提供:英国国際通商省

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英国、アジア太平洋地域とのクリーンエネルギープロジェクトを推進

 浮体式風力タービンから巨大なバッテリーまで、英国企業はアジア太平洋地域のパートナー企業と協力して低炭素の未来を開拓している。


 英国北部のグラスゴーで開催されたCOP26会議(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)では、クリーンエネルギーの開発が世界中で進展していることが話題となった。気候変動は依然として緊急を要する課題であり、政府と民間は、各国の発表したゼロカーボン公約の目標達成を支援するため、必要な投資を行い、専門知識を活用しながら互いに協力していく必要がある。再生可能エネルギーの発展に重点を置く日本を例に挙げると、海岸線のある多くの国と同様、解決策として海に目を向けている。

 計画を策定するのが難しい陸上とは違って、海上で吹く風の強さは安定しているため、洋上風力タービンによる発電量がアジア太平洋地域では今後10年間で増加していくと予想されている。日本政府は、推進活動の一環として2030年までに洋上風力の発電能力を大幅に向上させたいとしており、今後10年間でさらなる増強が計画されている。

 岸田文雄首相はグラスゴーでのワールド・リーダーズ・サミットで「脱炭素社会を実現するため、日本は可能なかぎり再生可能エネルギーを導入し、特にアジアを中心としてクリーンエネルギーへの移行を先導していく」と語った。しかし、その日本にも課題がある。それは、島国を取り巻く海底が急激に深さを増すことだ。洋上ウィンドファーム(集合型風力発電所)に適した場所の多くは通常、海底に打ち込まれたタワーの上に設置される従来型の風力タービンには適していない。そこで、日本は水上に浮かぶ風力発電所という別の解決策を模索している。その実現のために英国企業に支援を要請した。

 英国は洋上風力発電の導入において世界をリードする立場にある。2020年に10GWだった洋上風力発電容量を30年までに40GWに拡大することを計画している。これには1GWの浮体式洋上風力が含まれている。業界の規模が非常に大きいため、英国政府は現在、タービンブレード、タワー、基盤などを製造する業者から、変電所、海底ケーブルの製造や配備が専門の企業にいたるまで、サプライヤーのエコシステム全体を支援している。

 スコットランドのアバディーンに本拠を置くフローテーションエナジー(Flotation Energy)は、最小300MWの浮体式風力発電プロジェクトに適した日本国内の候補地を探している。同社は第1号プロジェクトとして新潟沖に500MWの浮体式風力発電所の設置を予定している。「世界をリードする洋上浮体式風力産業の確立を日本で支援したい」という。

 フローテーションエナジーのアジア・オーストラリア担当ディレクターのティム・ソーヤー(Tim Sawyer)氏は語る。

「日本の大陸棚は非常に急勾配です。提案された底部固定の風力発電プロジェクトの場所はすべて海岸から1km~3km以内でした。深い水域に入ると、強い風力資源にアクセスでき、かつ、漁船のような他の主要な海洋利用者からも一定の距離を置くことができます。浮体式洋上タービンなら海岸で組み立てられ、所定の位置にけん引することができるため、より大きく強力にすることが可能です。浮体式風力タービンは、日本で多く発生する地震や津波に対する耐性も高くなります」

 浮体式風力タービンは、中国、韓国、台湾、フィリピンの洋上風力発電部門の将来の発展にも不可欠であると考えられている。フローテーションエナジーは、アジア太平洋の他の地域でも同様のプロジェクトに取り組んでいる。ソーヤー氏によると、オーストラリアでも2つのプロジェクトが進行中だという。なかでも開発が進んでいるのが、ビクトリア州のナインティ・マイル・ビーチ沖に位置するバス海峡の1500MWのプロジェクトだ。老朽化が進む石炭火力発電所の周囲に強力な送電網が構築されているビクトリア州のラトローブバレーに、浮体式ではなく固定式の風力タービンによる電力が供給されている。

 アジアで洋上風力発電の潜在力を生かす支援をする、もうひとつの英国企業がある。2013年に英国政府によって設立されたオフショア再生可能エネルギーカタパルト(Offshore Renewable Energy Catapult)だ。OREカタパルトは、産業界と学界を結び、オフショア再生可能エネルギーの新しいアイデアを商品化し、イノベーションと技術開発を加速させている。現在、インド政府の国立風力エネルギー研究所と協力して、2030年までに30GWの洋上風力発電容量を設置するというインドの政策目標をサポートしている。

