ほっこり、上品に。レディな気分で春の門出を祝う
春は門出の季節。新しいステージを迎えて、また心を新たにしている人は多いのではないだろうか。満開の桜やきらめく陽光を目にすると、なにかすてきなできごとが待っているようで、心が浮き立ってくる。
この時期にお祝いをするなら、やはりお寿司は必需品。ちらし寿司や太巻き、茶巾寿司などがハレの日のご馳走として親しまれているが、この春は、ちょっと特別な「ちまき寿司」でお祝いをしてみたい。
選んだのは「有職」のちまき寿司。手編みの竹籠には一つひとつ笹の葉にていねいに包まれたちまき寿司が美しく並べられ、特別な時間の始まりを予感させる。
「有職」は、かつて宮内庁大膳課に奉職していた創業者の小原義太郎氏が1933年(昭和8年)に開店した懐石寿司の専門店で、店名は「古来の朝廷の儀礼や行事を大切にしたい」という思いから名づけられた。ちまき寿司は皇室の園遊会に用いられたり、著名人の会合に使われたりと、長く愛されてきた。
まだ青い香りが残る笹をそっとほどくと、中から出てくるのは食べやすい大きさに握られた、可愛らしい風情のお寿司。タイのお寿司をいただくと、優しく酢が効いた酢飯と白身のタイの繊細な味わいが一体となって、うまみが穏やかに伝わってくる。繊細さが印象的な酢飯は新潟の「越いぶき」に穀物酢と麴酢、塩と砂糖を合わせ、まろやかな酸味に仕上げているという。寿司だねの定番はタイ、エビ、マス、アジ、そして玉子。加えて春はメダイやサワラなど、季節ごとに旬の魚を用いるという。どれもが上品な味わいで、長い余韻が感じられる。なにより、その端正なたたずまいがハレの日によく似合い、祝い膳のひとつに用意したくなる。
合わせるワインはやはりシャンパーニュ……といきたいところだが、ここはあえて特別感のある英国のスパークリングワインを。
エリザベス女王の居城であるウィンザー城には2020haに及ぶ広大な自然公園「ウィンザー・グレート・パーク」があるが、「レイスウェイツ ウィンザー・グレート・パーク・ヴィンヤード ブリュット 2015」は、お城の敷地内にあるブドウ畑のブドウで造られたもの。2016年にファーストヴィンテージである2013年がリリースされ、ワインの世界で大きな話題となった。実際にエリザベス女王をはじめとするロイヤルファミリーにも愛飲されているものなのだ。
もともと、ウィンザー城にはヘンリー二世(1133年〜1189年)の時代にブドウが植えられたと伝えられているが、時代とともにブドウ畑は消滅してしまった。だが、近年、英国王室が主導する農業政策の一環として、敷地内にブドウ畑が作られ、英国最大のワイン商であるトニー・レイスウェイト氏がこのプロジェクトに共同参画、「レイスウェイツ ウィンザー・グレート・パーク・ヴィンヤード ブリュット」が誕生したのだった。
実は、ここ10年ほどで“イングリッシュ・スパークリングワイン”の世界的評価は高くなり、ワインの世界でも大きなトレンドとなっている。「レイスウェイツ ウィンザー・グレート・パーク・ヴィンヤード ブリュット」も香りと味わいが限りなくエレガントで、シャンパーニュに比肩すると称されている。
古来の朝廷の典雅さを思わせる繊細なちまき寿司と、エリザベス女王のお膝元で生まれた高貴な味わいのスパークリングワインのマリアージュは、気品に満ちた味。明るい光とともに、新たな門出を祝福してくれるに違いない。
※掲載商品は、すべて税込み価格です。
Text: Kimiko Anzai Editor: Kaori Shimura