Vol.1

データドリブンな意思決定を実現する
「データクラウド」とは?

Vol.2

「変わる世界、変わる規制」の中で
データ活用を拡げるためのポイントとは?

Vol.3

Snowflakeが目指す
「データをモビライズした世界」とは?

提供:Snowflake

「変わる世界、変わる規制」の中でデータ活用を拡げるためのポイントとは?

株式会社インテージ
常務取締役 CMO
村上 清幸

Snowflake株式会社
セールスエンジニアリング シニアマネージャー
井口 和弘

ビジネスのあらゆる場面で「データ活用」が身近となり、多くの企業がデータに基づいて意思決定を行い、事業戦略を遂行する「データドリブン経営」へと舵を切りつつある。一方、日本の個人情報保護法や欧州連合(EU)のGDPR(一般データ保護規則)、米国のCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)といったプライバシー保護やセキュリティー対策、ガバナンス強化を求める規制が続々と登場し、さらにブラウザーのクッキーレス化といったプラットフォーマーによる自主規制も予定されるなど、データ活用を取り巻く環境は大きく変化し始めた。このような時代を迎え、企業が安全にデータを活用するためにはどんな取り組みが必要になるのか。大手マーケティングリサーチ会社のインテージにてCMO(Chief Marketing Officer)を務める村上清幸氏と、データクラウドを提供するSnowflakeの井口和弘氏が意見を交わした。

コロナ禍で高まるデータ活用への期待

写真:村上 清幸 氏

株式会社インテージ
常務取締役 CMO
村上 清幸

―― 新型コロナウイルス禍の中、多くの企業がデータを収集・分析し、自社のビジネスへ活用することに目を向け始めています。実際に各業種業界あるいはデータ活用の現場では、どのような変化が見られますか。

村上インテージはマーケティングリサーチ会社として、さまざまな業種業界の企業に対して販売動向などの市場データを提供していますが、コロナ禍のこの2年で大きく変わったと実感するのは「人のリアルな行動」です。特に小売業界では、売れ筋商品が従来と大きく変わってしまったこともあり、何が起きているのかを知るために顧客の行動データを分析・活用しようという機運が高まりました。従来はバイヤーや店長の経験や勘で何とかなっていましたが、コロナ禍によりそれがまったく通用しません。

 過去の姿に戻るかどうか分からないこれからの時代、消費者の動向を機微に捉えて予測ができなければ、企業の事業戦略や投資計画にも大きく影響してきます。そこでPOSデータだけでなく、商圏・時間帯別の人流や売り上げなどの詳細なデータを複合的に分析・活用することに目を向け始めたわけです。こうした変化は業種業界を問わず、多くの企業で見られます。

井口これまでもDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する中で、多くの企業がデータドリブン経営を進めてきましたが、コロナ禍によってその動きが加速していることは間違いありません。また、データ活用に対する考え方も変化しています。今までは経験や勘による、ある程度の仮説が成り立っていて、それを確認・立証するためにデータが使われていました。しかし、これからの不透明・不確実な時代に、単にデータを蓄積して過去を振り返るのではなく、機械学習やデータサイエンスを取り入れて未来に何が起きるのかを正確に予測したいという企業が増えています。これはデータプラットフォームを提供する私たちが強く感じていることです。

データ活用を取り巻く課題

写真:井口 和弘 氏

Snowflake株式会社
セールスエンジニアリング
シニアマネージャー
井口 和弘

―― とはいえ、企業によってはデータ活用がなかなか進まないという悩みも抱えています。そこには、どのような課題があると見ていますか。

村上本来、データの分析結果に基づく中長期的な目標・指標に対して、全社で問題意識を共有しながらデータをビジネスに活用するというPDCAサイクルが理想ですが、そこまでに至らない企業は少なくありません。

 このようにデータ活用が進まないのには2つの要因があると思います。1つは個人情報保護の問題、もう1つはデータの囲い込みの問題です。どの顧客も自分の個人情報を好き勝手に使われることには抵抗がありますし、それを保護する法令も定められています。一方、企業は顧客データを囲い込んで優位性を持ちたがります。ここで興味深いのは、囲い込みの範囲が企業ではなく、社内の各部署という単位で起こりがちなところで、部署単位でデータを囲い込んでしまうために全社での横断的なデータ活用ができないという企業もあります。ただし、これは各部署の役割によって必要なビジネスデータがまちまちであり、かつ情報保護の観点から社内であってもデータ統合が非常に難しいからです。このような問題が顕在化してきたことに課題があると見ています。

