新たなチャレンジで大きく変わる テレビと広告の近未来

対談 田村淳氏 × 平尾喜昭氏対談 田村淳氏 × 平尾喜昭氏

提供:サイカ

インターネット広告の売り上げが新聞、雑誌、ラジオ、テレビの「マスコミ4媒体」の広告費を上回り、広告業界は大きな転換点を迎えたといわれる。しかし、マスメディアとしてのテレビには膨大な視聴者がいる。その「底力」を発揮させるためにはどのようなアプローチが必要か。タレントでありながら論客としても知られるロンドンブーツ1号2号の田村淳氏と、データサイエンスをバックボーンとし日本初の成果報酬型のテレビCM出稿サービスを展開するサイカの代表取締役CEOの平尾喜昭氏が「テレビと広告の近未来」について語り合った。

自分がやりたいことを
自分の責任でやり切る

田村淳氏
ロンドンブーツ1号2号
田村淳

平尾 田村さんは大学院進学、YouTubeチャンネルの開設、「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」への参画など次々と新しいことにチャレンジしています。その原動力はどこにあるのでしょうか。

田村 原動力は、好奇心しかないですね。興味を持ったことや、やりたいことを自分の責任においてやってきた感じです。小学生の頃から「普通にしてください」と言われることに疑問を感じていて、慣例に捉われるよりも、いいものを残しながら時代に必要ないものはアップデートしていくことにこだわってきました。

 芸人になったのはテレビに出たかったからですが、「芸人のくせにいろいろと何をやっているんだ」と言われるようになったので、10年前に芸人を辞めることにしたんです。

平尾 ファンとして田村さんを見てきて思っていることが3つあります。明示的に「学ぶ」という意欲を示して徹底して学ぶこと、「普通」と戦うという姿勢を常に持っていること、そして自分の「責任」においてやり切るというプロフェッショナルなことです。

田村 自分の責任で始めたんだから最後まで責任をとるというのは常に心がけていますね。

平尾喜昭氏
株式会社サイカ 代表取締役CEO
平尾喜昭

平尾 私がサイカを起業したきっかけもそこにあります。私が中学1年生のときに父が勤めていた会社が倒産したんです。当時の父は課長でしたが、それを知らされたのは発表の30分前。選択肢はありませんでした。それからは映画のような悲しい出来事が続きました。どんどん疲弊していく父の姿も目の当たりにしました。

 そこから「どうしようもない悲しみをなくしたい」と考えるようになり、音楽で人を癒やすためにバンドマンとして音楽活動をしていました。大学で竹中平蔵ゼミに応募するときには「世界的なミュージシャンになるために経済を学びたい」という謎の論文を提出したんです(笑)。

 そこで統計学と出会ったことが人生の転換点になりました。偶然、父が勤めていた会社の倒産がゼミのテーマに取り上げられたのです。データ分析から倒産が予測できたことを知り、「統計学でどうしようもない悲しみをゼロにしよう」と思い、データサイエンスの会社を立ち上げました。父の倒産体験を起点として動き始めた「課題解決」に対して、人生をかけて最後まで責任を取るという思いから起業しました。

視聴率だけの世界に疑問

田村 「サイカ」という会社があることはタクシー広告で知っていました。テレビの広告効果に“可視化”というキーワードがようやく現れたと思いました。

 今のテレビ番組は視聴率がよければ続くというシンプルな構造です。クリエイターの世界で評価されていても、視聴率が悪ければ終わりになります。面白いと判断する人たちが一定数いても関係ありません。それでいいのかと疑問を感じていました。

 ただ、僕個人の力ではどうにもならないので、視聴率をとるために「自分はこういうのが楽しい」という部分とのせめぎ合いをしてきました。それがあまり楽しくなくなってきたので、自分で新しいことをしようとしているのかもしれません。

平尾 当社がテレビをはじめとする広告の効果を測定するサービスを始めたのも、視聴率だけでは本当の効果がわからないからです。領域を絞らずにデータサイエンスで企業を元気にしたいと会社を立ち上げたのですが、始めてみたらクライアントの9割がマーケターだったんです。テレビをはじめ広告に多額のお金をかけているけれども、どれだけ売り上げに結びついたのかがわからないという声が多くありました。

