提供:トヨクモ株式会社
災害大国である日本で、有事の際も事業を継続していくためには、適切なBCP(事業継続計画)の策定や社員の迅速な安否確認体制の用意がカギとなる。しかしルールや仕組みを用意しても、実際に運用できなくては全く意味がない。運用の要となるのは、実際の災害時に近い訓練や、訓練結果をもとにした対応フローの改善による社員への意識浸透だ。どのような対策をすれば、社員の当事者意識を高め、いざという時にも迅速な安否確認体制を確立することができるのか――。
今回、「安否確認サービス2」を提供するトヨクモ株式会社が全ユーザーに向けて実施する、実践に近い形式で社員への災害・緊急時の安否確認訓練を行う「全国一斉訓練」にて優秀な成績を残した「Good安否確認賞」受賞企業のうち、従業員数や事業内容も様々な各社の優れた対策や取り組みについて取材した。
トヨクモが提供する「安否確認サービス2」の導入企業向けに全国同時に行っている「一斉訓練」(※)で、回答率や回答時間が優秀な企業を表彰するもの。23年は1463団体・56万8105ユーザーが参加した。
※「一斉訓練」:「安否確認サービス2」を使って、時間を事前に通知せず実践に近い形式で回答を収集する取り組み。参加企業は、自社社員の回答率の時間推移や、訓練全体の平均回答時間などをまとめたレポートが提供される。
多発する風水害や地震、不安定な国際情勢など、事業継続を脅かす要素は多い。迅速に社員の安否確認を行わねばならないにも関わらず、煩雑な連絡網管理や集まった情報の集計に悩まされたり、社員の回答がなかなか集まらないことに心を痛めたりしている危機管理担当者は多いのではないだろうか。
今回、トヨクモの「一斉訓練」で優秀な成績を残し、「Good安否確認賞」を受賞した企業の取材から、社員の危機管理意識を高め、迅速な安否確認を実現するために重要なことが浮かび上がってきた。
最優秀賞受賞:株式会社ガスパル
以前のシステムでの課題
安否確認サービス2の導入効果
■回答率を上げるためのルール/組織づくり
■社員の危機管理意識向上施策
株式会社ガスパル
取締役 人事総務本部長
黒澤 秀起 氏
―― 前年に続いて23年も「Good安否確認賞」最優秀賞を受賞されました。高い回答率や、迅速な回答収集を実現できたのはなぜなのでしょうか。
当社はガスの供給という生活インフラ事業を中核としています。有事の際も素早いサービス復旧が求められるため、社員の安否確認を迅速かつ効率的に行うことが課題でした。そのため、もともと社員の意識は高い方だったと思います。現在、全社で年に4回の安否確認訓練を行っていますが、回を重ねるごとに回答率や回答速度が上がっています。
まず取り組んだのは、回答ルールの設定です。安否確認メールが送られた場合、原則5時間以内に回答するよう周知しています。さらに各部門・各拠点の責任者を管理者にすることで、適宜、回答状況を確認し、回答していない社員がいる場合は個別に声かけを行っています。
そして第三者目線の指標です。社内訓練だけだとどうしても緊張感が薄れがちなため、他社も含めて行う施策は非常に有効だと感じます。トヨクモの一斉訓練に参加すると、終了後にもらえるデータで参加企業内での自社の位置づけを確認できるため、取り組みの成果を測る客観的な指標として役立っています。
――「一斉訓練」のような取り組みを行い第三者目線の指標を得られるのは、トヨクモの「安否確認サービス2」ならではですね。
そうですね。他にも会社組織の階層設定が柔軟な点や、管理者の設定数が無制限である点が当社の利用スタイルに合っていました。直感的で分かりやすい操作性や、自社向けにカスタマイズしやすい操作説明資料が多数用意されている点も重宝しています。
23年7月に福岡県久留米市で起きた豪雨災害の際も安否確認サービス2を活用し、社員と家族の安否を迅速に確認することができました。その後、出社した社員が被害を受けた物件のガス設備を点検し、翌日には復旧させることができました。安否確認システム2を導入したことで、BCP対策の要である初動時の正確な情報把握を簡単に行えるようになったと感じています。
優秀賞受賞:JBCCホールディングス株式会社(JBグループ)
以前のシステムでの課題
安否確認サービス2の導入効果