井口システムの視点から見て、各部署に蓄積された粒度の細かいデータを詳しく分析しようとなると、必然的にデータがものすごい量になります。そんな膨大な量のデータを蓄積・分析するためのシステムを整備・運用するには、コストも工数もかかります。そうしたコストや工数と、データ分析によって得られる効果のバランスをどのように見ていけばよいのか、というところに悩んでいる企業も多いのが実情です。その結果、自分たちが本当に必要なデータだけをそれぞれ持つことになり、社内にあるデータがサイロ化していきます。 一方、データを扱う際に一番大事なのはセキュリティー対策とデータ保護です。しかしながら、サイロ化して個別のシステムに保管されたデータそれぞれを漏れなく保護していくことは困難を極めます。日本では改正個人情報保護法、欧州ではGDPRといった法令による規制が施行され、IT業界でもクッキーレスといった自主規制の動きがあるなど、すでに個人情報保護をはじめとするデータガバナンスの強化は企業にとって必要不可欠な取り組みです。その上でデータを統合しつつ、大量データのパフォーマンスとコストの問題をクリアし、個人や社会全体の利便性を追求するためのデータ活用をどのように進めていくかが、今のトレンドになっています。

法規制の中で企業が取るべき施策

―― 課題として情報保護に関する指摘がありましたが、その中でデータ活用を進めるために企業はどのような対応が必要でしょうか。

村上顧客にとっては自分の個人情報が使われることで、より利便性の高いサービスが受けられるのではないかという期待があるものの、何にどう使われているのかが見えないことに懸念を抱いています。このような顧客の懸念を払拭するには、不安があればデータの提供を拒否できることを丁寧に説明し、理解を深めてもらいながら、企業の信頼感を高めていくことが必要です。

 一方の企業にとって、本当に元データ(RAWデータ)や個人情報が必要になるような場面は、実は整理するとそれほど多くないのではないかと思います。例えばマーケティングの領域では年齢やエリア、業態に区切ってセグメントを設定して戦略を立ててきました。ここにデータを活用するわけですが、20代の女性といっても、いろいろな職業や価値観、嗜好性などを持っていますので、大きすぎず小さすぎない効果的なセグメントをつくってマーケティング戦略に役立てていくという方向性も考えられます。つまり、必ずしもone to oneのアプローチばかりが重要というわけではないのです。

井口おっしゃる通り、個人情報が含まれるRAWデータを抽象化・匿名化した上で、さらに企業間でクロスマッチングをして傾向や価値を見いだすという手法が非常に重要だと思っています。

 そこで、Snowflakeでは「データクリーンルーム」というテクノロジーを提供しています。これは、格納したデータを必要に応じて匿名化・仮名化・抽象化するなど情報を保護したまま安全に共有できるデータプラットフォームです。例えばデータを所有する側がRAWデータの個人を特定できる部分を秘匿化して権限を設定し、データを利用する側が必要な粒度で効率的かつリアルタイムに参照することが可能になります。

村上Snowflakeのデータクリーンルームは、データ活用のブレークスルーにつながるテクノロジーとして当社も非常に高い関心を持っています。どの企業も自社の利益や信頼を守るために、所有するデータが競合他社に転用されたり、改ざんされたりすることを強く警戒しています。しかしSnowflakeのデータクリーンルームならば、法令や規制に従って保護しなければならない情報を抽象化し、安全にデータを共有することが可能になります。

 ただし、このデータクリーンルームがどのような仕組みになっているのか、データがどのように抽象化されて何に使われるのかといったことを広く周知し、企業や個人に理解してもらうことは大切です。その上で、このようなデータクリーンルームが標準化していけば、データ活用を高度化する最善の技術的アプローチになると考えています。

データ活用を拡げるために大事なポイント

―― 最後に、これまでの話を踏まえ、企業のデータ活用において重要だと思われるポイントについて教えてください。

村上1つは仕組みと技術を企業と顧客がそれぞれ理解していることです。データの保護と利益の確保という課題が、改めて現状の仕組みと技術で守られるかを考える必要があると思います。もう1つは標準化です。事業者ごとにデータの取り出し方も活用の条件も違う状況では、スピード感を持った安心・安全なデータ活用は達成できません。われわれは協調領域と競争領域という言葉をよく使いますが、データの活用には協調領域で取り組む必要があると思います。企業間の垣根を越えてデータの使用や活用の仕方を標準化させることで、共通の指標を持って効率的にデータの活用ができます。協調してつくり上げた標準化の土台の上で、各企業がそのデータを活用して競争していくことが大切です。

 インテージのリサーチ事業としても、こういった取り組みを積極的に進めています。この標準化のためにも、基本的なガバナンスチェックの仕組みやデータ活用のポリシーを定めることは重要ですね。

井口標準化においてはまさに、Snowflakeはさまざまな企業がデータを活用できる共通の基盤をデータマーケットプレイスというサービスで提供しています。この基盤をもとに標準化のためのデータの粒度や活用のルールを合わせていくという部分では、さまざまな業界企業の方と一緒になってお手伝いしたい、盛り上げていきたいという思いがあります。まさに、われわれが提供するプラットフォームの中で、コンテンツも含めたビジネスのネットワーキングを日本の市場につくっていきたいですね。

写真:村上 清幸 氏 / 井口 和弘 氏 写真:村上 清幸 氏 / 井口 和弘 氏
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