今若ロゴ 「志のバトン」
受け継ぎチャレンジ

三菱重工業・泉澤清次社長

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発電、産業機械、航空宇宙など幅広い分野の製品を手がける三菱重工業。歴史を変える、これまでにないものを数多くつくり、グローバルな社会課題の解決に貢献してきました。脱炭素など気候変動対策が喫緊の課題とされる現代、長年培ってきた技術とものづくりへの情熱でそれをいかに解決すべきか。泉澤清次社長を囲んだ鼎談(ていだん)では、これまでの長い歴史を育んできた伝統の社風から、新たな時代を切り開くためのチャレンジの必要性まで、仕事に取り組む姿勢も含めて熱く語り合いました。

社内外の人や製品をつなげ
課題を解決

泉澤 エネルギーは必要不可欠。安定して、かつ適正価格で、蛇口をひねると水が出るように使いやすく、必要なときに必要なだけ使えることが求められます。例えば電力については、石炭火力発電で排出される二酸化炭素(CO2)をいかに削減するか。液化天然ガス(LNG)を使えば、石炭に比べCO2排出量を65%削減(亜臨界圧⽯炭焚きボイラーのCO2排出量を基準として、当社の最新鋭JAC形ガスタービンを適用した場合の削減量)できます。さらに、水素と併用する、置き換える、さらには排出したCO2を回収するなど、削減にはさまざまなバリエーションがあります。

脱炭素は地域による違いもあります。これからエネルギーをどんどん使おうとする地域と成熟した地域では、違ってきて当然です。それをお客様と相談しながら、地域に応じた技術でソリューションを提供する必要があるのです。

さらには、それをバリューチェーンでつなげる。発電設備・機器だけ、あるいはCO2回収装置だけではだめで、燃料をつくるところから実際につくったエネルギーを使う、回収する、再利用するところまで全体でCO2を減らす。そうしないと全体が下がりません。三菱重工は単に製品をつくってお客様に納めるだけでなく、社内の他の製品や社外の人たちともつなげることで、課題を解決していきたいと考えています。

エネルギーと環境は、これまでずっと社会の重要な要素であり続けてきました。オイルショックだったり、脱炭素だったり、時代によってその課題は違ってはいるものの、いかに持続可能で使えるようにするかがその底流にあります。排出物をどう無害化するか、環境にどう影響を与えないようにするか……これは当社の通底する使命であり、そういった方針は時代を超えても変わっていません。

我々は、歴史的に先々の世の中を見据えた技術開発を行い、また、その時々に直面した様々な課題に対して一生懸命にその解決策を考えてきました。例えば当社では、今のように気候変動対策が注目されるずっと前の1990年には、水素やCO2回収技術の研究を進めていました。それらの一つひとつの取り組みがつながって大きなソリューションになったと言えるでしょう。船や宇宙など輸送も含めて、世の中のインフラを支える。お客様のニーズに製品で応えることを繰り返すうちに、できることが広がっていったというイメージです。このように、お客様に寄り添いながら、様々な問題を解決するという「志のバトン」を受け継いできました。

小川 私個人としても、営業としてお客様の課題を一緒に解決できる人材になりたいという目標を持っていますし、お客様と向き合う姿勢は受け継がれ、社内にとても浸透していると思います。

小川さん 「お客様と向き合う姿勢は受け継がれ、社内に浸透していると思います」(小川さん)

大谷 受け継いで、つないでいきたい。それは日本だけでなく、グローバルにつなげていきたいと思っています。我々が解決しようとしているのは、世界中の問題で、日本だけでなく世界の総力を集めて取り組む必要があります。そのスピリットを社内だけでなく、グループ全体で、さらには他の国にまで広げて、パートナーと一緒になって問題解決に当たっていきたいと考えています。

ネットワークを築き
楽しく、やりがいのある仕事を

小川 入社前は、かっちりしたイメージを持っていました。確かにそれはイメージ通りなのですが、少しずつ変わってきていると感じています。もちろん、ビジネスの性質上、色々とルールや手続きが必要で、いわゆる「重厚長大」な部分はありますが、会社が置かれている環境や社会課題が変化する中、多くの新たなことにチャレンジする雰囲気が醸成されていると感じますね。

大谷 入社していい意味でのギャップを感じたのは、若いうちから大きな仕事を任せてもらえることです。ベテランの社員が多いので、自分が活躍できるのは数年、十数年先かと思っていましたが、入社3~4年目には「やってみないか」と世界最大級のCO2回収プラント設計の主担当を任せてもらえたのです。

泉澤 若手のうちから任せてもらえるのは、私が若手だった時代から変わらない社風だと思いますね。「そんなところまで任せちゃいます?」というところまで任せたり、「失敗したか、これで少しは仕事を覚えたか」という、今の人材育成の仕方からするとどうかなと感じることもありますが、今振り返ると、大きな枠組みの中、ある程度の範囲内で、若手がのびのびと安心感を持って仕事ができていたと思います。これができているのは、皆で目標を共有して業務を進めているからでしょう。

大谷 三菱重工の人間関係は思っていたよりフランクで距離が近い。上司や先輩に相談があればすぐに聞きに行けたりと、気兼ねなく仕事ができています。オフでは、米国留学で覚えたホームパーティーをよく催します。

