提供:住友ファーマ

創薬からロボットまで住友ファーマが目指す新世界

フリーキャスター/千葉大学客員教授 木場 弘子氏×住友ファーマ(旧社名・大日本住友製薬)代表取締役社長 野村 博氏

2022年4月1日、大日本住友製薬が社名を住友ファーマに変更した。2005年の大日本製薬と住友製薬の合併から16年半。今回の商号変更にはどのような意図や思いが込められているのか。住友ファーマの野村博社長に、フリーキャスターの木場弘子氏が聞いた。

“Branding”

いまなぜ「住友ファーマ」になるのか

木場まずは、社名を大日本住友製薬から住友ファーマに変更された理由から教えてください。

野村大日本製薬と住友製薬の合併時に、大日本住友製薬という両社の名を合わせた名前にしたのは、できるだけ早く社員に融和してほしいという思いがあったからです。1897年創業という大日本製薬の歴史の重みも大切にしたいと考えました。その合併から16年半を経た現在は、売上規模も大きくなり、グローバル化も進みました。また、これまでの主力である精神神経系の薬剤だけではなく、がん領域や再生・細胞医薬、さらには未病や治療後のケアまで含めたフロンティア事業にも踏み込んでおり、事業内容が大きく変わってきました。このため新たな事業ステージに向けて変化しさらに発展し続けることを目指し、当社グループのブランドを刷新しました。当社の筆頭株主が住友化学ということもありますが、当社が住友グループの一員であること、そして製薬会社であることもすぐに理解してもらえ、覚えてもらいやすい名前として、最終的に住友ファーマがベストと判断しました。

フォト:野村 博氏

住友ファーマ 代表取締役社長

野村 博

1981年東大経卒、住友化学工業(現・住友化学)入社。2008年、大日本住友製薬(現・住友ファーマ)入社。同年執行役員、米サノビオン(旧・セプラコール)最高財務責任者(CFO)、2012年大日本住友製薬取締役兼執行役員、2014年取締役兼常務執行役員、2016年取締役兼専務執行役員、2017年代表取締役兼専務執行役員を経て、2018年より現職。

新たなステージへ

木場400年を超える歴史を持つ住友グループには、「確実を旨とし浮利に趨(はし)らず」(目先の利益を追わず、信用を重んじ確実を旨とする)や、進取の精神をもって変化を先取りしていく「進取敢為(しんしゅかんい)」といった事業精神があると聞きます。住友ファーマはどのような企業理念を掲げておられるのですか。

野村当社は製薬会社ですので、「人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献する」ことを企業理念にしています。薬の研究開発には長い年月が必要ですし、薬の品質や安定的な供給の上に顧客との信頼関係が成り立っています。「進取敢為」は、困難があっても積極的に取り組む姿勢を表していますが、当社はこの事業精神を生かし、難易度の高い新薬の研究開発にチャレンジしています。また、住友の事業精神の一つに「自利利他 公私一如」という、SDGs(持続可能な開発目標)に通じる理念もあります。企業として利益は得るけれども、それは社会のためにもなるよう、私たちの存在自体が世の中のためになるように努力していく、という理念です。

木場グローバル化が進んだということですが、海外比率はどのぐらいでしょうか。

野村2021年度は約3分の2が海外で、中国や東・東南アジアでも自社展開していますが、売上収益全体の約6割を北米市場が占めました。米国では日本とは異なり薬価を自社で決めることができ、医薬品市場も大きいため、ブロックバスター(大型新薬)を出せる可能性があります。ただ、当社のブロックバスターで売上2,000億円規模の精神神経系の薬剤が、2023年2月に米国で独占販売期間の終了を迎えますので、事業全体の構成を見直し、さまざまな施策を準備してきました。

“Future”

10年先を見据え成長エンジンを確立

木場2019年に米国ロイバント社と戦略的提携を締結されていますね。

野村当社のブロックバスター薬剤の独占販売期間終了に伴う減収の影響を最小限にとどめるため、ロイバントの5つの子会社を買収し、今後大型化が期待される承認直前の医薬品3剤を当社のパイプライン(新薬候補化合物)に加えました。ロイバントとの提携はまた、当社のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進にも大いに貢献しています。DXのテクノロジーチームを迎え、AI(人工知能)を使ったアルゴリズムや業務改善のテクノロジーなど、当社グループの各ビジネス部門と密接に連携しながら、グループ全体で活用できる基盤づくりを進めています。また、非常に優秀なマネジメント人材も同時に獲得することができました。

フォト:木場 弘子氏

フリーキャスター/千葉大学客員教授

木場 弘子

1987年千葉大教育卒、TBS入社。同局初の女性スポーツキャスターとして『筑紫哲也ニュース23』などで活躍。1992年与田剛氏(中日前監督)との結婚を機にフリーランスに。教育や環境に関わる仕事が多く、講演やモデレーター、TV出演など幅広く活躍。生活者の視点を大切に6つの省庁で審議会に参加。各界トップへのインタビューは300人を超える。予防医学指導士の資格を持つ。

