Sustainable

持続可能な美しさを求め続ける、ディオールのレガシー

SDGsの「今」

2022.4.8

Photo: ©Dior

SDGsをめぐるラグジュアリー界の最前線をご紹介する連載企画。第8回目は、かつてムッシュ ディオールが抱いた女性へのリスペクトと花々への愛情を継承し、女性の地位向上や環境保護に取り組むパルファン・クリスチャン・ディオールに着目しよう。ディオールといえばラグジュアリーの代名詞そのものだが、その華やかさの背景には、創業以来、社会的責任と持続可能性に関心を寄せてきたメゾンの真の姿がある。2021年に発表されたサステナビリティへの新たなコミットメント「#BEAUTYASLEGACY」の内容や、梱包簡素化やプラスチックフリー、再生素材を取り入れたパッケージングへのこだわりなど、ディオールが導く美容業界のサステナブルな活動にフォーカス。

ムッシュ ディオールの信念が、地球の未来を動かす

1947年にメゾンを創設し、「ニュールック革命」を巻き起こした天才クチュリエ、クリスチャン ディオール。ファッション界に衝撃を与え続けたその伝説とともに、自然界や女性たちを尊ぶムッシュ ディオールの意志は、メゾンに脈々と受け継がれてきた。地球環境や人権、地域に配慮したエシカル消費が注目される今、美容の世界でもサステナビリティは必須課題だが、ディオールにはムッシュの時代から培われてきた倫理的な由緒正しきルーツがあるのだ。

数十年にわたってメゾンを形成してきた美の価値観や、環境問題への活動を共有するために、ディオールは2021年より「#BEAUTYASLEGACY」と冠したサステナブルな取り組みを掲げている。メゾンの社会的・環境的・文化的な責任を追求するこのプログラムは、4つの基軸から構成される。それらキーワードとは、女性のエンパワーメント、再生農業、責任ある美、そしてエコデザインだ。

フレグランスやスキンケア製品の原材料となる植物を栽培しているディオール ガーデンでは、女性の花生産者たちとのパートナーシップを通して、地域の復興に尽力している。Photo: ©Dior

まず、「女性のエンパワーメント」について言及しよう。ムッシュ ディオールはいわば、クリエイションの中心に女性を置いた先駆者。第二波フェミニズム運動が台頭するずっと前から、ムッシュは社内の重要な意思決定の場に女性を登用し、取締役会のメンバーも4人の女性たちで構成していたほど。それは、第二次世界大戦後の混乱期においては革命的だった。女性たちに自信と尊厳を与え、女性たちが本来の姿と文化を取り戻せることに情熱を傾けた。そんな時代から75年を経た今、パルファン・クリスチャン・ディオールはさまざまなキャンペーンを通じて、フェミニニティを支持するイニシアチブを取っている。

女性たちの存在こそムッシュ ディオールのインスピレーション源。類い稀なエレガンスの持ち主であり、仏レジスタンスの一員でもあった最愛の妹、カトリーヌの愛称「ミス ディオール」が、メゾン初の香水の名前に。花と勇気と美への讃歌として、名香は現代へ語り継がれて。ミス ディオール オードゥ パルファン 30ml ¥9,350、50ml ¥13,750、100ml ¥20,350(公式オンラインブティック・一部店舗限定)Photo: ©Dior

自然界のバランスを取り戻す「再生農業」とは?

二つ目の柱である「再生農業」もまた、ムッシュ ディオールの生き方を追従するもの。ノルマンディー地方グランヴィルにある生家の庭で、花々を愛でる心を育てたムッシュ。高い環境意識を備えていた彼は、今でこそ聞き慣れた「責任ある調達」という価値観を、その言葉が生まれる半世紀以上前から支持し、人間と生態系との調和をいち早く目指していた。

孤高のエコロジストの信念を継ぎ、今日メゾンは再生農業に注力している。ディオールのスキンケアを支える植物研究の最前線となる場所といえば、ディオール ガーデン。選ばれし植物を栽培するための秘密のガーデンは、南仏グラースやアフリカ・ブルキナファソなど、世界8カ所に点在している。そのうち7つが有機農法を採用し、1つのガーデンは農地とその生態系を回復させることを目的とした再生農業へ移行中。農地の土壌を単に健康的に保つのではなく、土壌の改善を促しながら自然環境の回復に繋げるのが再生農業である。ディオールは2021年、UEBT(倫理的なバイオトレード連合)に加盟。24年までに、すべてのディオール ガーデンが国際的に厳格なUEBTの基準認定を受ける予定という。

