提供:英国国際通商省

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英国のクリーンテクノロジーが実を結ぶ

 インドの生分解性プラスチックから、中国でのフードシェアリングアプリ、そしてパイナップルを原料とするフィリピンのファッション素材に至るまで、アジア諸国と英国のパートナーシップが持続可能な消費をけん引している。


 緊急を要する環境問題に対して、人々の意識が急速に高まっている。各国の政府にとって環境に配慮した解決方法を模索することが喫緊の課題となってきている。インドは2019年、水路が汚染され海洋生物の生態が脅かされるプラスチック廃棄物を管理する取り組みの一環として、使い捨ての薄いビニール袋の使用を禁止した。もちろん生態系にとってはよい施策だが、これによって新たな問題も浮上した。生分解性プラスチック関連のテクノロジー企業、ポリマテリア(Polymateria、本社:ロンドン)のCEO、ニール・ダン(Niall Dunne)氏によると「食べ物を何に入れるか」という新たな課題が浮き彫りになったという。

 インドの食品会社の多くは、禁止された薄いビニール袋について、厚く高価なプラスチック素材に切り換えることによって、この問題を解決しようとした。ダン氏によると、パッケージの厚みを2倍、3倍にしなければならず、それにつれてコストも2倍、3倍になったという。その費用は各社が負担しているのが実状だ。

 ポリマテリアはインドにおけるこうした状況に対して独自の解決策を提供している。南アジアで多くの企業などに導入されている方法だ。ロンドンにある理工系の大学、インペリアル・カレッジ・ロンドンで行われた科学研究からスピンアウトしたポリマテリアは、産業界とインド政府の支援を受けながら生分解性プラスチックを製造・供給している。薄型ビニールやプラスチックとは異なり、使用禁止の対象外になる。

 この環境にやさしいプラスチックは、従来の材料よりも1割ほど割高になるが、より厚いプラスチックに比べれば、費用は節約できて、しかも環境へのメリットも十分にある。

 標準的なポリプロピレンで作られたプラスチック製のビールグラスは、廃棄後に何十年も残ってしまう。ポリマテリアによると、同社の“ライフサイクル(Lyfecycle)”という材料で作られた、環境にやさしいグラスは336日以内には分解されるという。分解される際にも、マイクロプラスチックの破片が断片化されるようなことがないため、破片が海や水路に大量に流れ着くこともない。この革新的な高分子(ポリマー)素材は溶解されて、微生物が食べることができるワックス状の汚泥(スラッジ)になる。

 通常のプラスチックと添加剤を組み合わせて、プラスチックを確実に分解する同社のバイオトランスフォーメーション技術は、英国の生分解性技術における新たなスタンダードづくりに貢献した。ポリマテリアは、インド政府の中央プラスチック工学技術研究所と協力して、インドにも同じ基準を適用している。その結果、インドのフイルム製造大手、マックス・スペシャリティ・フィルムズ(Max Specialty Films)をはじめ、カップ麺の容器、アイスクリーム用のカップ、ラッピング用包装フィルムなどにポリマテリア製のプラスチックを使用するインド企業が増えている。

 マックス・スペシャリティ・フィルムズのCEO、ラムニーク・ジェイン(Ramneek Jain)氏は語る。

「プラスチック汚染との闘いにおいて、ポリマテリアの“ライフサイクル”テクノロジーをフィルム製品に活用することによって、インド有数のプラスチックのイノベーターとして貢献できて光栄です。このような革新は進歩を遂げるためには必要なことです」

 ポリマテリアのCEO、ダン氏も「インドはその規模と影響力を考えると、プラスチック汚染対策の重要な地域です。インド産業界の支援にも感謝しています。インドの政策立案者と協力して、この技術がさらに大規模に導入されることを期待しています」と話す。

 英国国際通商省南アジア貿易担当長官のアラン・ジェメル氏は「インドの事例は世界がこれからさらに経験すべきイノベーションであり、コラボレーションです」と述べる。

 食料関連で環境に害を及ぼすのは包装だけではない。食料そのものの廃棄も大きな問題だ。世界で生産される食料の約3分の1(約13億トン)が毎年廃棄されているが、先進国においては約6800億ドル(約78兆2000億円、1ドル=115円換算)、発展途上国では約3100億ドル(約35兆6500億円、同)に相当する。

 こうした無駄を減らすため、英国の企業オリオ(Olio)は、近隣の住民同士や、住民と地元企業をつなぐ携帯電話アプリを開発し、地元の店舗で販売期限を迎えた食品や、余分になってしまった野菜、個人の冷蔵庫の残り物などの余剰食料の共有を可能にした。このアプリのユーザーは既に500万人を超えているが、そのなかには中国の北京、成都、大理、広州、無錫(むしゃく)、延辺の約千人を含んでいるという。このアプリは、これらの地域で今後、高い成長が見込まれている。オリオのアプリは2030年までに10億人のユーザーの利用を目指しているが、中国で特に大きな成長を予想しているという。

