• Vol.1 従業員視点の「働きやすさ」と「やりがい」が企業成長の鍵を握る
  • Vol.2 なぜ「体験の変革」で「働きやすさ」を革新できるのか?
  • Vol.3 アサヒグループが実践する“働きやすさ”改革のアプローチとは?
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“働きやすさ”で企業成長を実現

提供:ServiceNow Japan合同会社

業務・組織のサイロ化を打破する「デジタルワークフロー」の構築へ なぜ「体験の変革」で「働きやすさ」を革新できるのか?

  • ロケスタ株式会社
    代表取締役社長 CEO
    長谷川 秀樹

  • ServiceNow Japan合同会社
    執行役員 ソリューションコンサルティング事業統括本部長
    原 智宏

これからの時代、企業が成長していくためには、目まぐるしく変化するビジネス環境に即応できるように、日々の業務オペレーションのスピードを加速することが求められる。ただしそれを実現していくには「働きやすさ」「働きがい」といった従業員の働く環境を整備していかなければならない。企業は、今の組織のあり方や働き方を見直すために、何に取り組むべきなのか。東急ハンズ執行役員、メルカリCIOなどを歴任し、企業におけるIT責任者の視点からさまざまな業務・ビジネス改革に取り組んできた豊富な経験を持つロケスタ代表取締役社長の長谷川秀樹氏と、ServiceNow Japan合同会社 執行役員 ソリューションコンサルティング事業統括本部長の原 智宏氏が意見を交わした。

サイロ化とユーザー体験に見る旧来のシステムの問題

写真:長谷川 秀樹氏

会社組織にとって従業員の「働きやすさ」を実現する環境づくりは成長戦略を立てる上で欠かせません。しかし、多くの企業はそこに行き着いていないのが実情です。特にITシステムの視点から、どのような要因が阻害しているのでしょうか。

 まず、働きやすさ、働きがいを阻害している大きな要因の1つに、組織や部門ごと、用途ごとにサイロ化したITシステムの存在があります。よく見られるのは、部門ごとでITシステムを企画し、システムインテグレーターに開発を委託した結果、特定の業務だけに最適化されたITシステムが社内で乱立し、ばらばらに運用されているという課題です。その結果、従業員は業務によって適切なシステムを自ら選択することになり、またそれぞれのシステムの手順に従うことになります。その上業務を遂行する上では複数のシステムを行き来することになり、思ったように作業ができないといった問題が起きやすくなります。

もう1つ、大きな要因として挙げられるのが、業務で用いられるITシステム、いわゆるエンタープライズITの利便性が十分に練られていないことです。エンタープライズITのアプリケーションは、コンシューマー向けITと比較すると直感的ではなく、多くがマニュアルを参照し、手順に沿って利用する必要があり、非効率で使いづらいものが多いです。これでは、従業員へストレスなく快適に業務をこなせる環境を提供できているとは到底言えません。

長谷川 エンタープライズITがコンシューマーITと比べて劣っているという点について、同意です。特に私が感じているのは、コミュニケーションツールの使いにくさです。コンシューマーITでは、年代を問わず今や日常的にやり取りしているのは電子メールではなくチャットツールです。にもかかわらず、エンタープライズITでは旧態依然の電子メールがコミュニケーションの主要手段として使われています。

別の観点としては、クラウドを前提としていないシステムやインフラも、働きやすさを阻害する大きな要因だと感じます。クラウドが利用できるようになったにもかかわらず、結局社内ネットワークからしかアクセスできないのでは意味がありません。

また、インターネットやクラウド技術を前提に作られたサービスは、ユーザーの要望に合わせて機能やユーザーインターフェースが日々アップデートされていますが、旧来のようなエンタープライズITシステムではいつまでも機能ありきのインターフェースのままです。このような状況では、スピーディーに業務がこなせる働きやすい環境を実現できません。

