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場所や時間を超えた「空間自在プロジェクト」が始動 JR東日本とKDDIが仕掛ける「100年先の心豊かなくらしを見据えた分散型まちづくり」JR東日本とKDDIが仕掛ける「100年先の心豊かなくらしを見据えた分散型まちづくり」

対談:JR東日本 執行役員 表 輝幸氏 × KDDI 執行役員 藤井 彰人氏

東日本旅客鉄道株式会社
執行役員
事業創造本部 副本部長
表 輝幸

KDDI株式会社
執行役員
ソリューション事業本部
サービス企画本部長
藤井 彰人

東日本旅客鉄道(JR東日本)とKDDIは2020年12月、空間を超えた新しいくらしを実現する「空間自在プロジェクト」の共同事業化に向けた基本合意を締結した。同プロジェクトはニューノーマルな社会の到来を見据え、交通と通信の融合によって場所や時間にとらわれない多様な働き方やくらしを実現するため、「分散型まちづくり」に両社共同で取り組む。具体的には、空間自在プロジェクトに基づくまちづくりのコアシティとなる「品川開発プロジェクト」の共同推進、分散拠点として日本各地に構えるサテライトシティの開発、コアシティとその周辺におけるモビリティーサービスの開発を検討し、共同事業化を目指す。未来のまちづくりについて、JR東日本 執行役員 表輝幸氏とKDDI 執行役員 藤井彰人氏が意見を交わした。(文中敬称略)

リアルとデジタルを融合させる共同事業に着手

JR東日本とKDDIは2020年12月、「空間自在プロジェクト」の基本合意を発表しました。両社はこのプロジェクトを通じて、どのような社会課題を解決しようとしているのでしょうか。

写真:東日本旅客鉄道株式会社 表 輝幸氏

東日本旅客鉄道株式会社
執行役員
事業創造本部 副本部長
表 輝幸

 JR東日本は2018年7月に次の10年を見据えたビジョン「変革2027」を発表しました。従来の鉄道を起点としたサービス提供から、ヒトのライフスタイルを起点とした新たな価値創造へと変革するために打ち出したのがこのビジョンです。日本は少子高齢化、環境・エネルギー問題といった多くの社会課題を抱える“課題先進国”であり、こうした課題解決にも積極的に取り組みます。このビジョンの具体的な取り組みの1つが「品川開発プロジェクト」です。このプロジェクトは当社の強みである駅や鉄道などのリアルネットワークを生かしたまちづくりですが、このビジョンを成し遂げるためにも情報やデジタル技術を掛け合わせるなどして、さまざまな社会課題の解決に先進的に取り組みます。

藤井 コロナ禍以降、日本社会は一気にデジタル側へと振れ、従来の拠点集約型から分散型へと大きく変わりつつあります。しかし、テレワークが普及するにつれ、タスク処理中心の仕事が増え、労働時間も長くなったというような働き方の課題も浮き彫りとなりました。そこで“リアルの大切さ”が改めて見直されるようになり、デジタルとリアルをうまく組み合わせることが非常に大事だと気づかされました。これからはリアルネットワークを使いながらデジタル技術と融合し、集約拠点を分散させるようなまちづくりが必要だと考えています。

空間自在プロジェクトを発足するに至った経緯を教えてください。JR東日本はなぜKDDIをパートナーに選んだのでしょうか。

 コロナ禍の社会において、効率性を重視した東京一極集中の働き方・生き方が変わろうとしています。人々の心が豊かになる“幸せな働き方・生き方”をデジタルトランスフォーメーションで実現することが求められています。そこで当社が必要だと考えたことが、デジタルのインフラを支える企業との共同事業です。

 KDDI様とJR東日本は以前から通信・ICT関連のご支援や地方創生の取り組みなどを通じて協業関係にありました。インフラ企業として同じ志を持ち、100年先を見据えた心豊かなくらしづくりというビジョンを共有できる良きパートナーであり、空間自在プロジェクトとして改めて両社の強みを生かした新たな価値創造の共同事業に取り組むことにしました。

藤井 KDDIはかねて、JR東日本様が推進するまちづくりの通信・ICT関連技術を担当する機会がありました。また5G実証実験やモビリティ変革コンソーシアムの連携などを通じ、密接なパートナー関係を構築してきました。さらにKDDIのビジョン「KDDI Accelerate 5.0」とJR東日本様のビジョン「変革2027」は近しい内容が多く、両社ともに豊かなくらしを実現することを目標に掲げています。今回の空間自在プロジェクトは、両社が持つインフラを活用・連携して、場所や時間にとらわれない多様な働き方やくらしを創出するためにスタートしました。

 空間自在プロジェクトにおける都市部のモデル地域開発として位置づけられている品川開発プロジェクトは、「100 年先を見据えた心豊かなくらしづくり」に取り組むJR東日本が2024年度の“まちびらき”に向けて推進している事業。5Gを前提とした最先端の通信インフラとサービスプラットフォームをJR東日本とKDDIの両社が構築し、働く人・住む人・訪れる人のくらしと都市機能を連携させたまちづくりを目指している。

図:品川開発プロジェクトのイメージ

品川開発プロジェクトのイメージ

100年先の心豊かなくらしを見据えた“まちづくり”に

空間自在プロジェクトでは「交通」と「通信」という2つの社会インフラが融合した「分散型まちづくり」の共同事業化が発表されました。この分散型まちづくりは、どのような未来を目標にしているのでしょうか。

