提供:スマートシティ・インスティテュート(SCI-Japan)

EVENT REPORT都市間協力で脱炭素・持続可能な未来へ

スマートシティ関連では世界最大級のイベントである「スマートシティ エキスポ ワールド コングレス(SCEWC)2022」が11月15〜17日の3日間、スペインのバルセロナで開催された。新型コロナ感染症の影響で2020年、21年はオンライン方式を利用した縮小開催となったが、今年はようやくリアルイベントを中心にした開催となった。世界134カ国・地域からの出展企業・団体数は853となり、会場来場者は2万400人、オンライン参加者も2万8600人以上を記録した。各国・各都市や民間企業が、「持続可能で住みやすい街づくり」や「都市空間と都市開発のあるべき姿」などをテーマに事例展示し、多数の講演やディスカッションの場も提供された。

スマートシティ関連では世界最大級のイベントである「スマートシティ エキスポ ワールド コングレス(SCEWC)2022」が11月15〜17日の3日間、スペインのバルセロナで開催された。新型コロナ感染症の影響で2020年、21年はオンライン方式を利用した縮小開催となったが、今年はようやくリアルイベントを中心にした開催となった。世界134カ国・地域からの出展企業・団体数は853となり、会場来場者は2万400人、オンライン参加者も2万8600人以上を記録した。各国・各都市や民間企業が、「持続可能で住みやすい街づくり」や「都市空間と都市開発のあるべき姿」などをテーマに事例展示し、多数の講演やディスカッションの場も提供された。

バルセロナで存在感発揮 NECがささえる世界のスマートシティ一般社団法人スマートシティ・インスティテュート(SCI-Japan)

バルセロナのスマートシティエキスポ 700都市のリーダーが集結

Smart City Expo World Congress

現地の写真

2011年からバルセロナ市新市街の展示会場「Fira Barcelona Gran Via」で毎年11月に開催している世界最大級のスマートシティ関連イベント。スマートシティを推進する世界の都市リーダーと技術・ソリューションを提供する企業、団体などが集結し、展示会と会議(コングレス)を通じて議論する。スマートシティリーダーのダボス会議ともいわれる。12回目となった今年はモビリティー展を併設した。

Smart City Expo World CongressのWebサイトはこちら

今回のSCEWCのテーマは「Cities Inspired by People」だった。人間中心で持続可能なスマートシティの実現を担う都市エコシステムのグローバルリーダーを一堂に集めたイベントへの関心は高く、それぞれ2万人を超えたリアル、オンラインでの来場者数は21年のほぼ50%増で新型コロナ感染症拡大前の水準まで戻った。展示とともに開催されたコングレスでも、「実現可能な技術」「エネルギーと環境」「モビリティー」「ガバナンス」「生活への実装」「経済」「インフラと建設」「安全とセキュリティー」という8つのテーマが設定され、先進的なスマートシティの市長から技術的な専門家まで計400人の登壇者が講演や討論に参加した。

基調講演者の中で注目を集めたのはニューヨーク・マンハッタンの高架跡地の再開発「ハイライン」で知られる建築家のエリザベス・ディラー氏だった。「都市を住みやすく持続可能で、人々を引きつけるものに変えることは、私たちの能力にかかっている」とディラー氏は意気込みを語った。ハイラインがあるマンハッタン西端地域は、1980年代に鉄道が廃線になった後は高架のまま放置されていたという。それが今は500種以上の植物や樹木が植えられた全長1.45マイルの緑地帯として再生された。この公園は官民連携で維持・運営されており、公共スペースと庭園に加えて多彩なアート展示や屋外パフォーマンスも行なわれ無料で鑑賞可能だ。新型コロナの感染拡大前には年間800万人が訪れ、マンハッタンのウエストサイド全体の開発の起点になったともいわれる。

会場の写真
SCEWC展示会場の模様

脱炭素化の施策目立つ

展示会では、多くの欧州の都市・広域自治体が、EUのミッション「Climate Neutral and Smart Cities(気候中立とスマートシティ)」に沿って、カーボンニュートラルに関する施策や都市だけでなく地方も含めた包摂的なデジタル社会の実現に関するビジョンを訴えていた。また、その政策推進を支えるスタートアップや産官学民イノベーション推進組織の出展が目立った。

最大級のブースは、World Smart City Awardを受賞したDigital Seoulを含む韓国と、州単位のブースがまとまったドイツであった。そのほか、スペインからは同国の貿易投資庁、カタルーニャ州、バルセロナ市が巨大なブースを構えた。

