次世代が担う街づくり 若手活躍現場Report

提供:東急不動産

東急不動産 都市事業ユニット
渋谷開発本部 プロジェクト推進部 事業企画グループ(当時)
西出章人さん

Vol.2フォレストゲート代官山 サステナブルを都市の中に 新たな複合施設での若手の挑戦

東急不動産 都市事業ユニット
渋谷開発本部 プロジェクト推進部 事業企画グループ(当時)
西出章人さん

2023年10月、東急東横線・代官山駅の目の前に新たな複合施設「Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山)」が誕生した。シェアオフィスと賃貸住宅、商業施設を備えたメイン棟と、循環型経済を実践する場「TENOHA 代官山」からなる複合施設という、東急グループが掲げる広域渋谷圏(Greater SHIBUYA)戦略において重要なポジションとなる。このプロジェクトに新卒入社後すぐの2019年から加わった西出章人さんに、この施設がもたらす街の未来と、ご自身の成長について聞いた。

TOPIC01 代官山に誕生した
奥行きのある森

その森を抜ける道は、代官山という街の入り口であり、いつも新たな発見をもたらしてくれる森の奥深さを感じさせてくれる道でもある。東急東横線の渋谷からひと駅、代官山の駅を出るとすぐ目の前にその森、「Forestgate Daikanyama」はある。

まず迎えてくれるのは、木造2階建ての「TENOHA代官山」と名付けられた特徴的な建物で、その奥には商業施設とシェアオフィス、57戸の賃貸住宅で構成されるメイン棟が見える。入り口から続く小径は、TENOHA棟の横を過ぎ、木箱を積み上げたような形状と豊かな植栽が“森”を想起させるメイン棟のなかを通り抜けると、代官山らしい街並みのある八幡通りへとつながる。メイン棟を設計した建築家の隈研吾氏は、この小径を「洞窟のよう」と表現する。

メイン棟の外観

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TENOHA代官山の外観

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1:建築家の隈研吾氏によって設計されたメイン棟は“木箱”を積み上げた形状 2:TENOHA代官山は岡山県西粟倉村の間伐材を利用。再利用可能でゴミを出さない建築になっている

「もともとこの場所は、1955年に当社が日本初の外国人向け高級賃貸アパートをつくった場所です。以来、ずっと大切にしてきた土地で、深い理解と思い入れもありました。この場所から何かを発信したいという機運が社内にもありました」(西出さん)

プロジェクトへの思いを語る西出さんの写真
東急不動産 都市事業ユニット
渋谷開発本部 プロジェクト推進部 事業企画グループ(当時)
西出章人さん

TOPIC02 メイン棟とTENOHA棟
それぞれの役割

渋谷の隣でありながら、住む人も多く、こだわりを感じさせるお店が並び、洗練されたイメージのある代官山。そんな街の入り口に誕生したForestgate Daikanyamaには、「職・住・遊 近接の新しいライフスタイル」を提案するというコンセプトが掲げられた。

Business-Airport Daikanyamaの写真

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ソーシャルキッチン代官山の研究室の写真

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1:Business-Airport Daikanyamaのシェアワークプレイス 2:食を通じた課題解決や、広域渋谷圏における新しい価値提案のプラットフォーム「ソーシャルキッチン代官山」として、研究室などの設備が充実している

「低層の建物が立ち並ぶ代官山は、そこに住む人と街を訪れる人が緩やかに混ざり合う、渋谷の中でも個性的な街です。私自身、住と遊の観点は代官山にあると思っていましたが、新型コロナウイルス禍を経て働き方も変わりつつあるなか、これまで代官山に『職』のイメージを持たれなかった方々も含めて、ここに来るきっかけをつくるという観点でシェアオフィスの需要もあると思いました。メイン棟は住宅とシェアオフィス、商業施設の3つの用途それぞれが緩やかに混ざり合う、コンセプトを具現化する建物です」(西出さん)

それに対し、駅前に建つTENOHA棟は岡山県西粟倉村の間伐材を構造材に使用した2階建て。ここにはカフェとイベントスペースがあり、屋上には種類豊富な野菜が植えられた菜園が広がる。また、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の活動拠点としての役割も与えられているという。

TENOHA代官山の屋上菜園の写真

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カフェで提供されるメニューの写真

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1:TENOHA代官山の屋上菜園。屋内には植物工場も併設。 2:カフェのメニューは屋上菜園や植物工場で栽培した食材を使用し、「店産店消」で提供されている

