提供:トヨクモ株式会社

災害対策の本質は平時の備え

真に機能する安否確認
企業社員守る

木佐 彩子
フリーアナウンサー
山本 裕次
トヨクモ株式会社
代表取締役社長
福田 充 教授
日本大学
危機管理学部
写真:木佐氏・山本氏・福田氏
木佐 彩子
フリーアナウンサー
山本 裕次
トヨクモ株式会社
代表取締役社長
福田 充 教授
日本大学
危機管理学部

関東大震災から100年になる2023年。自然災害が頻発する日本では、今後30年以内に70%程度の確率で首都直下型地震が発生すると予測されている。災害時に事業活動を継続し社員の命を守るためには、適切なBCP(事業継続計画)策定や、社員の迅速な安否確認が大きなテーマとなる。不測の事態の発生に備え、何をするべきなのか。日本大学危機管理学部の福田充教授と、安否確認サービス事業を展開するトヨクモ社長/CEO 山本裕次氏の意見を交えながら解説する。(聞き手:フリーアナウンサー 木佐彩子氏)
公開日:2023年9月1日

災害対策の肝は
BCP策定による平時の備えと事業継続

木佐 地震はもちろん、豪雨や台風など、災害は毎年のように発生しています。有事の際に従業員の命を守るため、そして企業活動を継続し経済活動を止めないために、日頃からどう備えるか。関東大震災から100年目に当たるこのタイミングで、改めて考えたいテーマですよね。

福田 私は兵庫県西宮市出身で、1995年に阪神淡路大震災を経験したことで危機管理や災害時の対策について研究を始めました。振り返ってみると、阪神淡路大震災は「日本の災害時におけるネットワーク通信元年」、そして2011年の東日本大震災はBCP策定に対する意識が高まるきっかけだったと言えます。

それまで日本では、堤防を作るなどハード面での対策や、「危機が起きた時にどう対応するか」という事後の対策が重要視されていました。しかし東日本大震災での多大な被害を受け、「日々行われている企業活動を切らさず継続すること」も大事だ、と見直されるようになりました。例えば災害時、電力会社や鉄道会社の企業活動が止まってしまえば、多くの人々の生活がダメージを受けます。なので事前にBCPを策定しておき、それに則って迅速に復旧を行い、企業活動を継続できるようにすることの重要性が広く考えられるようになったのです。

木佐 ただ大災害はまれにしか起こらないだけに、企業としてはどこまで対策しておくべきか悩むことも多いですよね。

写真:木佐氏

木佐 彩子

フリーアナウンサー

東京都出身。米国LAにて幼少期を過ごす。1994年青山学院大学卒業、フジテレビに入社し、「FNNスーパーニュース」「めざましテレビ」等多数の番組を担当。出産を機に退社し再び渡米。2006年に帰国しフリーアナウンサーとして復帰、現在に至る。

福田 そうですね。しかもBCP対策自体は企業に直接的な収益を生むものではありません。そのうえ災害リスクは可視化が難しいため、対策に二の足を踏んでいる経営者も多い印象です。さらに、実行するにはコストやマンパワー不足が課題になります。そのため経済効率性の理由から、上場企業でも本当に十分なBCPを策定できている企業は少ないのが現状です。

危機管理に重要な「7:3の法則」

木佐 では災害時には、企業はどんな対策を取ることが大切なのでしょうか?

福田 まず前提として、様々な危機への対策には「リスクマネジメント」と「クライシスマネジメント」の2つがあることを理解するのが重要です。

「リスクマネジメント」は、危機が“起こる前”に備えておく対策で、「クライシスマネジメント」は危機が“起きた時”に被害を最小化するための対策です。

日本人は「危機管理」と言うとクライシスマネジメントをイメージしてしまうことが多いのですが、事後対応よりも、危機を想定して事前に準備をするほうがはるかに重要です。これを私は「7:3の法則」として提唱しています。事前に危機を想定したリスクマネジメントを7割やっておけば、何か起こった際の事後対応は3割の力で対応できるのです。

