知と美が宿る至高のタイムピース
ヴァシュロン・コンスタンタンの美学
世界最古の時計マニュファクチュールであるヴァシュロン・コンスタンタン。
その気品あふれる存在感は、並み居る高級時計ブランドのなかでも別格だ。
最高峰の技と洗練された美意識の結晶。その奥深い魅力に迫る。
ヴァシュロン・コンスタンタンは、創業から266年を経た今まで一度も途切れることなく繁栄を続け、卓越した時計製造メゾンとして現在も高く評価される稀有なマニュファクチュールだ。
1755年、弱冠24歳にして既に熟練の技術を有していた時計職人のジャン=マルク・ヴァシュロンが、スイスのジュネーブに時計製造工房を設立。3代目に引き継がれた後の1819年、実業家の息子であるフランソワ・コンスタンタンとの出会いによって、ヴァシュロン・コンスタンタンは、さらなる飛躍の時代を迎える。その後、長い時計史において不朽の名機と称される数多くのアイコニックなウオッチを生み出すことになる。
高精度で美しい時計は、世界中の王族やセレブリティーたちを瞬く間に魅了した。だが、圧倒的な称賛と熱い支持を受けながらも、決してその地位に甘んじることはなかった。常に厳格な基準を設け、自ら課した高いハードルを乗り越え、先進的なタイムピースを世に送り出し続けてきた。
メゾンが掲げるテーマのひとつに「Classic with a twist」(伝統的でありながら遊び心がある)という言葉がある。創業266年という偉大なるヘリテージを有しながら、時に型破りな発想で、クリエイティビティーに満ちあふれた、より精度が高く、より美しい時計づくりに果敢に挑むヴァシュロン・コンスタンタン。細部までこだわり抜いたタイムピースに、そのエスプリは脈々と受け継がれて随所に息づいている。
タイムピースの制作や装飾、検品まで、一貫して自社で行う真のマニュファクチュール、それがヴァシュロン・コンスタンタンだ。耐久性に優れたクロノメーターや高精度なトゥールビヨンをはじめ、ハンマーがゴングを叩くチャイム音で時を知らせるミニッツリピーター、100年以上も日付の調整が不要なパーペチュアル・カレンダー、それらをいくつも組み合わせて複雑さを究めたハイコンプリケーションまで、すべてジュネーブの工房において職人の手によって生み出される。
卓越性・信頼性・原産地を証明する象徴であるジュネーブ・シールを1901年から取得しており、その紋章の刻印がムーブメントの品質の高さを裏づけている。
メカニカルな面と同様、研ぎ澄まされた美しさにおいても、ヴァシュロン・コンスタンタンは傑出している。その意匠美を支えるのは、熟練の職人たちが会得した、継承すべき伝統的な装飾技法“メティエ・ダール”だ。
特にメゾンを代表する ①ギヨシェ彫り、②エナメル技法、③彫金、④ジェムセッティング(石留め)といった4つの工芸技術は、長年にわたって磨き上げられたテクニックのみならず、鋭く細やかな感性も求められる熟練の職人の手仕事だ。その技の結晶ともいえるメティエ・ダール コレクションと、顧客の要望を叶える唯一無二のユニークなピースであるレ・キャビノティエの傑作の製作風景から、至芸ともいえる作業の様子をクローズアップしてみよう。
今年3月に発表された「“レ・ロワヨーム・アクアティック(水の王国)”レ・キャビノティエ・トゥールビヨン・ジュエリー - タツノオトシゴ -」。イエローゴールドのダイヤルに施されたギヨシェ彫りが繊細なくぼみを生み出し、タツノオトシゴの表情に絶妙な陰影と立体感をもたらしている。まさに4つのメティエ・ダールが結集した力作。
ビスポークの懐中時計「レ・キャビノティエ・ウェストミンスター・ソヌリ -ヨハネス・フェルメールへ敬意を表して-」。バロック期を代表するオランダ人画家、フェルメールによる世紀の名画『真珠の耳飾りの少女』を、エナメル職人のアニタ・ポルシュの手によって“ジュネーブ・エナメル”と呼ばれる細密画の技法で直径98mmのケース上に再現。研究に研究を重ね、約8年という歳月を経て見事に完成させた。
複雑機構が盛り込まれたユニークピース「レ・キャビノティエ・グランド・コンプリケーション・バッカス」。ビュラン(彫刻刀)で凹面に彫り抜いてから研磨するインタリオ(沈み彫り)で描いたブドウの葉と、ルビーによる実があしらわれたミドルケースの装飾は圧巻。熟練のマスターエングレーバーとジェムセッターによる職人技の共演。
