榎戸 教子氏と巡るURが目指す持続可能なまち〜消滅可能性都市からの転換〜

提供:UR都市機構

1999年に財政破綻の危機が報じられ、2014年には東京23区で唯一「消滅可能性都市」と指摘された豊島区。20年には一転して「自治体SDGsモデル事業」都市に認定され、持続可能なまちづくりで他の都市をリードする存在に。独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)をパートナーにまちづくりを行う豊島区の飛躍を、榎戸教子キャスターがリポートする。

池袋を快適で
安全なまちへ

おふたりに話を聞く榎戸キャスターの写真

キャスター

榎戸 教子

静岡県出身。さくらんぼテレビジョンを皮切りにアナウンサーとして活躍。『日経モーニングプラス』のキャスターを経て、BSテレ東ニュース『日経ニュース プラス9』のメインキャスターを務める。

榎戸 まず2016年のUR都市機構との「池袋駅エリアまちづくりに関する協定書」締結について、その狙いと背景を教えていただけますか。

近藤 豊島区は東京の“副都心”といわれてはいますが、例えば渋谷における東急さんのような開発の核となる大企業がないので、再開発も行政主体で進めざるを得なかったんです。しかし、知識や経験がないので、UR都市機構にお力添えをお願いしました。

榎戸 なるほど。池袋駅エリアの課題としては、東西の分断があったそうですね。

近藤 はい。今年1月17日に、高野豊島区長が「池袋駅東口と西口をつなぐウォーカブルなまちづくり」という記者発表をしました。UR都市機構と進める東口も、三菱地所さんが事業協力者となっている西口も、駅前に大きな歩行者広場を整備し、線路の上にデッキを架けて東西をつなぐということを考えています。

榎戸 協定には、包括的なコーディネートとありますが、具体的にはどのような支援をされているのでしょうか。

林 例えば、駅前の再開発をしたいとなったときに、通常は権利者などで協議会を立ち上げて組合を組成していきます。特にまちづくり上重要な地区では豊島区が自ら協議会の事務局になるケースが多いのですが、私たちは事務局運営の支援という形で区を支えるとともに、時には施行者として事業を推進することもあります。国の政策実施機関として公共団体と近い関係でパートナーシップを結んで、公平性を保つ形でまちづくりを進めていけるということはUR都市機構の大きな強みだと思っています。

上池袋東公園の写真アウルタワーの写真
4つの公園に加え、池袋地域の防災機能を高める防災公園の一つとして2008年に開園した「上池袋東公園」(左)もUR都市機構が整備を手掛けた/東池袋四丁目では、木密地域の解消を目的とする再開発事業として、超高層分譲マンション「アウルタワー」(右)もUR都市機構が施行。池袋は都心における都市再生のリーディングプロジェクトとなった

近藤 東池袋四・五丁目では、造幣局跡地を「イケ・サンパーク」という防災公園として整備していただき、本当に素晴らしい公園ができました。一方でその東側には、木密地域という木造住宅が密集する防災上危険な市街地がありまして、その解消は豊島区としては大きな課題になっています。東池袋五丁目では、一角を木密地域解消のための種地としてUR都市機構に取得していただき、「コンフォール東池袋」という従前居住者用賃貸住宅を建ててもらいました。老朽化した木造住宅からそちらへ引っ越していただくことのできる住宅を用意しつつ、豊島区では都と連携して延焼遮断帯をなす補助81号線を通すといったまちづくりを進めています。こういうことを含めて、UR都市機構にはさまざまな形でコーディネートしていただいています。

林 木密地域の整備は事業が長期にわたり、なかなか利益が出にくいという面では民間が参入しづらい分野でもあります。このような密集市街地整備事業は、豊島区以外でもさまざまな地区で手掛けさせていただいております。

池袋駅の周辺地域を
にぎわいと交流のまちに

地図
池袋駅周辺地域基盤整備方針2018では土地利用の状況やまちづくりの課題などに着目し「2つのエリア」と「2つのコア・ゾーン」を定めた。また、2つのエリアとコア・ゾーンをつなぐ、グリーン大通り~アゼリア通りを「東西都市軸」とし、にぎわいと交流の舞台であり、みどり豊かで美しい街並みを形成する。 ※池袋駅周辺地域基盤整備方針2018で公表された地図を基に広告記事中登場地名などを一部挿入し、作成
イケ・サンパークの芝生広場の写真
イケ・サンパークの芝生広場は、災害時にはヘリポートとして機能するよう耐圧路盤を備える

