成功のカギは人材にあり ─ 移動体通信の進化と歩んだ30年を次の飛躍へ
成功のカギは人材にあり ─ 移動体通信の進化と歩んだ30年を次の飛躍へ
成功のカギは人材にあり ─ 移動体通信の進化と歩んだ30年を次の飛躍へ

提供:アルチザネットワークス

アルチザネットワークスは1990年に設立されたテクノロジーカンパニーだ。移動体通信インフラの構築に欠かせない通信計測器の開発・販売などを手がけ、移動体通信システムが第3世代(3G)から4Gへ、そして5Gへと進化する中で成長・発展を遂げてきた。今日では過去30余年にわたって培ってきた技術力とノウハウを生かしたサービス事業にも力を注いでいるほか、2022年3月にシー・ツー・エム(C2M)社との資本提携を公表するなど、次の飛躍に向けた取り組みを精力的に展開している。同社の代表取締役会長である床次隆志氏と社長の床次直之氏にアルチザネットワークスの事業戦略と人材戦略について話を伺う。

背景
背景

新たな事業で企業としてのステージをアップ

写真:床次 隆志 氏

床次 隆志

株式会社アルチザネットワークス
代表取締役会長兼CEO

まずは、アルチザネットワークスが成長・発展を遂げてきた背景についてお聞かせください。

床次隆志氏(以下、床次会長)当社は1990年の設立以来、移動体通信システムの進化と普及のなかで、一貫して自社開発にこだわり、プリント基板、ハードウエア、ソフトウエアの開発エンジニアを社内に擁し、技術に磨きをかけてきました。それが市場における当社の競争優位につながったと考えています。

設立当時は、有線のデジタル技術であるISDNが普及し始めたころで、多くの企業が通信インフラ関連機器の市場に参入してきました。ところが、通信の主流が無線の移動体通信へと移行し、そのシステムが3Gから4G/LTE、そして5Gへと進化していくにつれて通信インフラ事業を推進する技術的な難度が高まり、多くのプレーヤーが市場から撤退していきました。いまでは、当社と同様のシステムを開発している国内企業は一社もなく、基地局試験機の領域で当社と競合するメーカーも世界で2社しか残っていません。つまり、当社は技術の研鑽によって市場で勝ち残り、まれの存在になったということです。近年の4G/LTEから5Gへの移行において当社が売り上げを大きく伸ばせた理由もそこにあります。

直之社長は、会長から社長を引き継いで3年が経とうとしています。これまでの3年間で注力してきたことは何なのでしょうか。

床次直之氏(以下、床次社長)当社が長く推進してきた事業モデルは、移動体通信インフラの試験機を「開発し、販売する」というものです。このモデルは、例えば、4Gから5Gへと通信システムの世代が切り替わるたびに相当の収益が確実に見込めるという利点がある一方で、通信システムの世代と世代とのはざまで売り上げの減少を余儀なくされるという問題を内包していました。そうしたはざまの落ち込みを新たな事業で底上げできれば、企業としてのステージが一段上がり、経営基盤の安定度も一層高められます。

そうした観点から、さまざまな事業に取り組んできましたが、特に注力してきたのが基地局のテストを請け負う「テストサービス」の事業です。当社の技術力とノウハウ、さらには当社に対するお客さまの信頼を生かして「試験機を開発し、販売する」だけではなく「試験環境や試験機による基地局の評価結果を提供する」というビジネスに手を広げているということです。

写真:床次 直之 氏

床次 直之

株式会社アルチザネットワークス
代表取締役社長執行役員

そのテストサービス事業はアルチザネットワークスの将来にとってどのような意味を持つのでしょうか。

床次会長テストサービス事業に着手したのは、一橋大学大学院の楠木建教授からアドバイスをいただいたことがきっかけです。楠木教授の言葉を借りて言えば、当社の試験機を購入するお客さまが欲しているのは、試験機そのものではなく試験機による基地局のテスト結果です。

試験機をサービスとして利用し、そのテスト結果を得ることができれば、試験機を購入するよりも低コストでその目的が果たせるようになります。加えて、当社のテストサービスを通じて、お客さまが想定していなかったような通信インフラの問題が見つかる可能性も大いにあります。その問題の解決は、当社のさらなるビジネスへとつながっていきます。

堅調な伸びを示すサービス事業

テストサービス事業の推進体制について詳しくお話いただけますか。

床次社長当社では、人材獲得を目的に18年に岩手県滝沢市に「滝沢デベロップメントセンター(TDC)」を開設しましたが、テストサービス事業を本格化させるに当たり、同地に「滝沢テレコムテストセンター(T3C)」を建設しました。T3Cには基地局のテストを行うための「環境」が整備され、5Gネットワーク環境をシミュレートする試験機はもとより、当社のエンジニアが常駐し、試験機のオペレーションのみならず「テストシナリオ」(=顧客が想定する基地局の使用環境に合わせたテストシナリオ)の作成やテスト結果の解析までを担当します。

