組織を越えた共創力を
生み出す方法

渋谷未来デザインが巻き起こす
ソーシャルイノベーション

メイン画像 提供:コミューン

世界でも有数のライフスタイルやカルチャー、ビジネスの多様性を発信し続けている渋谷。未来に向けて世界最先端の実験都市「渋谷区」をつくるべく活動をしているのが、一般社団法人渋谷未来デザインである。渋谷に集まる多様な人々や企業を継続的につなぐために渋谷未来デザインが導入しているコミュニケーションプラットフォーム「commmune(コミューン)」の効果について、渋谷未来デザインの長田新子氏とコミューンの杉山信弘氏が語り合った。

渋谷から
新たなカルチャーを創出し
ソーシャルイノベーションを
促進する

渋谷に集う多様な人々のアイデアや才能を、領域を越えて収集し、ソーシャルイノベーションにより社会的課題の解決策と可能性をデザインする――。こうした目標のもと産官学民の連携組織として2018年に設立されたのが渋谷未来デザインだ。

同法人の理事・事務局長を務める長田新子氏は、その経緯を次のように振り返る。

「渋谷未来デザインはもともと渋谷区が主体となって立ち上げた団体ですが、今や行政の力だけでは街づくりは成り立ちません。多様性が求められる時代の中で、よりクイックにアクションを起こしていくためには、企業や市民の力が不可欠です。そうした参画者のコミュニケーションのハブとなり、新しいカルチャーの創出とイノベーションを促進していくため、あえて行政内ではなく社団法人として設立されました」

長田新子 氏 一般社団法人 渋谷未来デザイン
理事 事務局長
長田新子 氏

イノベーションを指向した渋谷のムーブメントとしては、古くはインターネット黎明期における「ビットバレー構想」が思い出される。米シリコンバレーにならって地域を流れる目黒川を渓谷(バレー)に見立て、ITベンチャーの集積や起業支援を目指したものだ。しかし、当時の取り組みはテック領域に限られていた。

これに対して渋谷未来デザインは、渋谷に集まる多様な個性や価値観によって生み出される「うねり」を取り入れながら、ソーシャルイノベーションの原動力に変えていこうとしていることに大きな進化がある。街づくりそのものがカルチャーであると捉え、その営みにより多くの企業や生活者が主体的に参加し、活動できる「場」となろうとしているのだ。

渋谷未来デザインのコンセプト

このビジョンに賛同し、2年前から会員企業として加わり、渋谷未来デザインと共に活動しているのがコミューンである。

同社 執行役員CMOの杉山信弘氏は、「渋谷未来デザインの取り組みに参加するパートナーは100社を超えていますが、一方で新型コロナウイルス禍をきっかけにリアルな場づくりのみに頼ることができない局面もあり、オンラインも駆使しながら会員間の情報共有や横のつながりをどうつくったらよいのかと模索していました。弊社ならこの課題に応えられると考えたのがきっかけで、参画もさせていただき、合わせてコミュニティー構築のプラットフォーム『commmune』を提供することになりました」と語る。

杉山信弘 氏 コミューン株式会社
執行役員CMO
杉山信弘 氏

多様で多視点な
アイデアと出会える
ソーシャルイノベーションの祭典
「SIW2023」を開催

渋谷未来デザインのもとでは、すでに十数件のプロジェクトが動いている。そうしたプロジェクトの集大成とも言えるのが、23年11月6日から12日までの7日間にわたり開催された「SOCIAL INNOVATION WEEK(SIW) 2023」だ。多彩なアイデアとの出会いを通じて、新たなアクションにつなげていくソーシャルイノベーションの祭典で、渋谷のリアルな多拠点会場とオンラインを並行活用して開催する。

「渋谷では年間を通じてさまざまなイベントが行われていますが、それらの大半がエンタメ系のもので、ソーシャルイノベーションにつながる学びや気づきを得られるものは少なかったのが実情です。例えば、米テキサス州オースティンで毎年開催されている音楽・映画・最先端技術の総合イベント『サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)』では、将来有望な学生やスタートアップから業界のリーディングカンパニーまで幅広い分野の企業が参加し、革新的な技術の発表の場として注目されています。これと同様に渋谷でも多様な人が出会いを通じて学び、新しいアイデアを生み出すイベントを開催できないだろうかと議論を重ねました。18年から始まったのがSIWで、今年で6回目を迎えます」(長田氏)