木佐 日頃から備えておけば、有事の際にもしっかり対応できるということですね。

福田 そして、危機は多様ですが、危機への対策に必要な機能は実は4つに集約されます。それは「インテリジェンス(情報収集と分析)」「セキュリティ(被害拡大の防止措置)」「ロジスティクス(危機へ対応できる体制調整)」、そして「リスクコミュニケーション(危機に関する情報伝達と合意形成)」です。どんな危機でも、まず初めに情報を収集して分析することが必須です。

写真:福田氏

福田 充 教授

日本大学
危機管理学部

兵庫県西宮市出身。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(政治学)。専門は危機管理学、リスクコミュニケーション、テロ対策、インテリジェンス、災害対策など。内閣官房委員会委員、コロンビア大学戦争と平和研究所客員研究員などを歴任。

山本 おっしゃるとおり、災害時に大切なのは素早く正確に現状を把握することです。それが分かって初めて対策を考えられるようになるのですから。しかも指示が二転三転すると混乱を招くので、正しい情報を伝達し認識できるかどうかが非常に重要になります。

木佐 そこで、従業員の安否を素早く確認できる「安否確認サービス」のような備えが必要になるわけですね。

※クリックすると動画が再生されます

山本 はい。しかし安否確認サービスも、ただ導入すればよいわけではありません。「災害の際、実際に動くかどうか」もぜひ注目していただきたいポイントになります。

安否確認サービスは
「災害時にきちんと動く」ものを

木佐 というと、実際に動かなかった例もあるということでしょうか?いざという時に実は動かないとなると、非常に混乱しますよね。

山本 はい。たとえば東日本大震災の時、システムがつながらない例がありました。それこそが我々トヨクモが安否確認サービス事業を始めようと考えたきっかけだったのです。

写真:山本氏

山本 裕次

トヨクモ株式会社
代表取締役社長

山口県出身。関西大学工学部卒業後、野村證券等を経て2000年にサイボウズ株式会社入社。2010年、サイボウズスタートアップス株式会社(現トヨクモ株式会社)を立ち上げ。2011年12月「安否確認サービス」をリリース。現在は「安否確認サービス2」などビジネス向けクラウドサービスを複数提供している。

木佐 安否確認サービスが動かない、とはどういうことか、詳しく教えていただけますか?

山本 「あけましておめでとうメール」で携帯キャリアのサーバーがダウンしてしまった例を想像していただくと分かりやすいでしょう。安否確認サービスも、災害などの有事の際に大勢の人が一斉にアクセスするため、急激に負荷が集中することになり、システムが安定動作しなくなることがあります。

最も高負荷に耐えられる基準をベースに、自社にてオンプレミスでサーバーを増強してしまうと、平時にはオーバースペックですし維持コストもかさみます。しかしコスト削減を優先しサーバー設備をおろそかにしてしまうと、災害時の回線混乱やサーバーダウンにつながってしまいます。そのためトヨクモでは、クラウドサーバーを使用。災害の時にだけキャパシティを増強し、アクセスが集中しても対応できるようなシステムにしています。

サーバーは、国内で災害が起こった際も対応できるよう国際分散しています。メインサーバーを設置しているのは、災害が少なく、自社調査で最も通信速度を確保できたシンガポールです。そのため、日本が被災しても確実に安否確認をすることが可能です。

福田 なるほど。

山本 また、発生した災害の地域と種類によって、どれだけの方がアクセスしてくるかを把握しています。つまり必要なデータ通信の上限を把握しているのです。ですので、あらかじめサーバーのキャパシティを増強してから安否確認メールの一斉送信を行っています。

トヨクモが災害時に止まらない3つの理由

理由1:クラウドサーバー

理由2:高速配信システム

理由3:一斉訓練の実施で検証

さらにトヨクモでは、有事の時にきちんと動くことを確かめるため、実践に近い形式で「一斉訓練」という取り組みを行っています。「安否確認サービス2」の契約企業全社を対象に、毎年9月1日の「防災の日」に、時刻の予告なしで一斉に安否確認メールを送信。実際に回答していただくというものです。22年には1,248団体、約44万ユーザーの皆さまにご参加いただきました。

トヨクモが一斉訓練を実施する3つの理由

木佐 そうやって災害時に一斉に使われた場合と同じ環境でテストしているのであればユーザーは安心して利用できますね。トヨクモの安否確認サービスを導入している会社には、鉄道会社や病院など災害時の事業継続が必須となる事業者が多いのもうなずけます。

