで、工程のすべてを手作業で行っている。添加物はいっさい不使用、低塩で仕上げ、芳醇な味わいを生み出している。クリームチーズに入っているのは、こうして手間ひまかけて作られた奈良漬の瓜で、コリッとした食感が楽しい。この奈良漬がクリーミーなチーズに豊かな風味を与え、唯一無二の味わいに仕上げている。
この「奈良漬×クリームチーズ」をさらにおいしくしてくれるのがオレンジワイン(アンバーワイン)だ。オレンジワインとは、白ブドウ品種を使って、果皮や種も一緒に醸す、赤ワインの醸造法で造られる白ワインのことで、オレンジ色の色合いからこう呼ばれるようになった。生まれは約8000年前のジョージア(グルジア)と伝えられ、当時はクヴェヴリという壺型土器に白ブドウを房ごと入れて発酵させていた。長く忘れられた存在だったが、イタリアで新たに生まれたオレンジワインが世界的に高い評価を得たことから、一躍ブームとなったのだ。
今回選んだ「ココ・ファーム・ワイナリー 2019 甲州F.O.S.」は日本の固有品種である甲州種を使った日本ならではのオレンジワインで、美しい色合いと複雑なアロマが魅力的。白桃やミカン、シナモン、トーストなどの複雑な香りと、白ワインならではのフレッシュ感を持ちながら、果皮由来の軽やかな苦みが心地よい。ワイン名にある「F.O.S.」とは「Fermented on skins(果皮の上で発酵)」の意で、ブドウの果皮のうまみがしっかりと感じられる。
「ココ・ファーム・ワイナリー」は、「ブドウがなりたいワインになれるように」という自然に則った考え方でワイン造りを行っている生産者で、ブドウの個性を生かしたナチュラルな味わいに定評がある。このワインも、甲州種のうまみや果皮の軽やかな苦みまで、ブドウの魅力をまるごと堪能できる。
「奈良漬×クリームチーズ」をクルミやドライフルーツ入りのバゲットに塗り、「ココ・ファーム・ワイナリー 2019 甲州F.O.S.」を口に含むと、さまざまな味と風味が口の中で重なり、えも言われぬおいしさ! 大人っぽくて洗練された味わいでありながらも、どこか懐かしさも感じられ、長く記憶に残る。
ワインとチーズの表情がいつもとは違うエッジーなマリアージュは、ちょっと刺激的。ワインライフの奥深さと広がりの楽しさを教えてくれる。
※掲載商品は、すべて税込み価格です。
Text: Kimiko Anzai Editor: Kaori Shimura