女性特有の不調や疾患
正しく知ってもっと輝く毎日を

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仕事に、家庭に、プライベートに……生き生きとした女性が社会に輝きを与えています。でも女性の心や体の健康への配慮は十分でしょうか。3月1日に開催された「女性の健康週間 丸の内キャリア塾スペシャルセミナー」(主催:日本経済新聞社 メディアビジネス イベント・企画ユニット)では、女性だけでなく、男性にも知ってほしい、女性特有の不調や疾患について専門家の皆さんがわかりやすく解説してくれました。

我慢せず早めに専門医受診

●対談:更年期以降のカラダの痛みや不快を乗り越えるために

女性ライフクリニック銀座・新宿伊勢丹 理事長 対馬 ルリ子先生
女性のための整形外科 かおるこHappyクリニック 院長 伊藤 薫子先生

  • 対馬ルリ子先生 対馬ルリ子先生
  • 対馬 更年期には女性ホルモンの分泌がゆらぎながら急激に低下することで体の不調につながり、閉経後は関節や筋肉、骨などの運動器が弱くなります。現代は老年期が長くなり、整形外科的な問題が増えているのでは。


    伊藤 更年期も老年期も、皆さん痛みを我慢しています。女性ホルモンが少なくなると関節が動きにくくなり指、肩、股関節や膝などが痛くなりますが、関節がすり減って変形してから整形外科を受診しても治療は難しいので、早めの受診をお勧めします。


    対馬 整形外科では女性医師が少ないせいか関節痛について「年ですね」と言われることも多いのですが、女性医師が増えてホルモンへの理解が深まればアドバイスが違ってくるでしょうね。女性の骨折は男性よりも多いですか。

  • 伊藤薫子先生 伊藤薫子先生
  • 伊藤 かなり多いです。骨粗しょう症は70代以上の高齢者のご病気ではありません。閉経後3~5年で最も骨密度が急降下するので、40歳を過ぎたら骨密度を測定して、なるべく運動や食事で“骨貯金”をして骨密度低下を食い止めていただきたいです。そうすればいくつになっても背筋を伸ばして軽やかに歩ける、人生100歳時代を過ごせると思います。


    対馬 ホルモン補充療法(HRT)も骨密度に効果があることがわかっています。当院のデータでは、HRTをしている人は50代、60代でほぼ骨密度が落ちない人も。


    伊藤 入院患者さんで多いのは大腿骨の頸(けい)部骨折と背骨の圧迫骨折です。今は骨密度をこの2つの部分で測定できるので、検査で予防できればと思います。最新の測定器は5分で測れますし、被ばく量は非常に少ないです。


    対馬 検診で体を客観的に見て、HRTも上手に利用しながら、かかりつけ医に相談してみてください。

治療と就労の両立支援を

●講演:女性のライフステージとリプロダクティブヘルス:不妊治療への家族と職場の理解・協力

慶応義塾大学 医学部 産婦人科学教室 専任講師 山田 満稔先生

  • 山田満稔先生 山田満稔先生
  • 体外受精による2021年の出生数は過去最多の6万9797人。11人に1人程度が体外受精で生まれていることからも、少子化に対して有効な治療法だと考えられます。


    不妊症は妊娠を希望する男女が、1年間避妊しないで性交渉を続けても妊娠できない場合と定義されています。不妊治療には、性交渉のタイミングを医師が指導するタイミング療法と、洗浄した精子を細いカテーテルで子宮内に注入する人工授精があります。これらの方法でも妊娠できない場合、日本では体外受精を推奨しています。卵巣表面にある卵胞に穿刺(せんし)して採取した卵子と精子をかけ合わせて受精卵にし、子宮の中へカテーテルで移植する方法です。


    原因不明不妊を対象にした場合、体外受精はタイミング療法と比べて22倍、人工授精と比べて2.4倍出産しやすいことが示されています。しかし卵子の加齢に伴い治療成績は低下。35歳を過ぎると大幅に下がりますが、日本では40歳前後で体外受精を受ける方が多く、諸外国と比べても年齢が高くなるまでなかなか医療機関を受診しない傾向があるようです。


    不妊治療の障壁の1つは、高額な治療費です。22年に生殖医療の一部への保険適用が開始され、多少なりともアクセスしやすくなったと期待されますが、それ以外にも終わりの見えないつらさや、仕事と治療の両立が困難という課題もあります。両立支援には、雇用者側と働く側、両方の働き方改革が重要です。

つらさを許容できる社会に

●Q&Aセッション:女性の健康に関するギモンにお答えします!


