ネット・ゼロ・カーボン
実現を目指し
森林を核とした
環境ビジネスを推進

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 製紙業を起点にして発展を遂げた王子ホールディングス。創業当時から、森や水、紙のリサイクルで循環型社会の実現に取り組んできた。多くの森林を保有する事業の特性を生かし、2050年に向けて温室効果ガス(GHG)排出量削減や木質由来の新素材開発に挑戦する。

加来正年氏

王子ホールディングス株式会社 代表取締役会長

1956年福岡県生まれ。九州大学工学部卒。78年日本パルプ工業(現王子HD)入社。常務執行役員などを経て2013年に取締役、19年に代表取締役社長に就任し、22年4月から現職

――2021年11月に開催された「第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)」など、脱炭素の動きがますます加速しています。日本企業の潮流をどう見られていますか。

加来 COP26では、世界の気温上昇を1.5度未満に抑えるという努力目標が合意されました。これは企業としても推し進めていくべきだと思います。一方で、日本の状況を見ると、GHG排出量の目標だけが先行し、再生可能エネルギーの開発が追い付いていないなど、課題が多くあります。これらの課題を解決しながら、持続可能な社会を目指していく。取り組まない企業は、成長はもちろん、存続そのものが難しくなるだろうと考えています。
 当社も20年9月に「環境行動目標2030」を策定しましたが、前回作成した10年前とは世の中の注目度が全く違うことを実感しました。特に、投資家の皆さんの注目度が高く、「どれくらいGHG排出量を削減するのか」と質問される機会が増えました。我々は国内では、国に次いで多くの森林を保有しています。周囲からの環境貢献への期待値の高さをひしひしと感じています。

受け継がれてきた環境との共生

――環境への意識は以前から高かったのでしょうか。

加来 我々のスタートは製紙業ですから、事業の始まりに木があります。「木を使うものは木を植える義務がある」という考えをずっと受け継いできました。これは木材原料の調達方針にも明記されています。現在のように環境問題に注目が集まる前から、「森のリサイクル」「水のリサイクル」「紙のリサイクル」を通して資源循環型の社会を構築することを目指してきました。環境問題については、かなり真剣に取り組んできたつもりです。

――環境行動目標の中核として、50年に向けた「ネット・ゼロ・カーボン」を掲げています。

加来 今回掲げた目標のロードマップとしては、GHG排出量を、中間地点の30年度には18年度比で70%削減。そして50年にはネット・ゼロを目指します。現在、石炭を使用するボイラーが国内に16基ありますが、木質バイオマス、水力発電、水素・アンモニア混焼、自家用太陽光など、再生可能エネルギーへの転換を進めていきます。

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 さらに、CO2を吸収する森林面積も拡大します。我々が保有する森林「王子の森」は、国内外で58万ヘクタールあります。このうち、紙の原料となる「生産林」が45万ヘクタール。残りは生物多様性を保護するための「環境保全林」です。例えば、北海道猿払村の山林では絶滅危惧種の「イトウ」、海外ではニュージーランドで希少動物「キウイ」など、多くの生物の保護活動を行っています。木を植えて成長させ、収穫してまた木を植える。持続可能な森林経営を続ける中で、海外植林事業会社で1万4000人ほどの雇用を創出し、現地の医療や教育の支援にも力を入れています。
 森林においては、現在26万ヘクタールの海外の森林を30年までに40万ヘクタールに増やす予定です。コストも時間もかかりますが、これは木を核とする事業を担う我々が取り組むべき使命だと考えています。植林や再生可能エネルギーなどの環境投資に、少なくとも2000億円を投資する予定です。

環境にやさしい新素材を開発

――木材を活用した新素材の開発にも取り組まれています。

加来 紙は再生可能なので、環境にやさしいんですね。その機能を生かして、プラスチック代替の紙素材の開発に取り組んでいます。また、21年10月に植物由来のポリ乳酸を配合した二軸延伸ポリプロピレンフィルムの開発に成功しました。既存のプラスチック製包装材料の代替として、お菓子のパッケージなどに採用される予定です。
 さらに、ポリ乳酸を木材から製造するイノベーションにも挑戦しています。将来的には、木質由来のバイオマスプラスチックを製造し、石油由来のプラスチックからの脱却を目指します。また、21年12月には植物原料由来のセルロースを補強繊維としたマットを開発し、サンプル提供を開始しました。これは当社独自の技術で、このセルロースマットを熱加工することで、プラスチックより変形に強く、割れにくい素材ができます。軽量で強度があるため、将来的には電気自動車の車体や部品への適用を目指しています。我々の技術だけでは難しい部分については、大学や研究所との連携も視野に入れています。木の恵みを受けて、環境にやさしい新しい素材を開発する。これが我々の次なるテーマです。

お問い合わせ
王子ホールディングス株式会社
〒104-0061 東京都中央区銀座4-7-5
URL:https://www.ojiholdings.co.jp/

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