東日本旅客鉄道株式会社
執行役員
事業創造本部 副本部長
表 輝幸 氏
KDDI株式会社
執行役員
ソリューション事業本部
サービス企画本部長
藤井 彰人 氏
東日本旅客鉄道(JR東日本)とKDDIは2020年12月、空間を超えた新しいくらしを実現する「空間自在プロジェクト」の共同事業化に向けた基本合意を締結した。同プロジェクトはニューノーマルな社会の到来を見据え、交通と通信の融合によって場所や時間にとらわれない多様な働き方やくらしを実現するため、「分散型まちづくり」に両社共同で取り組む。具体的には、空間自在プロジェクトに基づくまちづくりのコアシティとなる「品川開発プロジェクト」の共同推進、分散拠点として日本各地に構えるサテライトシティの開発、コアシティとその周辺におけるモビリティーサービスの開発を検討し、共同事業化を目指す。未来のまちづくりについて、JR東日本 執行役員 表輝幸氏とKDDI 執行役員 藤井彰人氏が意見を交わした。(文中敬称略)
スタートアップ企業との連携も積極的に推進
JR東日本は独自にスタートアッププログラムを立ち上げており、KDDIも「KDDI∞LABO」を通じてスタートアップ企業を支援しています。両社が積極的に取り組んでいるスタートアップ連携を、本プロジェクトにはどう組み込んでいきますか。
表 Morning Pitchが発表した「Morning Pitch大企業イノベーションアワード」によると、JR東日本は第2位にランクされています。第1位はKDDI様であり、このように高い評価をいただいている2社でオープンイノベーションを推進できることは非常に喜ばしいことです。
日本社会は失敗を許容しにくい風土があり、そのために世界市場での競争になかなか勝てないという課題があります。しかし私たちは、新規事業に挑戦するスタートアップ企業こそが街の魅力を向上させ、街に集まる人たちのエネルギーになると考えており、本プロジェクトでも日本はもちろん、世界のスタートアップ企業との連携を積極的に推進していく予定です。
藤井 スタートアップ企業には空間自在コンソーシアムに積極的に参加してほしいと考えています。本プロジェクトではスタートアップ企業の持つ斬新なアイデアや技術力が必要になる場面が出てきます。本プロジェクトに参加していただいたスタートアップ企業には、ビジネス機会を斡旋(あっせん)するなどの支援策も積極的に行っていく予定です。
今後、日本社会に対してどのようなイノベーションをもたらしていきたいですか。
表 日本における最初の鉄道は1872年に開通しました。その当時における最高の技術を駆使した鉄道は、現在の私たちにも感動を与えています。私たちの取り組みも100年後の人たちに感動を与えられるように、高い志と挑戦心でイノベーションを巻き起こしていきたいと考えています。
藤井 これまで社会インフラの発展に付随して経済が発展し、イノベーションが起こりました。今回のプロジェクトも、そうしたイノベーションが起こせると思っています。JR東日本様との協業は過去に例を見ないほどの可能性を感じています。KDDIが持つ通信をベースとしたアセットをフル活用し、本プロジェクトの成功に尽力したいと思います。
空間自在コンソーシアムのイメージ
空間自在プロジェクトにおける都市部のモデル地域開発として位置づけられている品川開発プロジェクトは、「100 年先を見据えた心豊かなくらしづくり」に取り組むJR東日本が2024年度の“まちびらき”に向けて推進している事業。5Gを前提とした最先端の通信インフラとサービスプラットフォームをJR東日本とKDDIの両社が構築し、働く人・住む人・訪れる人のくらしと都市機能を連携させたまちづくりを目指している。