Sustainable

プラダが導くジュエリーの意識革命

SDGsの「今」

100%リサイクルゴールド使用。

2023.4.16

Photos: ©PRADA

SDGsをめぐるラグジュアリー界の最前線をご紹介する連載企画。第14回目は、2022年秋、サステナビリティーを核に据えたファインジュエリーコレクション、「エターナル ゴールド」を始動したプラダに注目しよう。扱うすべてのナイロン素材を再生ナイロンへ転換させた「Re-Nylon」プロジェクトに続き持続可能性にこだわり、いまだ閉鎖的なジュエリー業界に本格進出を果たしたプラダ。グローバルなラグジュアリーブランドが、100%認証済みリサイクルゴールドを用いたコレクションを展開するのは初めてのことだ。既存の体制に挑戦し続けるフロントランナーが示す、21世紀の循環型ラグジュアリーの行方とは?

ゴールドに受け継がれた、型破りなスピリット

社会の変化をいち早く嗅ぎ取り、常識をことごとく打破しながら、時代の空気をクリエーションに映し出してきたプラダ。その気概は、3代目ミウッチャ・プラダの反骨精神からはじまったもの。高級バッグといえばレザーが主流だった1980年代、工業用ナイロンでバッグを仕立て、ハイファッションの新基軸を築く。やがて2019年以降には、海洋廃棄物から作られた再生ナイロン素材への100%移行に取り組み、見事達成。地球のために、再生可能な豊かさを追求し続けてきた。

モード界の革新者プラダの視線は、新たにジュエリー分野へ向けられた。ブランド初となるファインジュエリーラインの名は「エターナル ゴールド」。その商品開発を主導したのは、2021年9月、プラダ・ジュエリーディレクターに就任したティモシー・イワタである。前職カルティエでは、グローバル・イノベーション・オフィサーを務め、リシュモン グループの代表としてLVMH、プラダグループとともにブランド製品の履歴情報や真贋の検証を消費者が可能にすることを目的とした共同事業体、オーラブロックチェーン コンソーシアム創立に尽力。テクノロジーによる価値創造に情熱を注いできた人物だ。

ファインジュエリーとは世代を超えて受け継がれ、時の試練に耐えうる存在だという概念を宿すものと捉えるプラダ。デビューコレクションの意義は、「ジュエリーの永遠性を讃えると同時に、宝飾史において最も重要な貴金属であるゴールドを再定義する点にある」とジュエリーディレクターのティモシーは指摘する。業界のサプライチェーン全体において、よりサステナブルな意識を高め、変化を促すための効果的なマテリアルとして、ゴールドが選ばれたわけだ。コレクションに使用されたゴールドはすべて、RJC(責任あるジュエリー協議会)が定めたChain of Custody基準を満たすリサイクル認証ゴールド。さらにゴールドだけでなく用いるダイヤモンドに関しても、紛争と関わりがなく環境と人権に配慮されたものであることを、プラダは保証している。

「エターナル ゴールド」のデビューを記念するキャンペーンビジュアルには、類いまれな才能をもつ時代のカリスマたちが登場。写真は、アイコニックなトライアングルモチーフのイヤリングをまとった米国の詩人・活動家のアマンダ・ゴーマン。Photo: David Sims

デジタルイノベーションを武器に透明性を徹底

プラダのターゲットは、再生素材に限ったことではない。閉鎖的な業界のスタンダードを覆し社会の変化を反映するために、新たなレベルのトレーサビリティー(生産履歴の追跡)にも挑んだ。プラダが扱うゴールドとダイヤモンドのすべては、ブロックチェーン技術に裏打ちされたデジタル体験によって、素材調達から製品になるまでの全プロセスを検証・追跡可能。高級品の来歴情報や真贋の検証を行えるオーラブロックチェーン コンソーシアムのプラットフォームに記録された情報を通じて、購入者は個々のジュエリーがたどった軌跡にアクセスできる。

特にダイヤモンドの原産地情報をめぐっては、革新的な一歩を踏み出した。ごく小さなパヴェダイヤモンドを含め、あらゆるサイズのダイヤモンドにトレーサビリティーの対象を広げたのだ。ダイヤモンドの原産地情報は従来、個別登録ダイヤモンドかGIA証明書などが付属した0.5ct以上の認証済みダイヤモンドに対してのみ追跡可能というのが業界の認識だったが、プラダはエコシステム・パートナーと密接に協力しながら常識を打破。全サプライチェーンに画期的な透明性をもたらした。

象徴的なトライアングルロゴをモダンかつクリーンに再解釈。「エターナル ゴールド」ダブルフェイス シングルイヤリング(YG)¥2,200,000(予定価格、受注販売)/プラダ(プラダ クライアントサービス)Photo: ©PRADA

逆三角形のアイデンティティーと愛のシェイプがドッキング。「エターナル ゴールド」ハートチェーンブレスレット(YG)¥7,480,000(予定価格、受注販売)/プラダ(プラダ クライアントサービス)Photo: ©PRADA

ネオクラシックとサステナビリティーの共鳴

初のジュエリーをつかさどるデザインコードといえば、代名詞である「プラダ トライアングル」。1919年にイタリア王室御用達の栄誉にあずかって以来、プラダのロゴには王家サヴォイア家の紋章とロープのデザインが組み込まれ、やがて歴史あるロープをモチーフにして、現在の逆三角形ロゴが考案された。動きを示すトライアングルをあえて逆向きに用いたデザインは、既成概念を覆すという反骨精神のアイデンティティーそのもの。

コンセプチュアルな三角形に加え、プラダの哲学はいくつかのシグネチャーデザインに落とし込まれている。愛情や絆の印であるハートやチェーン、生命力や再生を象徴するスネーク、リボンなど、古典的なジュエリーのモチーフに光を当てた。独自のコンテンポラリーなレンズを通し、それらクラシカルモチーフをトライアングルと巧みに組み合わせることによって、伝統的なテーマを再構築してみせた。

ピラミッド状の頭部を輝かせながら、腕に絡みつく黄金のスネーク。「エターナル ゴールド」スネークアームブレスレット(YG)¥9,130,000(予定価格、受注販売)/プラダ(プラダ クライアントサービス)Photo: ©PRADA

クラシックかつアバンギャルドなルックスに大胆なまでの重厚感、薫り立つニュートラルなアティチュード。プラダ初のジュエリーは、テクノロジーと人間らしさを融合させながら、時代、ジェンダー、社会的・環境的チャンレンジとあらゆるボーダーを越えていく。ジュエリーの価値観を新解釈したゴールドのトライアングルが、サステナブルな輝きの未来を切り開く道標になるはずだ。

問い合わせ先/プラダ クライアントサービス フリーダイヤル0120-45-1913


公式サイト

※この特集中、以下の表記は略号です。YG(イエローゴールド)

※掲載商品は、すべて税込価格です。

Text: Etsuko Aiko Editor: Kaori Takagiwa