会場の写真
グリーン社会、包摂的なデジタル社会の実現ビジョンCatalonia2050を掲げたカタルーニャ州のブース
会場の写真
世界に先駆けて水素走行自動運転を含むレベル4の自動運転バスの設計・製造を行うオーブテック社の出展を中心としたエストニア共和国のブース

都市モビリティーの再考

SCEWCでは、革新的なモビリティーシステムにフォーカスした「Tomorrow Mobility World Congress 2022(TMWC22)」が併設された。様々な技術を活用し、二酸化炭素(CO2)排出を持続的に削減可能な経済構造を実現し、地球温暖化を防止するというのが中核テーマとなった。

また、e-bike、電動スクーター、電動スケートボードなどの個人の移動手段、マイクロモビリティー・ソリューションが紹介された。同時に、ガソリン車から電気自動車(EV)へのシフトに向けて、多くの出展企業がクリーンな充電ソリューションを紹介した。

SCEWCおよびモビリティー展を通じて見えてきたのは、公共交通、マイクロモビリティー、自動走行車、物流におけるラストワンマイル、交通インフラ、未来の交通、そしてエネルギー移行と効率性を中心とした「都市モビリティーの再考」であった。

Interview #01人口80億人時代、都市の変革は不可欠

ウゴ・バレンティ氏の写真
スマートシティエキスポ・ディレクターウゴ・バレンティ

世界人口が80億人に達し、半数以上が都市に住んでいることを考えると、より良い未来のための挑戦は都市のトランスフォーメーションでなければならない。都市を変革し、次世代のためにより良い場所にする共通の目標達成に向け連携が必要だ。700都市のリーダーが集結したスマートシティエキスポの役割も、参加者それぞれが都市を変える人材になれるようにインスパイアすることだ。参加した人が自分の街に戻り、街をより良く変え、さらに住みやすく持続可能なものへと変えていけるようにすることだ。

エキスポで世界の取り組みを知り、学んだものを自分たちの街にどう落とし込んでいくのかを考えてほしい。例えば東京とバルセロナには共通する社会課題があるが、文化や風土には異なる点がある。街づくりをしている我々にとっては、テクノロジーも大切だが、こうした文化や風土を土台とした生活の質をどう保証するかが最重要課題といえる。この課題を解決するには、各都市で取り組むプロジェクトがしっかりと機能しているのか、適切な指標を用いて長期的に検証することも大切だろう。

新型コロナで世界は大打撃を被ったが、だからこそスマートシティへの期待が膨らんだ。エキスポはたった3日間の開催だが、先端エコシステムのほぼ全てを知ることができる貴重な機会になったと思う。

バルセロナの先進性に注目

欧州指折りのスタートアップ集積地

スペイン・カタルーニャ州内には約2000のスタートアップ企業があり、そうした新興企業に勤める従業員の26%は外国籍だという。まさに、国際的なイノベーション勃興地域と言える。

州都であるバルセロナ市は特に、先端技術や環境配慮の視点を取り入れた革新的行政を幅広く提供している。代表例は海外に先駆けてセンサーシステムを活用したIoT(モノのネット化)基盤「Sentilo」の利用だ。市はSentiloとセンサーを利用して騒音や大気汚染、駐車場の利用状況といった様々なデータを把握し状況改善に努めている。例えば街角に設置されたごみ箱にはセンサーが取り付けられ、ごみの量や内部の温度を監視している。データはリアルタイムでSentiloに送られ、ごみ収集ルートや収集時間の改善などに役立てているという。

また、歩行者優先の公共空間を創出する施策「スーパーブロック」プロジェクトも有名だ。自動車中心だった道路空間を歩行者や自転車などに開放していくスーパーブロックには緑地面積を拡大し、大気汚染や交通渋滞を削減する効果もある。2016年にバルセロナで開発された住民参加型合意形成プラットフォーム「デシディム(Decidim)」も関心を集めている。デシディムは投稿や、他の人の意見にコメントや賛同ができる機能を持ち、住民の意見をバルセロナ市政に反映させるツールになっている。ソフトはオープンソースとして公開されており、日本でも利用する自治体が出始めている。

2011年からSCEWCがバルセロナで開催されるようになり、SCEWC参加と各種先端施策の見学を組み合わせて各国・各都市の政策担当者がバルセロナを訪れるようになった。こうした潮流ができあがったことが、先進スマートシティとしてのバルセロナの地位を固めるのに役立ったといえる。