写真:KDDI株式会社 藤井 彰人氏

KDDI株式会社
執行役員
ソリューション事業本部
サービス企画本部長
藤井 彰人

 空間自在プロジェクトのコアとなる品川開発プロジェクトは、JR東日本が所有している約13ヘクタールの土地をエキマチ一体で開発するというもので、2024年度にまちびらきを予定しています。品川は陸海空のいずれにもアクセスが至便な交通の要衝であり、都心では希少な場所です。そうした街を舞台に、夢や情熱のあふれる人たちと100年先を見据えた未来をつくっていきます。

 品川開発プロジェクトによって、日本各地や世界と一体的につながり、時間や空間にとらわれないヒトを起点とした豊かなくらしを実現するのが空間自在プロジェクトの狙いです。失敗も許容しながらPDCAを循環させる壮大な実験の場にしていきたいと考えています。

藤井 空間自在プロジェクトは品川のコアシティと郊外・地方のサテライトシティを交通・通信でつなぎ、日本各地のどこにいても変わらない利便性を持つ働き方や生活を目指しています。現在のような本社とサテライトオフィス、あるいはテレワークという枠組みから2~3歩踏み出し、本社機能さえも複数に分散するイメージです。

 2024年度の“まちびらき”に向けて、まずは働き方からスタートしていきます。2021年春には低遅延・高画質を実現するネットワークでサテライトシティとコアシティをつなぎ、離れた場所でも円滑にコミュニケーションが図れる空間づくりの実証実験を予定しています。何よりも本プロジェクトを通じて時間・空間の制約を解消し、ヒトを起点にした働き方・生活の最適化を目標にしています。

空間自在プロジェクトでは「空間自在コンソーシアム」を立ち上げ、多種多様な企業の参加も予定しています。具体的にはどのようなコラボレーションを想定されていますか。

 食や健康、生活・文化、モビリティ、スポーツなどさまざまな業種の世界最先端の知見や技術・ノウハウを有する企業などをはじめ、世界的に活躍するクリエーター、イノベーター、アーティストなどにも参加していただきたいと考えています。こうした人々が参加し交流することにより、より早くより高いレベルで空間を超えた掛け算のコラボレーションが生まれることを期待しています。

藤井 JR東日本様とKDDIの両社が提供するインフラを活用して、新しい働き方を一緒に模索していけるような企業とのコラボレーションを進めたいです。とくにオープンイノベーションに積極的な企業とのコラボレーションを望んでいます。また働く環境の整備に関心がある企業や課題を抱えていたりする企業とは、勉強会や意見交換会を通じてオフィスの在り方や機能などを議論していきたいと考えています。

 空間自在プロジェクトにおける分散拠点として、都市周辺や日本各地にサテライトシティと分散型ワークプレイスを開発し、交通・通信・街が一体となったサービスが検討されている。2021年春には東京・神奈川・埼玉・千葉エリアを対象に、多拠点とつながる分散型ワークプレイスのトライアル拠点を開設し、実証実験を順次実施するという。

スタートアップ企業との連携も積極的に推進

JR東日本は独自にスタートアッププログラムを立ち上げており、KDDIも「KDDI∞LABO」を通じてスタートアップ企業を支援しています。両社が積極的に取り組んでいるスタートアップ連携を、本プロジェクトにはどう組み込んでいきますか。

写真:対談風景

 Morning Pitchが発表した「Morning Pitch大企業イノベーションアワード」によると、JR東日本は第2位にランクされています。第1位はKDDI様であり、このように高い評価をいただいている2社でオープンイノベーションを推進できることは非常に喜ばしいことです。

 日本社会は失敗を許容しにくい風土があり、そのために世界市場での競争になかなか勝てないという課題があります。しかし私たちは、新規事業に挑戦するスタートアップ企業こそが街の魅力を向上させ、街に集まる人たちのエネルギーになると考えており、本プロジェクトでも日本はもちろん、世界のスタートアップ企業との連携を積極的に推進していく予定です。

藤井 スタートアップ企業には空間自在コンソーシアムに積極的に参加してほしいと考えています。本プロジェクトではスタートアップ企業の持つ斬新なアイデアや技術力が必要になる場面が出てきます。本プロジェクトに参加していただいたスタートアップ企業には、ビジネス機会を斡旋(あっせん)するなどの支援策も積極的に行っていく予定です。

今後、日本社会に対してどのようなイノベーションをもたらしていきたいですか。

 日本における最初の鉄道は1872年に開通しました。その当時における最高の技術を駆使した鉄道は、現在の私たちにも感動を与えています。私たちの取り組みも100年後の人たちに感動を与えられるように、高い志と挑戦心でイノベーションを巻き起こしていきたいと考えています。

藤井 これまで社会インフラの発展に付随して経済が発展し、イノベーションが起こりました。今回のプロジェクトも、そうしたイノベーションが起こせると思っています。JR東日本様との協業は過去に例を見ないほどの可能性を感じています。KDDIが持つ通信をベースとしたアセットをフル活用し、本プロジェクトの成功に尽力したいと思います。

 空間自在コンソーシアムは企業・自治体・スタートアップ企業・ユーザー企業が参加し、リアルとデジタルの融合によって新しい価値や文化の創出を目指す組織として設立される。第一弾の活動として、コロナ禍の在宅テレワークで浮き彫りとなった企業の働き方に関する課題解決を図るため、ワークプレイスコミュニティー活動を開始するという。

図:空間自在コンソーシアムのイメージ

空間自在コンソーシアムのイメージ

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