 オリオの共同創設者であるテッサ・クラーク(Tessa Clarke)氏は語る。

「この目標を達成し、食品廃棄の問題を解決するという最終のゴールを達成するためには、アジア太平洋地域での事業をさらに拡大していく必要があります。当社はまず9万5000人のユーザーが、週に数千件という余剰食品を共有しているシンガポールに注力しています。シンガポールはアジア太平洋地域での拡大の足掛かりとなる素晴らしい拠点と考えています」

 持続可能な製品にする、もうひとつの方法は環境にやさしい原材料の開発である。ロンドンに拠点を置くカーボンニュートラル企業のアナナス・アナム(Ananas Anam)は、これに成功している。同社は、収穫後のパイナップルの葉から抽出した繊維で「Piñatex®」と呼ばれる“バイオレザー”素材を作り、フィリピンの農業コミュニティーとともに地域経済をサポートしている。他のパイナップル栽培国でも同じ素材の開発の可能性を模索しているという。

 英国とアジアの企業間パートナーシップのなかには二酸化炭素排出量の削減の一環として食品・飲料品の製造工程における環境負荷の低減を目指す動きもある。例えば、ロンドンを拠点とする企業、スーパークリティカル・ソリューションズ(Supercritical Solutions)は、日本のサントリーホールディングスの子会社、ビーム サントリーと協力して、スコッチウイスキーの生産時に発生する二酸化炭素排出量の削減に取り組んでいる。

 スコットランドのアバディーンシャー州ケネスモントにある、ビーム サントリーのアードモア蒸留所で働くスーパークリティカル・ソリューションズの研究者は、操業時の廃水を電気分解して、再生可能な水素源を生成できることを示した。その後、グリーン水素を蒸留所の熱または電力システムに戻して(ループバックして)、化石燃料への依存を最小限に抑え、最終的には化石燃料を排除することができるという仕組みだ。

 スーパークリティカルのCEO兼共同創設者、マット・バード(Matt Bird)氏によると、蒸留所のボイラーに水素を供給すると、加熱用の蒸気を生成するため、水素が(現在利用されている)天然ガスの代わりに使用できることを示していると話す。

 スーパークリティカルは2022年、ウイスキー製造容器の直下で水素を燃焼させ、直接加熱するという世界初の試験も計画している。これは、かつての石炭をベースにした、伝統的な“直接燃焼”方式のウイスキー製造方法を反映している。バード氏によると、加熱が不均等になることによって、ウイスキーの味が豊かになるという。

「熱くなる部分ができるので、蒸留プロセスでウイスキーに風味とコクが出る化学反応が起こります。安全すぎる、簡単すぎる、制御しすぎる間接蒸気では、その味がなかなか出せません」とバード氏は述べる。同社の研究によると、アードモア蒸留所は、2040年までに地域の天然資源のみを使うゼロカーボン操業が可能になるだろうという。

 ビーム サントリーの環境サステナビリティー部門のグローバル責任者、キム・マロッタ(Kim Marotta)氏は次のように語る。

「スーパークリティカル・ソリューションズ社と協力して、スコットランドの高地にある当社のアードモア蒸留所に対して最先端のグリーンテクノロジーが導入できることを誇りに思います。このパートナーシップは、英国政府からの支援があって初めて可能となりました。私たちは、変革が業界全体にもたらす可能性に興奮しています」

 サステナビリティーに関する取り組みは、一夜にして、すぐに何かを達成できるようなものではない。バード氏が指摘するように、ウイスキー製造は長期間を要するビジネスだ。10年以上の熟成が必要となると少なくとも10年先を見ていなければならない。

 これらの企業や他の英国企業が、今後も長年にわたって、アジアのパートナー企業と協力し、飲食物が環境に及ぼす影響を改善するため、革新的な視点を模索し続けるならば、より安全で環境にやさしい未来が望めるかもしれない。英国国際通商省南アジア貿易担当長官のジェメル氏によると、英国が2050年までにネットゼロを達成する法的義務を自国に課した最初の国である一方、インドをはじめとするアジア太平洋諸国も再生可能エネルギーと二酸化炭素削減に向けて高い目標を設定しているという。

「インドで経済的な原動力となっているマハラシュトラ州が野心的な気候変動対策の道筋を定めています。現在6800万人を超える人口を抱えるマハラシュトラ州内の43都市で、企業、都市、地域、投資家が、カーボンニュートラルな未来に向けて誓約する、国連の“ゼロに向けた競争(Race to Zero)”キャンペーンに取り組んでいます」と同氏は語る。

 これらのインドの都市は、モビリティー、クリーンエネルギー、廃棄物管理、クリーン建設の変革において先進的な事例となっています。英国とインドの(シリグリ)回廊地域に焦点を当てている英国国際通商省のジェメル氏は次のように述べる。

「目標を高く掲げたこれらの政策は、英国企業に重要な機会を生み出し、インドや、その他の地域においても英国の投資および輸出に新たな一章を開くことになるでしょう」

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