NIKKEI 100年の資産形成

今の時代のお金のこと、考えよう

10月4日は証券投資の日

若年世代の金融経済 新常識投資の日 スペシャル座談会

今年4月から高等教育で金融経済教育が拡充され、
つみたてNISA制度の恒久化も検討されているなど、
若年層にもお金の話題は身近なものとなっている。
10(とう)月4(し)日は日本証券業協会が証券投資に
興味・関心をもってもらうために定めた「証券投資の日」である。
そこで、金融教育家の塚本俊太郎さんを聞き手として、
未来を担う世代の代表となる若年層の皆さんに
お金や経済との向き合い方について聞いた。
活躍中の若き企業の代表・講師やアイドルが座談会に参加し、
投資のあり方について語り合った。

PROFILE

  • 塚本さん

    金融教育家塚本 俊太郎さん

    金融教育家塚本 俊太郎さん

    20年以上外資系運用会社に従事したのち、金融庁にて金融教育担当として高校・大学・社会人向けに授業を行う。高校家庭科での金融経済教育指導教材や小学生向け「うんこお金ドリル」の作成を担当した。現在は金融教育家として金融リテラシーや資産形成を進める活動を行っており、発信するSNSも人気。

  • 武藤さん

    AKB48武藤 十夢さん

    AKB48武藤 十夢さん

    女性アイドルグループAKB48のメンバー。アイドル活動の傍ら大学院に進学し経済学を専攻。2019年には気象予報士試験に合格し、気象予報士としても活躍している。21年には2級ファイナンシャル・プランニング技能士に合格し、現在AFP認定者。キャッチフレーズは「逆から読んでもむとうとむ」。

  • 藤原さん

    寺子屋ISHIZUE 代表取締役藤原 柏甫さん

    寺子屋ISHIZUE 代表取締役藤原 柏甫さん

    小学校は東京中華学校で過ごし、中学校は函館ラ・サールをはじめ、転々として過ごす。中学2年生から台湾で一人暮らしをし、中学3年生から高校生までは青山学院中等部・高等部に在籍。台湾にいたときに感じた違和感を基に共同起業し、寺子屋ISHIZUEを創業。2021年10月に法人化し株式会社ISHIZUE代表取締役に就任。

  • 加納さん

    寺子屋ISHIZUE 事業責任者加納 一樹さん

    寺子屋ISHIZUE 事業責任者加納 一樹さん

    中学2年のときに父親の転勤をきっかけに家族でドバイに引っ越し、そこで日本人向けの塾を経営している先生との出会いを通じて教育に対する関心を持つ。高校に入ってからドバイの友人を通じてISHIZUEの存在を知り、国語講師として活動に参加。その後、寺子屋ISHIZUEの事業責任者に就任。

お金の学び、世代問わず

塚本さん
金融教育家塚本

金融庁で小学生向けコンテンツ「うんこお金ドリル」の開発に携わりました。現在は「金融教育家」として、幅広い世代がお金について考える機会を増やしたいと思い、講演などを行っています。藤原さんは、中学生向けのオンライン指導塾「寺子屋ISHIZUE」を立ち上げられたそうですね。

藤原さん
寺子屋ISHIZUE藤原

現在は1年飛び級で米国の大学に通いながら、株式会社ISHIZUEを経営しています。運営する寺子屋ISHIZUEは、学校では教えてくれない今の社会で本当に必要な力を身に付ける塾です。一方的な指導ではなく「対話」を重視したグループディスカッションを取り入れた授業を行っています。

加納さん
寺子屋ISHIZUE加納

高校生が講師を務める塾で、僕自身も高校に通いながら国語の授業を講師として担当しています。中学生のときにISHIZUEとの出合いのきっかけを与えてくれた先生がいて、自分も誰かに「きっかけ」を与えたいと思い、寺子屋ISHIZUEの事業責任者となり活動をしています。