さらに、産官学連携のエコシステムもバルセロナのスマートシティの持続可能な成長を支えている。その代表的な存在が、州と市も参画するi2cat財団やテック・バルセロナといった非営利研究機関で、研究成果は広く社会に還元される。また、インテルと共同で4億ユーロの半導体設計ラボを設立するバルセロナ・スーパーコンピューティング・センター(BSC)や、南欧初の粒子加速器アルバ・シンクロトロン、欧州初のオープン5G研究所などの存在も注目を集めている。

現地の写真
カタルーニャ州工科大学近くのi2catが入居するビル
会場の写真
バルセロナ旧市街の街並みの雰囲気漂うテック・バルセロナの外観
カタルーニャ州政府貿易投資事務所の特集はこちら
マイケル・ドナルドソン氏の写真
バルセロナ市技術イノベーション 電子政府/グッド・ガバナンス コミッショナーマイケル・ドナルドソン

Column #01公共サービスを能動的に提案

新しいデジタル社会においては誰も取り残さないこと、いわゆる「デジタル格差」の解消に目を向けている。これまでは、市民が公共サービスの情報を探し当てるまで、役所はただ待つばかりだったが、今後は行政の側が必要なサービスを必要な人に能動的に届けるようにしていく。それを実現するため、行政が市民一人ひとりの収入、職業、既婚か独身かなどのライフスタイルに関するビッグデータを保有できるよう取り組んでいる。例えば子育て世帯へ新しい教育サービスの情報を能動的に提供するなど、各市民にマッチした公共サービスの提案を行うプロジェクトだ。始まったばかりだが、市民が必要な情報に触れ、より良い暮らしを実現できると期待している。

ただ、課題もある。まず、ビッグデータの質が高くなければならない。また、今後は人工知能(AI)を導入する予定だが、そこで発生するプライバシーや差別といった倫理的問題を検討することが不可欠だ。課題解決のため、市民と行政が議論を重ねる必要がある。スペイン内外に同じような問題を抱える自治体もあるだろう。だから、私たちの取り組みを公開し、失敗も共有しながら、他都市と連携していきたいと思っている。

ロサ・パラデイ氏の写真
i2cat 公共部門 ビジネス開発ディレクターロサ・パラデイ

Column #02一歩先を行く技術を追究して

i2catは最先端技術に特化した調査や開発を行っている非営利団体だ。企業やカタルーニャ州政府、自治体などとビジネス上の課題解決や変革的なソリューション構築を行っている。既に6G通信の研究もスタートするなど、先を見据えた戦略的な取り組みを促進している。田園型先端地域「スマートルーラル」にも注力し、州政府や企業とのパイプ役として、カタルーニャ州にある約900の自治体のデジタル化を進めている。取り組みは、地域ごとに地形や土地柄が異なるカタルーニャ州の特色を生かし、企業などが実際の現場に未導入の技術などをテストする機会としても用いられている。

こうした試みは自治体と企業の双方に利益をもたらす。我々の取り組み全般が技術革新だけではなく、地域での新たな雇用創出やインフラ整備などにも役立ち、生活の質向上にも寄与するからだ。一方で課題もある。エンジニア不足だ。この課題解決のために、幼少期から科学や数学などの教育を手厚くするほか、若手スタートアップへの技術コンペも開催する。コンペで上位3位に入賞した団体には資金を提供する。官民一体となってこうしたスマート化に取り組んでいる。

ミケル・マルティ氏の写真
テック・バルセロナ CEOミケル・マルティ

Column #03成功の鍵はつながりと持続性

新型コロナの感染拡大を機に、街の中心地から過疎地域へ移住した人が増加した。過疎化が問題になっていた中で、街の中心地に住まなくても住みたい場所へ不便を感じずに移住できることが示された。今後はさらに、移住の心理的な壁を低くする施策が必要だろう。よりスムーズに移住でき、移住先でも不自由を感じずに暮らせるようにサポートする仕組みづくりが重要になってくる。

だからこそ、スマート社会の実現に取り組む意義がある。成功の鍵は「コネクト(つながり)」と「サステナビリティー(持続性)」だ。コネクトとは企業と人をつなげ、議論を深め、それぞれのニーズや関心事項を探り、方向性を模索していくことだ。また、移住を一時的なものにしない、サステナブルなものにするために、情報通信技術(ICT)の活用も大切だ。例えばイスラエルで既にスタートしている農業とICTを組み合わせた「アグリテック」や、水資源管理などが参考になる具体例だ。「コネクト」や「サステナビリティ―」に関して、世界の国々や自治体と情報を交換し、技術を学び合うことを期待している。日本は技術先進国の一つなので大変注目している。