「これがサーキュラーエコノミーだという明確な答えを提示するのではなく、その答えをここの運営に携わる方や施設を訪れた方々、住民の方々と一緒になって探していく場所がTENOHA棟です。われわれ東急不動産も、単に建物を提供するだけではなくプレーヤーの一員として一緒に肩を並べて、ノウハウやアイデアを出しながらサーキュラーエコノミー活動(CIRTY)を進めていきます。こうしたサステナブルな取り組みから生まれる気づきこそ、新しいライフスタイルには不可欠な要素だと考えています」(西出さん)

サーキュラーエコノミー活動「CIRTY」

カジュアルに循環型社会に対する意識をインプットし、
小さいアクションを起こすという循環を誘発する場を目指す

イメージ図

TOPIC03 裁量を持つことで生まれる
責任と成長

西出さんは2019年に東急不動産に入社し、1カ月の研修を終えるとすぐにForestgate Daikanyamaのプロジェクトに加わったという。

「代官山は、私にとってそれまで実はあまりなじみのない街でした。だからこそ代官山のことを知りたいとフィールドワークをしながら、お住まいの方や働かれている方など、たくさんの方とお話ししました。皆さん強い思いがあって、つながりも強い。それに1人ひとりの顔がよく見えるまちだと感じられました」(西出さん)

そんなまちの新たな顔を生み出すプロジェクトに参加することに、「期待感を持って取り組んだ」と話す。

「デベロッパーとして働く理由に、1つのコンセプトのもと統一感を持ってまちづくりに取り組むという大きなテーマが、自分のなかにありました。ですから代官山という場所に携われることにポジティブな感情がありましたし、実際にプロジェクトを進めていくなかで、裁量を与えてもらいながら自分の思いを実現することができている実感がありました」(西出さん)

そうした西出さんの姿を一緒にプロジェクトを進める仲間として見ていたのが、日建設計の坂本隆之さんである。坂本さんは日建設計のなかで、企業や施設が目指すコンセプトを企業の担当者と一緒になり、言語化・立案し、具体的に計画に落とし込む具現化までを業務としている。

インタビュー中の坂本さんの写真
日建設計 企画開発部門 コモンズグループ
エモーションスケープユニット ダイレクター アーキテクト
坂本隆之さん

「デベロッパーという事業者目線ではなく、生活者の目線から感じたことを素直に発言することはとても大切なことだと思います。西出さんは、コンセプトに基づき『こんな暮らしがあったらいいね』とユーザーの姿をイメージし、言語化されていないものともしっかり向き合って、自分が何を感じたのかを素直に発言されていました」(坂本さん)

若手社員にとって、感じたことを先輩や上司、社外の人に向けて発言することはたやすいことではないと坂本さんは言う。

「それができる社風がありますし、何より裁量を持たせることで、西出さんの立ち振るまいによって物事が進んでいくことが実感できた。これは、得難い経験になったのではないかと思います」(坂本さん)

西出さんはメイン棟全体の設計について、商業施設、オフィス、住宅を担当し、特に住宅においてはForestgate Daikanyamaを象徴するような「ライフスタイル提案住戸」を担当した。ライフスタイル提案住戸は、メイン棟を設計した隈研吾氏や、敷地全体で400種もの植栽をデザインした株式会社DAISHIZENの齊藤太一氏、フードエッセイストの平野紗季子氏の3人が、これからの時代に向けた個性が際立つ住戸をデザインするという斬新なアイデアである。

室内の写真

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室内の写真

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室内の写真

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1:隈研吾氏がプロデュースした「半分くつろぎ半分整う家」は、自分自身と向き合う究極のOFF空間 2:齊藤太一氏がプロデュースした「森のすみか」は、森の中の静かで豊かな暮らしがコンセプト 3:平野紗季子氏プロデュースの「Allday Dining House」は食卓が暮らしの中心になるよう企画されている

「御三方からいただいたアイデアを形にして事業として成り立たせるために、日建設計の坂本さんをはじめ多くの方々といろいろな案を出し合いながら進めました。そのすり合わせが私の一番重要な仕事だと思っており、アイデアを最大限尊重すべく事業面での課題と照らし合わせながら、結果として関わった方々から『課題はあったけど、それがむしろいい方向へ動いたね』と思ってもらえるような取り組み、形にできたと思います」(西出さん)