山本 我々の使命は、「災害の時にきちんと動く」にコミットすること。一斉訓練で、確認と検証を繰り返し行うことで、契約者はもちろん、万一トヨクモ側のサービスに不備があった場合も改善へつなげることができます。想定外の使い方をされる方がいらしたり、思いもよらぬボトルネックがあったりしますから、改善点を見つける大切な機会とも捉えています。

また、企業さんによっては回答が集まるまで速いところも遅いところもありますから、全体平均から見た時の回答集約速度も、レポートとしてお渡ししています。自社の安否確認体制を他社と比べる機会はなかなかないので、興味深いデータとなるはずです。

22年からは、「一斉訓練」の際の回答時間や回答速度が優秀な企業を表彰する「Good安否確認賞」もスタートしました。日頃の訓練の重要性や、他社の優れた取り組みを参考にしていただく機会になればと思います。

写真:山本氏

福田 安否確認体制のコンサルティング的な取り組みもしているのですね。訓練をする意義とは、課題を洗い出し、災害の時に取るべき対策をブラッシュアップしていけることにあります。このようにPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回す機会があることは、トヨクモにとっても契約者にとってもよい取り組みだと感じます。

木佐 お話をうかがっていて、私が初めてAED(自動体外式除細動器)を使った時のことを思い出しました。普段一度も使ったことがなかったら、いざという時に倒れている人に使う勇気は出ないな、事前に使ってみてよかった、と感じたんです。安否確認サービスも、平時に実際に使ってみる機会があるのは有意義なことですね。

ただ、企業や団体の中にはITの苦手な方もいると思います。それに災害時は気が動転しているもの。「操作しやすさ」がとても大事になると思うのですが、そのあたりの工夫はされているのでしょうか?

山本 誰でも迷わず素早く操作できるよう、直感的に操作できるインターフェースにも配慮しています。システムが動作しないと意味がないのと同様、誰でも使えるシステムである必要があると考えるためです。

安否確認の自動通知メールはIDやパスワードの入力不要でワンクリックで回答できますし、通知や回答の画面も分かりやすいつくりを目指しました。ITやスマホアプリ操作に慣れていない方でも、マニュアルなしで使っていただけるように努めています。

ユーザーが直感的に利用できるトヨクモの「安否確認サービス2」

トヨクモ「安否確認サービス2」の利用画面

トヨクモ「安否確認サービス2」の利用画面。わかりやすく操作しやすいUIとすることで、災害時の回答や情報集計をスムーズに行えるよう配慮しているという

福田 誰でも簡単に使えることは非常に大事です。老若男女、日本語の分からない方でも使えるユーザビリティを備えたマン=マシーン・インターフェース(タッチパネルや音声認識など、人間と機械が情報をやりとりするための手段)のデザインはどうあるべきかという点は、危機管理において今まさに課題になっているところですから。

企業間で連携し
一斉訓練の「文化」広げたい

木佐 「災害時に動く」ことへのコミットと、日頃の訓練の重要性啓発への強い意気込みを感じます。

山本 安否確認サービスが災害時にきちんと動くことを担保するのは、サービス提供者として当然のこと。余計な混乱を生まないために行うべき社会的責任だと思っています。

ただ、一斉訓練の取り組みは、トヨクモだけが行っても意味がありません。たとえば安否確認メールを送るのは通信会社さんの回線を使っていますから、通信会社さんのサービスが止まってしまえばそこがボトルネックになってしまいます。

ぜひ、安否確認サービスを提供している事業者や通信事業者など様々な企業同士で連携し、一斉訓練を「文化」にしていきたいです。日本を災害に強い国にしていくために、手を取り合っていけたらと考えています。

福田 災害の際に大事なのは「命を守ること」。ユーザーの命を守るために、安否確認システムが実際に動くのかを、現実に近い環境でテストするという取り組みは意義があると感じます。ぜひ様々な企業間で連携していくとよいと思います。

木佐 一生活者としても、日頃の備えと訓練の大切さを実感しました。一斉訓練の取り組みが、文化として広がっていくといいですね。本日はありがとうございました。

写真:山本氏 福田氏 木佐氏

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