イメージ
寺子屋ISHIZUEでは高校生が講師となりオンライン授業を行っている。
塚本さん
塚本

普段授業をしている中で、生徒の中学生はどのようなことに関心を持っていると感じられますか。

加納さん
加納

自分の日々の暮らしと関連の深い物事に興味を持っている印象です。例えば国語の授業で、「同じ本が書店で3000円で販売しているときと、ネット通販で2500円で売っているとき、どちらを買いたいか?」をテーマにディベート形式で議論してもらったことがあります。生徒の中には、たとえネットと比べて値段が高くても、書店に足を運んで様々な本に出合い、その上で選んだ本を買いたいという子もいました。このテーマは、特に日常的に本や漫画を読む生徒にとっては身近で興味深かったようで様々な意見が出て授業が盛り上がりました。そこから支払いは提供されるサービスへの対価だ、という話につながっていきました。

塚本さん
塚本

国語の授業の中で、お金や経済に関する話題も取り上げているのですね。生徒の中学生と講師の高校生では、お金に対する価値観の違いはあるのでしょうか。

加納さん
加納

アルバイトの経験があると、お金が自分の手元にくるまでやお金を使ったあとの流れを考えるようになる気がします。僕自身はお金の流れを感じることで自分が経済を回している実感が生まれ、積極的にお金を使って経済を回していきたいと思うようになりました。

武藤さん
AKB48武藤

私が中高生のときに、お金について学校の授業でとりあげる機会はほとんどなかったように思います。同世代のほかの生徒とのグループディスカッションなどで様々な意見に触れられると、自分が気が付かなかったような視点や考え方に出合う可能性を広げてくれそうですね。

塚本さん
塚本

武藤さんはAKB48として活動しながら、ファイナンシャルプランナー(以下FP)の資格を取得されたそうですね。

武藤さん
武藤

幅広いお金の知識を得られて生活にも役立ちそうだと思い、FP2級の資格を取りました。もともと大学院で経済を学んでいたり、投資についての連載をしたりとお金について知る機会はありましたが、FPの資格取得に向けて勉強をしたことで実際に家計を見直すきっかけになり、改めてお金や経済を考えられるようになりお仕事の幅もぐっと広がりました。

企業にも通じる「推し」の意識

塚本さん
塚本

学校教育でいうと、近年、中学校・高校においても金融経済教育に関する内容が拡充された新しい学習指導要領に基づく授業が始まっています。金融経済教育では柱となるのは「家計管理」「ライフプランニング」「資産形成」「外部知見の活用」の4つです。毎月の収支を「見える化」して整理し、将来自分や家族にかかるであろうお金のことを知って自らの資産を築く必要性を学びます。難しい分野になるので、FPや金融機関に相談するなど外部知見を活用することも知っておきたいですね。

藤原さん
藤原

学びの観点では、僕は起業する際わからないことばかりでしたが、疑問に思ったことはまず自分で調べてみて、それでもわからないことがあれば無料の弁護士相談を活用するなど、人に聞くということを心掛けていました。わからないことを、わかる人から教えてもらうという姿勢は大切だと思っています。

塚本さんに聞く大人も必要な
4つの金融知識
お金との関わりを避けられない現代社会において「生活スキルとして最低限身に付けるべき金融リテラシー」を、金融庁が4つに大別し示した。学校教育だけでなく、各世代に応じた知識や判断力が求められる。
イメージ図
塚本さん
塚本

起業してお金に対する考え方は変わりましたか。

藤原さん
藤原

僕は起業してから、お金を融資してもらうことや赤字を表す数字データが必ずしも全てマイナスのものではないと感じています。つまり、一時的にマイナスを示す数字となったとしても、長期的な視点でみると事業が拡大するための投資の結果であったり、皆のスキルを伸ばしてくれたりする可能性もあるので、手元にあるお金を短期的に増やすことばかりが投資ではないのだと実感するようになりました。

塚本さん
塚本

自己投資という言葉もありますが、自分自身に投資をして自身が稼ぐ力を高めることや、スキルを身に付けることも重要ですよね。

藤原さん
藤原

企業経営の視点では、企業に投資をしてくれる投資家だけでなく、お金を払ってくれる人、僕たちの場合は生徒の保護者全員が「株主」だと考えています。塾の生徒が増えると会社の成長につながり、規模を大きくでき、さらに多くの人にサービスを提供できます。結果、多くの生徒が塾を通じて、自分なりの変化や視点を見つけられるようになるでしょう。お金を使うことは、未来への変化の力を生み出すことにつながるのだと信じています。だからこそ、ユーザーや消費者としてお金を支払う先である企業の理念は知っておくべきですよね。

