信託未来プロジェクト ~みんなの未来のために信託ができること~

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「少子高齢化」ワーキング・グループ高齢者人口の増加を見据え、顧客本位のサービス提供を目指す

高齢者を多く顧客に持つ信託銀行にとって、「少子高齢化」もまた取り組むべき課題の1つだ。
本ワーキング・グループ(WG)では、これまで年齢によって区分されてきた商品の提案ルールに課題認識を持ち、高齢者対応のありたい姿に向けて動き出した。
また、2027年以降に予定されている成年後見制度改正の積極的な情報共有も呼びかけられ、
多角的に少子高齢化の問題と向き合う姿勢が見られた。

ワーキングレポート 年齢だけで判断しない
高齢者対応のあり方を探る

2030年には人口の3割が65歳以上、そのうちの6割が75歳以上になるとされているほど高齢者の割合が増えている日本において、高齢者に寄り添ったサービスはますます重視されるだろう。信託銀行は顧客の資産を預かって管理・運用を行う金融機関であるという特性上、資産額の大きい人や長期にわたって資産を築いてきた高齢者との取引が多く、さらに認知機能が低下する高齢者への対応等、少子高齢化は真正面から向き合うべき課題だ。

高齢者の資産形成、資産管理、資産承継など信託銀行が高齢者に貢献できる多くの領域があるなか、少子高齢化タスクフォースでは、信託銀行として「顧客保護が徹底された上での、お客様が理解しやすい商品選択や商品説明のあり方」「成年後見制度改正に向けての現状理解と柔軟な対応」の2つに注目し、議論を進めている。

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1つめの議論は、金融業界では、一定年齢以上の高齢者には能動的に投資商品を案内することを控える、あるいは購入する場合もご家族の同席を求めるといった慎重な対応を行うなど、業界のガイドラインに対する問題意識に起因していた。一定年齢以上の高齢者でもリスク評価能力が十分な顧客に対して、画一的で煩雑な手続きを強いてしまっている。あるいは、一定年齢未満でもリスク評価能力が低下している顧客には慎重な対応が行われていない可能性がある。こういった実態を取り上げ、今後は柔軟な対応ができる姿に向けて4社でそのあり方を検討してはどうか、という意見が出されたのである。年齢ではなく、リスク評価能力に応じた顧客対応を目指すべきであるとの考えは各社ともに共通していた。

また、昨今、金融商品販売における高齢顧客対応においても、デジタル技術等の活用可能性について検討されている社会的背景も踏まえ、高齢顧客保護の観点で、高齢者の認知機能を客観的に推定する技術の活用の方法について議論し、顧客本位のサービス提供に活かしていく方向で進めることとなった。

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2つめの論点は、2027年以降に見直しが予定されている成年後見制度に関わるものだ。信託銀行の主な商品の1つに、被後見人の資産の管理を信託銀行に任せる「後見制度支援信託」がある。成年後見制度改正によって、制度を利用できる期間や後見人の交代が柔軟になる可能性があるため、各社の信託商品のあり方にも影響が出ると見られている。改正までは期間があるものの、課題を先取りし、信託銀行各社が高齢化問題へ真摯に取り組んでいるという姿勢を見せることに意義があると結論づけた。詳細な制度改正の動向は引き続き注視していくという。

今後のWGでは、有識者を招いて知見を深めていく予定だ。また、4社協業の信託未来プロジェクトの名のもとで高齢化問題を取り上げる機会を増やし、社会課題の解決を推進していきたいとの展望も語った。

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インタビュー高齢者の楽しみを尊重し、
次世代への継承もサポート

Questionこれまでの信託銀行と高齢者の関わりは。

吉野銀行には、2日連続でキャッシュカードを無くしてしまったり、お金を引き出したことを忘れてしまったりする高齢者が来店する。財産を守るため、顧客それぞれの状況に合わせてオーダーメイド型でサポートできるのは信託銀行の強み。

大内体力や判断力の衰えに不安を抱えている高齢者は多い。今後、こういった高齢者の不安に寄り添い、解決策を提示できる金融機関が高齢者に選ばれるのではないか。

インタビュー中の大内氏の写真
三菱UFJ信託銀行
フロンティア戦略企画部 上級調査役大内誠

坪川資産を持っている人を主な顧客とする信託銀行は、いわば高齢者との関係構築におけるトップランナー。我々が率先して高齢化の課題に取り組むことに意義がある。

中村信託銀行は、高齢者の様々な想いに寄り添う、かかりつけ医のような存在。高齢者本人のみならず、次世代を担う家族ともリレーションを築き、末永いサポートが期待されている。

インタビュー中の中村氏の写真
りそな銀行
信託年金サポート部 担当マネージャー中村大地

Question4社協業によって得られた気づきは。

中村このプロジェクトをきっかけに、普段から他社と意見交換をする機会が増えた。より利用してもらいやすい商品・サービスを考えるうえで良い影響を受けている。

坪川社内では高齢者課題に対して十分に取り組んできたという感覚があったが、他社と議論を深めるうちに、これまで気づけなかった視点が得られた。WGのテーマでもあるデジタル技術の活用や、成年後見制度改正の先取りがまさに新しい知見だ。

大内4社で協業するからこそできることを考えることで、視野を広げて金融業界の課題に向き合うことができる。また、自分の意見に対して別の視点から指摘をもらえるため、よりリアリティのある着地点を探れている。

吉野このプロジェクトは、各社で足並みをそろえて協業していこうという意識がかたちになったようなもの。様々な意見を交わすうちに、あらためて信託銀行ができることは多いと認識できた。

インタビュー中の吉野氏の写真
三井住友信託銀行 人生100年応援部 審議役
中央大学 客員研究員吉野誠

Question今後の展望と課題について。

吉野高齢者の幸せを実現できる商品をはじめ、他の金融機関では提供されていない商品が信託銀行にはある。困ったときに信託銀行に来れば答えが見つかることや、明るい未来が描ける選択肢があることを広く伝えていきたい。

大内高齢者が不安に思われることやできなくなってしまったことをサポートするだけでなく、今できていることや残された能力などのポジティブな部分に着目した取り組みを考えていきたい。

インタビュー中の坪川氏の写真
みずほ信託銀行 個人業務部
信託業務開発チーム 調査役坪川和礼

坪川年齢による選択肢の制限を取り払い、楽しみや意向を尊重できるような取引を目指したい。高齢者のサポートは次世代に資産をつなげることでもあるので、日本の未来にとって良い影響を及ぼすだろう。

中村資産を預かるだけでなく、そのサービスを通じて安心を届けられるのが信託の付加価値。本プロジェクトを通じ、信託銀行の取り組みをご理解いただき、より安心感のある社会を実現していきたい。

正面を向いた4人の集合写真。左から吉野氏、大内氏、坪川氏、中村氏が笑みを浮かべて座っている。