花は女性の次に神聖なものと考えていたというムッシュ ディオール。再生農業では、土壌と地域の生物多様性と生態系への配慮を第一に考え、人間の介入も最小限に。Photo: ©Dior

花は女性の次に神聖なものと考えていたというムッシュ ディオール。再生農業では、土壌と地域の生物多様性と生態系への配慮を第一に考え、人間の介入も最小限に。Photo: ©Dior

三つ目のキーワード、「責任ある美しさ」とは何か。1995年以来、消費者の安全に疑問を感じる成分の使用を排除するために、適切な措置を取ってきたパルファン・クリスチャン・ディオール。国際法を尊重しながら、製品の品質、トレーサビリティ、安全性に対する厳しい基準を満たしていることはいうまでもない。さらに、自然由来成分研究への意欲的な取り組みによって、自然由来成分の配合率はぐっと高まった。2021年初頭に発売された「カプチュール トータル セル ENGY アイセラム」では93%、「ディオール アディクト リップ グロウ」では97%を達成し、ラグジュアリーブランドコスメとナチュラルコスメの境界線を新たなステージへと押し上げた。

美容業界を揺るがす、エコデザインとパッケージング

「#BEAUTYASLEGACY」における最後のマニフェストは、ディオールにとって重要な課題というべき「エコデザイン」。1953年まで、フレグランス、スキンケア、メイクアップ製品を詰め替え可能なかたちで提供していたディオールは、この分野のパイオニア的存在。その歴史にならって、パルファン・クリスチャン・ディオールは16年前より、リデュース(削減)、リユース(再利用)、リサイクル(再生利用)という「3R」の好循環とラグジュアリー体験の両立を掲げている。

2006年には「プレミアム スキンケア オー・ド・ヴィ」シリーズなどで、詰め替え可能な容器を採用し、エコデザインをリード。21年には、メンズの人気フレグランス「ソヴァージュ」用に、リサイクル可能なアルミニウム製レフィルを開発。同年、リップスティックの世界的ベストセラー「ルージュ ディオール」も、レフィル式新デザインに一新。22年までに、すべてのリップスティック製品をエコデザインへ転換させる計画だ。

レフィルを採用し、エコデザインへアップデート。ルージュ ディオール ¥4,950、リフィル¥3,960 Photo: ©Dior

パッケージングにも並々ならぬこだわりがある。2018年より製品の梱包簡素化を推進し、能書きや内箱、箱を包むセロファンを廃止。これにより、従来品に比べて51トンの厚紙と、エッフェル塔を2回包めるほどのセロファンの使用を削減できた。また、21年の「カプチュール トータル セル ENGY」シリーズ誕生に伴って、プラスティックケースやボトルをリサイクル可能なガラスに変更。22年1月、「カプチュール トータル」シリーズに加わった新美容液ローションのボトルには、ガラスに匹敵するほどの硬度を持つ再生プラスチックが使用されるなど、パッケージデザインへの持続可能な取り組みも加熱するばかり。

さらなる透明性の向上を目指し、製品の情報開示をめぐる新たなチャプターを始動したメゾン ディオール。ディオール公式オンラインブティックでは、22年2月末よりフレグランス、スキンケア、メイクアップ製品において環境へ影響を及ぼす情報を順次開示していく。自然由来成分や有用成分の含有率はもちろんのこと、成分の効果効能、栽培方法、処方、パッケージに至るまで、あらゆる情報がサイト上で次々に更新される試みだ。また、今後発売される新製品のパッケージにはQRコードが掲載され、これらの製品情報に簡単にアクセスできるように。

かつてムッシュ ディオールは言った。「私が受け入れることができる世界には、シンプルで自然なものしかありません」と。そう、メゾンの製品には、“美しさは良いものでなければならない”という豊かなDNAが注ぎ込まれている。女性たちが選ぶコスメひとつが社会貢献に繋がっていく時代。サステナブルな視線を縦横無尽にめぐらせ、地球規模の活動を背景に世に送り出されるディオールの化粧品を、あなたも手にしてみてはいかがだろう?

問い合わせ先/パルファン・クリスチャン・ディオール ☎03-3239-0618

公式サイトはこちら

※掲載商品の価格は、すべて税込価格です。

Text: Etsuko Aiko Editor: Kaori Takagiwa