 そこでテレビも含めた広告効果を分析する「MAGELLAN(マゼラン)」というツールを提供するようになりました。現在では、メディアプランニングを最適化する「ADVA PLANNER」、動画クリエイティブを制作する「ADVA CREATOR」、そして日本で初めての成果報酬型のテレビCM出稿サービス「ADVA BUYER」を提供し、「ADVA(アドバ)」というブランド名称でデータサイエンスに基づくアドエージェンシー(広告代理)事業を展開しています。

ADVA(アドバ)
データサイエンスに基づき、マーケティングの戦略策定から施策設計・実行までトータルでサポートする「ADVA(アドバ)」。 https://adva.xica.net/

成功報酬型ビジネスで
広告主に貢献

平尾 当社はテレビだけを評価するのではなく、新聞や交通媒体、雑誌、ラジオ、インターネット広告を全て統合してテレビのROI(投資利益率)を測定するようなサービスをしているのですが、テレビの売り上げに対する影響力はまだまだ大きいんです。グローバルな調査では、20代前半を除く全世代でテレビ広告の影響がインターネット広告を上回っています。

田村 インターネット広告の広告費がテレビ広告を超えたと言われていますが、理由はインターネット広告のほうがターゲットにきちんと届いていて効果が提示できるというロジックがあったからです。それなのに単純に「YouTubeのほうが勢いがある」と思い込んでいるテレビマンも多いです。

 実際はテレビでCMを観て、高い意識を持ってホームページに来て購買する人も多いのに、視聴率が悪いから効果がないと決めつけてしまっているのではないでしょうか。テレビはマスメディアとしてもっと堂々としているべきです。

平尾 まさにその通りです。広告主と向き合っていると、番組の視聴率が低いので広告費は安いけれども大きく売り上げに貢献しているというケースが結構あるんです。ちゃんとデータを分析すれば、もっと単価を上げられると思いますね。

 私たちがADVA(アドバ)というサービスをつくったのは、データサイエンスで分析してテレビの効果を測定するのと同時に、効果や売り上げに関係なくテレビの広告枠を売る従来の広告代理店のビジネスモデルを、売り上げに応じた成果報酬型モデルに変えていこうという狙いがあるんです。

平尾喜昭氏
「従来の広告代理店のビジネスモデルを、売り上げに応じた成果報酬型モデルに変えていこうという狙いがあるんです」

データ分析の力で
テレビを復興させる

田村 手元にあるスマホとテレビをうまく連動させて面白い番組をつくれば、圧倒的にテレビのほうが広告効果があるはずです。双方向でやりとりをしてデータをとれば、クライアントにデータを販売することもできるしもっと効果的なPRもできるでしょう。

 テレビ局の中枢でもそれに気づいている人は多いと思いますが、データを掘り下げて全部明るみにすると困ることになるかもと思ってストップがかけられているような気がしています。

 どこでもそうですが、パンドラの箱を開けようとしても、少数派なのでなかなか前に進まないというジレンマに陥ります。今はそういう状態ですが、データを分析しながら届けるべき相手に広告を届けることにテレビが真摯に向き合えば、状況は大きく変わってくると思いますね。

平尾 データ分析のプロの目からみてもテレビにはまだまだ底力が残っています。売り上げにつながる広告効果の物差しがキチンと示せれば、広告メディアとしてのテレビは復興できますし、もっとお金が使えるクリエイティブな世界がつくれるはずです。

田村 自分の番組で紹介したらこれだけ売り上げが上がりました、というのはお互いがハッピーなことです。そういう番組づくりに参加したいですね。

 今、テレビは過渡期だと思います。そんな時期にデータをきちんと分析し、深掘りしてロジックで説明できる会社が現れたというのは「テレビがあの時代から変わった」と言われるターニングポイントになるかもしれません。クリエイターがのびのびと活動できる舞台をつくるのはデータ分析があってのことです。ぜひ、これからも頑張ってください。応援しています。

平尾 ありがとうございます。

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