女性のための統合ヘルスクリニック イーク表参道 副院長 高尾 美穂先生
丸の内の森レディースクリニック 院長 宋 美玄先生
フリーランスアナウンサー 堀井 美香氏

  • 高尾美穂先生 高尾美穂先生
  • ――30代女性のご質問です。月経前症候群(PMS)の症状がありますが、家族や職場の理解度は低く、日常生活での負担は変わりません。どうしたら理解してもらえるでしょうか。


     症状を男性に伝える時は、より伝わりやすいように生理学的なホルモンの増減のデータを伝えることも大事だと思います。更年期やPMS、生理痛のつらさが義務教育や企業のセミナーなどを通じてもっと社会の常識になれば、個人のつらさも減るのでは。


    堀井 私は47歳ごろからだるい、落ち込むといった更年期の症状がありましたが、「休んではいけない」という思いが先に立ち、現状を把握できないまま過ごしてしまいました。50歳を過ぎてから周りに話すうちに更年期障害だと気づき、ホルモン療法や漢方の治療を始めました。自分の症状をオープンにしたことがプラスに働いたと思います。


    高尾 知ってもらう努力は大事ですよね。近くにいる人だからこそ、言葉にしないと伝わらないことがあります。特にホルモンにまつわる症状は外から見てわかりにくいことが多いので、知ってもらうことを諦めずに続けていくことが大事だと思います。

  • 宋美玄先生 宋美玄先生
  • ――20代女性のご質問です。将来子どもを持ちたいのですが20代・30代のうちにできることはありますか。


     妊娠出産には生物学的な適齢期があります。今日より若い日はないので、早めにライフプランを立てるといいですね。医学的には30代半ばくらいから妊娠しづらくなりますが、今気をつけるべきなのは、子宮や卵巣をチェックすること。がん検診や婦人科全般の検診を受けて、妊娠がまだ先の予定なら低用量ピルなどのホルモン療法で子宮と卵巣を休めて、少しでも妊娠しづらくなることを防ぐこともできます。


    高尾 自分がどんな人生を望んでいるのか、子どもを持つのであれば何歳くらいに、何人くらい、どのくらいの間隔を開けたいのか。女性の妊孕性(にんようせい=妊娠できる能力)にはタイムリミットがあるので、人生設計をどうしていくのか一度立ち止まって考え、本当に子どもが欲しいのか、パートナーがいるのであればなぜ今ではないのかを考えてみるのも大事だと思います。

  • 堀井美香氏 堀井美香氏
  • ――60代男性のご質問です。女性特有の不調を抱えながら働いている同僚・部下に対して、どのような言葉をかけたらよいのでしょうか。


     お声をかける気持ちも大事ですが、理由を言いたくない人もいるかもしれません。60代で責任のある立場にいらっしゃると思うので、誰にでも介護や妊活、体の不調があり、調整が必要な人がいっぱいいることを、セミナーなどを通じて常識にしてもらいたいなと思います。不調があれば仕事を調整して速やかに医療機関にかかれることは今や当たり前。フレキシブルに働きやすい風土を整えるのが一番です。


    高尾 体の不調の相談は、そもそもの関係性がきちんと構築されない限り話せない内容だと知っておいていただきたいですね。男女問わず「体調が悪い」という言葉でまとめて、お互いにカバーできるようなチームワークの構築をお願いしたいと思います。


    堀井 会社員として、私もこういう問題を何度か見てきていますが、男性からはなかなか声をかけづらいと思います。同僚・部下の目の前には直接立たないけれども、社内環境を整えていく役割はあるはず。困っている部下のために、会社の制度を変えていってほしいと思います。

  • 伊藤 直子氏
  • 女性活躍支援サービスで
    働き方改革推進

    日立ソリューションズ 経営戦略統括本部
    チーフエバンジェリスト 兼 人事総務本部 本部員 伊藤 直子氏

    当社はサステナビリティ・トランスフォーメーションを掲げ、働き方改革やEX(従業員体験)向上施策を推進しています。自社での経験とIT(情報技術)を生かし、だれもが、それぞれのかたちで幸せに働き続けられる社会を目指して、「リシテア/女性活躍支援サービス」をはじめ多様なソリューションを提供しています。


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  • 加藤 知子氏
  • 思春期から更年期まで
    医薬品と健康支援アプリでカバー

    富士製薬工業 経営戦略本部 経営企画部
    コーポレートコミュニケーション課 課長 加藤知子 氏

    当社は設立から一貫して主に産婦人科で処方される女性医療用の医薬品を取り扱い、売上高の44%を占めています。2018年には思春期から更年期まで幅広い女性の健康支援を目的とする無料スマートフォンアプリ「LiLuLa(リルラ)」の運用を開始しました。従業員の健康支援のツールの一つとしてご活用ください。


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  • 野々村 琢人 氏
  • 女性の健康に対する
    眠りからのアプローチ

    nishikawa 日本睡眠科学研究所 所長 野々村 琢人 氏

    睡眠には睡眠の質と時間の両方が大事であり、生活習慣と寝室環境、寝具が影響します。良質な寝具を使用することで睡眠の質を改善し、肌質や更年期症状が改善したという調査結果も得られています。当社は多くの寝具売り場に「ねむりの相談所」を設置し、様々なコンサルティングを実施しています。


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日経チャンネル│NIKKEI CHANNEL
にてアーカイブ配信中
配信期限 2025年2月末日まで
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