Zoomが広げる未来の可能性 JALがZoomで実現する現場改革

提供: Zoom
日本航空株式会社
執行役員 IT企画本部長 
岡 敏樹氏
ZVC Japan株式会社
(Zoom)
社長 
佐賀 文宣氏
オフィスワーカーのビデオ会議システムというイメージがあるZoomだが、実は現場で力を発揮している。運航乗務員や客室乗務員、整備士など現場で働く多彩な人々を擁する日本航空(JAL)は、Zoomを使ってどのように新境地を切り開いたのか。Zoomを日本で提供するZVC Japan 社長の佐賀文宣氏とJALの執行役員でIT企画本部長の岡敏樹氏に話を聞いた。
JALとZoomの出会いのきっかけを教えてください。
2017年の秋頃にシリコンバレーを訪問したとき、ある企業から「非常にユニークな会社がある」と誘われてZoomの米国本社を訪れたのが最初です。
日本法人ができたのが2018年なので、その前になりますね。

コロナ前から
Zoomに注目していた理由

写真:岡 敏樹氏
日本航空株式会社 執行役員 IT企画本部長
岡 敏樹氏
日本企業の多くは、新型コロナウイルス感染症のまん延を機にZoomを知ったわけですが、JALはそれよりもかなり早いです。当時、何か課題を抱えていたのですか。
航空会社で働く人の職種はとにかく多様です。運航乗務員、客室乗務員、整備士、空港スタッフなど職種は様々ですし、勤務地も国内外に広がっています。このように多くの現場が存在している状況ですので、社員間のコミュニケーションの質をどのように高めるかが、大きな課題でした。

例えば地方の空港で飛行機の調子が悪くなったときに、かつてはメールで伝えていました。2010年代になるとビデオ通話システムが登場したので、かなりやりとりがスムーズにはなりました。ただ、基本的には1対1のコミュニケーションなので、大勢が同時には話せません。サーバー型の製品で、現場から皆がクラウドでアクセスできるようなものを探していたのです。

Zoomの優れている点の1つは、まず通信品質の良さです。もう1つは使いやすさです。ITに詳しくないユーザーであっても、触っているうちにどう使えばいいのか分かってくる。エンドユーザーがストレスなく満足して使えるように考え抜かれています。

オフィスだけでなく現場にもニーズがあったわけですね。Zoomとして、この点はある程度予想していたのでしょうか。
潜在的にはあったのだと思いますが、JALさんに気付かされました。ビデオ通話のシステムはもともと、オフィスの会議をオンラインでつなぐのが主な用途でした。ところが、あらゆる現場でオンラインでのビデオコミュニケーションが必要とされているというのは、まさに「想定外」でした。

上海での運航イレギュラーで
Zoomが浸透した

写真:佐賀 文宣氏
ZVC Japan株式会社(Zoom) 社長
佐賀 文宣氏
実際にJALの現場でZoomはどのような使われ方がされてきたのですか。
客室乗務員がお客様サービスの訓練をZoomで実施するなど、活用方法は様々なのですが、会社にZoomを導入して、最初に皆が「Zoomはすごい」という意見が出たのは、中国の上海で起きた運航イレギュラーのときです。

上海で飛行機の出発が大幅に遅れるイレギュラーが起きたことがありました。そうした事態が起きたときは、各セクションへの連絡が必要でオペレーションは多岐にわたります。お客様への連絡方法、中国の航空当局と出発時刻についての交渉、給油、機内食の管理などを、大勢の担当者が切迫していました。それも、中国と日本と国をまたいでやりとりをしていたわけです。そこにZoomを入れてつないだところ、現場の緊張感が日本のセンターにもひしひしと伝わりました。この経験以降、社内では「何かあればまずはZoomで」というようになりました。

急な現場ですぐにつながるというニーズがあるということに気付かされます。JALさんの事例以外にも、コロナの影響で卒業式が急遽オンラインになったり、会社説明会や株主総会がオンラインになったりと、Zoomはオフィスでの会議という世界だけで使われるものではないのだと、我々もあらためて気付かされました。
その他にJALではZoomを使った航空会社の新しいサービスなどは提供されていますか。
「JALオンライントリップ」というオンライン旅行サービスを、地方自治体様などと協力をしながら行っております。事前に旅先の特産品をご自宅へお送りするなど、コロナ禍で旅行に行けないお客様に対して、少しでも旅の雰囲気を味わっていただけるような工夫をしています。こうしたサービスは新型コロナが落ち着いても需要があるのではないかと考えています。なぜなら、新型コロナが収束し自由に旅ができるようになったとしても時間がない方はいらっしゃるわけですし、ニーズは続くのではないでしょうか。
写真:自宅にいても旅行気分を味わえるJALオンライントリップ
自宅にいても旅行気分を味わえるJALオンライントリップ
このように多様な活用をされていると、やはりセキュリティー面は気になります。
例えば文書ファイルを共有できないようにするなど、Zoomの設定をJAL用にカスタマイズして社員に提供しています。あとは、本人確認を徹底するため必ず顔出しで使うというルールを決めています。

