地球と人権にポジティブな変化を。グッチの革命的なサステナビリティー戦略

SDGsの「今」vol.10

2022.06.10

地球と人権にポジティブな変化を。グッチの革命的なサステナビリティー戦略

©Gucci

SDGsをめぐるラグジュアリー界の最前線をご紹介する連載企画。第10回目は、環境保護と人権・個性の尊重の2大テーマを基軸に、持続可能性の実現に向けてアクションを起こし続けるグッチにフォーカスしよう。グッチを擁する親会社ケリングは、カナダのメディア・投資調査会社コーポレート・ナイツが毎年発表する「世界で最もサステナブルな100社(グローバル100)」衣料品・小売部門において、2021年と22年連続して「世界一サステナブルな企業」に選出された勤勉なコングロマリット企業。“ラグジュアリーとサステナビリティーは同一である”というケリングの信念に基づき、グッチにとって持続可能性とは、イノベーションと新たな価値創出の原動力になっている。ケリング・グループの中核を担い、責任あるラグジュアリーを追求するフロントランナー、グッチが目指す未来とは?

クリーンなビジネスの力で、気候変動に立ち向かう

世界の誰もがその名を知る、イタリア・フィレンツェ生まれの名門ブランド、グッチ。ブランド創設100周年を迎え、現社長兼CEOマルコ・ビッザーリとクリエーティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミケーレの指揮の下、“ラグジュアリーを再定義する”というミッションを掲げ、次の100年に向けて挑戦を続けている。鬼才ミケーレが打ち出す、ヴィンテージテイストなのに超現代的なルール無用のスタイルに注目が集まるグッチだが、刺激的なクリエーションの背景には人々と地球にポジティブな変化をもたらすことを志す、真摯なコミットメントがある。

再生可能エネルギーやLED照明を全面的に利用するなど、ショーの在り方もサステナブル時代をけん引するグッチ。
再生可能エネルギーやLED照明を全面的に利用するなど、ショーの在り方もサステナブル時代をけん引するグッチ。2019年9月、イベント運営におけるサステナビリティーマネジメントシステムの国際規格、ISO 20121に準拠した世界初のファッションショーを開催し、現在もその取り組みを継続中。写真は21年11月、ハリウッド大通りをランウェイに見立て、「Gucci Love Parade」コレクションのショーで100周年を祝った一場面。©Gucci by Dan Lecca

ラグジュアリーブランドとしてはかなり早い時期から環境負荷の低減に取り組み、自社の事業活動だけでなくサプライチェーン全体において、2018年からカーボンニュートラルを達成し、維持してきたグッチ。自社はもちろん全サプライヤーに至るまで、グッチのサステナビリティー基準とSA8000認定管理システムに則った倫理基準の順守を徹底している点にも、その熱意がのぞく。グッチは事業の実施による温室効果ガス排出の回避・削減を最優先にしながら、重要な森林やマングローブの植林や再生可能エネルギーの導入を通じて、残存する温室効果ガスの排出量を相殺してきた。

さらに2021年以降は、コレクションに環境低負荷型の原材料を調達するために、再生農業への投資をスタート。農地の土壌を健康的に保つのみならず、土壌の改善を促しながら自然環境の回復につなげるのが再生農業である。グッチのその取り組みは、前述の「世界で最もサステナブルな100社(グローバル100)」において、22年度の総合評価では12位にランクインを果たした親会社、ケリングによる再生農業の構築支援プロジェクトに従うもの。

2019年からビッザーリCEOが指揮を執る、“CEO カーボンニュートラルチャレンジ”。
2019年からビッザーリCEOが指揮を執る、“CEO カーボンニュートラルチャレンジ”。各業界のCEOたちへ、カーボンニュートラル化を呼びかける公式書簡を送付しチャレンジへの参加を促す。©Gucci

グッチCEOが提唱する“CEO カーボンニュートラルチャレンジ”

親会社ケリングと足並みをそろえ、完全なカーボンニュートラルを宣言しているグッチ。社長兼CEOマルコ・ビッザーリ自らが参加を呼びかけた、“CEO カーボンニュートラルチャレンジ”についても言及したい。2019年11月、ビッザーリCEOは、業界の垣根を超えたさまざまな企業に向けた公開書簡で、温室効果ガスの排出量削減への迅速な対策を提唱。数十年先の目標とするのではなく、直ちに気候危機や生物多様性の損失に対する解決策に取り組み、温室効果ガスへの説明責任を果たすことを求めたのだ。参加企業に、飲料メーカーのサンペレグリノや大手ソフトウエア企業のASP、コーヒーのLAVAZZAグループなど。今年のアースデイ(4月22日)には、カルティエもメンバーに加わった。世界市民の一員としてグッチが主導するこのチャレンジが、意識改革を促し、地球にポジティブなインパクトを与えるきっかけになることは言うまでもないだろう。

