信託未来プロジェクト ~みんなの未来のために信託ができること~

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「ESG」ワーキング・グループ人と人をつなぐ信託の機能を活かしてZ世代を支援する

財務諸表では見えない、ESG(環境・社会・ガバナンス)など、
より幅広い情報を考慮した投資手法が広まっている。
「信託未来プロジェクト」のESGワーキング・グループでは、社会課題への関心が強く、
その課題解決に取り組むことが当たり前の価値観にもなりつつあるZ世代に注目。
Z世代が抱くESGへの関心を探りながら、
信託銀行としてその課題解決のための支援をどのように行えるのかを議論している。

ワーキングレポート 社会課題に敏感な
Z世代の生の声を聞く

社会課題の解決において信託銀行が果たす役割は大きい。例えばESG投資は、投資が環境や社会に与える影響について信託銀行が率先して社会の関心を呼び起こし、投資先の持続的な成長と中長期的なリターンの向上の実現を目指していくものだ。しかし、ESGの領域はとても幅広く、カーボンニュートラル、生物多様性、ダイバーシティや人権など、すでにその重要性が広く認識され、取り組みが進んでいる領域だけでなく、これら以外にもさまざまな課題がある。今、信託銀行が事業として進めるESG投資において、本来は取り込むべきESG課題を取りこぼしていないか、どのようにしたらESGに対する社会の関心を更に広めていくことができるのか、という問題意識がESGワーキング・グループのそもそもの関心事であった。

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これまでのワーキング・グループでは、コミュニティスクールなどについて研究する池本修悟・武蔵野大学教授や、循環型ビジネスを実践する中台澄之・株式会社ナカダイ代表取締役の話を聞いた。さらにLGBTQ+、環境問題、SDGs(持続可能な開発目標)教育の領域における学生起業家たちと意見交換の場を持ち、なぜ彼らは社会課題への関心が強く、その課題解決に取り組むことが当たり前の価値観になりつつあるのか、その背景やきっかけなどを聞くことで、ESGの重要性をより多くの方々に認識して頂き、その課題解決に向けた取り組みに貢献していくための糸口を模索してきた。

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7月の会合でも、横田浩一・慶應大特任教授をファシリテーターに、様々な領域でESG課題に取り組むZ世代の学生や起業家が8人集まった。LGBTQ+、教育格差、探究学習、児童虐待と里親制度、ヤングケアラー、食料廃棄、サンゴ礁保全など各人のテーマはさまざま。信託各社から参加した10人のメンバーが分科会のテーブルを周りながら、それぞれの課題についてヒアリングし、より突っ込んだ議論を行った。

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Z世代と呼ばれる若者へアンテナを伸ばし、彼らの行動の源泉にある意識にまで針を垂らそうというのは、若者ほど社会課題に鋭敏で、その関心は未来社会を先取りするものだからでもある。未来プロジェクトというからには、今の大人に見えていない世界を若者と共に可視化することが不可欠なのだ。

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将来世代を担う若者との議論からは、企業とのつき合い方や協業の仕方がわからないという若者の生の声も聞こえてきた。そのような中、信託銀行メンバーとの議論を通して具体的な課題解決の考え方、例えばバックキャスティング(未来の目標を起点として、そこから逆算して目標を実現していくための課題や解決策を検討する考え方)について学びを得る学生もいた。将来にわたる持続可能な社会の実現に向けた取り組みとして、若者の関心と信託銀行の役割を結び付け、実際のアクションにつなげていくことが重要という認識は、学生と信託銀行メンバーの双方で共有されたようだ。

インタビュー「社会的信用」は学生だけでなく、
企業にも求められる

Question今日学生たちとディスカッションをしての率直な感想を。

横山単に情報を発信するだけでなく、実際に行動を起こしている学生のエネルギーに触れた。欧州にはESG領域でZ世代の社会的リーダーも現れているが、日本にも生まれるのではないかという予感も感じた。

山本ヤングケアラー、児童虐待などそれぞれの人生の中でおきた困難に直面しながら、自分だけの問題にせず、同じような悩みを抱えている人たちとつながり、社会的な行動に結びつけている様子には感心し、興奮さえ覚えた。

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三井住友信託銀行
経営企画部サステナビリティ推進部 審議役山本章

鎌田自分のテーマを突き詰めながら、周りを巻き込んでいる。ただ、課題をコミュニティ化するところまではできているが、それをより広い社会課題として解決するまでの力がまだないのが現状だ。ある学生が「学生は社会的信用がないから」と言っていた。そこを支援する道が私たちにはあると思う。

加藤これまでの経験を「自分ごと化」しているのが印象的だった。自分の過去の経験から未来を考えることができている。ただ、逆に将来ありたい姿から今とのギャップを考えていく、バックキャスティングの手法も重要なのでないか。課題解決の方法が複数あれば、Z世代の経験をより活かすことができる。

インタビュー中の加藤氏の写真
三菱UFJ信託銀行
MUFG AM サステナブルインベストメント フェロー
加藤正裕

Questionこれからの信託銀行は若者の課題をどう支援することができるか。

横山学生たちの社会活動や起業と信託の機能を結びつけるためには、まだまだ道のりは遠いというのが実感だ。

山本想いやアイデアをビジネスとして育てることはできると思うが、課題解決のために単に今ある金融商品を提示してそれを使ってくれというのでは限界がある。彼らの関心に寄り添いながら、私たちもオーダーメードの手法を考える必要がある。

加藤企業と学生がつながるためには、学生自体の信用力ということだけでなく、学生にとっての企業の信用力も重要だ。環境・社会に貢献するといくら口でいっても、言行一致が伴わないとZ世代には信用してもらえない。

鎌田信託にはお金を預かる機能だけではなく、人と人をつなぐ機能もある。単に個人に信用を供与するだけでなく、信用してくれる人とつなぐという機能。その意味でできることはたくさんあるはずだ。

インタビュー中の鎌田氏の写真
みずほ信託銀行
投資プロダクツ開発部 参事役鎌田祐

Question信託銀行のこれからの課題は?

加藤「From Z世代」の目線で情報を発信していくというテーマ設定をし、幅広く彼らの抱える関心や課題を聞いてきたが、プロジェクトとしてはあれもこれも全て取り組むのは現実的ではない。本タスクフォースとして何を進めていくことが信託の機能を活かした貢献になるのか、その軸を見つけ出し、幅広い課題への貢献の仕方を絞り込んでいくことが必要だ。

横山信託の受託者として受益者にリターンを返すのが私たちの使命だが、リターンは単なる金銭的なものに留まらず、将来の社会にどう対応していくかも重要。ワーキング・グループで得た経験を活かしてそのニーズを今後もくみ取っていきたい。

インタビュー中の横山氏の写真
りそな銀行 信託財産運用部 インベストマネジメント室
シニアインベストメントマネージャー横山龍人

山本自分が学生の頃からも少子高齢化や国家財政の問題が言われていたが、いまやそれが現実のものになっている。今、Z世代が抱える課題は未来を先取りしている。信託銀行は、次の世代につながる社会的価値の創出が求められる。

鎌田人とお金だけでなく、人と人をつなぐ信託の機能を、ESGという観点でより具体的に考えていきたい。

正面を向いた4人の集合写真。左から加藤氏、山本氏、鎌田氏、横山氏の順で着席している。