TOPIC04 人とのつながりが
学びを産む

ライフスタイル提案住戸という、際立った特徴のある試みへの取り組みを含めて、坂本さんは西出さんの“成長”を感じたという。

「企画の前半では、コンセプトから思い描いたストーリーを紡ぎました。後半では、そうしたストーリーを誰とどう実現してゆくのかという検討を行いました。複合施設という難しさ、予算もある中で、特に後半は難易度の高いフェーズと言えます。とりわけライフスタイル提案住戸は、暮らしの魅力を発信する“起爆剤”になるようなチャレンジです。最後はソファー1つ選ぶにも、照明の角度を考えるにも、本当に細かな検討や確認が必要になりますが、きちんと判断してもらいました。西出さんは、プロジェクトのフェーズに合わせて、その都度必要とされる振る舞いをされていましたね」(坂本さん)

インタビュー中の坂本さんと西出さんの写真

社会人として最初に携わったForestgate Daikanyamaという大きなプロジェクト。さまざまな経験をした今、西出さんは何を思うのか。

「物事を進めるにあたり、任せてもらえているという感覚があり、失敗も含めてたくさん学び、成長できたと思います。自分が思うことを精一杯できたのは、会社との信頼関係があるからです。それに加えて、坂本さんをはじめとした社外の方々からもたくさんのことを学ぶことができました」(西出さん)

社会人1年目から携わったプロジェクトが、これから代官山というまちとともにどのように成長していくのか。自身のこれからと重ね合わせながら、西出さんはまた新しい一歩を踏み出していくのだろう。

フォレストゲート代官山の模型と撮影した、西出さんと坂本さんの写真

COLUMN 「TENOHA代官山」から見えてくる
“サーキュラーエコノミー”のあり方

インタビュー中の八島氏の写真

RGB Inc. 代表取締役
八島智史氏

TENOHA代官山の棟内の写真

Forestgate Daikanyamaを象徴するものの1つとして存在感を放つ「TENOHA代官山」では、都市のなかで“サーキュラーエコノミー”(循環型経済)をキーワードとした取り組みが行われている。そのアイデア段階から東急不動産と共にプロジェクトを進めてきたのが、RGB株式会社の八島智史氏だ。

「サーキュラーエコノミー活動には、一つの“正解”というものはないのではないかと思います。完璧なものを追い求めるというよりは、都市の中におけるサーキュラーエコノミーとはどのように実践できるのか?を模索し、様々にチャレンジしていける活動をしていきたいと考えています。Forestgate Daikanyamaの住人の皆さんはもちろん、街を訪れる方、さらに企業の方も混ざりながら、新しい“ライフスタンス”を考えていく場にしたいと思っています」(八島さん)

TENOHA代官山では、施設から出た食品廃棄物を利用して発電し、その電気をメイン棟に還元しつつ発電時に出る残渣を堆肥として再利用し、協力農家と連携して野菜や果物の栽培に生かすという試みが行われている。そのほかにも“ハードル”を下げた、楽しみながら生活に取り入れられそうな取り組みが用意されている。

「取り組みとしては何より継続していくこと、持続可能なことが大切だと思っています。まずは日常のお買い物や食事などの体験から、サーキュラーエコノミーやサステナブルに気づくきっかけを提供していきたいと思っています。代官山は都市にありながらどこかローカルなたたずまいもあって、単に消費するだけではない豊かな生活を実践したい人が集まるエリアだと感じています。新しい“ライフスタンス”を代官山から発信することは、とても意義があるのではないでしょうか」(八島さん)

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PROJECT LIFE LAND SHIBUYA 人とはじめる“渋谷の街づくり”

東急グループが掲げる「広域渋谷圏」では、ハードを担う開発が順調に進んでいる。同時に広域渋谷圏の魅力をさらに向上させるソフトの面でも、興味深い取り組みが並走している。「PROJECT LIFE LAND SHIBUYA」は、まちづくりを共に行う「人」にフォーカスし、「人とはじめる」をコンセプトにしたコンテンツを展開している。すでにPROJECT LIFE LAND SHIBUYAのオウンドメディアでは、クリエーターやデザイナーなど、広域渋谷圏を共につくる多様な「人」のインタビューが掲載され、より具体的に広域渋谷圏で描くまちの“かたち”が見えてくる。従来のようなデベロッパーが常に主体となったまちづくりとは違う、東急不動産の描く未来の渋谷を体感するのが楽しみである。

※広域渋谷圏とは、東急グループの渋谷まちづくり戦略において定めた、渋谷駅から半径2.5kmのエリアのことを指す。

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