小谷 KDDIというと通信事業者というイメージが強いのですが、スマートワークを実現する「コーポレートDX」や、企業のビジネス変革を支援する「ビジネスDX」も展開されているのですね。改めて、KDDIがDXを推進するお客さまに対して展開している具体的な施策をお聞かせください。
桑原 DXの本質である「ビジネス変革」を実現するためには、ステップがあると考えています。
まず「コーポレートDX」では、お客さまの働き方改革の実現やIT資産の運用を効率化する、ゼロトラストソリューションやマネージドソリューションを提供しています。これにより、お客さまがデジタルを活用してビジネス変革へ取り組める環境を作り、リソースを捻出します。
次に、ビジネス変革のご支援では、コンサルティング、データの取得、アプリケーション開発、分析、システム運用を一気通貫で提供します。これらの高い専門性が求められる領域は、グループ会社がそれぞれのパートを専門的に担っています。
22年5月には、KDDI Digital Divergence Holdingsを設立しました。
このホールディングス傘下には、KDDIのアジャイル開発事業を分社化したKDDIアジャイル開発センターをはじめ、クラウドインテグレーション事業のアイレット、クラウドホスティングサービス事業のKDDIウェブコミュニケーションズ、アジャイル開発のコーチングサービスを提供するScrum Inc. Japan、デジタルツインのプラットフォームを提供するフライウィールといった、DX推進に必須のケイパビリティ(能力)を持つスペシャリスト集団5社がいます。1300人超のDX専業体制を構築することで、お客さまのビジネス変革に貢献したいと考えています。
また、ビジネス変革にはデータの起点となる「顧客接点のデジタル化」が必須となるため、コンタクトセンターを運営するKDDIエボルバと三井物産グループのりらいあコミュニケーションズの2社の経営統合により、コンタクトセンターやBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のデジタル化も急ピッチで進めていきます。
今後も、KDDIグループの総力を挙げて、DXを加速させるケイパビリティ拡充に取り組んでまいります。
小谷 お客さまのDXに貢献するための体制強化に意欲的に取り組まれていますね。これらの施策を通じて、KDDIはお客さまにどのような価値を提供できるのでしょうか。
桑原 DXを実現するために必要なケイパビリティを一気通貫で、かつ通信事業者である強みを生かしたリカーリングモデルで継続的に提供し続けることができる、これがKDDIの提供価値です。引き続き、業務効率化による生産性の向上や、ビジネス変革による付加価値の向上に貢献したいと考えています。
小谷 DXは単なるデジタル化ではなく、データを分析してビジネスへ活用することも重要な取り組みになります。データ活用の側面からは、どのような事業を展開していますか。
桑原 データを収集・分析してビジネスに活用する、ビジネスを変革する、それがDXの本質だと思います。
KDDIはスマホやIoT(※1)等の通信デバイス、そこから得られる膨大なデータ、これらを活用するノウハウがあります。例えば、22年5月に三井物産様とのジョイントベンチャーとして創業したGEOTRA(ジオトラ)は、au携帯電話から得られる位置情報を基に匿名化した人流データを生成し、人々の移動手段・時間・目的などを把握・予測するプラットフォーム・分析サービスを開発しました。これにより都市計画や自治体の防災計画が、より精緻に行えるようになりました。
※1 IoT:Internet of Thingsの略称。あらゆるモノがインターネットにつながる技術のこと。
また、23年4月にKDDIグループに参画したフライウィールはビッグデータの活用支援に強みを持っています。独自に開発したデジタルツイン(※2)のプラットフォーム上でお客さまのビジネス活動を再現・シミュレーションすることで、サプライチェーンの在庫量の適正化や通行する人の属性に最適化されたデジタル広告を表示するといった、お客さまのビジネスに新たな価値を提供しています。
※2 デジタルツイン:現実世界のモノや空間をデジタル上で再現する技術のこと。