スタイリッシュ&リュクスの奥にある、品格と優しさ
ホームパーティーにお呼ばれした際、手みやげの第一候補に考えるのは、なんといっても、確実においしい名店のスイーツ。しかも、そのセレクトに「技あり!」と思ってもらえたら、とてもうれしい。そんなときの強力な味方が、“フレンチの名店のチーズケーキ”だ。
「オテル・ド・ヨシノ」は多くのフレンチファンに和歌山きっての名店として知られるが、実は、こちらの「クリームチーズケーキ」が絶品! クリームチーズの風味が生きて、濃厚でコクのある味わい。なのに、後味が爽やかで、ついつい食べ過ぎてしまうほどキケンな一品なのだ。誕生したのは3年前で、ちょうど新型コロナウィルスの流行が始まり、外食を楽しむのが難しくなった頃のこと。「せめて、家庭でもおいしいものを楽しんでいただけたらと思ったことがきっかけでした」と、手島純也シェフは述懐する。
家で楽しむなら、素材も作りも奇をてらわずシンプルに、子どもからお年寄りまでみんながおいしいと思う味を心がけたという。使用しているのはフランス産「キリ」のクリームチーズ。広く親しまれているその味を、さらにおいしく仕上げるため、工程の一つひとつを「ていねい過ぎるくらいていねいに」工夫を重ねたという。食べる人の笑顔を想像しながら作ったというその味は、確かに一流フレンチのスイーツらしい上質さを感じさせながらも、どこか優しさに満ちている。
この香ばしさと滑らかさに合わせるなら、ふくらみのある味わいのシャルドネがいい。しかも、スタイリッシュで小粋な味わいのものなら、最強ペアになるはず。
今回選んだのは、ニューヨークワイン。実は、ニューヨーク州はアメリカでもカリフォルニア州とワシントン州に次いで、第3位のワイン生産量を誇っているのだ。東海岸にはもともと野生のブドウが豊かに実っており、ニューヨーク州では17世紀前半に野生ブドウによるワイン生産が始まったという。その後、ヨーロッパ種のブドウがもたらされたがなかなか根づかず、1957年にウクライナ移民のコンスタンティン・フランク博士によって、ようやくヨーロッパ品種の栽培が成功した。以降、この地のワイン生産は一気に加速し、当時は19軒しかなかったワイナリーも、今日では470軒以上に増えているという。家族経営の小さな生産者が多く、洗練されたエレガントな味わいが特徴だ。
この「ウォルファー・エステート シャルドネ 2020」も、シャルドネの豊かな果実味とピュアな酸味が感じられ、バランスよく、とても上品。興味深いのがソーヴィニヨン・ブランを1%ブレンドしていることで、ハーブの香りが心地よいアクセントになっている。クリームチーズケーキと合わせると、チーズのふくよかさにワインの透明感が重なり、このうえなく美味!
生産者の「ウォルファー・エステート」は、ビジネスマンとして投資や不動産などで財を成したドイツ出身のクリスチャン・ウォルファー氏が、1978年、ニューヨークの避暑地として人気のロングアイランドに週末用の別荘と小さな厩舎を建て、88年にワイナリーをスタートさせた。すると、瞬く間にニューヨークセレブ御用達となり、週末のワイナリーはちょっとした社交場となったという。
だが、素晴らしいのはその品質で、ウォルファー氏亡き後は、彼の子どもたちと醸造家のローマン・ロス氏が手を携えながら、海に近いロングアイランドのテロワールを生かした、誰からも愛されるワインを生み出している。
一流フレンチのクリームチーズケーキとニューヨークセレブが造るシャルドネのマリアージュが醸し出すのは、ゴージャスというより、洗練されながらも、どこかほっこりとした品のよさ。リラックス感に満ちたラグジュアリーを楽しませてくれる。
※掲載商品は、すべて税込み価格です。
Text: Kimiko Anzai Editor: Kaori Shimura