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特別な日に行きたい、東京・話題のレストラン4軒

2022.10.7

今年は個性あふれるレストランが続々と東京に登場。記念日や大切な人との会食など、特別な日のランチやディナーを彩ってくれるおすすめの4軒をご紹介。

鬼才シェフが「NINE by La Cime」で仕掛ける、驚きの食体験

「香り」をテーマにした12皿のシーズナルテイスティングコース¥18,000(サービス料別)。

7月にグランドオープンを迎えた「NINE by La Cime(ナイン バイ ラ シーム)」。ミシュラン2つ星を獲得した大阪の「La Cime(ラ シーム)」のオーナーシェフである高田裕介さんと、「ダイナースクラブ フレンチレストランウィーク」のフォーカスシェフにも選出された徳島亨さんのタッグが生み出す食体験は、パンデミック(世界的大流行)により閉ざされた日常を過ごしてきた私たちに、料理が総合芸術であり、エンターテインメントであることを思い出させてくれる。

ディナーのみの営業で、提供されるのはおまかせの1コース。両シェフの地元の食材をはじめ、日本のさまざまな土地の素材を用いた全12皿が登場する。たとえば「ブーダンドッグ」は、徳島シェフの故郷への恩返しが込められた1品。「La Cime」のスペシャリテを徳島シェフ流にアレンジしたもので、使われているのは自身の地元である福島県郡山産のコイ。「郡山ではコイは親しみのある食材。僕らが子どもの頃は給食にもよく出てきました。でも当時は正直、おいしいとは……(苦笑)」と徳島シェフ。そんなコイも今ではすっかりおいしく進化。ほどよく弾力があり、臭みはまったくないという。

コイの肉、皮や内臓をペースト状にして閉じ込めた「ブーダンドッグ」。鶏の軟骨をアクセントに効かせて。

そんなコイの内蔵や骨まで余すところなく練り込んだ「ブーダンドッグ」から、至福のコースは始まる。フレンチがベースだが、何から何まで唯一無二のスタイル。「香り」がテーマとあり、天然成分100%の香りと料理とのペアリングや、まるで香りそのものを食べているかのようなメニューも。ひと皿ごとにまったく異なるプレゼンテーションに感動し、食材や背景にある思いからストーリーが広がり、複雑に絡み合う五味と食感に満たされる。田中知之氏(FPM)の選曲による無国籍なムードが漂うBGMも相まって、どこか知らない土地を旅しているような気分に。洗練きわまるエレガントなサプライズを体験しに、ぜひ出かけてみては?

NINE by La Cime(ナイン バイ ラ シーム)

住所:東京都千代田区丸の内1-3-4 丸の内テラス9F

電話番号:☎03-6206-3939

営業時間:18:00〜23:00(20:00最終入店)

定休日:日曜・月曜

公式サイト

美食の国・ペルーの生態系を表現する「MAZ」で“高度”を食べる

「9つの異なる高度の旅」「9つの異なる高度を持つ野菜のメニュー」の2コースのみで、いずれも¥24,200。ペアリングはアルコール¥15,950、ノンアルコール¥10,450。いずれもサービス料別。

ペルーを代表するレストランといえば、2022年発表の「世界のベストレストラン50」で2位に輝いた「Central(セントラル)」。同店のシェフでディレクターのヴィルヒリオ・マルティネスさんはNetflixのグルメ番組「シェフズテーブル」などでもよく知られた存在だが、なんといっても特筆すべきは、ペルーの多様な生態系を研究するためにNGO団体まで立ち上げるほど、ペルーの自然と食文化への深い愛とリスペクトをもった人物であるということだ。

南北に長く、国土の標高差が6000mもあるペルーには、世界の32の気候のうち、30の気候がある。それぞれの気候によって育つ植物も動物も異なることから、ペルーには古くから多様な食文化が存在している。その独自性を深く掘り下げるべく、マルティネスさんが立ち上げた研究機関には、料理人だけでなく植物学者や人類学者、芸術家、脳神経外科医なども所属。アマゾンの奥地からアンデスの高地まで、ペルー全土を調査している。

デザート「アマゾニア」は希少なカカオを用いたガナッシュ、クレームブリュレ、ソルベ、ジュレなどの豪華セット。カカオのパルプ(種の周りの綿の部分)や皮など、これまでは食用として扱われていなかった部分もおいしくアレンジして使い切る。

そんなマルティネスさんと彼の研究機関が手がける「MAZ(マス)」が紀尾井町にオープン。メニューはベジタリアンとノンベジタリアンの2つのコースのみで、なんとテーマは「高度」。ペルーの異なる高度が織りなす9つの風景と生態系を表現した9皿は、「冷たい海 水深2m」「アンデスの森 海抜3260m」などネーミングからして興味深い。テーブルに運ばれてくるたびに斬新なプレゼンテーションに驚くが、口に運んでみると繊細なうまみが広がって、食べたことがないのに懐かしい、そんな不思議な気分になる。

「食材は唐辛子や食べられる土などペルーでしか手に入らないもの以外は、日本の食材を使っています。ペルー原産と同じDNAをもつじゃがいも、アマゾンの巨大魚に似た肉質の魚など、日本とペルーの似たところを見つけて料理に生かすのも、我々の研究の成果といえるかもしれません」と、ヘッドシェフのサンティアゴ・フェルナンデスさん。ペルーの、日本の、そして地球の豊かさをまるごと味わう至福のひとときを堪能したい。

MAZ(マス)