再生医療、フロンティアについて

木場買収は事業拡大のための時間を買う、他業種を傘下に入れることで業容拡大を図るといった目的別で行われることが多いと思いますが、御社の場合は両方同時に獲得され、さらに人材も獲得されたわけですね。冒頭で再生・細胞医薬というお話しがありました。もう少し詳しく教えていただけますか。

野村当社は2033年のあるべき姿として、「グローバル・スペシャライズド・プレーヤー」になることを目指しています。具体的には「精神神経」「がん」「再生・細胞医薬」の研究重点3領域でグローバルリーダーになりたいと考え、今後も重点投資を継続していきます。再生・細胞医薬も当社の注力分野で、ノーベル生理学・医学賞を受賞された山中伸弥教授とは、京都大学に移られる前の奈良先端科学技術大学院大学遺伝子教育研究センター時代から共同研究をさせていただいてきた経緯があります。医薬品では治療できない病気に対し、iPS細胞を使った神経細胞や臓器再生などの新しい再生医療の治療法を開発しています。京都大学では現在、パーキンソン病の治療を目指し、iPS細胞からドパミン神経前駆細胞を作って移植する臨床試験が行われています。当社では京都大学の協力も受けながら今年度中には米国で同様の臨床試験を始めるべく準備を進めているところです。また、当社ではグローバル基準での商用生産に対応可能な再生・細胞医薬製造プラントのSMaRTも、2018年から稼働しています。

フォト:再生・細胞医薬製造プラント「SMaRT」

再生・細胞医薬製造プラント「SMaRT」

木場では、フロンティア事業というのは、具体的にはどのような事業でしょうか。

野村疾病には、薬や細胞治療などではカバーできない領域もあります。患者さん本位の治療を考えれば、治療手段(モダリティ)を医薬品に限定せず、幅広く持つことで新たな価値を創造できると考えています。いわゆる未病から、治療後のケアまでの全体をカバーできないものかと考えています。ただ、いきなり土地勘のないところでやるのではなく、主に精神神経系の領域から取り組み始めています。例えば、Aikomi(横浜市)という国内スタートアップ会社とは認知症・介護関連のデジタルセラピー機器の研究開発で連携しています。介護施設にいる認知症者に、記憶を呼び覚ます可能性のある写真や音楽など、個別最適化した感覚刺激を提供すると、介護者とコミュニケーションができて、介護者の負担軽減につながります。また、ロボット開発のメルティンMMI(東京・中央)との生体信号処理技術とロボット技術を利用した手指麻痺患者さんのためのリハビリ機器の開発や、特定波長の光(バイオレットライト)を使ってうつ状態を改善する研究なども行っています。ほかにも難聴者支援機器として、複数の話者がいる中で誰が話しているかも分かる音声字幕変換表示のデバイスの開発、ウェアラブル脳波計の開発なども行っています。

木場私は予防医学に大変興味がありますが、今のお話のように未病から病中、そして、病後のリハビリ、社会復帰まで幅広くカバーしていくという姿勢は素晴らしいですね。

野村ありがとうございます。フロンティア領域の製品群は、私自身も使えるようにしておきたいです。研究重点3領域とフロンティア事業で成長エンジンを確立し、グローバル・スペシャライズド・プレーヤーと呼ばれるようにチャレンジを続けていきたいと思っています。

“Innovation”

変革継続は「CHANTO」から

木場そういったチャレンジを続けていくためには、社員の皆さんの意識改革も重要ですね。

野村当社では「ちゃんとやりきる力」を重視しています。これは、世の中の変化を捉えて自らを柔軟に変化させながら、イノベーションを継続的に創出し、その成果を人々に確実に届ける力のことです。当社の社員は非常にまじめで、目標に向かってきちんとやっていくタイプの人が多いのですが、最後までやりきって成果を出す、その詰めのところをさらに強化したいと考えます。このため、「プロジェクトCHANTO」を2020年2月にスタートさせ、5つの行動指針(表参照)を経営の意思として定め、全従業員が楽しみながら「CHANTO」を理解・実践するセッションなどを開催しています。私がよく例に出すのは、単独登山ではなく、パーティーを組むエベレスト登山です。頂上にアタックする最後の人が偉いのではなく、チーム全員が役割分担して登山を成功に導く。天候の変化、ルートの確定、ペースや体調の確認など、チーム全体で環境の変化に耐えながら目標を達成することが大事です。

5つの行動指針 1目的志向を持ち自分事として考えやりきる 2勇気を持って挑戦する 3自律・自立して個の力を発揮する 4互いを尊重し仲間と協働する 5真面目さ・誠実さを持ち続ける

木場新入社員や就活生にはどのようなことを期待していますか。

野村当社が求める人材は、当社の企業理念に共感していただける、チャレンジ精神の旺盛な方です。5つの行動指針を自ら体現していこうという意欲に満ちた方とぜひ一緒に住友ファーマの未来を創っていきたいと考えています。当社は、自ら学び、成長する意欲のある方に対して積極的に成長の機会を提供しています。みなさんの“挑戦”をお待ちしております。

木場本日はありがとうございました。新生、住友ファーマのますますの発展をお祈り致しております。

“Movie”

「なんとかしたい。だから、挑む。」
住友ファーマの挑戦(30秒)

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