次世代が担う街づくり 若手活躍現場Report

提供:東急不動産

東急不動産
代表取締役社長
星野浩明

慶應義塾大学大学院商学研究科教授
経済学博士
鶴光太郎

Vol.4特別対談 「挑戦するDNA」がもたらす 成果を生み出す人財の育て方

東急不動産 代表取締役社長
星野浩明

慶應義塾大学大学院商学研究科教授 経済学博士
鶴光太郎

これまで3回にわたり、東急不動産若手社員の活躍をリポートしてきた本シリーズ。そうした活躍はどのような企業文化から生み出されるのか。「挑戦するDNA」と「社会課題の解決」という理念を浸透させ、若手のみならず、ダイバーシティへの取り組みを推進する人財戦略について、慶應義塾大学大学院の鶴光太郎教授と東急不動産代表取締役社長の星野浩明氏の対談により紐解いていく。

TOPIC01 社員の心にある
社会貢献への思い

鶴 若手の活躍ということでこれまでの3回の記事を拝読しました。まさかここまでとは思わず、驚くとともに感銘を受けました。3人のうち2人は、入社してすぐにプロジェクト全体を見る立場を任されていましたが、右も左もわからない人にそうした仕事を任せるのは企業にとってとても勇気のいることです。

それから顧客と自社の関係だけでなく、社外の方と協業してプロジェクトをつくり上げる経験を若いうちにできることも成長につながりますね。特に北海道松前町で風力発電事業に携わっている方は、地域の方々のなかに自ら飛び込んで人間関係をつくり、信頼を得ながらそれを仕事へとつなげていく姿は印象的でした。

インタビュー中の鶴教授の写真
慶應義塾大学大学院商学研究科教授 経済学博士
鶴光太郎氏

星野 東急不動産では、企業理念に「挑戦するDNA」を掲げています。それを途切れさせることなく挑戦し続けること、常にチャレンジングな方へ向かうことが企業としての生きる道だと思っています。

そうしたなか、若い社員の活躍はとても頼もしいものがあります。それぞれの事業のなかで勉強をしながら、他社の方々とも力を合わせ、地域の方々の気持ちを聞いて理解しようという努力をしてくれているので本当に助かっています。

鶴 いま、日本のあらゆる企業において“パーパス(存在意義)”が非常に重要になっています。企業にとって利潤の最大化は本来の目的であり、それなくしては生き残れません。しかし、それだけでは企業として発展しませんし、優秀な人財も来てくれません。ポイントとなるのは、企業の活動による社会への貢献、その企業が“何を目指しているのか”です。

若い人に関わらず、従業員は自分たちの仕事がどれだけ社会に貢献しているのかを感じられるかどうかが大切で、社会へ貢献したいという思いからインフラ系の企業を志望する学生も多くいます。

御社では、若いうちから仕事の面白さはもちろん、営利企業の一員でありながら社会に貢献していることを感じて仕事をしているのが伝わってきました。

星野 ご評価いただきありがとうございます。当社の企業理念にはもう1つ「社会課題の解決」があり、全社員に浸透しています。地域貢献において、公な事業ではないものの、公が目指すものに近いことを経済活動のなかで行っていくことが重要で、もうけだけとか、ひとりよがりな思いではいけないと考えています。

それぞれの地域や関係者のみなさまの考え方に寄り添った上で、開発を進めることが大切です。そのためには地域の方々の考え方を理解するために、対話を積極的にしていく必要があると考えています。毎日の接触のなかから、本当の意味での希望やニーズをお伺いし、それに向き合いお応えしていく。ここをしっかり考えようという思いがあります。

インタビュー中の星野社長の写真
東急不動産 代表取締役社長
星野浩明氏

TOPIC02 連綿と引き継がれる
挑戦の経験

星野 理念の浸透を図るために必要なこととして、人財戦略を掲げています。その1つに「働きがいと働きやすさの向上」があります。仕事ですから、日々のなかで苦しいこともあるかもしれませんが、それと同時に働きがいを感じることもあるのだと思います。

9時から17時まで働いて何の負荷もなく一日を終えるだけでは足りず、時間外に勉強する時間を自ら設定するといった機会もあるでしょう。そういった自己研鑽によって成長していくと人から信頼を得られるようになり、より大きな相談につながる、という好循環が生まれる可能性もあります。

鶴 私も学生によく言うのは、成長というのは「自分にはできない」と思っていることを、それでも頑張って取り組んで達成できたときに、実感できるということです。一度、成長の実感を得て成果が出ると、さらに上を目指そうと好循環し成長が止まらなくなりますよね。だからこそ重要になるのは、いかに社員に挑戦する場を用意できるかではないかと思います。

