提供:Splunk

なぜ日本企業DX

進まないのか――。

経営資源であるデータの利活用で
企業は変わる

クロサカタツヤ氏×野村代表 対談

遅れていると言われる日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)だが、その原因はどこにあり、DXを加速させるための鍵は何か――。コンサルタントとして多くの企業経営者にアドバイスするとともに、日本政府のIT関連の委員会の委員などを歴任する株式会社企(くわだて) 代表取締役のクロサカタツヤ氏と、フォーチューン誌が選ぶ「最も働きがいのある会社ベスト100」にも選出されたデータプラットフォームのリーダー企業であるSplunk(スプランク)日本法人 社長執行役員の野村健氏が語り合った。

DXを進める第一歩は
デジタルに触れること

――日本企業のDXは欧米に比べて遅れていると言われています。その原因はどこにあると思いますか。

株式会社企 代表取締役 クロサカ タツヤ 氏
株式会社企
代表取締役
クロサカ タツヤ

クロサカ日本企業がIT投資をすると生産性が下がるという驚くべきレポートが5年ほど前に発表されたことがありました。IT化すると紙の仕事に慣れている従業員に拒絶反応が起きて、生産性が落ちる産業セクターがあるといった指摘です。これではDXどころではありません。

 確かにDXがうまく進んでいない原因としてよく見られるのが「デジタルを武器として使えていない」ということです。理由は2つあります。1つは、他社と戦う意欲がないことです。他社と戦う意欲がない企業は売り上げを伸ばすのではなく、コストを減らして利益を増やそうとします。

 売り上げを伸ばすのは大変です。他社と違った新しい価値を提供し、お客様から選ばれなければならない。デジタルはそのための武器になります。一方、売り上げではなく利益を伸ばそうとすると内向き指向になるので、デジタルを武器にする意識は低下しがちです。

 もう1つは、単純にITツールに慣れていないことです。こちらのほうが傷は浅い。慣れてしまえばデジタルを武器として使えるようになるからです。産業セクターによっても違ってくるのは当然です。

Splunk Services Japan合同会社 日本法人 社長執行役員 野村 健 氏
Splunk Services Japan合同会社
日本法人
社長執行役員
野村 健

野村こんな視点もあります。日本のITビジネスの特性として米国と比べると、ITエンジニアがどこにいるかが大きく異なります。米国はITエンジニアの65%がユーザー企業にいますが、日本は逆で72%がITベンダーやSIerにいるそうです。IT化は外部に発注するという構造になっているため、DXが進みません。DXで成功しているお客様を見ると、ITエンジニアの内製化に積極的に取り組んでいるというイメージがあります。

成功事例を真似ることが
自社の成功の近道に

――DXの推進で「人材」の問題は避けては通れません。どのようにして人材を育てていけばいいのでしょうか。

クロサカ問題なのは、最初からスーパーマンを求めてしまうことです。すべてができるスーパーマンが突然現れたりするようなことはありません。ビジネスアクションと同じように、自分たちの手でできることを少しずつ広げていくことです。

 そのときに大事なのが、To Doリストだけではなく、Not To Doリストもつくり、どこに業務を集中するのかを明らかにすることです。誰にとっても有限な時間をどう使うかを明確にしておいたほうが確実に前進します。

野村Not To Doリストをつくるのは重要ですね。私も人材育成はビッグバン的に一気に進めていくことは現実的ではないと考えています。ある大手のお客様からは「まず10人のデータ分析者を育てたいので手伝ってほしい。それができたら100人に増やしたい」と言われています。

 日本の企業は「失敗を恐れる」とよく言われますが、そうであれば成功事例の真似をするのが近道です。すでに欧米にはDXの成功事例がたくさんありますし、日本企業でも内製化で成功している事例が生まれています。カインズ様のDXへの取り組みと成功は内製化が大きな要因になっています。

クロサカ タツヤ 氏 × 野村 健 氏

クロサカ最近は、システムの内製化を進める企業が増えていますね。そうした企業はきちんと自分たちの課題に向き合っているからでしょう。また課題に対する答えは、自社内ではなく市場やお客様にある場合も多いです。相手に提案して返ってくるものが正当な評価です。何度も試行錯誤を繰り返し、その結果を常に数字で見ていくことが重要です。

