kyndryl

#3 人事、マーケティング役員インタビュー

「人」こそがこの会社の価値そのもの
だからこそ組織文化の醸成や
人材育成にこだわる

キンドリルジャパン 執行役員 マーケティング担当 村口賢一郎氏(写真左) / キンドリルジャパン 常務執行役員 人事担当 田口雅子氏(写真右)

キンドリルジャパン 執行役員 マーケティング担当 村口賢一郎氏(写真左) / キンドリルジャパン 常務執行役員 人事担当 田口雅子氏(写真右)

IBMからITインフラの構築や管理などを手掛ける部門が分社化し、新たに設立された「キンドリル」。9万人のスタートアップとなった同社は、これから組織文化や人材面でどのような挑戦をするのだろうか。人事担当役員の田口雅子氏とマーケティング担当役員の村口賢一郎氏に話を聞いた。

パイは奪い合わず、増やすもの

ゼロから、
組織をつくり始める

――改めて、キンドリルとはどのような会社なのか。そしてどのように組織づくりを行おうとする会社なのか、お聞かせください。

私たちキンドリルは、2021年9月にIBMから独立した企業です。設立数カ月のスタートアップ企業でありながら、従業員数は9万人という、少し特殊な企業だと思います。IBMではハードウェアやソフトウェアなどの商品がありました。しかしキンドリルはそうではありません。私たちの唯一のアセットは人。人材です。その人材が創り出す価値そのものがこの会社の価値に他なりません。だからこそ、組織文化の醸成、スキル開発にこだわりを持って注力することが大切だと考えます。

キンドリルは「社会成長の生命線」というパーパスを掲げています。その達成のためには、過去とはまた違った成長やカルチャーが必要だと考えています。そのための取り組みが現在大きく3つ、実施されています。
取り組みはそれぞれ、「Un-Learn」「Re-Learn」「Co-Learn」。3つの軸で、変革をはかろうとしています。

キンドリルとして
どうあるべきか。
一人ひとりがアイデアを

――では、取り組みについてひとつずつ教えてください。最初に「Un-Learn」から。

「Un-Learn」は「Learn」の逆、つまり、すでに学び染み込んだ文化や習慣、感覚などを、新しいものへスイッチしていくことを指します。IBMから分社化した会社ではありつつ、会社全体が新たな組織を自らつくっていく「創業メンバー」としての視点とワクワク感を共有したいと考えています。IBMとは業態も提供できるサービスも、根底にある考え方も異なる。急に考え方を変えることは難しいかもしれないけれど、必要なことです。

――「Un-Learn」へ向けてどのような取り組みを行っていますか?

先にも申し上げましたが、私たちは全世界で「The Heart of Progress - 社会成長の生命線」というパーパスを掲げています。これは、企業として利益を追求するだけではなく、社会成長の生命線として、お客様に寄り添い、ともに課題と向き合い、世の中に必要不可欠なシステムをデザイン、構築、運用していく。お客様の成功を支え、その先の社会のイノベーションを加速させていく原動力となることを意味しています。

 このパーパス実現のために、一人ひとり何をしていくべきか、自分ごととして考えてみてもらうことが大切でしょう。そこで出てきたアイデアや声を吸い上げ、全社員の力でキンドリルをつくっていけたらと考えています。

 全世界でアイディアを出すためのディスカッションも行われましたが、私たちはさらに日本法人独自のディスカッションも行いました。また既成の価値観にとどまらないよう、若手社員を中心とした運営体制で行われたものです。そこでは「社会成長の生命線」となるために「自分に何ができるか」と積極的に意見を出してもらっています。自分たちへの内向きな視線ではなく、お客様や社会へ向けた視線の表れた意見をたくさん受け取ることができました。

自ら学び続けられる仕組みを社員のディスカッションで作成された「キンドリル魅力ワードマップ」。お客様、貢献、スキルなどの言葉が頻出した。

自ら学び続けられる
仕組みを

――「Re-Learn」についてはいかがでしょうか。

「Re-Learn」は、人材のスキル開発です。くり返しになりますが、人材こそがキンドリルの価値です。会社として最も重要な取り組みである一方で、スキル開発に特効薬はなく、地道に取り組むべきエリアです。会社として盛り立てるだけではなく、自ら学ぶことを大切にしてもらう姿勢は、「Un-Learn」と近いものがあります。社員が主体的に必要なものを選びとり、学び続けることができる仕組み作りが大切だと考えています。

 具体的には、職種・職位ごとに必須となるスキル項目やスキルレベルを見える化し、ロードマップとして展開しています。そのロードマップを見れば、何を学ぶべきなのかが可視化されているイメージです。一人ひとりが主体的に学ぶとともに、各部署にスキル・フォーカルと呼ばれるリーダーを設置し、人事と一枚岩でスキル開発をサポートしています。

 学びは、1度研修を受けて終わりにするものではなく、ずっと続けていくものです。ですから私たちは、おのおのが必要だと思ったものや興味のあるものについて積極的に好きなタイミングで学べるよう、オンラインで利用できるラーニング・プラットフォームも導入しています。さらには、社内有志やビジネス・パートナー様で構成するコミュニティー活動として、先端技術などに関する「夜学」と呼ばれる勉強会も実施されており、学び合うことによってより深い理解を得ることを期待しています。

ゼロから、組織をつくり始める

パイは奪い合わず、
増やすもの

――最後に「Co-Learn」についてもお願いします。

これは、私たちのビジネスの姿勢とも共通しています。私たちのビジネスは、お客様とともに成長し、社会のインフラとなることを目指しています。自分たちだけが成長するのではなく、手をとり、協力しながら未来へ向かいたい。その姿勢を貫くように、学びに関してもお客様と協力し学びを共有したいと考えています。

もともと労働人口の減少は社会課題となっていますし、IT人材は不足していると言われるのが現在です。そこで人材を奪い合ったり、技術を独占しても社会の成長には寄与できません。協業しながら、社会にとって最適な形へ。人材育成手法を共有したり、スキルを一緒に学ぶことがこれからは重要なのではないでしょうか。

まさにそう。これからはパイを奪い合う時代ではなく、ともにパイそのものを大きくする時代。業界全体、エコシステム全体のスキルアップのために何をしていけるか、一緒に考えていけたらいいと思っています。

村口 賢一郎

プロフィル
キンドリルジャパン
執行役員 マーケティング担当
村口 賢一郎

IBMでコンサルタントとして勤務後、外資系広告代理店、B2B企業のマーケティング担当を経て、GoogleにてB2Cマーケティング担当として、様々なハードウェアの日本立ち上げを統括。21年9月から現職。

キンドリルジャパン 常務執行役員 人事担当 田口 雅子

プロフィル
キンドリルジャパン
常務執行役員 人事担当
田口 雅子

過去10年以上にわたり日本、アメリカ、オーストラリア、シンガポールにて人事、ビジネス部門のリーダーを歴任。2019年、日本IBMインフラストラクチャー部門の HRリーダーを経て、21年9月から現職。