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新たなビジョンと新・中期経営戦略を策定 KDDI法人事業トップに聞く、「つなぐチカラ」で加速するDX

森 敬一

KDDI株式会社
取締役執行役員副社長
ソリューション事業本部長

KDDIグループは2022年5月、サステナビリティ経営を根幹に社会の持続的成長と企業価値の向上をパートナーとともに目指す新しいビジョン「KDDI VISION 2030」、および22年度~24年度の3カ年にわたる新・中期経営戦略を発表した。「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」というスローガンの達成に向け、KDDIグループはどのような経営戦略を推進していくのだろうか。デジタルトランスフォーメーション(DX)支援を中心に法人事業をリードする取締役執行役員副社長 森 敬一氏に話を聞いた。

 まずは記事に先立ちおわび申し上げます。22年7月2日(土)1時35分より長時間にわたり弊社の通信サービスをご利用の全国のお客さまに、多大なご不便とご迷惑をお掛けしました。社会インフラを支え安定したサービスを提供しなければならない通信事業者として、今回このような事象を発生させたことを重く受け止めており、再発防止策の徹底を図り、サービスの安定的な運用に向けて全力をあげて取り組んでまいります。

コロナ禍で実績を積み上げた
KDDIの法人事業

イメージ

―― 新型コロナウイルス禍が続くなか、多くの日本企業がDXに取り組み始めています。実際にどのような動きが見られますか。KDDIの見解をお聞かせください。

 コロナ禍に見舞われる以前から、企業のIT投資はデジタル化、クラウド化へと確実に向かっていました。しかし、緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置による行動制限により取り組みが大きく加速し、いまやあらゆる企業がデジタル活用を進めています。コロナ禍が始まった当初は暫定的な対応をとる企業が多かったものの、現在はネットワークやオフィス環境を抜本的に見直し、ハイブリッドな働き方を取り入れるといった次の段階に進む傾向も見られます。

 そうしたなか、DXに対する投資は確実に増加しています。多面的に取り組むお客さまへ的確に対応するため、KDDIではDXの定義を整理しました。

 働き方改革や業務の生産性向上・自動化を進める「コーポレートDX」、デジタルの力で経営課題や社会課題を解決する「ビジネスDX」、さらにこれらを円滑に進めるために必要なデータセンター、コンタクトセンターなどを「事業基盤サービス」とし、この3つを併せて「NEXTコア事業」と位置付けています。

―― DXを推進する企業に対し、KDDIグループではこれまでにどのような施策に取り組み、どのような成果を挙げてきましたか。

 前中期経営戦略(19年度~21年度の3カ年)では、総合通信事業者としての強みを生かしながら持続的な事業の成長を目指し、新たなビジネスを創出する事業領域の拡大に注力してきました。ソリューション事業本部では通信・ネットワークを核にしながら(あらゆるものがネットにつながる)IoT分野や「ビジネスDX」分野の強化に取り組み、特にお客さまの現場で本業ビジネスの課題解決を実現することや、デバイスやクラウド、データ分析・活用などデジタル技術を扱う高度な人財育成に力を入れました。一方でKDDIグループ各社それぞれの優れた能力を結集し、グループ全体の総合力でお客さまのDX推進を支える取り組みを進めてきました。またお客さまとの“共創の場”である「KDDI DIGITAL GATE*」をフル活用することで、これからの時代に求められる新規ビジネスの創出や業務改革を支援しています。

 これらの取り組みを進めた結果、DX支援などの「NEXTコア事業」が伸長し、ビジネスセグメント全体の売り上げに占める比率は32%(21年度3月)となりました。とりわけ20年以上の実績をもつIoT分野は、世界1,000万台以上のコネクテッドカーをはじめ、社会インフラ、ホームセキュリティー、各種通信デバイスなどに約2,450万回線(22年度3月)を提供するなど、IoTのトップランナーの地位を築いています。

*KDDI DIGITAL GATE:5G/IoT時代のビジネス開発拠点として虎ノ門に設立した施設。ワークショップの開催、先進的なテクノロジーを持つプロフェッショナル集団との共創や、さまざまな技術要件が求められるビジネスソリューションの構築をワンストップで支援する体制を整えている。

図1

サテライトグロース戦略で
注力領域の最大化を目指す

写真:森 敬一 氏

KDDI株式会社
取締役執行役員副社長
ソリューション事業本部長
森 敬一

―― KDDIグループは22年5月に、新・中期経営戦略を発表しました。ソリューション事業本部ではこのなかで、どのような事業戦略を策定しましたか。

 KDDIグループは新・中期経営戦略と同時に、新たなビジョン「KDDI VISION 2030」を策定しました。「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」というメッセージを掲げたこのビジョンには、2030年にKDDIが社会から必要とされる企業であり続けたいという思いを込めています。ここにある「つなぐチカラ」というのは、人と人、モノとモノをつなぎ、次の世代のビジネスや生活へと進化させていく能力を意味しています。しかしながら「つなぐチカラ」を発揮して人や社会に貢献するには、通信だけでは足りません。

 そこで新・中期経営戦略の柱に据えたのが「サテライトグロース戦略」です。これは「5G通信」を核に、「DX」「金融」「エネルギー」「LX(ライフトランスフォーメーション)」「地域共創」という5つの領域に注力し、KDDIグループが社会の発展に、より貢献できる存在になるという事業戦略です。