星野 人は誰しも、失敗しようと思って臨む人はいません。何とか成功させたいと、しがみついていく気持ちを発揮してほしいと思っています。そこに「挑戦するDNA」があります。当社ではみんな新人のころに、上司から「やってみたら」と背中を押してもらい「挑戦」して成長できたことを体感していて、それを次の若い世代へと伝えているだけなんです。われわれからすると、特に稀有(けう)な環境とは捉えていません。だから、当社の社員は自ら、「うちはボトムアップ型の会社です」と自然に言えるのだと思っています。

基本的にゴーサインを出した案件は、若手に権限を与え任せています。それによって企業としても、若い感性を取り入れた斬新な開発やサービスを生み出すことができています。

インタビュー中の鶴教授と星野社長の写真

TOPIC03 風通しの良さは
伝統的な社風

鶴 企業において、同質的な人間ばかりではイノベーションは起こりません。いろいろな考え方の人、多様な人財が組織にいてイノベーションを起こすことができます。その点、御社はダイバーシティも推進されていますね。

星野 人財戦略として「多様性と一体感のある組織づくり」を掲げています。そもそも、本社のある渋谷はまさしく多様性の街ですから、ダイバーシティの感覚は意識せずとも社内に醸成されています。ただ、会社としてダイバーシティを進めていく上で、助けになる制度や仕組み、考え方といったものは会社が用意していかなければいけません。それが「働きやすさ」にもつながると思っています。

当社は従業員1000人程度の企業ですから、私も社員の顔とどんな仕事をしているかは、およそイメージがつかめる距離感でおり、上下の風通しがいいと自負しています。新型コロナウイルス禍以前は駅伝大会を行っていましたが、私が社長に就任した昨年は社内で運動会を実施しました。各チームのトップを役員にして点数を競ったのですが、もちろん私も参加し、終わった後にはチームのみんなと車座で乾杯をしました。ほかにもバスケットボールの観戦イベントなど、一体となった組織になれるような取り組みを社員の発案で積極的にしています。

鶴 年齢や性差の違いのある組織において、うまく混ざり合うには風通しの良さという言葉に象徴されるようなコミュニケーションがポイントだと思います。社会状況が大きく変わるなかで、柔軟に変化し成長している企業の特徴はそこにあります。みんなが同じ目線で議論できることは、課題を解決していく上で大切な環境なのだと考えます。

インタビュー中の鶴教授の写真

TOPIC04 退職者の知見も生かす
開かれた人事制度

鶴 ダイバーシティに取り組むなかで、制度面はどのように工夫されているのでしょうか。

星野 出産や子育て、介護など個々人のライフイベントに合わせた福利厚生やキャリアアップにも挑戦しやすい環境づくりをしています。男性の育児休業もかなり早くから推進していますし、シニアの方々にも活躍していただいており、知恵や経験のバトンを次の世代に渡していくということが実際に起きています。

一方で、“セーフティネット”も用意しています。疾病による休職はもちろん、配偶者が海外勤務になったときに付いていくといった場合に休職を一定期間認める制度があります。戻ってきた際にもう一度働くチャンスを用意して、当社を盛り上げようという意欲のある人が働けるようにしています。

ほかにも、退職された方々に対する「アルムナイ組織」を設けました。年に一度、集まって退職された方々からも知見をいただいています。そのなかで、「当社を退職し外の世界でチャレンジしたが、やはり当社でもう一度キャリアを積み活躍したい」という場合には、受け入れるようにしています。外の世界を見たことによって新たな目標を得て、それを達成するために当社で能力を発揮されることを期待しています。

インタビュー中の星野社長の写真

鶴 まず休職に対する制度には驚きました。手厚くするのはハードルが高いですが、社員のウェルビーイングを高めることには大きな効果があります。従業員のウェルビーイングと企業のパフォーマンスの相関は高いという分析結果もあり、ウェルビーイングに積極的に取り組む企業は業績を伸ばしている印象があります。

そしてアルムナイ組織については、私もとても重要なキーワードだと思っています。これに取り組んでいる企業は、間違いなく先進的な企業だと言えます。というのも、いわゆる伝統的なメンバーシップ型の企業は、一度会社を出て行った人を裏切り者と考えます。でも、実際にはそうではありません。その人が社外でさらなるネットワークを構築して、また戻ってきてもらえるとしたら、人財としてパワーアップしているわけです。自社に戻らなくても何らかの関係を持ち続けることが、その会社にとっては必ずプラスになるという発想はとても大事だと思います。

星野社長のお話を伺っていて、人的資本経営と世の中で騒がれるはるか以前から、御社は重要な人財戦略に取り組まれていたことがよくわかりました。

星野 当社の取り組みをご評価いただいたことで、さらに自信を持ってこれまで考えてきたことを進められるという思いです。人と人がつながればつながるだけ良くなっていくのが不動産業ですので、これからも企業理念を根本に据えながら、人財戦略を推し進めていきたいと思います。

取材後、東急不動産オフィスで撮影した、鶴教授と星野社長の写真