「2つのタイプの人材」が変革のヒント

今のエンタープライズITには、働きやすさを実現する上でさまざまな阻害要因があることが分かりました。一方で、現在多くの企業がさらなる飛躍のためにデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に取り組んでいます。両者の関連性をどのように見ていますか。

写真:原 智宏氏

 DXの実現を見据えたIT投資の中で、上述した阻害要因を解消できる可能性は十分にあるでしょう。ただし注意も必要です。DXの目的は単なる業務のデジタル化ではなく、業務プロセスをまったく新しいものへと抜本的に変革し、新しい働き方を実現していくことにあります。当然のことながら、それは1つの部門に閉じた取り組みだけで完結できるわけではなく、組織全体としての取り組みであるべきです。しかしながら、部門の壁を越えた取り組みをなかなか進められないのが実情です。そのためには、企業の経営トップがコミットし、ある程度リスクを覚悟の上で進めていく必要があります。

長谷川 原さんがおっしゃった業務プロセスを抜本的に変革するという点について、私は実行する人や組織体制の問題を解決する必要があると感じています。いつまでも従来と同じメンバーで取り組みをしていては新しいアイデアも出ませんし、改革は絶対に進みません。DXで変革したイメージを分かっている人、例えばベンチャー企業の人材を外部から登用するのも有効な手段です。

とはいえ、いきなり外部の人が入ってきて、その意見を受け入れることは難しいでしょう。ですから、DXが分かっている人の考えを理解・信用し、社内に説得・展開できる人、言い換えると社内の根回しが上手だったり社内で信頼されていたりする人などが必要になります。つまり、変革が分かっている人と、変革を広める人という人材がセットになって進めるべきなのです。また、経営トップから変革を広める人にきちんと権限が与えられることも重要です。原さんから経営トップのコミットというお話がありましたが、後者の役割を経営トップが担うという手もあります。

「ユーザー体験」は働きやすさと密接な関係がある

ここまでお話しいただいた課題や現状を踏まえ、働きやすい環境を築くためにはどのようなIT整備が必要になるでしょうか。

 前提にはテクノロジーを活用し、部門横断型で業務を走らせることができる仕組みを考える必要があります。先に申し上げたとおり、基本的に業務が1つの部門だけで完結することは非常に少ないので、複数の部門が1つのプラットフォームをベースにデジタルワークフローでつながっていくことが求められます。

もっとも、部門横断というとERPのような大規模なシステムを構想し、ビッグバン方式でITシステムを全社展開していく手法をイメージしてしまう方もいるかもしれませんが、今はその必要はありません。部門や業種ごとにSaaS型のクラウドシステムや基幹システムを利用している場合でも、それらの情報を統合するプラットフォームがあれば実現できます。

加えて、これからのエンタープライズITは、利用者の立場に立った操作性であること、つまり「システム」として提供するのではなく、従業員が利用しやすい「サービス」を提供できるように構築すべきです。さらにそのサービスを、普段使い慣れているチャットなどのコラボレーションツールや単一のポータルサイトから手軽に利用できるようにして、業務全体が1つのワークフローでつながるようにしていきます。

これは普段コンシューマーがほしい商品をオンラインショッピングサイトで購入するときに、商品を閲覧し、ショッピングカートに入れて支払い、送付先を指定するときにそれぞれ異なるシステムにアクセスしていることを意識させない、シームレスな体験を提供しているのと同様のイメージです。これを仕事の世界でも実現することを目指すわけです。  

 

長谷川 私はデジタルを利用する人のマインドが変われるかというのも重要だと考えています。つまり「デジタルの住人」になれるかどうかです。例えば、業務オペレーションの中にタブレットを導入したり、紙と判子の代わりに電子署名を導入したりといったように単にデジタル技術を取り入れるだけではうまくいきません。デジタルに合わせて業務の仕方やプロセスそのものも変革していく必要があります。