アート・文化で
魅力アピール

インタビューに答える近藤氏の写真

豊島区 都市整備部 部長

近藤 正仁

榎戸 豊島区として今後の池袋のまちづくりについて、どのような姿を目指していらっしゃるのでしょうか。

近藤 16年には、南池袋公園が野外ステージのある芝生広場に生まれ変わりました。さらに19年には劇場がある池袋西口公園、新たなアニメの聖地といわれている中池袋公園が再整備され、そして20年にイケ・サンパークが完成しました。この4つの公園を核に、池袋のまちを回遊していただくというまちづくりを進めています。

榎戸 なぜ公園だったのでしょう。

近藤 やはり豊島区に開発の核となる企業がなかったからです。15年に「豊島区国際アート・カルチャー都市構想」というコンセプトを打ち出して、消滅可能性都市から“まち全体が舞台の誰もが主役になれる”持続発展都市への転換を目指すことになったのですが、行政が自ら手掛けられるのはどこかと考えたときに、公園だったのです。

林 国際競争力を高めていくことも含めて、まちに人を呼び込むためには大きな開発ばかりではなく、アート・カルチャーなどさまざまな魅力を打ち出していくことが重要だと思います。豊島区は高野区長はじめ、自らが動く意識が高く、区のリーダーシップを常に感じています。前向きな姿勢には、刺激を受けることが多いですね。

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1.周囲の街並みになじむよう配慮された従前居住者用賃貸住宅「コンフォール東池袋」 2.東池袋四・五丁目ではUR都市機構が、まちづくり拠点となる「ひがいけポンド」を開設。公募により決定した運営者により、ワークショップやポップアップストアなどを展開 3.4つの公園を周遊する10輪EV「イケバス」。JR九州「ななつ星」などで知られる水戸岡鋭治氏のデザイン 4.区内最大規模の防災公園「イケ・サンパーク」には、防災テントやバルーン照明などを収納する備蓄倉庫も設置

広がる交通網 
変貌さらに

インタビューに答える林氏の写真

UR都市機構 東日本都市再生本部
事業企画部 担当部長

林 昭兵

榎戸 最後に、「SDGs未来都市としま」への意気込み、展望などをお聞かせください。

近藤 豊島区は22年度に区政90周年を迎えますが、100周年に向けてもこれからまた大きく変わっていきます。24年度末に東池袋に補助81号線が、27年度末に新庁舎脇に環状5の1号線が開通予定です。こうした交通ネットワークの変化もチャンスに、持続可能なまちづくりをどんどん進めていきたいと考えています。

林 交通ネットワークの変化に伴って、今後池袋駅周辺はかつてない大きな変化を遂げます。この瞬間に区のパートナーとして携わっていることに、非常に大きな喜びを感じています。

近藤 いままさに、再開発をしたいという事業者が増えてきているのですが、池袋の変化によって豊島区全体の価値が上がってきていることを実感しています。これからの豊島区に大いに期待してください。

Column

インタビューを受ける川上氏の写真
インタビューを受ける川上氏の写真

官民一体でまちの価値と魅力盛り上げる

サンシャインシティ 常務取締役
まちづくり推進部長

川上 裕信

 現在進行系で、ソフトの部分でエリアマネジメントなど、民間が一体となって盛り上げていこうとベクトルを合わせているところです。区の方々は、土日のイベントにも参加されるなど、顔の見えるお付き合いができているので、区が発信すれば、みんなが何らかの形で応援し一緒になってやろうというベースができています。ウォーカブルなまちづくりにもすごく期待し、共鳴しています。まちの価値と魅力が上がるよう、私たちも一緒に取り組んでいきます。

イケ・サンパークの備蓄倉庫の写真
備蓄倉庫やかまどベンチ、非常用のトイレなど、イケ・サンパーク内の優れた防災機能に榎戸キャスターも感心
笑みを浮かべる榎戸キャスターの写真

Enokido's Eye榎戸キャスターから見たまちづくり

 今回の取材で、「子どもたちの声が聞こえるまちにしたかった」というお話がありました。それはまさに、持続可能なまちづくりだと思います。いまでは消滅可能性都市に指定されたなんて嘘なんじゃないかと感じますが、まちに大きな課題があっても、いまあることを活用してこんなにも変わることができ、みんなが未来志向になれた。みんなで変えていこうという機運を生んだ豊島区の“巻き込み力”こそ、いろんなまちを輝かせていく原動力になるのだと思います。