野村デジタル化によって売り上げの構成も変わっています。小売業ではECサイトの売り上げが増えているはずです。ただ、残念なのはECサイト内での顧客ごとの活動などをきちんとデータで把握していないケースが多いことです。カートに保存したが購買まで至らない、決済途中で離脱したなど。

 実店舗であればお客様の動きや棚ごとの売れ筋などを日常的に確認しているはずですが、ECサイトではそういう視点が欠落しがちです。デジタルの世界でも経営者の持つべき視点は同じです。

データが価値を生み出す
サイクルの確立を

――最近はデータを活用したデータドリブン経営への関心が高まっています。

クロサカ企業が価値を生み出す源泉は有形無形の資産です。持っている資産を活用して市場に働きかけて、それが受け入れられれば売り上げにつながります。伝統的な大企業ではこれまで人、モノ、金という経営資産を活用して売り上げを上げてきたはずです。

 重要なのは、持っている資産から価値を生み出しているかどうかです。デジタルの時代ではデータが重要な経営資産です。データから次の価値あるデータを生み出すことで、データが生き生きとしてきます。経営者としては最低限それを目指すべきでしょう。

野村氏
「イノベーションを支えるのは、データとセキュリティーとレジリエンス。そのためのSaaSの基盤とそれを使いこなす人材を含めたフレームワークを提供しようとしています(野村氏)」

野村「データが生き生きとしている」というのはいい表現ですね。データを見ないということは現実を見ないということです。組織の問題やプライバシー、セキュリティーの問題もありますが、組織の壁を超えてサプライチェーン全体まで統合的に見て、ビジネス全体への影響を把握する必要があります。

 当社ではイノベーションを支えるのは、データとセキュリティー、不確実な時代を生き抜く力「レジリエンス(変化への適応力)」だと考えています。そのためのSaaS(Software as a Service)の基盤とそれを使いこなす人材を含めたフレームワークを提供しようとしています。

クロサカその上で、フレームワークを活用するにはメンタリティーも必要だと思います。フレームワークを適用しようとすると自分たちが評価されるようで嫌がる人もいますが、それは間違いです。フレームワークは効率的にすり合わせをするためのものです。

 フレームワークにはプロの知見が込められています。迷っているのであればプロに聞くことです。答えの手がかりは持っているはずです。小さなことでもいいので一歩踏み出すことが大切です。

野村ITツールも一歩踏み出すためのきっかけですね。私たちはDXに取り組む日本のお客様に多く導入いただいているデータ分析プラットフォームのプロです。データ分析によって問題を解決する環境と知見を提供しています。それを使って自分のデータを見て、自分ごととして考えられるようになることで、一段上のアクションがとれるはずです。内製化によって素早いアクションを目指すきっかけとして活用していただきたいと考えています。

会社の仲間を信じて
DXに踏み出そう

――DXに真剣に向き合う経営者をどのように支援していくのでしょうか。

クロサカ日頃から経営者に接するコンサルタントとして、常に経営者目線で考えてアドバイスするようにしています。そこで申し上げているのは「会社の仲間を信じましょう」ということです。

クロサカ氏
「多くの人がデジタルの素養を持っている今、その潜在能力を引き出せればDXはうまくいきます。仲間を信じてDXを進めましょう(クロサカ氏)」

 「うちはデジタルが得意ではない」「システムが古い」という経営者は多いですが、みんな会社を出るとスマートフォンをいじっています。スマホというデジタルツールによってITリテラシーは上がっています。IT投資が生産性を下げると言われた5年前とは違うのです。

 多くの人がデジタルの素養を持っている今、その潜在能力を引き出せればDXはうまくいきます。仲間を信じてDXを進めましょう。

野村Splunkという社名はspelunking(洞窟探索)が語源なのですが、データの中を探索して何かを発見するための基盤やサービスを提供しています。日本法人は百数十名と少数ですが30数社の有力なパートナーがいます。

 今年7月には今までのクラウドサービスに加えて、「オブザーバビリティークラウド」に特化したサービスセンターを東京に開設し、よりリアルタイムなサービスを提供できるようになりました。これまで以上にきめ細かいサービスを提供し、信頼できるパートナーとして日本企業のDXを支援していきます。

クロサカ タツヤ 氏 × 野村 健 氏