 このサテライトグロース戦略で中心的な役割を果たすのが、ソリューション事業本部が担当するDXの領域です。これまでも取り組んできた「コーポレートDX」「ビジネスDX」「デジタル事業創出」の3つに継続して挑戦するとともに、それらを支える「事業基盤サービス」の拡充に努め、お客さまビジネス、社会の発展に貢献していきます。

図:サテライトグロース戦略の注力領域

図:サテライトグロース戦略の注力領域

企業のDXを支援する組織体制、人材育成

―― お客さまのDXを支援するうえで、KDDIグループにはどんな強み、優位性があり、具体的にどのような取り組みに着手していますか。

 「お客さまとビジネス目標の目線を合わせること」が非常に重要だと考えています。DXは、ビジネス課題の解決や目標を達成するための手段であり、通信やソリューションを導入することがゴールではありません。常にお客さまの環境や状況を第一に考え行動していきます。

 また、KDDIには多様なチカラがあります。その一つは4G/5G通信から固定データ通信、音声通信までカバーする「つなぐチカラ」。そしてもう一つはコンサルティングやクラウド、セキュリティー、短期間で検証や改善を繰り返すアジャイル開発、データ分析など「解決に導くチカラ」です。これらの「チカラ」はさまざまな専門性を持ったKDDIグループ各社の連携で成せる業であり、大きな強みとなっています。

 これらの強みをさらに高めていくためにビジネスDX・開発関連部署を集約した「DX推進本部」を新設しました。さらにアジャイル開発手法を用いたDX開発を行う新会社「KDDIアジャイル開発センター(KAG)」を立ち上げるとともに、アイレット、KDDIウェブコミュニケーションズ、Scrum Inc. Japanの3社とKAGを統括する中間持株会社「KDDI Digital Divergence Holdings(KDH)」を設立しました。今後はKDDIソリューション事業本部とKDHとの連携体制により、よりスピード感を持ってお客さまのDXを支援していきます。

 このほか、20年に設立した社内大学「KDDI DX University」を活用し、DX事業の中核を担っていく人財育成にも引き続き力を入れ、23年度には、KDDIグループ全体で4,000人のDX人財がさまざまな領域で活躍する予定です。

図:新たな価値創造に向けたKDDIの組織体制

図:新たな価値創造に向けたKDDIの組織体制

経営戦略の根幹は
「サステナビリティ経営」にあり

―― 新・中期経営戦略につながるビジネス共創事例をいくつか紹介してください。

 すでにお客さまやパートナーと、DXによる新たな価値を共創してきた多数の事例があります。直近では2022年6月には三井物産様とKDDIにて新会社GEOTRA(ジオトラ)を設立しました。AI(人工知能)やau位置情報を活用し、人々の移動手段・時間・目的などを把握・予測可能とするプラットフォーム・分析サービスで都市そのもののDXを推進していきます。また、ソニー様とは、5G時代のビジネス/エンターテインメントサービスの共創を目指し、5Gスタンドアローン(5G SA)の特徴であるネットワークスライシングを活用したゲームストリーミングや、8K映像のリアルタイム配信の技術検証を実施。同じネットワーク上の他サービスから影響を受けにくい、安定した通信が実現できることを実証しました。同じく映像伝送系の事例として、JR東日本様と共同で推進する「空間自在プロジェクト」があります。このプロジェクトは、場所や時間にとらわれない働き方・くらしを創出する分散型まちづくりを目指すもので、4K映像を投影して遠隔地との空間一体化を実現するワークプレイスをご提供いたします。更に風力発電設備の点検をドローンのオートフライト・AI解析で自動化する電源開発様の事例などがあります。

 これら動き出しているプロジェクトおよび、地道に続けてきたDX人財育成が評価され、KDDIは、経済産業省と東京証券取引所が選定する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2022」に選定されました。この選定に奢らず、当社はDXを推進してお客さまのビジネス創造をサポート、そこで新たに生まれた付加価値によって人々の暮らしがトランスフォームされていくDXの好循環を目指します。

―― サステナブル(持続可能)な社会の実現という共通課題の解決に向け、KDDIグループはどのような取り組みを進めていますか。

 KDDIグループは、お客さまやパートナーとともに社会の持続的成長と企業価値の向上を目指す「サステナビリティ経営」を、経営戦略の根幹に置いています。新・中期経営戦略で設定したマテリアリティ(新重要課題)のなかにも、長期的な視点で社会課題解決に向けて「安心安全で豊かな社会の実現」「カーボンニュートラルの実現」といった項目が含まれています。とくにカーボンニュートラルについては、KDDI単体で2030年度、グループ全体で2050年度のCO2排出量実質ゼロを目指し、省エネルギーの取り組みと再生可能エネルギーへの切り替えを推進する方針です。

 お客さまのDX支援だけでなく、社会課題をデジタルで解決していくことは、KDDIの大きな使命です。今後もお客さまやパートナーと共創し、「社会を支えるプラットフォーマー」として継続して評価していただけるよう、進化していきたいと考えています。

 重ねてとなりますが、7月に発生した弊社通信サービス障害に関し、全社を挙げて再発防止を徹底するとともに、5G・Beyond5G時代においてさらに増加するデータ通信量への対応を行い、お客さまに安心してご利用いただける通信ネットワークを提供してまいります。今後もKDDIグループを引き続きよろしくお願いします。

写真:森 敬一 氏

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