セキュリティーについては、どのようなシステムを使うときもそうですが、企業がルールを決めて社員に徹底させることが大切ではないかと考えています。

Zoomとしては、企業ごとの複雑なセキュリティーポリシーに対応できるオプションを用意することが重要だと思っています。また、企業だけにセキュリティー機能を提供するだけでは不十分で、ITサポートがない一般消費者の方でも安全に使用いただける機能を提供しています。

航空業界とビデオ通話業界は
相反する関係か

コロナの影響で旅行需要の落ち込みは激しく、JALを含む航空会社の業績にも大きな影響があります。一方で、人の往来が途絶えたことで、Zoomの需要は拡大しています。両者は相反する関係にも映るのですが、いかがお考えでしょうか。
確かに、そのように言われることはあります。ただし、私はそうは思っておりません。ワクチンの接種が広まって新型コロナが収束したとしても、ビジネスでの出張需要の一部は今後数年間、Zoomなどに取って代わられるだろうということを事業計画の中に織り込んでいます。一方で、以前ならつながらなかったかもしれない人々が、このコロナ禍にZoomがあったことによって、間違いなくつながっています。

その中の何割かは必ず、直接会って空間を共有して話したくなります。例え需要の一部がZoomに移行したとしても、現在エアラインが築いていないニーズが掘り起こされると確信しております。

面白いですね。電話やテレビが普及したら、飛行機で旅行する需要は減ったかと言うと、絶対そんなことはなくて、世界中の景色や出来事をテレビで見られるようになったことで、逆に旅行の需要はどんどん増えてきたわけですよね。
それこそ佐賀さんが若い頃は、国際電話は高くてそんなに簡単にかけられるものではなかったですよね。私がJALに入社して何年か経った後、通信自由化の影響で国際電話の料金が下がりました。ところが、これでビジネス通話が気軽にできて出張がなくなったかというとまったくそんなことはありません。実際には国際電話の普及とともに、海外への出張や旅行の需要というのは増えているのです。

会いたい人には直接会う
需要は変わらない

なぜ人間は直接会ってコミュニケーションを取りたくなる生き物なのでしょうか。
そこは重要な点ですよね。まだまだZoomのコミュニケーションが、リアルのコミュニケーションに追いつくとはまったく思っていないですし、かなうとも思っていません。岡さんはよくZoomで会える人が増えて、それで本当に会いたい人に会いに行くんだということをおっしゃっていますが、そうやってコミュニケーションの総量がどんどん増えていく、すごく明るい未来を感じます。
世界を見渡すと、経済格差や世代間の分断が深刻に映ります。また、コロナで浮き彫りになったのが、働く環境の格差です。一方で、お二人がおっしゃるようにコミュニケーションが豊かになっていく兆しもあります。これからの社会はどのようになっていくのでしょうか。
リモートワークの広がりは、新型コロナ収束後も縮小することはないと予測しています。ただ、それがすなわち分断につながっているかというと、そういうことでもないのかもしれません。Zoomを筆頭とする優れたツールによって、コミュニケーションそのものが低下しているわけではありません。

リモートで聞いたら30分かかる内容が、横にいる人に聞けば一瞬で解決するようなノウハウを共有する需要はなくならないどころか、逆にそのニーズのために皆が動き始めるだろうと思います。その動く先が、従前の古典的なオフィスではない可能性は十分にあります。

オフィスワーカーと現場がリモートワークをできる、できないという点で差ができてしまっている現実があります。オフィスへ行かなくても結構仕事できるよねと言っている人の毎日の生活は、宅配業者の方や保育園、病院、小売店など、そういった現場で働いている人がいて成り立っている面があります。いわゆるエッセンシャルワーカーもリモートワークができれば、もっと安全に、もっと効率的な社会になるはずだと信じています。現場のリモートワークを実践されている岡さんから私はたくさんのことを学んでいます。本日はありがとうございました。
写真:岡 敏樹氏、佐賀 文宣氏