ダイヤモンドとサファイアのコントラストが際立つ「レ・キャビノティエ・レギュレーター・パーペチュアルカレンダー ムーンライト・ジュエリー・サファイア」。44個のバゲットカット ダイヤモンドをセットしたベゼルと、サファイアを5分ごとに施したダイヤモンドがきらめくダイヤル、そしてダークブルーのシックな彩りが高貴なハーモニーを奏でる。
この最強タッグの成り立ちは、ヴァシュロン・コンスタンタンが2016年、ルーヴル美術館に所蔵されている、フランス王ルイ15世に献呈されたクロック『天地創造』を修復支援したことが、そもそもの始まりだ。それを契機にして2019年に“美を称え、遺産を保存・維持し、未来へと継承する継続的な取り組み”として特別なパートナーシップが結ばれた。
ルーヴル美術館主催のオンラインオークション『Bid For The Louvre』へ寄付出品された、レ・キャビノティエ部門が手がけた特注のユニークピースをはじめ、多岐にわたる活動が行われている。
なかでも世界の美術愛好家と時計愛好家たちの熱い視線を集めているのが、ルーヴル美術館所蔵の傑作からインスパイアされた時計づくりのプロジェクトだ。美術館のキュレーターが選び抜いた名作を、メゾンが誇るメティエ・ダールの技を駆使し、時計へと生まれ変わらせるという世にも美しき挑戦。
古代文明をテーマとした2022年に発表されたコレクション(写真下)では、まさしく“時を告げる芸術作品”がラインナップ。人類が築いた文化を遺すという共通のミッションと、職人技へのリスペクト、そして美への深い愛が両者を結び付けたといえよう。夢とロマンが凝縮された、文化的かつ芸術的な、このうえなくぜいたくなコラボレーションだ。
ヴァシュロン・コンスタンタンのコレクションのなかでも、世代を超えてタイムレスに愛されているのが、パトリモニー コレクションだ。完璧なラウンドシェイプに緩やかな丸みを帯びた文字盤、1950年代から着想を得た針、そしてスリムなケースと見事に調和したミニマムなデザインは、控えめでいて、余計な装飾を一切必要としない自信と品格を秘めている。オフのカジュアルスタイルやビジネスシーンはもちろんのこと、最高ランクのドレスコードが求められる正装まで、洗練を約束する無敵の正統派ドレスウオッチだ。
創業以来培った時計製造の真髄を余すことなく注ぎ込んだトラディショナル コレクションも、トレンドに左右されない普遍美を放っている。段状のラウンドケースに、レイルウェイミニッツトラックと伸びやかなドーフィン型針が、クラシックかつ力強い現代性をも感じさせ、好バランスのプロポーションを構築。シーンやスタイルを問わず、装いを間違いなく格上げしてくれる1本だ。
トラディショナルのデザインコードを踏襲しながらも、ダイヤモンドのきらめきや、ほのかな光沢を放つマザーオブパール、柔らかなパステルカラー使いなどによって、男性向けとはがらりと違うフェミニンな印象へと昇華させた女性向けのトラディショナル。肌なじみの良いピンクゴールドと、ベゼルに施された54個のラウンドカット・ダイヤモンドの輝き、そしてミシシッピアリゲーターブレスレットのトープ(灰色がかった茶色)カラーが、なんとも麗しいハーモニーを奏でる(写真上・)。
ヴァシュロン・コンスタンタンが女性のために仕立てたエジェリーは、オートクチュールの世界観から着想したコレクション。タペストリー技法によってプリーツ模様が表現されたダイヤルに流麗なローマ数字。1時と2時の間のオフセンターに配された、マザーオブパールの雲間から星と月が瞬くムーンフェイズが、なんともロマンティックな気分へと誘う華のあるタイムピースだ(写真上・)。いずれも工具なしのワンプッシュで、ストラップが交換できるのも女性にとってはうれしい限りだ。
時計選びとは、自分らしさを体現し、生き方を反映するものといっても過言ではない。深い哲学と美学に根ざした信頼できる時計こそ、自分たちの人生を重ね合わせるにふさわしい。ライフビジョンを共有するパートナーとのペアウオッチならば、一生つきあえて、次の世代へも受け継ぐことができる、価値あるタイムピースを選びたいもの。伝統を継承し、進化し続けるヴァシュロン・コンスタンタンの時計は、ふたりをつなぎ、より高める、よき人生の相棒となってくれるに違いない。
※この特集の以下の表記は略号です。
PG(ピンクゴールド)、WG(ホワイトゴールド)、
SS(ステンレススチール)
※掲載商品は、すべて税込価格です。
Photos:©VACHERON CONSTANTIN
Text:Maiko Hamano
Editor:Kaori Takagiwa
ヴァシュロン・コンスタンタン
TEL 0120-63-1755