■回答率を上げるためのルール/組織づくり
■社員の危機管理意識向上施策
JBCCホールディングス株式会社 取締役 兼
JBサービス株式会社 代表取締役社長
三星 義明 氏
――「安否確認サービス2」導入前は、自社開発システムでメール発報も手動だったそうですね。
はい。自社開発の独自システムはオンプレミスのサーバーで運用し、災害時の発報も手動で行うことしかできなかったため、実際に災害が起こった際の運用に課題がありました。そこで、クラウド運用の「安否確認サービス2」を導入することにしました。
災害時の安否確認はもちろん、コロナ禍での社員の体調報告にも非常に役立ちました。
――「安否確認は人の命に関わることだからこそ、“誰も取りこぼさない”対応をする」という方針をお持ちとうかがいました。社員数が多いため、実現は難しかったのではないでしょうか。
誰も取りこぼさないよう努めていますが、もちろんまだまだ完璧ではありません。そもそもこれは一足飛びにできることではなく、安否確認訓練を行って結果を振り返ることを何度も繰り返し、地道に改善していくものだと捉えています。
訓練を行うと複数の改善点が挙がるのですが、全てを一度に改善することはなかなか難しいです。訓練のたびに取り組む改善点を決め、地道に対応しています。
―― 社員数が多いということは、社員のIT(情報技術)知識も危機管理への課題感も様々です。
当社の場合、スマホを持っていない社員や高齢の社員もいました。そのため、従来型の携帯電話やタブレット端末、PCなど様々な利用ケースに配慮し、対応できるようにしました。操作に慣れない社員には直接フォローをするほか、休職中の社員については上司が代理で応答できる仕組みにするといった対策も取っています。
また、訓練後は回答率や回答時間等を社内イントラネットで公表し、全社員に結果を共有することで訓練を自分ごと化してもらえるよう工夫しました。
加えて、社内のBCP委員会のメンバーを2~3年の周期で3割程度入れ替え、新たな人材を加えています。これによりBCP委員会の組織が固定化せず、社員の委員経験者が現場でアンバサダー的な役割を担ってくれるため、社員の全体的な意識の底上げに寄与していると感じます。
―― 今後はどのような取り組みを行っていきますか。
災害は土日や昼夜を問わず起こりうるものですので、営業時間外に発生した場合や東京が壊滅した場合など、実際に起こりうるパターンを想定した訓練も行っていく考えです。
また、異動等で勤務環境も変わります。回答してくれない社員のフォローはもちろんのこと、回答してくれている社員が回答し続けてくれるような取り組みも継続していく必要があると考えています。
優秀賞受賞:株式会社レオパレス21
以前のシステムでの課題
安否確認サービス2の導入効果
■回答率/回答速度向上のための施策
■今後の目標
株式会社レオパレス21
人事総務部 人事総務グループ
グループマネージャー
岡﨑 慶久 氏
―― 23年5月にトヨクモの「安否確認サービス2」を導入され、今回が一斉訓練への初参加でした。
「安否確認サービス2」の導入前は、安否確認に特化していないシステムを使っていました。そのため有事の際は2人の人事担当者が、対象となる従業員を調べて手動で確認メールを送っていたのです。全国に従業員がいるので、手動の発報対応には限界を感じていました。
―― 初参加で社員規模4000人以上にも関わらず、平均より優れた回答率や回答速度を実現しています。理由はどこにあるのでしょうか。
当社の中核事業である不動産賃貸事業では、有事の際に入居者や物件の安否確認を行うことが重要になります。そのため、元々社員の意識が高かったことは理由の1つだと思います。
工夫した点としては、事前に一斉訓練へ参加する意義を社員にしっかり理解してもらったことがあります。また、情報を集める責任者である組織長に対してウェブ研修を行い、操作方法について把握してもらいました。また、回答が集まらない場合は責任者が直接コンタクトを取り安否確認を取るという積極的な姿勢を取るようにしました。
ただ、まだ改善できる点はあると感じます。例えば当社は不動産賃貸のほか、介護事業も運営しています。そうなると社員のITスキルも働き方も様々ですし、適切なBCPも異なります。