大谷さん 「社内の人間関係は思っていたよりフランクで、距離が近いです」(大谷さん)

小川 メリハリのある職場です。明るく和やかである半面、真面目なときはものすごく真面目ですね。相談事も非常にしやすい雰囲気で、上司や周りの同僚に恵まれています。

泉澤 同期、先輩、後輩と縦、横、時には斜めにネットワークを築いて、もっと楽しい、やりがいのある仕事ができるようになってほしいですね。

小川 入社当時は発電用設備のアフターサービスがメインで、今は新設の営業を担当しています。新設、つまり発電所をつくる仕事は規模も大きく、社内の技術者を含む大勢の関係者とのチームワークが重要で、やりがいがあります。アフターサービスは一つひとつの案件の規模こそ小さいですが、1人に与えられる役割の幅が広く、より主体的にプロジェクト全体を進めることが求められ、醍醐味があります。社会の抱える課題が変化する中で知識やコミュニケーション力、市場ニーズをつかむ力などを身につけ、営業として力を発揮できるようになりたいと思っています。

大谷 三菱重工は、製品の幅が広く、脱炭素という視点に立つと、様々なコラボレーションが可能になります。船上での脱炭素や硫黄を取り除く脱硫など、どんどん幅が広がる。また規模も大きい。地球環境で考えると、CO2回収は、より多くの量を回収する必要があり、その意味で当社が納める世界最大級の回収能力を持つプラントは強みになります。CO2排出量の削減とCO2回収が進めば、回収量が排出量を上回るときがいつか来る。そうなると、世界のCO2を減らしていくこともできます。自分はエンジニア。エンジニアとして成長するとともに、グローバルな視点を持ったビジネスパーソンに成長したいと思います。

「共生(ともいき)」
分断・多様化の時代だからこそ
つながりを

小川 今、再生可能エネルギーが注目される一方で、電力の安定供給という面ではガスタービンが大きな役割を担っていて、社会インフラとしても欠かせないものです。また、現在、発電用の水素ガスタービンの開発に取り組んでおり、ゆくゆくは100%水素、カーボンゼロでガスタービンを回すことを目指しています。未来の脱炭素社会の実現のためには、技術の開発はもちろん、電力の安定提供に不可欠なニーズを今、満たすことが必要です。私は、現在そして未来のお客様ニーズを見据えて未来の社会にバトンを渡せるよう、お客様とともに走れる営業でありたいと思います。

大谷 私が小さい頃によく話題になっていた酸性雨の問題は、いつの間にか聞かなくなりました。これは、誰かが酸性雨の問題に解決の道筋をつけてくれたから。

過去の先輩方が、その時代のエネルギーと環境の問題を解決してきてくれたように、今課題となっている脱炭素化を「自分が解決する問題」として捉え、自分の世代でカタをつけて、次世代にバトンを渡していきたいです。

泉澤社長 「変革の時代で生きるには、共生(ともいき)という横と縦のつながりが必要です」(泉澤社長)

泉澤 100年に一度の変革の時代、これまでの価値観が揺らいでいます。そういう中でどうやって生きていくか。必要なのは、一つは横のつながり。地域や社会、さらには同じ時代を生きている人たちとのつながりです。そしてもう一つは過去と現在、そして未来といった縦のつながり。この横と縦のつながりを、「共生(ともいき)」と言うそうです。共生と書いて、ともいき。共に生きることがとても大切だと思います。

なぜ分断が起こるのか、それをどう乗り越えたらいいのか。それには違和感を認め合うことが大事です。白か黒かの二項対立ではなく、両方の違いを楽しむ、違いを受け入れて面白がることで違いが乗り越えられるのです。

それは地球環境にも言えることです。再生可能エネルギーもあれば化石燃料もある、原子力だってある。どれか一つではなく、さまざまな組み合わせの中で取り組んでいく。

分断して価値観が多様化しているからこそ、横でつながり、縦で受け取り、引き継いでいく。そのようにして世の中の大きなムーブメントを起こしていくことがとても大切です。そういう意味で、これからの若い人たちに大いに期待しているし、我々も若い人たちにバトンが渡せるよう頑張っていきたいと思います。

座談会出席者

座談会出席者 プロフィル(左から)

大谷 彬人さん(おおたに・あきひと)
三菱重工エンジニアリング 脱炭素事業推進室・入社7年目
学生時代から環境問題に取り組み、大学では化学工学を専攻し、CO2回収について研究。入社後は、横浜にある三菱重工エンジニアリング(※)脱炭素事業推進室に配属され、CO2回収プラントの設計に従事。3月から欧州グループ会社へ出向中。

(※)2023年4月から三菱重工業に統合予定。カーボンニュートラル社会実現に向け体制を強化

小川 真央さん(おがわ・まお)
エナジードメイン エナジートランジション&パワー事業本部 海外営業戦略室 営業第一グループ・入社7年目
海外留学の経験を生かし、入社後は長崎造船所で発電用設備のアフターサービスの海外営業に従事。現在は横浜で水素利用を含めたガスタービン発電用設備を新設する部門の海外営業を担当。新設案件の営業からアフターサービス営業まで幅広く経験。

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