 OREカタパルトの研究事業開発責任者であるジェームズ・バッテンスビー(James Battensby)氏は次のように述べる。

「インドは陸上風力発電の基盤が良好なため、主要な関連機器の製造経験が豊富です。陸上用に培った能力を洋上に移転することは、インドにとって、それほど大きな飛躍にはならないはずです。海底用に必要な能力とその設置技術を開発することが必要なだけです」

 各国が洋上風力や、その他の再生可能エネルギー資源を開発するのに連動して、電力網への需要が高まる可能性がある。発電は断続的な場合もあれば、予想よりも高かったり低かったりと変動することもある。技師たちは需要と供給の間で慎重にバランスを取る必要がある。それを可能にする方法として、電気を蓄えて、必要に応じて送電網から電気を出したり戻したりする技術がある。実際、低炭素な電力、熱、輸送技術の統合を支える蓄電池システムなどのソリューションによって、英国政府は、英国のエネルギーシステムについて2050年までに最大400億ポンド(約6兆2400億円、1ポンド156円換算)を節約でき、最終的には国内の電力料金を下げられると推定している。

 英国に拠点を置き、ウィルトシャー州のマインティ近郊に巨大な蓄電池施設を開発したペンソパワー(Penso Power)のCEO、リチャード・スウェイツ(Richard Thwaites)氏は「簡単に言うと、電力の余剰または不足がシステム上に存在している場合、電池が電力システムのバランスを取るのに役立つ」と言う。マインティプロジェクトは現在、中国の国営発電企業、中国華能集団(China Huaneng Group)が主導し、中国のソブリンウェルスファンド(SWF、政府系ファンド)のCNICコーポレーションが共同出資している。このタイプの施設としてはヨーロッパ最大級だ。

 100MWの施設は2021年初めに始動し、中国華能集団は50MWの拡張を決定している。サッカー場ほどの広さの施設は、ラップトップパソコンや携帯電話から電気自動車に至るまで様々な製品の電力源となっているリチウムイオン電池に依存している。ペンソパワー社も事業の拡大を目指しており、2021年10月、英国の拠点で蓄電池を製造するために、アジアからの投資を確保したと発表した。スウェイツ氏によると、シンガポールに本拠を置く海運大手のBWグループ企業との契約は、このセクターで、これまでに行われた投資規模をはるかに超えたものであるという。「ペンソパワーは、BWグループによる投資を受け、今後24カ月間にわたり大規模なバッテリーエネルギー貯蔵プロジェクトを発表する予定で、その中には最大350MWの接続容量のプロジェクトも含まれる」と同氏は語る。

 中国華能集団の最高代表者であるグオ・ジンギュ(Jingyu Guo)氏は、次のように話す。

「プロジェクトの開発プロセスには満足しています。英国のパートナーは、強いプロ意識と革新性を示してくれています。私たちは英国企業といくつかの協力関係を築いており今後も拡大する予定です。ますます多くの英国企業が、中国のパートナー企業と協力することで優位性を獲得することをうれしく思っています」

 再生可能エネルギーの断続的な問題に対処する、もうひとつの方法はスマートグリッドだ。スマートグリッドとは再生可能エネルギーの分配を効果的に管理する、革新的なソフトウエアおよびハードウエアソリューションを意味する包括的な用語である。ここでも英国企業がアジア太平洋地域で力強い前進を遂げている。オクトパス エナジーグループ(Octopus Energy Group)は、東京ガスとの戦略的パートナーシップを発表した。この取引の中心はオクトパス社のテクノロジープラットフォーム「クラーケン(Kraken)」だ。高度なデータと機械学習機能を駆使してエネルギーサプライチェーンの多くを自動化し、顧客が安価で環境に配慮した電力にアクセスできるようにしている。オクトパス エナジーグループはクラーケンのテクノロジーを成長の原動力とし、2027年までに1億人の顧客を獲得することを目標にしており、このプラットフォームを世界中のエネルギー小売業者にライセンス供与することを目指している。

 アジア太平洋地域のパートナー企業と協力して、地球規模の課題に対する共通の解決策を見いだし、業界を結集して持続可能性を実現できるため、このような英国企業の専門的なナレッジは同セクターの新しいアイデアを生み出すきっかけとなる可能性がある。英国国際通商省アジア太平洋地域貿易担当長官のナタリー・ブラック氏は次のようにコメントする。

「世界が地球規模の気候変動対策に取り組むなか、英国は再生可能エネルギーの新時代に、アジア太平洋地域や、その他の地域に電力を供給するためのエネルギー転換の先駆者となっています。英国企業はアジア太平洋地域のパートナーへの支援を加速させており、グリーン輸出と将来の持続可能な技術への投資を推進しています」

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