今回、一斉訓練に参加してみて、安否確認を行う組織編成の課題や、アプリのインストール率向上など具体的に取り組むべき施策が分かりました。そして、他社と比較した自社の位置づけを把握することができました。
今後は訓練の回数を増やしたり責任者が管轄する人数の見直しを行ったりすることで、さらなる社内への意識浸透や効率的・効果的な安否確認を実現したいと考えています。
優秀賞受賞:一般社団法人大阪府自家用自動車連合協会
以前のシステムでの課題
安否確認サービス2の導入効果
■回答率/回答速度向上のための施策
■今後の目標
一般社団法人大阪府自家用自動車連合協会
総務部経理課 課長代理 川添 聡 氏
総務部総務課 坂田 広大 氏
―― 社員数60人という規模ながら、回答率が100%で回答時間の中央値も1分と非常に優れた結果です。なぜ実現できたのでしょうか。
私たちはナンバープレートの交付等を主な業務としています。国と一体の運営のため、運輸局が開庁している限り、いかなる場合でも業務を止めることはできません。
以前は携帯電話を活用する緊急連絡網を使っていましたが、どんな状況でもより確実に安否確認を行うには、複数の手段を持っておく方がよいと考え、安否確認サービスの導入も検討することにしました。
複数サービスを比較・検討していましたが、トヨクモの「安否確認サービス2」に決めた理由は、我々の使用環境で問題なく動作したこと、そして使いやすさです。
当社は窓口業務に携わったり、紙ベースで業務を行ったりする社員が多いので、必ずしも全員がPCやスマホや携帯電話の操作が得意なわけではありません。そんななか、事前レクチャーなしでも全員が操作できたのが「安否確認サービス2」でした。安否確認サービスは全員が使えなければ意味がありませんから、これは大きなポイントでした。
―― ITスキルが高くない人でも、初見で操作できたというのは驚きです。
災害時だけでなく、普段の業務連絡にも活用しています。電車の遅延による出社の可否などを掲示板でやりとりしています。普段から安否確認システムの操作に慣れておくことで、もしものときもスムーズに操作ができるはずです。
22年のGood安否確認賞受賞をきっかけに、防災マニュアルも作り直しました。安否確認サービス2による報告など、災害発生時の初動について記載した運転免許証サイズのカードを作成し、全職員に常時携行してもらっています。これも職員の危機管理意識の向上に寄与したのではと考えています。
幸い、導入してから1度も発報するような災害は起きていませんが、既に全員が使えることと、どの程度の時間で回答が集まるかの目安が把握できているため、大きな不安はありません。職員全員で結果を踏まえた議論を行い、改善策を考えていきたいと考えています。
4社の取材を通して浮かび上がってきた、迅速な安否確認を実現する4つのポイントは以下のとおりだ。
1
社員への安否確認フローの
周知徹底
2
組織整備による
責任の所在の明確化
3
BCP対策に対する社員の
意識を高めるコミュニケーション
4
訓練結果の振り返りと
他社との比較による改善点の検討
いずれの企業も、平時から社員への周知や組織整備などを行っていたほか、訓練をただ行うだけでなく、事後の振り返りによる改善を重要視していた。
災害はいつ起こるか分からない。だからこそ平時からの備えや、有事を想定した訓練で課題を洗い出し改善していくことが肝要だ。
トヨクモの「安否確認サービス2」は、実際の災害を想定した「全国一斉訓練」を行うことで災害時もサービスが動くことを検証しつつ、収集した回答データを参加企業にフィードバックしている。自社の安否確認対策が他社と比較して機能しているのかを把握できる第三者目線の指標として取り入れてみたい。
最優秀賞 | 株式会社ガスパル |
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優秀賞 |
株式会社レオパレス21
株式会社毎日新聞社
JBCCホールディングス株式会社
(JBグループ) ケイラインロジスティックス株式会社・ ケイライントラベル株式会社 ジャパンエナジック株式会社
エスアールエス株式会社
株式会社ジーエス・ユアサ バッテリー
地中空間開発株式会社
一般社団法人
大阪府自家用自動車連合協会 |