そうした変革をスムーズに実現していくにはどうすればよいでしょうか。

 変革は「明確な変化と良い体験」があると進めやすいと言えます。過去のクールビズなどは分かりやすい一例でしょう。体験するまでは反対意見や疑問視されていたとしても、いざ変化を体験して満足するとたちまちその変化が受け入れられます。業務プロセスも同じではないでしょうか。具体的には先にお話ししたように従業員の「ユーザー体験」を変えることが挙げられます。新しい業務プロセスのためのITシステムを導入してもなかなか効果が表れずに抜本的に変革できない一因には、ユーザー体験が悪いことも関係しています。

新しいITシステムを導入したのに非効率で利便性が低ければ、従業員は受け入れられず慣れた古いやり方に戻りたくなってしまいます。しかし、直感的な操作性であらゆる端末から数クリックだけで業務が完結するといったように、日常生活と同じような優れたユーザー体験を業務でも提供できるのなら、それを契機にどんどん変革を進めることができます。

長谷川 ユーザー体験が変わると仕事が変わるというのは、間違いありません。例えば、初めて業務でパソコンが導入されたときなどは、体験の変化を実感しやすく定着も進みやすかった。最近は目に見える分かりやすい変化が少ないので、単にITシステムを更新してもどうしても、そのメリットを実感しづらくなっています。変革をきちんと進めるためには、新しいITシステムのユーザー体験を分かりやすく変革させることが重要で、その結果として業務プロセスの変革は驚くほどスムーズに進むようになるでしょう。

写真:長谷川 秀樹氏と原 智宏氏

日常のツールのユーザー体験を仕事の世界に。
だから定着化できる

新しい仕組みを導入したあとには、いかにして定着させるかが重要になります。それを乗り越えるには、どのようにすればよいでしょうか。

長谷川 例えば経費精算システムのように、そのITシステムを強制的に使わなければならないようなものであれば、遅かれ早かれ定着していきます。しかし、これまで使い続けてきたコミュニケーション手段である電子メールに加え、新たにチャットツールを使うといったように「使わなくても済む」ものの定着は難しいものです。

 同感ですね。定着のためにはITシステムのユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンスの良さも大切です。コンシューマーが日常生活で使うのと同じ感覚で、業務でも楽しく、直感的に行えるようにすることで、従業員はより「働きやすさ」「働きがい」を実感します。

長谷川 従業員に楽しく面白がって使ってもらえるかどうかは重要ですね。例えばチャットツールの場合、自由に意見を交わせる雑談の場を設けたり、チャットに絵文字を取り入れて会話をしたりといった取り組みを進めるなどして、コミュニケーションを活性化していき、ツールへの愛着を高めていくのも1つの手段です。これも分かりやすい体験の変化の1つではないでしょうか。

 そうですね。そのほうが、新しい仕組みがスムーズに定着しますし、昨今各社が取り組んでいるようなDXが自然と定着できるようなカルチャーの醸成にもつながるはずです。そのためにもServiceNowは、コンシューマーITが提供するユーザー体験をエンタープライズITの世界にも持ち込もうとしているのです。

本日は貴重なお話ありがとうございました。

労働人口の減少に伴い、企業成長を維持するために貴重な人材をいかに確保できるかが重要なのは明らかである。しかし、終身雇用を前提に成り立っていた企業と従業員の関係性に変化が進みつつある今、企業は働きやすい環境を提供できなければ、より環境の良い競合他社に優秀な人材を奪われてしまいかねない。

 働きやすい業務環境を支えるのがITシステムだが、エンタープライズITの世界ではユーザー体験の重要性はなおざりにされてきたのが実情である。生産性や業務効率をいかに高めていくかはもちろん、従業員を魅了して働きやすい環境を提供できるかどうか、それをいかにデジタル投資の中で実現できるかが、これからの経営者に課せられた重要な使命だと言えるだろう。

写真:写真:長谷川 秀樹氏と原 智宏氏

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