写真:滝沢事業所 外観

滝沢事業所 外観 写真左の建物がTDC、右がT3C

テストサービスに対する市場の反響はどうでしょうか。

床次会長すこぶる良好で、テストサービス事業は堅調に売り上げを伸ばしています。移動体通信は、高速化と大容量化、さらには、より多くの端末を同時に接続することが常に求められます。そのため、インフラの通信品質を担保する試験機の機能も高度化の一途をたどり、結果として、今日の試験機の価格はかなり高額になっています。そうした高額な機器を購入せずとも目的の試験結果が得られるテストサービスは、お客さまに多くのベネフィットをもたらし、当社の売り上げの底上げにも大きく貢献してくれると確信しています。

C2M社との資本提携で目指すシナジー

22年3月に発表されたC2M社との資本提携についてお聞かせください。

床次会長C2M社は、情報システムとネットワークの保守・運用・監視サービスを中心に手掛けるソリューションプロバイダーです。当社とは以前から協力関係にあり、今回、より大きなシナジー効果を生み出すことを目的に資本提携に至りました。

資本提携による効果はどのようなことでしょうか。

床次社長それは人材の獲得です。実際、C2M社との資本提携によってIT業界で経験を積んだ数十人の優秀な人材が一挙に当社の仲間になりました。これを機に、ネットワーク関連機器や監視サービスの拡販・拡充に積極的に取り組み、グループとしてのトータルバリューを高めていくつもりです。

今後、C2M社以外の会社と資本提携する計画はあるのでしょうか。

床次会長当社では人材の確保・育成についても、製品の開発と同様に「自前主義」を貫いてきました。ただし、ここ数年来、通信インフラの発展に欠かせない一社として、当社に対する市場の期待が大きく膨らんでいます。その期待に速やかに応えていくうえで、資本提携によって組織力を強化するのは合理的な手法です。提携先とのシナジー効果が大きいことが前提となりますが、これからも資本提携を経営戦略の選択肢として位置付けていきます。

写真:対談風景

グローバルな視点で人材の確保・育成に注力

通信インフラ系の開発エンジニアについてはいかがでしょうか。その人的リソースの拡充は、アルチザネットワークスにとって大きなテーマだと想像しますが。

床次社長そのとおりです。例えば、日本における製造のサプライチェーンを見渡すと、海外に生産拠点を置くこと、ないしは海外企業に生産を委託することの不確実性やリスクが高まり、国内回帰の動きが今後、活発になっていくと予想されます。結果として、当社が日本の通信業界に対して果たすべき役割は一層重みを増していくと感じています。当社が、そうした期待に応えていくうえで、エンジニアのさらなる増強は不可欠です。加えてこれからは、グローバル市場での製品/サービスの拡販にも力を注ぎます。ですので、国籍・性別を問わず、開発エンジニア、サポートエンジニアを積極的に採用していくつもりです。

最後に人材育成に対する考え方と取り組みについてお聞かせください。

床次会長国内外の事業展開や人材戦略、そして日本のメーカーとしての危機管理との整合性を高いレベルで保つには「企業文化」と「エンジニアの高いプロ意識」を組織全体に根づかせることが大切です。当社がそれを成しえているのは、社員全員に「フィロソフィ(経営哲学)」を共有してもらっているからです。

また、エンジニアを志す新人に対しては、社内外の技能研修によってスキルアップをバックアップするだけではなく、人間性の向上を強く意識した教育も展開しています。エンジニアとしての技量を磨くだけではなく、人間性を高めてもらうことが、結果的に当社に対する社会的信頼・信用の向上へとつながると考えています。

本日は、貴重なお話をいただきありがとうございます。

アルチザネットワークス

1990年12月に設立されたテクノロジー企業。移動体通信のインフラ構築時に使用される通信計測器をはじめ、通信インフラの保守、運用管理を行うためのネットワーク管理システムや各種通信機器の開発、販売などを手掛ける。NTTドコモ、NEC、富士通、ノキア、といった国内外の移動体通信事業者や基地局メーカーを主要顧客としながら、近年は5G基地局に世界最高レベルの通信負荷をかけられる「DuoSIM-5G」を主力に業績を大きく伸長させている。テストサービス事業にも力を注ぎ、その事業拠点「滝沢テレコムテストセンター」を岩手県滝沢市に構える。22年3月にはシー・ツー・エム(C2M)社をグループ化した。

アルチザネットワークス