美しく清らかな春を予感させる、特別な味

季節はまだ冬。風は冷たく、当分厚手のコートは手放せそうにない。だが、街を歩いていると、ふとした瞬間にかすかに春の気配を感じることがある。木々の小さな芽吹きにも目が行くようになってきた。自然の目覚めは、もうそろそろ。山里では、フキノトウやワラビ、コゴミなどの山菜がいち早く冷たい土の中からぽつりぽつりと顔を出し、春の到来を告げるだろう。

「春のにがみ鍋」(2人前)¥19,440。販売は2月25日〜3月下旬まで。消費期間は製造日を含む2日間。セリ、ウルイ、ミョウガ、コゴミ、フキノトウ、タラノメ、ナノハナ、ワラビなどの山菜と、シュンギクやコカブなど、野菜もたっぷり。牛サーロイン肉は京都産和牛。特製だし付き。山菜の生命力と牛サーロイン肉のうまみが感じられ、春の息吹に満ちた一品。問:紫野和久傳 ☎075-495-5588

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山菜は、独特の苦みと香りが魅力的な春のごちそう。新しい季節に、芽吹きのパワーを与えてくれそうな気がする。紫野和久傳(むらさきのわくでん)の「春のにがみ鍋」は、そんな山菜のパワーを感じることができる、この季節ならではの美味。特製だしにフキノトウ、セリ、ミョウガ、ワラビなど山菜がたっぷり入り、上品なうまみの霜降り肉を味わえる贅沢(ぜいたく)な仕立て。ひと口いただくと、カツオ節と昆布の深みのあるだしのうまみとともに山菜の軽やかな苦みが広がり、「自然の恵みをいただいている」と実感。牛サーロイン肉はとろけるように柔らかく、洗練された味わい。

紫野和久傳は、京都の季節の素材を生かした繊細な料理に定評あるおもたせの店だが、山の素朴な味までも品よく仕上げるのは、さすがのひと言。春の息吹が溶け込んだ鍋は、体を芯から温めてくれるだけでなく、早春の京都の山里の風景まで想起させ、のどかな気分に浸らせてくれる。

このナチュラルながらも奥深い味わいの鍋にあわせるお酒はシャンパーニュやロゼなど、選択肢は多いが、ぜひ選びたいのは日本が誇る甲州種。それも、今までのフルーティーですっきりしたタイプではなく、繊細さと芳醇(ほうじゅん)さ、そして優雅さを兼ね備えた特別感のある甲州種を合わせたい。

「三澤甲州 2020」750ml ¥12,000(編集部調べ)。日本・山梨県。甲州100%。外観は美しいレモンイエロー。白桃や洋ナシ、リンゴなどの果実の香りやスイカズラの花の香りが複雑なアロマを形成。ボリューム感のある豊かな果実味としなやかなミネラル、フレッシュな酸味。野菜や魚介類だけでなく、鶏のローストなど肉料理までカバーする力強さを持つ。問:中央葡萄酒 ☎0553-44-1230

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選んだのは「三澤甲州 2020」。「グレイスワイン」のブランド名で知られ、世界的評価の高い中央葡萄酒のトップキュヴェ「キュヴェ三澤明野甲州」が「三澤甲州」と名前を変え、さらにバージョンアップして登場した“スーパー甲州”だ。誰よりも甲州種を愛する醸造責任者の三澤彩奈さんが「より進化した、香り豊かで深い味わいの甲州を」と、丹精込めて造っている。

この甲州は、日本でもっとも長い日照時間を誇る山梨県北杜市明野町の自社農園「三澤農場」で低農薬で育てたブドウを低収量に抑え、畑の土着酵母を使って仕込んだ“畑で生まれる甲州”だ。白桃やリンゴなどの果実や、クローブ、ジャスミン、キャラメルといった多彩で華やかなアロマとふくよかな果実味、ピュアな酸味が心に残る。エレガントな味わいのなかにも凛とした強さが感じられ、まるで姫君のようなワインと言えるだろう。

「三澤甲州」の大きな魅力は芳醇さと清らかさ。厚みのあるミネラルが山菜の繊細な苦みを優しく包み、豊かな果実味が牛サーロイン肉のうまみを引き立ててくれる。鍋とワインが互いにリスペクトしあいながら寄り添っている印象だ。

品がよく、清冽(せいれつ)さを感じるマリアージュは、早春にこそふさわしい。まだ少しだけ寒いけれど、すぐそこになにか、すてきな出来事が待っているような気がする。

※掲載商品は、すべて税込み価格です。

Text: Kimiko Anzai Editor: Kaori Shimura