日本が誇る、次代を創る技術

提供:東芝

Vol.1

脱炭素社会の実現に貢献!
「水素エネルギー」と「超電導モーター」とは?

Vol.2

実用化が加速!
さまざまな社会課題に「量子技術」で挑む

人々の生活、ビジネスを変える!
気象」「購買」データを活用した
データビジネスとは?

デジタル技術によるビジネス変革が急速に進みつつある現在、特に目覚ましい勢いで発展を遂げているのが、データビジネスの領域だ。すでに多くの企業が多種多様なシステムやアプリケーション、デバイスで時々刻々と生成される膨大なデータを分析し、自社の経営判断に役立てるデータドリブン経営に取り組み始めている。そんな中、あらゆるデータを活用して新しいビジネスモデルを構築するデータビジネスを将来の中核事業へ育てようと取り組みを推進しているのが東芝だ。データビジネスがこれからの社会にどのようなインパクトをもたらすのか、同社が手掛ける2つの注目領域に迫る。

収益の柱としての「データビジネス」

 昨今、多くの企業が経営課題としてデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性を認識している。その取り組みの中でも特に重要な要素が「データ活用」だ。日々生成され続けている膨大なデータをリアルタイムに収集・蓄積して分析し、迅速かつ的確な意思決定、新しいビジネスや付加価値の創出、業務効率化や生産性・品質向上などに活用していくことは、企業の成長に不可欠な取り組みとなっている。また官公庁や地方自治体にとっても、行政・住民サービスの高度化、都市計画や交通インフラなどの最適化、自然災害対策といった社会貢献に寄与する施策を円滑に遂行するために、データ活用は欠かせない。

 そうしたデータ活用の重要性をいち早く認識し、データビジネスに注力する姿勢を鮮明にしたのが東芝グループだ。東芝は2022年6月に発表した経営方針の中で、多種多様かつ膨大なデータを活用した新しいサービスを創出し、今後の収益の柱へと成長させていくという方向性を表明した。そうした中で、東芝は社会のインフラから生成されるデータを活用した新しいサービス事業を次々と立ち上げている。

 ここからは、気象レーダやPOSシステムから取得できるデータを、東芝がどのように活用し、付加価値を付けたサービスを提供しているかを紹介しよう。

災害対策の点から期待される「気象データ」

写真:和田 将一 氏
株式会社東芝
CPS×デザイン部 CPS戦略室
フェロー
和田 将一

 現在、多種多様なデータビジネスが世の中に存在するが、東芝が着目したのは「気象データサービス」である。同サービスの事業化に取り組む同社 CPS×デザイン部 CPS戦略室 フェローの和田将一氏は、気象データに着目した背景を次のように説明する。

 「近年、地球温暖化によって豪雨や突風といった自然災害が頻発し、さらなる防災強化の必要性が高まっています。これまでは土木工事などのインフラ面での対策が進められてきましたが、今後はデータを活用した対策が不可欠と言えます」

 従来も洪水ハザードマップのような過去の水害の被害状況をもとにしたデータ分析は行われていた。だが、より実効性のある対策を実現するには、リアルタイムの降雨情報をもとにどのエリアが何分、何時間後に浸水する可能性があるといったデータ分析が求められる。そこで解決策として期待されるのが、東芝が提供する気象データサービスだ。

 「東芝は長年にわたり気象レーダを製造し、官公庁やインフラ事業者に対し、個別のニーズに特化したシステムを提供してきました。そんな中、データ活用の機運が高まり、国土交通省の気象レーダの生データがオープンデータ化されて商用利用も可能になりました。そこで我々は、従来は主に降雨量を測定するために使われてきたレーダのデータに、さまざまな角度の解析を加えることで、リアルタイムに、より精度の高い突風情報や、これまで提供されることがなかった雨・雪・霰(あられ)を判別した情報など、新たな価値のあるデータを提供できると考えました」(和田氏)

他社が簡単には追随できない専門性が要求されるデータ解析

 気象レーダのデータがオープン化されたとはいえ、それを活用するのは簡単なことではない。レーダから提供されるデータには雨粒に当たって反射した電波の情報など、さまざまな生データが含まれている。こうしたデータの意味を理解し解析することは、気象レーダメーカーでなければ極めて難しい。

 「東芝はこうした生データの一次解析ができるだけでなく、これらの情報をさらに二次解析することで、ユーザごとの運用に合わせたシステムを提供してきた実績があります。この両方を得意としているのは、他に類を見ない東芝の大きな優位性でしょう」(和田氏)

 この気象データサービスにはもう1つ、大きな特長がある。それはサービス利用者が気象レーダなどのハードウェアを導入しなくても、サービスを利用できるということだ。

 「公共の気象レーダのデータを解析する気象データサービスを利用すれば、ハードウェアを維持・運用する労力やコストが不要となり、導入のハードルは大きく下がります。また、機能追加や改良を容易に行えるので、最新の解析技術をタイムリーに採用することも可能になります」(和田氏)

 現在は23年度内の事業化に向け、有効性を確認するための実証実験が進められている。実証実験では、東芝製の気象レーダだけでなく他社製レーダのデータ解析も実施されており、良好な結果が得られているという。また、海外の気象レーダであっても解析が可能なため、グローバル展開も視野に入れているという。