海外と日本の都市連携を

SCI-Japan 日本パビリオンを初開設

SCEWCではスマートシティ・インスティテュート(SCI-Japan)がデジタル庁の後援のもと、270平方メートルの大規模ブースを確保し、初めて日本パビリオンを開設した。日本パビリオンでは「オープンイノベーションによる地域Well-Being」をテーマに、SCI-Japan、東京都、京都府・JETRO京都、横浜市が参加。民間企業からもNEC、インターネットイニシアティブ(IIJ)、村田製作所、アビームコンサルティング、ISID(電通国際情報サービス)、インフォ・ラウンジ、国際電気通信基盤技術研究所(ATR)の7社が加わり、計12団体の出展となった。

NECはリアルとバーチャルの双方の空間を活用したプロジェクト「ネクストジェネレーション・スマートシティ」のコンセプトやデータ連携基盤「NEC都市OS」の日本、インド、EU、米国での活用事例を展示した。IIJと村田製作所は、強固なセキュリティー基盤のもとでのIoTデータサービスプラットフォーム事業のサービス内容を共同出展した。

NECの取り組みの詳細はこちら

その他、アビームコンサルティングはデジタルツインなどデジタル技術の活用で、データからアイデアを創造するソリューションサービスを紹介した。ISIDは、地域の脱炭素化をデジタルツインでサポートするスウェーデン Climate View社のクラウドサービス「ClimateOS」を日本向けにカスタマイズして展開することを発表した。インフォ・ラウンジは、自治体向けにオープンデータソリューション基盤とともに、データの質を高めるサービスDatashelfを展示した。

自治体では横浜市が、公民連携により都市課題の解決と市内企業のビジネス機会の創出を目指す海外インフラビジネス推進プラットフォーム「Y-PORT CENTER」のほか、2050年までの脱炭素化を目指す「Zero Carbon Yokohama」の取り組みを紹介した。SCEWCと長く提携関係にある京都府は、JETRO京都を中心に、けいはんな学研都市の国際電気通信基礎技術研究所(ATR)、ATRと同社が支援するスタートアップ企業が共同出展した。

会場の写真

日本パビリオンの中で最大の出展規模だった東京都は、テクノロジーを活用し世界共通の都市課題を克服し、持続可能な新しい価値を生み出すコンセプト「Sustainable High City Tech Tokyo」を打ち出し発表した。「SusHi Tech Tokyo(スシテック東京)」と名付けたこのコンセプトは、コングレスでも発表された。宮坂学副知事は「気候変動の影響で100年後には多くのすしネタが姿を消しおいしいすしが食べられなくなる危機も指摘されている。我々はこれを食い止めねばならない」とユニークなスピーチをして会場を沸かせた。

日本からの視察団 過去最多181人

また、SCI-Japanの視察研修プログラムには自治体、民間企業、大学から129人の会員が参加。出展関係者も含めると181人と過去最大規模になった。日本パビリオンには英国、フィンランド、ベルギーをはじめとする多くの視察団が訪問し、日本と海外都市の協力推進の場となった。スペインのカタルーニャ州からは政府経済担当大臣、対外関係担当大臣などが訪問し、同州と在バルセロナ日本総領事館が連携するプログラム「Japan Plan」の強化を表明した。また、出展社、日本視察団と海外招待客とのネットワーキング・レセプションとして2日間開催された「Japan Night」も盛況だった。

会場の写真
日本パビリオン・ステージで行われた海外招待者とのネットワーキング・レセプションJapan Night
会場の写真
フィンランドとのジョイントセッションの模様

日本政府、多くの自治体参加に期待

SCI-Japan初の日本パビリオンは成功裏に終わった。一方、視察団参加者からの声として、他国のブースに比べて国としてのメッセージの打ち出しが足りないという声が多く聞かれた。実際、World Smart City Awardを受賞したソウル市のほか、他国が巨大なブース装飾とともに強いビジョンを発表していたのと比べると、見劣りが否めなかった。デジタル田園都市国家構想の実装が本格化する来年は、日本政府の参加とともにより多くの自治体の参加が期待される。SCI-Japanの創設メンバーであり、現エグゼクティブ・アドバイザの村林聡・IIJ取締役副社長は「日本も、韓国とデジタルソウルの巨大ブースのように官民挙げての参加が望まれる。SCEWCでは都市間のコミュニケーションが進んできている。都市間の情報共有の輪に入らないと日本は遅れてしまう」と懸念を示した。