「今回のSIW2023では新たな知見を広げるセッション、アイデアを交差するブレストやワークショップ、未来への想像をかき立てる体験イベント、国内外の有識者を招いたネットワーキングといった幅広いプログラムが、オフラインとオンラインのハイブリッドで行われます。テクノロジーやソフトウエア開発、マーケティングなど特定分野のイベントとは違って、まったく異なる知見や経験、バックグラウンドを持った人が集まり、これまで知らなかった話を聞いたり、新たなつながりを得たりできるという意味でも非常に興味深く、とても楽しみにしています」(杉山氏)

23年11月6日~12日まで開催されたSOCIAL INNOVATION WEEK 2023 23年11月6日~12日まで開催されたSOCIAL INNOVATION WEEK 2023

「commmune」でカジュアルな
コミュニケーションを促進する

渋谷未来デザインを中心とした上述のような取り組みで鍵を握るのが、100社を超えるパートナー企業およびステークホルダー間の自由闊達なコミュニケーションである。そこで活用されているのが、前述した「commmune」だ。

「オフラインのコミュニケーションは言うまでもなく重要ですが、すべての関係者が一堂に会するためには会場のキャパシティーの問題があり、短い時間内で生み出されるアウトプットにも限界があります。そこで補助としてオンラインも活用し、継続的なコミュニケーションを支えていくタッチポイントが必須となるのです」(杉山氏)

もっともオンラインのコミュニケーションを実現する手段としては、メールやチャット、クラウド型グループウエアなどすでに多くのツールはある。それらのツールではなく、「commmune」を活用するメリットとは何だろうか。

「既存のツールでもコミュニケーションを行うことは可能ですが、その多くはプロジェクト管理など事業目的で使われており、そもそもツールの種別によって企業ごとに利用できるものと、利用できないものがあります。私たちが目指したのは、よりカジュアルなコミュニケーションの促進です。例えば『パスタの美味しい店を見つけました』『来週はこのイベントに参加する予定です』といった気軽なメッセージの発信でも全然かまいません。むしろ、そうしたインフォーマルなコミュニケーションが活性化する中から、多様な人のつながりが生まれます。また、現在の渋谷未来デザインを中心としたコミュニケーションは会員企業間をつなぐB to Bが中心ですが、SIWのようなイベントでは個人ベースの参加者も多いことから、将来的にはB to CやC to Cのコミュニケーションも継続的に支えていく『場』を提供する必要があります」(長田氏)

こうして「commmune」を基盤に採用することで、会員企業とのコミュニケーションチャネルを統合し、情報発信や意見交換を積極的に行うことでプロジェクトのアウトプットを向上させる。また気軽に相談できる環境をつくることで、会員企業同士のつながりや交流を活性化させていくことを目指す。

渋谷未来デザインからのお知らせやイベント情報などを閲覧できる「FDSより」、渋谷未来デザインに参画している会員企業の情報を閲覧できる「参画企業一覧」といったメニューが用意されている。渋谷未来デザインが取りまとめる多種多様なプロジェクトのアップデートも同プラットフォームで日々行われている。今後さらにコンテンツを拡充していく計画だ。

自発的な情報発信を行う
個人がハブとなり
他のメンバーと
連鎖的につながっていく

「会員各社は自発的にコミュニティー内で情報発信を行うようになり、企業の枠を越えたコミュニケーションやコラボレーションが生まれる基盤になりつつあります。あるプロジェクトではオフラインの発表会の場で『commmune』のアンケート機能を活用し、その場で参加者の反応を集めて集計したり、会場で撮った写真をコミュニティーにアップロードしたりすることで、イベント欠席者にも追体験を促した例もあります。同様のコミュニティーの活用法は、今回のSIW2023でも応用できると考えています」(杉山氏)

そして注目すべきが、渋谷未来デザインの「commmune」ならではのカジュアルなコミュニケーションの活性化だ。

「最近、顕著に感じるのがアクティブなメンバーが増えていることです。皆で一緒に何かをやっていきたいという人たちの間で、渋谷未来デザインに対する仲間意識のようなものが芽生え始めているのです。少数のマネージャーやチェアマンが頑張ってその他大勢のメンバーを統率するのではなく、自発的な情報発信を行う個人がハブとなって他のメンバーと連鎖的につながっていくといった、まさに私たちが理想としてきたコミュニケーションの姿に近づきつつあります。もちろんオンラインで活性化したコミュニケーションは、オフラインにも波及していきます」(長田氏)

「commmune」を基盤にして、関係する人や組織を継続的に支えていく「場」を提供している渋谷未来デザイン。その取り組みは、他の自治体関連の組織のみならず、企業におけるファンやユーザーコミュニティー、パートナーや社内向けコミュニティーなどを活性化していく上でも大きなヒントになりそうだ。

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