池袋を快適で
安全なまちへ
榎戸 まず2016年のUR都市機構との「池袋駅エリアまちづくりに関する協定書」締結について、その狙いと背景を教えていただけますか。
近藤 豊島区は東京の“副都心”といわれてはいますが、例えば渋谷における東急さんのような開発の核となる大企業がないので、再開発も行政主体で進めざるを得なかったんです。しかし、知識や経験がないので、UR都市機構にお力添えをお願いしました。
榎戸 なるほど。池袋駅エリアの課題としては、東西の分断があったそうですね。
近藤 はい。今年1月17日に、高野豊島区長が「池袋駅東口と西口をつなぐウォーカブルなまちづくり」という記者発表をしました。UR都市機構と進める東口も、三菱地所さんが事業協力者となっている西口も、駅前に大きな歩行者広場を整備し、線路の上にデッキを架けて東西をつなぐということを考えています。
榎戸 協定には、包括的なコーディネートとありますが、具体的にはどのような支援をされているのでしょうか。
林 例えば、駅前の再開発をしたいとなったときに、通常は権利者などで協議会を立ち上げて組合を組成していきます。特にまちづくり上重要な地区では豊島区が自ら協議会の事務局になるケースが多いのですが、私たちは事務局運営の支援という形で区を支えるとともに、時には施行者として事業を推進することもあります。国の政策実施機関として公共団体と近い関係でパートナーシップを結んで、公平性を保つ形でまちづくりを進めていけるということはUR都市機構の大きな強みだと思っています。
近藤 東池袋四・五丁目では、造幣局跡地を「イケ・サンパーク」という防災公園として整備していただき、本当に素晴らしい公園ができました。一方でその東側には、木密地域という木造住宅が密集する防災上危険な市街地がありまして、その解消は豊島区としては大きな課題になっています。東池袋五丁目では、一角を木密地域解消のための種地としてUR都市機構に取得していただき、「コンフォール東池袋」という従前居住者用賃貸住宅を建ててもらいました。老朽化した木造住宅からそちらへ引っ越していただくことのできる住宅を用意しつつ、豊島区では都と連携して延焼遮断帯をなす補助81号線を通すといったまちづくりを進めています。こういうことを含めて、UR都市機構にはさまざまな形でコーディネートしていただいています。
林 木密地域の整備は事業が長期にわたり、なかなか利益が出にくいという面では民間が参入しづらい分野でもあります。このような密集市街地整備事業は、豊島区以外でもさまざまな地区で手掛けさせていただいております。
アート・文化で
魅力アピール
榎戸 豊島区として今後の池袋のまちづくりについて、どのような姿を目指していらっしゃるのでしょうか。
近藤 16年には、南池袋公園が野外ステージのある芝生広場に生まれ変わりました。さらに19年には劇場がある池袋西口公園、新たなアニメの聖地といわれている中池袋公園が再整備され、そして20年にイケ・サンパークが完成しました。この4つの公園を核に、池袋のまちを回遊していただくというまちづくりを進めています。
榎戸 なぜ公園だったのでしょう。
近藤 やはり豊島区に開発の核となる企業がなかったからです。15年に「豊島区国際アート・カルチャー都市構想」というコンセプトを打ち出して、消滅可能性都市から“まち全体が舞台の誰もが主役になれる”持続発展都市への転換を目指すことになったのですが、行政が自ら手掛けられるのはどこかと考えたときに、公園だったのです。
林 国際競争力を高めていくことも含めて、まちに人を呼び込むためには大きな開発ばかりではなく、アート・カルチャーなどさまざまな魅力を打ち出していくことが重要だと思います。豊島区は高野区長はじめ、自らが動く意識が高く、区のリーダーシップを常に感じています。前向きな姿勢には、刺激を受けることが多いですね。
広がる交通網
変貌さらに
榎戸 最後に、「SDGs未来都市としま」への意気込み、展望などをお聞かせください。
近藤 豊島区は22年度に区政90周年を迎えますが、100周年に向けてもこれからまた大きく変わっていきます。24年度末に東池袋に補助81号線が、27年度末に新庁舎脇に環状5の1号線が開通予定です。こうした交通ネットワークの変化もチャンスに、持続可能なまちづくりをどんどん進めていきたいと考えています。
林 交通ネットワークの変化に伴って、今後池袋駅周辺はかつてない大きな変化を遂げます。この瞬間に区のパートナーとして携わっていることに、非常に大きな喜びを感じています。
近藤 いままさに、再開発をしたいという事業者が増えてきているのですが、池袋の変化によって豊島区全体の価値が上がってきていることを実感しています。これからの豊島区に大いに期待してください。
官民一体でまちの価値と魅力盛り上げる
サンシャインシティ 常務取締役
まちづくり推進部長
川上 裕信氏
現在進行系で、ソフトの部分でエリアマネジメントなど、民間が一体となって盛り上げていこうとベクトルを合わせているところです。区の方々は、土日のイベントにも参加されるなど、顔の見えるお付き合いができているので、区が発信すれば、みんなが何らかの形で応援し一緒になってやろうというベースができています。ウォーカブルなまちづくりにもすごく期待し、共鳴しています。まちの価値と魅力が上がるよう、私たちも一緒に取り組んでいきます。
Enokido's Eye榎戸キャスターから見たまちづくり
今回の取材で、「子どもたちの声が聞こえるまちにしたかった」というお話がありました。それはまさに、持続可能なまちづくりだと思います。いまでは消滅可能性都市に指定されたなんて嘘なんじゃないかと感じますが、まちに大きな課題があっても、いまあることを活用してこんなにも変わることができ、みんなが未来志向になれた。みんなで変えていこうという機運を生んだ豊島区の“巻き込み力”こそ、いろんなまちを輝かせていく原動力になるのだと思います。