信託未来プロジェクト ~みんなの未来のために信託ができること~

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「金融教育」ワーキング・グループZ世代が関心を寄せるSDGs、ESG 信託との新しい関係性に着目

大手信託銀行4社の各部署のメンバーが集まった「信託未来プロジェクト」
金融教育、ESG、人的資本経営、少子高齢化の4つのタスクフォース(TF)が動き出している。
各TFはワーキング・グループ会合を重ね、
テーマの深掘りと成果物のイメージを共有するようになった。
その一つ「金融教育」ワーキング・グループの状況をレポートする。

ワーキングレポート ESGに関心の高いZ世代との初コラボで
動画作成にチャレンジ!

金融教育タスクフォースは、2023年1月の初回会合以降、慶應大特任教授の横田浩一氏や、SDGsやキャリア教育に取り組む一般社団法人アンカー、さらには金融庁の金融経済教育担当者を招いてのディスカッションを積み重ねてきた。

これまで各信託銀行はそれぞれ独自に、社会貢献活動の一環としてお金の役割や働くことの意味、経済の仕組みについて若者に伝える金融教育を展開してきた。対象は、小学生から大学生、社会人までさまざまだが、大学については寄付講座を提供する銀行もある。

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4社共同の信託未来プロジェクトでも金融教育というテーマは重要だが、そのターゲットと内容をどうするかについて検討が進められてきた。議論の結果、ターゲットは「信託」という金融機能を理解できる大学生がメイン。金融業界に閉じた内容ではなく、昨今の大学生の関心を踏まえ「社会課題解決における信託の役割」といったSDGs(持続可能な開発目標)、ESG(環境・社会・企業統治)との関係性を重視する案が浮上した。

それを踏まえてTFでは「SDGs×ESG×金融」と題する学生向け金融教育セミナーのたたき台を作成。サステナブルな社会づくりに貢献するために信託銀行が事業を通じて社会課題の解決を図っていること、その解決にあたって幅広い機能をもっているのが信託であることを強調する内容になっている。

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例えば、経団連は2050年の脱炭素に向けて総額400兆円の投資が必要と提言しているが、こうした巨額投資を成立させるためには信託を活用したスキームが必須であり、そのためには官民一体となったグランドデザインの立案が不可欠であることなどが述べられている。

このテキストをもとに、6月には慶應・上智・立教・津田塾大の学生(前記・横田氏が主催する横田ゼミの学生)を集めてデモセミナーを実施した。このセミナーでは、「企業のサステナビリティ活動には関心があるが、SDGsやESGはまだ難しく感じる」「学生には数字よりも、消費者目線に立った日常用語での説明が必要」という学生からの率直な意見も出された。

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7月28日のワーキング・グループ会合では、これまでの活動成果を踏まえ、より鮮明なターゲットの絞り込みと、メッセージを伝えるための方法について議論が進んだ。学生が信託銀行の存在を意識する機会として就職活動がある。そのため、就活生をコア・ターゲットに据えるという意見が出された。従来、信託各社は就活生の関心を惹起し、採用につなげるという点では“ライバル”同士だが、信託未来プロジェクトが企業の枠を越えて信託業界の存在価値を伝えるまたとない機会であることは、メンバーの共通了解になっているようだ。

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また、学生に届く有効なメディアとしてユーチューブなどの動画コンテンツ作成についても活発な議論が交わされた。動画の制作にあたっては社会課題解決に取り組む先進的な学生へのインタビューなどの可能性も取り沙汰された。タスクフォースの今後の作業としては、SDGs・ESGと信託を結び付ける短い啓発動画に加えて、それを補足する資料価値のあるテキストの内容の詰めが課題になる。

インタビュー個社の縛りに捕らわれない自由な発想で
若者にを伝える

Question信託銀行が取り組む金融教育とは?

日下部一般向けに金融リテラシー向上に繋がる発信活動はもとより、広く捉えると信託で扱う商品は、その商品の特性のみならずお客様のポートフォリオ全体に与える影響などを説明することを通じ、自然と金融教育を伴っていると言える。

丸岡人は誰も一人だけで生きていない。個人の活動は必ず社会や企業とつながりをもつ。結果的にどのプレーヤーにとっても重要なSDGs、ESG活動と結びつくものだ。そのつながりをわかりやすく伝えることがプロジェクトとしての金融教育のテーマだと思う。

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三菱UFJ信託銀行
MUFG資産形成研究所 所長日下部朋久

三神金融教育の定義は幅広い。政府の言う金融経済教育もあるし、公教育内での出張授業などの取り組みもある。たとえ信託や金融という言葉がなくても、人々の暮らしの一部に信託の機能が浸透することが理想だ。

山口みずほグループとしても小中学生向けにお金の使い方や大切さを教える授業や大学寄付講座などこれまでも金融教育に取り組んできたが、信託業界として信託の機能についての広報・教育はまだまだ余地があると思う。

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みずほ信託銀行
経営企画部広報室 参事役
山口耕治

Question就活中の大学生をターゲットに据えることになったが、信託についての学生の理解のほどは?

日下部一般の銀行業務に比べると学生にとって信託はあまりにも遠い存在だから、SDGsなどのより身近な関心部分からアプローチしていきたい。

山口信託は金融の中では“黒子”的な役割。こんなところにも信託が使われていて意外と身近なものであることを、こちらから能動的に説明する必要性を痛感した。

三神社会課題に関心をもつ学生も、お金を集める手段として信託という仕組みを使うと、もっと大きなことができるということ、つまり自分の夢を実現するための信託の使い方を伝えていきたい。

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りそな銀行 信託年金企画部
グループリーダー三神俊雄

Question成果物として動画コンテンツも作成することになったが。

日下部4社協働で検討することで、通常の業務の延長線だけではない新しい発見などもあり、そこに学生さんの目線もいれることでより分かりやすいものを提供できるのではと期待している。何でも新しいことに取り組むのは楽しい。

山口せっかく4社集まっているので、個社のルールに捕らわれず、堅苦しくない内容にしたい。

三神各社の知恵が集まっているので、個社で取り組むよりも面白い意見が出ていると思う。同世代から注目を集める学生と協同しての取り組みなど、これまでの発想にはなかった。

日下部信託業界内でもアクチュアリーのような専門家の横のつながりはあったが、このようなつながりは初めて。バックグラウンド、ジャンルが少しずつ違う。共通点と相違点を共に感じる。

インタビュー中の丸岡氏の写真
三井住友信託銀行
三井住友トラスト・資産のミライ研究所 所長丸岡知夫

丸岡各社なりの金融教育の取り組みを共有する会があったが、それぞれの背景、歴史を理解できた。これまでの蓄積をさらにこのプロジェクトで発展させようという試みには大いに刺激を受けている。

山口今後ビジネスの場に戻った時に、このプロジェクトでの人的つながりが、互いに競争しながらも、信託の延いては社会全体の発展のために手を携えるという副次的効果を生むことに期待している。

4人の集合写真。左から三神氏、山口氏、丸岡氏、日下部氏の順で着席し、カメラに向かって微笑んでいる。