土用丑の日に限らずとも、夏、一度は食べなくてはと思うのがうなぎの蒲焼き。その栄養価の高さから、夏バテ防止食として頼りたくなる。香ばしい煙に誘われてお店で楽しむのもすてきだけれど、たまには家でゆっくりと、ワインとともに楽しんでみたい。
そんな気分の日にお取り寄せしたいのが「うなぎ藤田」の「炭火手焼き蒲焼」だ。以前、白金台のお店でうな重をいただいてから、ここのお店のファンに。皮目はカリッ&身はふんわりの食感と、コクはあるのに甘すぎず、すっきりした味わいのたれも美味。
「うなぎ藤田」の本店は浜松で、明治25年頃、初代が浜松名産のうなぎを長野県飯田市の料亭に納めるために、遠い道のりを何日もかけて運んでいたのが始まりだという。そして2代目が「近隣のお客様にも活きのいいうなぎを味わってほしい」という思いから、地元浜名湖で養殖を始めて成功、そして3代目が秘伝のたれを作り上げ、現在は4代目のご主人・藤田将徳さんがその味を大切に守り続けている。4代目の姉に当たる清美さんは、白金店の女将として笑顔で店を切り盛りし、お店を盛り立てている。そんな温かなファミリーストーリーもこのお店の魅力だ。
「うなぎ藤田」のうなぎの特徴は、なんといっても臭みがないこと。150mの深さからくみ上げた冷たい地下水でうなぎを1週間泳がせる「活かしこみ」という方法で、弾力ある身質のうなぎに仕上げているのだ。これを素焼きして蒸し、50年継ぎ足しで使っているたれにつけて焼くという作業を3回繰り返している。その伝統の味に足繁く通うファンが多いというのも納得だ。
この「炭火手焼き蒲焼」に合わせるなら「ボロヴィッツァ コレクション カベルネ・ソーヴィニヨン 2016」がいい。“うなぎの蒲焼きにはピノ・ノワール”が定説で、芳醇で渋みのあるカベルネ・ソーヴィニヨンは合わないとされるが、このワインはひと味違う。とても軽やかで涼やかでありながら、カベルネ・ソーヴィニヨンらしい豊かな果実味とタンニンの渋みもきちんとあり、うなぎのたれの甘辛さにぴたりとはまるのだ。冷蔵庫で少し冷やせば、うなぎの脂のニュアンスもすっきりと楽しませてくれる。
実は、「ボロヴィッツァ コレクション カベルネ・ソーヴィニヨン 2016」は、日本ではまだ珍しいブルガリアのワイン。しかもこちらは、ブルガリア西北部のボロヴィッツァ村に2005年に設立された、まだ新しいワイナリーだ。
醸造家として活躍していた故・オグニャン・ツヴェタノフさんが、ミネラル豊かで鉄分に富んだこの地のテロワールにほれ込み、「ここでなら素晴らしいワインが造れる!」とワイナリーを設立、友人のアドリアナ・スレブリノヴァさんを誘ったという。だが、ここはあまりにも辺ぴな田舎。当初、彼女は「こんな辺ぴなところで働きたくない」とツヴェタノフさんの誘いを断ったが、彼のワインをひと口飲み、「何かの罠かと思うほどおいしかった」と感動、彼とともにワイン造りを決意したという。
現在は、スレブリノヴァさんが醸造責任者として、ミネラル感に満ちて、この地らしい味わいのワインを造り続けている。価格こそカジュアルながら、その味わいはハイレベルで、日々のワインライフがぐっと楽しくなる。
上質のうなぎの蒲焼きと、すっきり系のカベルネ・ソーヴィニヨンのマリアージュは、どこか新しい印象。夏には敬遠したくなる赤ワインをあえて合わせてみるというのも、どこか冒険的でワクワクしてくる。今年は、このエッジィなマリアージュで夏を乗り切ってみたい。
※掲載商品は、すべて税込み価格です。
Text: Kimiko Anzai
Editor: Kaori Shimura