武藤さん
武藤

好きなアイドルを応援することを「推す」と表現しますが、誰を推すか、ということはアイドルだけでなく企業にも通じる考え方かもしれません。アイドルとしてのダンスや歌唱のパフォーマンスが好きだからと応援してくださる方もいれば、人柄や性格が好きだと応援してくださる方もいます。消費者として製品やサービスを選ぶときや投資家として企業を見るときも、自分が推す企業を選ぶほうが関わる楽しさがありますよね。私もESG投資で投資先になるような、環境や社会に配慮している企業だと応援したくなります。

家庭での会話から金融教育を

塚本さん
塚本

岸田政権下で「資産所得倍増計画」が掲げられたことからも、経済や資産形成の話題に触れる機会は増えていくと予想されます。そんな中で、未来を担う世代の皆さんはどのようにお金と向き合おうと考えていますか。

武藤さん
武藤

お金の話はAKB48のメンバーともよくします。とくにNISAの話題が多いですね。みんな興味は持っているようなのですが、お金や数字への苦手意識もありなかなか一歩目を踏み出せないみたいなんです。私はいつも「まずやってみたほうがいいよ」と伝えるようにしています。間違った選択をしないための「知識」はもちろん必要ですが、知識だけではカバーできない部分を補う「経験」も、お金と向き合う上で欠かせません。とにかく始めてみることを大切にしていきたいです。

藤原さん
藤原

僕は、家族との会話を通じてお金や経済のことを一緒に考えることが重要だと考えます。教育と聞くと学校の先生に教えてもらう、というイメージがありますが、それだけではないはずです。例えば「スーパーの食品はどうして値上がりしたと思う?」など、身の回りの出来事からお金や経済に関する疑問や発見があるかもしれません。お金は難しいテーマではなく、家庭内の日常的なテーマとして広がっていくべきだと思います。

Q&A

プロに聞いてみようお金の疑問

  • Question資産形成を行う上で
    大切なことはなんですか?
    武藤さん
    近河氏
    Answer

    みずほフィナンシャルグループ 執行理事 個人業務部長近河 克明

    「まずは投資すること、そして継続すること」です。投資で成功する王道は、“長期・分散・継続”。とはいえ「値下がりが怖い」という声もあります。明日どうなるかは誰にもわかりません。だからこそ“Time, Not Timing”。投資は“タイミング”ではなく、“時間”。特に積み立て投資は資産形成に適した手法です。一時的な値下がりは長期的には資産拡大につながります。重要なのは大局的な視点を持ち、将来を見据え、若いうちからコツコツと投資し続けることです。

  • QuestionつみたてNISAでは現在
    どんな金融商品を選べるの?
    藤原さん
    栗生氏
    Answer

    三井住友トラスト・アセットマネジメント 営業企画部長 兼 金融リテラシー推進室長栗生 英之

    つみたてNISAでは長期の積み立て・分散投資に適した法令上の要件を満たす株式投資信託やETF(上場投資信託)が対象で、投資初心者の方でも投資を始めやすいよう、わかりやすく低コストな商品を選ぶことができます。三井住友トラスト・アセットマネジメントが運用している投資信託では、国内外の株価指数に連動して投資成果を目指すMy SMTシリーズや世界経済の成長に着目した世界経済インデックスファンドなどがつみたてNISA対象ファンドとなっています。

  • Question金融や経済について学ぶべき
    世代ってあるの?
    武藤さん
    東氏
    Answer

    野村ホールディングス ファイナンシャル・ウェルビーイング室長東 英憲

    野村證券では、1990年代から20年以上にわたり小・中学生から社会人、シニア層まで幅広い世代を対象に金融経済教育を提供しています。特に2001年に始まった大学生向け寄付講座の受講者は27万人を超えるなど、各世代への出張授業等の累計受講者数は94万人を超えています。従来の常識で測れない社会の変化が続くこれからの時代に、自立した、自由で豊かな生活を送り続けるためにも、全世代における金融・経済リテラシーの向上は、必要かつ有益であるとの思いで活動を展開しています。