 このように、東芝が世の中の気象レーダのデータに付加価値を付けてサービスを提供することで、防災をはじめ、さまざまな分野で社会への貢献につながっていくだろう。

図:気象レーダの生データを活用したデータビジネスのイメージ
気象レーダの生データを活用したデータビジネスのイメージ

さらなる活用が期待される「実店舗の購買データ」

写真:白砂 晃 氏
東芝データ株式会社
取締役 COO
白砂 晃

 もう1つ、東芝の代表的なデータビジネスとして挙げられるのが「購買データサービス」だ。東芝グループには、POSシステム市場で国内トップクラスのシェアを誇る東芝テックがあり、14年から電子レシートサービス「スマートレシート®※1」を提供している。20年2月には「データを価値ある形にして社会へ還元する事業」を展開するために戦略子会社の東芝データを新設。同社事業の第一弾として、東芝テックのスマートレシートを核とする新たな事業モデルを立ち上げた。

 東芝データのデータビジネスを牽引する同社取締役 COOの白砂晃氏は、購買データサービス事業に注目した背景を次のように説明する。

 「近年、急成長を遂げたEC(電子商取引)事業者の大きな強みは、購買データを個々人のユーザID単位で可視化して顧客獲得やコスト最適化を実現してきたところにあります。一方、実店舗を構える小売業でも30年以上にわたってPOSシステムが利用されてきましたが、そのデータの活用は店舗や事業者の中に閉じており、ユーザIDとの紐づけもなかなか進んできませんでした。

 大量生産大量消費の時代から個別の消費者ニーズに応えた多品種少量生産の時代へと移り変わる中、個人の属性やライフスタイルを把握してビジネスにつなげていくには、事業者の枠組みを超えた購買データの活用が必要になります。それを実現するのがスマートレシートであり、当社が担うデータビジネスの足掛かりになるものと考えています」

企業も消費者もメリットを享受できるデータ活用を目指す

 スマートレシートとは、会計時に紙で渡される購入商品の明細レシートを電子化し、データとして管理・提供するサービスだ。消費者は、スマートフォンからいつでも購入履歴を確認・管理できるようになっており、家計の管理や買い物の利便性向上に役立てられる。一方、スマートレシート導入企業は、紙レシートの発行コストや環境負荷を低減するという効果がある。22年10月には累計利用者数が100万人を超え、加盟店は大手コンビニエンスストアやスーパー、ドラッグストア、ホームセンターなど1万2000店舗以上に及ぶ。

 また、スマートレシートの大きな特徴の1つとして、小売りや決済手段ごとに分断されている購買データを横断してつなげることができることだ。これにより、いつ、どこで、何を買ったかが把握でき、より価値のあるデータとして活用ができる。

 「購買データサービスの事業モデルをつくり上げていく中で最も難しいのは、個人情報保護をどのように担保するかということです。また、事業者にとってPOSシステムのデータは『自分たちのもの』という意識が強く、他社にデータを渡して解析することに抵抗があるという企業は少なくありません。これらの課題を克服してさらに購買データサービスを広めていくには、個人に帰属するデータの利用許諾をきちんととって、社会に還元されるようなデータ活用への理解を深めることです。そこでスマートレシートを活用することを考えました」(白砂氏)

 こうした背景を踏まえ、東芝データが目指しているのは、スマートレシートから収集した購買データを分析し、広告業の販促効果検証、製造業の商品開発や需要予測、購買行動のトレンドによる金融業の株価予測や市場分析といった用途向けに販売する事業モデルだ。また消費者向けには、利便性向上を目的に、レシートをスキャンしてデータ化する機能や、外部の家計簿アプリ、健康管理アプリ、レシピアプリなどとの連携も積極的に推進し、購買データの活用によるメリットを身近で感じてもらえるようにしている。

図:購買データに付加価値を付けて新たなサービスを創出
購買データに付加価値を付けて新たなサービスを創出

 「22年10月にはスマートレシートから得られる購買データを統計化し、実店舗における消費行動パターンを閲覧・分析できるサブスクリプション型の購買統計データ分析ツール『Data flip™』の提供を企業向けに開始しました。引き続きスマートレシートを市場に広く浸透させつつ、25年までに購買データの収集基盤を確立するとともに、新しい事業モデルを立ち上げていく計画です」(白砂氏)

データを独占せず、誰もが自由に活用できる社会へ

 ここまで、東芝が進めるデータビジネスの例として、気象データサービスと購買データサービスを紹介したが、東芝がデータビジネスのゴールに設定しているのは「データ活用を通じた社会貢献」だ。自社のビジネスに活用した企業、または日々の生活に役立てたい消費者など、データの価値をすべての人が等しく享受できる社会の実現である。

 「まずは気象データサービスの事業を軌道に乗せ、そのうえで当社の目指すサイバーフィジカルシステム※2を実現していきます。気象データを下水、電力、交通といった社会インフラで活用することで、サイバー領域のデータがフィジカル領域と循環して価値を生み出すサイバーフィジカルシステムを実現し、社会に貢献していくことが、東芝のデータビジネスのゴールだと考えています」(和田氏)

 「東芝データが目指しているのは、最小限の環境負荷やビジネススピード向上、利益追求のためだけではなく、情報格差を縮小し、共に助け合う共助の社会を実現することです。それに向け、誰もが自由にデータを活用できる環境をつくり、データを独占せずに多彩なパートナーとともに安全・安心なデータ循環型エコシステムを構築していくことが、東芝データの役割です」(白砂氏)

 社会貢献を目指す東芝のデータビジネスへの挑戦は、これからますます進化し続けていくに違いない。

写真:白砂氏と和田氏

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