ビジネス戦略における最優先課題として、サステナビリティーの向上に注力するケリング・グループ。2011年にはさらなる透明性を高めるべく、環境負荷を定量化するための先駆的な「環境損益計算(EP&L)」を開発。19年になると、新たにデジタルプラットフォームを立ち上げ、18年度以降はグッチをはじめとするグループ傘下のブランドが、デジタルEP&Lレポートをインタラクティブに公開している。また、25年までにグループ全体の環境負荷を40%削減するコミットメントを掲げていたが、20年のデジタルEP&Lで、4年前倒しで目標達成したことが実証された。現在、世界各地のグッチのショップ、オフィス、ウェアハウス、ファクトリーの約93%はグリーンエネルギーで運営されている。22年中には、再生可能エネルギーの使用率100%が実現する見込みというから、持続可能性に対する急成長ぶりがうかがえる。

ISO14001およびISO45001の認証を受けている、イタリアのグッチ本社屋。
ISO14001およびISO45001の認証を受けている、イタリアのグッチ本社屋。環境に優しいイニシアチブとエネルギー効率の高い技術の積極的導入が評価され、米国グリーンビルディング協会が開発した国際認証制度、LEED認証を取得。©Andrea Martinadonna

ラグジュアリーの未来を革新する、新素材「デメトラ」

当然のことながら、素材に対してもたゆまぬ努力を重ねてきた。2017年10月、リアルファーの使用を廃止し、エジカルなビジョンを明確に提示。リサイクル素材や天然素材、バイオベース、再生繊維など、持続可能性の高い素材を重視し、責任ある調達や開発・導入に取り組んできた。その一例として、19年末頃にはすでに、バッグやシューズなどの小物のメタルパーツにリサイクルパラジウムコーティングを施したものを100%使用する目標をクリア。

2021年には、2年に及ぶ研究開発の末に、非動物性由来の再生可能なバイオベース原料を用いたイノベーティブな素材「デメトラ」を発表した。デメトラは、上質でやわらかく、耐久性と拡張性を兼ね備え、幅広い製品にフィットする汎用性の高さが特徴的。ラグジュアリーの未来を担う新素材はイタリア国内の自社工場で製造され、なめし加工に使われる高度な技術や工程を採用することで、弾力性のあるしなやかさを発揮している。現在は、このサステナブルかつリュクスな代替素材を使用したスニーカーが展開中だが、今後は他のアイテムにも使用予定。さらに新素材デメトラは、ファッション業界全般に向けオープンイノベーションとして提供されるという。

「グッチ バスケット」スニーカー
容易に拡張・代替可能な未来のための素材。デメトラをアッパーの大部分とライニングの一部に採用した「グッチ バスケット」スニーカー。各¥136,400 ©Gucci
「グッチ ダイアナ」トートバッグ
自社はもとよりサプライチェーン全体の事業活動において、カーボンニュートラルを継続するグッチのエシカルなものづくり。レザー加工のサプライヤーの排水施設に大きな投資を行うことで、工場からの貴金属の排出をなくすなど、環境に負荷をかけない素材生産を実践。2025年までに、レザー加工のメタルフリー化・クロムフリー化の100%導入を目指す。「グッチ ダイアナ」トートバッグ(W35×H30×D14cm)¥495,000 ©Gucci

ジェンダー平等を推進。チェンジメーカーの“声”を集めて

サステナビリティーの概念には、地球環境と並び、人権の尊重も重要なテーマとして含まれるのは周知のとおり。性差にまつわる不平等からの解放や、あらゆる人々にとってより平等な未来に貢献するグッチの活動に着目しよう。ジェンダー平等の実現を目指し、グッチがグローバルプロジェクト「CHIME FOR CAHNGE」を立ち上げたのは2013年のこと。ジェンダー平等のために発せられた世界中の“声”を集めることで問題を可視化し、これまでに世界89カ国で2000万ドルを超える資金を調達。180の非営利パートナーと約500のプロジェクトへの資金提供を通じて、63万人を超える少女と女性たち、300万人以上の家族やコミュニティーの人々に支援を行ってきた。

こうしたアクションの一環として2019年に創刊したのが、ジェンダーの平等を目指して闘う世界中のアクティビストやアーティストたちの声を届ける雑誌『CHIME』である。今年5月には『CHIME』最新号No.5が発行され、人種、ジェンダーアイデンティティー、障害、階級をめぐる、世界各地のあらゆるコミュニティーからのリアルなメッセージを発信した。

雑誌『CHIME』No.5に掲載されたイメージ。
雑誌『CHIME』No.5に掲載されたイメージ。最新号では台湾、インド、エルサルバドル、サモア、イタリア、フランス、アメリカなどからの“声”が集結。最新号のデジタル版は、サステナビリティーに関するコンテンツに特化したグッチ独自のデジタルプラットフォーム「グッチ エクリブリウム(GUCCI EQUILIBRIUM)」からも閲覧可能。© Gucci https://equilibrium.gucci.com/ja/

人々と地球に前向きな変化を生みだそうとする、グッチの多角的かつ先駆的なコミットメントの数々。ブランドや業界の垣根を超えて、そのムーブメントの勢いは増すばかり。アレッサンドロ・ミケーレがけん引するグッチのエネルギーが、若いジェネレーションに及ぼすインパクトは絶大だ。誰もが平等に自己表現でき、母なる美しい地球を保つことのできる未来のために、革命児グッチの挑戦は続く。

問い合わせ先/グッチ ジャパン クライアントサービス 0120-99-2177

※掲載商品は、すべて税込価格です。

Text: Etsuko Aiko
Editor: Kaori Takagiwa

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