会場の写真
けいはんな学研都市のスタートアップ企業が出展した京都ブース
会場の写真
英国使節団による日本パビリオン訪問

Interview #02交流担う人材育成が急務

南雲 岳彦の写真
SCI-Japan 専務理事南雲 岳彦

今回のパビリオン出展は日本の産学官にとって成功でもあり、また今後の飛躍の起点にもなったと思う。本当に有意義な3日間だった。日本からの参加者はコロナでたまっていたものがふつふつと湧き出すように、海外に飛び出して各国のスマートシティの生の情報に触れていた。海外とつながることで私自身も日本を再認識し、我々の取り組みは「捨てたものではない」と希望を感じた。

海外の取り組みに関しては、人工知能(AI)技術の発展がめざましいフィンランドに着目し、製造業の強い日本との相性の良さを感じた。国同士も当然重要だが、一方で今後は、都市間外交の時代を迎える。バルセロナと横浜市が港湾の発展で提携しているように、都市同士は社会課題を共有しやすいため、都市間ネットワークの構築が次なる政策軸となるだろう。小さな自治体や企業でもグローバルに挑戦し、各国の人と交渉をすることが大切だ。そのための人材育成は英語力を含め急務だと感じる。SCI-Japanも挑戦の後押しができるよう貢献しながら、来年も産学官が力を合わせ出展することを目指し、なお一層の発展に努めたい。

SCI-Japanによる「SCEWC視察研修レポート」 詳しくはこちら
柳川 範之氏の写真
スマートシティ・インスティテュート代表理事/東京大学大学院 経済学研究科教授柳川 範之

Proposal #01国内自治体は果敢にアピールを

今回のSCEWCでは単なる技術やデータの活用ではなく、多くの自治体が街づくりを通じて環境問題や人権問題等、多様な課題の解決を目指している姿がかなり鮮明になった。また、その実現のために多様な企業や人を引きつけようとする姿勢も印象的だった。

一方で、日本の自治体の取り組みもそれらに引けを取らないものがかなりあることに気づいたのも今回の大きな収穫だった。課題は、SCEWCのような舞台でいかにアピールするかにある。

国内外の企業や投資家を呼び込み、海外のスタートアップ等とも積極的に連携し、地域の課題を解決する。そういう街を実現する上でも、それぞれの取り組みをしっかり説明してアピールする力が今後一層重要になると感じた。

北村 達也の写真
スマートシティ・インスティテュート理事(事業開発担当)北村 達也

Proposal #02モビリティーとスマートシティの
政策連携を

今回のSCEWCで注目したのは、地域・都市脱炭素化と連携したスマートシティの取り組み事例紹介が多かったことだ。また、MaaSや自動運転バス、電動スケートボードなどの新モビリティーが都市部の交通渋滞解消や大気汚染防止、地域の移動手段向上としての仕組みとしてだけでなく、脱炭素実現に向けた地域・都市経営の包摂的な政策として紹介されていた点も特徴的だった。

日本でもデジタル田園都市国家構想の下、スマートシティが目標とする地域の包摂的なリバビリティー(居住性)とウェルビーイング向上に向けて、地域・都市脱炭素や新モビリティーの政策とスマートシティ政策の連携を図る必要がある。また、その連携に向けては、地域のスタートアップ・エコシステムの形成が欠かせない。

SCEWCでは、地域・都市経営を支えるスタートアップおよびエコシステム機関の出展が目立った。SCEWCは海外の都市で実績のあるスタートアップ発掘の場でもあり、エコシステム機関からその運営手法を学べる場でもある。

次回のSCEWC日本パビリオンおよび視察研修プログラムに多くの自治体・企業・大学・団体から多くの方が参加されることを期待している。

一般社団法人スマートシティ・インスティテュート(SCI-Japan)

日本のスマートシティを推進するナレッジ&産官学民共創プラットフォームとして2019年10月に設立。企業、自治体、大学、国内外の政府関係機関など600を超える会員数を誇る。地域の暮らしやすさや市民の幸福感を測る指標として、Liveable Well-Being City指標を独自に開発。デジタル田園都市国家構想のもと、政府と連携してその普及に取り組んでいる。

お問い合わせ先 SCI-Japan事務局