住所:東京都千代田区紀尾井町1-3 東京ガーデンテラス紀尾井町3F

電話番号:☎03-6272-8513

営業時間:17:00〜23:00

定休日:火曜

※予約方法は公式サイトで確認を

公式サイト

新シェフを迎え、生まれ変わった「Plaiga TOKYO」で日本の四季を味わう

ランチは¥12,000(5品)、ディナーは¥19,000(8品)、いずれも税・サービス料別。ワインのペアリングは¥5,500〜。

2020年に丸の内に誕生した「Plaiga TOKYO(プレーガトウキョウ)」が、この8月にリニューアル。池田翔太シェフを迎え、「日本の四季を旅するフレンチ」をコンセプトに新たなスタートを切った。

池田さんは1988年、福岡県生まれの34歳。福岡と東京のレストランで経験を積んだのち、フランスのブルゴーニュ地方やパリの名店で修行。2019年に帰国後は、新時代の若き才能を発掘する日本最大級の料理人コンペティション「RED U-35」にて「BRONZE EGG」に輝いた。今回の起用について「まだ若いので不安もありますが」と謙遜しながらも、「素晴らしい食材と技術をかけあわせて、最高の料理を作っていきたいです」と目を輝かせる。

「『Plaiga TOKYO』では以前から日本の四季を大切にしていましたが、それをより明確に伝えていきたいと考えています。四季折々の旬の食材は、日本の誇り。自然界の恵みに感謝と敬意をはらい、それらを届けてくれる生産者の方々の思いを受け継いで、ベストなかたちに仕上げるために、日々技術を磨いています」

お米のムースを用いた「“山形県”つや姫米 “北海道”根室 毛蟹(ケガニ)」。複雑な食感と口いっぱいに広がるうまみが記憶に残る一品。

その技と感性は、ひと皿ごとにしっかりと表現されている。例えば、池田さんにとって「Plaiga TOKYO」初のメニューとなったこの夏のラインアップのひとつ、「“山形県”つや姫米 “北海道”根室 毛蟹(ケガニ)」。かすかに甘いお米のムースがちょうどいい粘性と弾力に仕上げられていて、ほぐしたカニの身との絡みが素晴らしく、口福とはまさにこのこと。メニューは約3カ月ごとに変わり、10月からは秋のメニューが展開されているが、こちらのようなお米をアレンジした一品は引き続きオンリストされている。

「これからまだまだ進化していきます」と意気込みを語る池田さん。繊細な舌をもつ気鋭のシェフが生み出す現在進行形のフレンチから、目が離せない。

Plaiga TOKYO(プレーガトウキョウ)

住所:東京都千代田区丸の内1-1-3 日本生命丸の内ガーデンタワーM2F

電話番号:☎03-3284-0030

営業時間:ランチ(木曜・金曜・土曜・祝日)11:30〜13:00L.O、ディナー(月曜〜土曜・祝日)17:30〜20:00L.O

定休日:日曜、年末年始(祝日は営業)

公式サイト

1日1組限定の一軒家フレンチ「llacaste」で、海の幸と発酵&スパイスを満喫

おまかせのコースのみで、料理とデザートで10皿前後(食後のドリンクつき)。料金は2名¥44,000、3名¥55,000、4名¥66,000など(いずれも人数分の合計金額、税・サービス料込み)。人数が増えると食材の無駄が減るため、その分を料金に反映しているそう。アルコール、ノンアルコールのペアリングもある。

築地本願寺の路地裏に、まさに隠れ家という言葉の似合う一軒家レストラン「llacaste(ラカステ)」が誕生した。1日1組限定の完全予約制で、料理はおまかせのコースのみ。エントランスの引き戸を開くと、親しい友人の自宅に招かれたような居心地のよい空間が広がる。

「1日1組としたのは、プライベートな空間で日常の喧騒を忘れてゆったりと食事を楽しんでいただきたかったから。それに、人数分だけの食材を用意して使い切り、フードロスを削減したいという思いもありました」

そう語るのは、オーナーシェフの小島三生さん。ウィンザーホテル洞爺、ラ・ターブル・ドゥ・ジョエルロブションなどを経て、独立。築地エリアでジビエレストラン「もみじどり」、カジュアルダイニング「グリーンキッチン」を主宰したのち、「llacaste」をオープンした。かつては肉料理やジビエを得意としていたが、今回の店では肉不使用、乳製品も極力減らし、国内の野菜と魚介類にこだわるスタイルに舵を切った。

「世界が地球温暖化や資源枯渇といった課題を抱えるなかで、これからは環境にも体にも負担のかからない食事を提供していきたいと思うようになって。幸い、日本には海外の高級食材にも負けない素晴らしい素材がたくさんありますし。基本はフレンチですが、枠にとらわれず、日本の昔ながらの知恵や文化を重ね合わせていきたいと考えています」

店名は「カステラ」のアナグラム。「海外由来だけれど日本で独自に進化して長く愛される、そんな店になれたらという願いを込めました。それに、ちょっととぼけたネーミングで堅苦しくなくていいかなと。“ザギンでシースー”みたいな(笑)」と小島さん。温かみのある人柄にもファンが多い。

日本古来の知恵を生かした小島さん流の創作アイデアは実に興味深い。例えば、ゲストが食べ残したパンを発酵させて醤(ひしお)のような調味料を作ったり、日本酒造りの工程で廃棄されてしまう酒粕を入手してフムスに仕立てたり。コースはどの皿も食材のもつうまみをハーブやスパイス、発酵調味料が引き立てていて、優しく、何度でも食べたくなる味わい。ワインやジン、自家製のコーディアル風のソフトドリンクなど、ドリンクもバリエーションが豊富で楽しい。気の置けない仲間や家族と、くつろぎに満ちたおいしい時間を過ごしたい日におすすめだ。

llacaste(ラカステ)

住所:東京都中央区築地6-12-10

電話番号:☎090-5647-1728

営業時間:17:00〜22:30

定休日:年末年始

※完全予約制、1日1組のみ(2〜6名)

公式サイト

Editor: Kaori Shimura