提供:共同印刷

TOMOWEL 共同印刷株式会社

「NexTOMOWEL」
 VOL.1「未来起点で描く経営戦略」

ポートフォリオ改革で「印刷」の概念変え
文化を担う情報加工産業めざす

共同印刷 藤森康彰社長

共同印刷 藤森康彰社長

共同印刷の「真の姿」に迫るシリーズ企画「NexTOMOWEL」。VOL.1は「未来起点で描く経営戦略」をテーマに、共同印刷・藤森康彰社長に聞く。「印刷」の概念を超える事業展開とは、同社が描く未来、その実現に向けた道筋とは――。

*記事内容は2023年6月現在

印刷技術や手法を他分野に展開
歯磨きチューブは国内トップシェア

――共同印刷の沿革と事業概要を教えてください。

創業は1897年、博文館という出版社の専用印刷工場としてスタートしました。今年は創業126年目になります。その後、出版物を作るなかで培った技術や手法を生かし、ポスターやパンフレット、カタログといった商業印刷へと事業を広げていきました。印刷の原点は出版物。人類に広く情報を伝える手段です。情報を伝えるということは文化を伝えること。出版印刷を祖業とする当社は、文化の担い手である印刷会社としての誇りを大事にしています。

現在は、データ処理技術や高いセキュリティーが求められる個人情報の取り扱いといったノウハウを強みに、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)も含め、交通系ICカードやクレジットカードなども扱っています。ICカードは表面の印刷だけでなく、シートを重ねながらその間にICチップを埋め込みプレスする工程まで担っているんですよ。さらに、パッケージや医薬品向けを中心とする高機能材料など生活・産業資材も展開しており、中でも歯磨き粉のラミネートチューブは、国内トップシェアを誇っています。

交通系ICカードで特に高いシェアを持つ
交通系ICカードで特に高いシェアを持つ

環境に配慮した紙製カートン。プラスチックの蓋にも対応
環境に配慮した紙製カートン。プラスチックの蓋にも対応

大量のデータをパーソナライズ
社会の変化はビジネスチャンス

――少子高齢化や環境意識の高まりなど、社会の変化をどのように捉えていますか。

少子化で出版物自体の需要は明らかに減りますが、家庭単位で見ると教育費を含め子どもにかける諸費用はあまり変わっていないのではないでしょうか。高齢化については、団塊の世代が70代になったこともありビジネスチャンスと捉えています。約600万人というボリュームゾーンに向け、さまざまな商品やサービスが考えられます。

例えば生命保険の約款など、文字が小さく読みにくい場合が多いですよね。当社では、高齢者に優しいフォントや見やすいデザインを保険会社に提案しています。相続関連では、金融機関での相続手続きを支援するBPOサービスを始めました。印刷会社はデジタル化により、大量のデータをパーソナライズして活用できるようになっています。市場や社会の変化はリスクではなく新たなビジネスを創出するチャンスなのです。

相続事務支援BPOサービスのイメージ

相続事務支援BPOサービスのイメージ

環境に配慮した技術を開発
「よき市民」として社会的責任果たす

環境保護への取り組みも以前はリスクと見ていましたが、今は企業価値の向上につながるチャンスと捉えています。昨年、サステナビリティ推進会議を立ち上げ、今年5月には「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」提言への賛同および TCFD 提言に基づく情報開示を決めました。

もちろん、環境に配慮した技術開発も進めています。その一つが、2021年に開発した「紙ラミネートチューブ」です。素材の一部を紙に変えることでプラスチック使用量を減らした環境配慮型のパッケージで、化粧品や調味料などのチューブ容器として使われます。こうした商品などを通じ、「よき市民」として社会的責任を果たしていきます。

紙ラミネートチューブ

素材の一部を紙に変え、プラスチック使用量を減らした「紙ラミネートチューブ」

ゴールをめざし改革を進める
待ちの姿勢から脱却し、よきパートナーへ

――「中期経営計画」の方針に「未来起点の変革」とあります。その意図を教えてください。

現在のコーポレートブランド「TOMOWEL」は、2017年の創業120周年を機に策定したものです。10年後のありたい姿を描こうと議論し、「社会とともにある共同印刷になりたい」という大きな目標を立てました。これまでのBtoBではなく、C(最終消費者)を意識したBtoBtoCの視点を持つことが欠かせません。そこで、今までとは逆の発想で、未来の姿をイメージしながらゴールをめざして改革を進めていくことにしたのです。

同様に、受注産業である印刷会社のあり方を変えていこうと「未来起点の変革」と表現しました。これまでは、お客さまの希望通りに作り、納期を守って納品することが我々のミッションでした。しかし、お客さま第一という姿勢は、一方で指示待ちの意識を生み、ある意味で成長を妨げる可能性もあるのではないかと思い至ったのです。お客さまが望む以上の提案をすれば、もっとお客さまに貢献できる。待ちの姿勢から脱却し、お客さまのよきパートナーになれるよう変革を進めています。

藤森康彰社長

藤森康彰社長 
1949年生まれ。76年青山学院大学大学院修了、共同印刷入社。
法務部長、技術統括本部長などを経て2006年常務、10年専務。13年から現職。

新規事業開拓と人材戦略に注力
ASEAN全域でブランド力高める

――5つの重要テーマ「既存事業の事業基盤強化」「新規事業領域の探索」「環境戦略」「人材戦略」「経営管理機能の強化」で、特に注力している点を聞かせてください。

もちろんすべて重要ですが、事業ポートフォリオを変えるためにも新規事業領域を開拓することが非常に重要だと考えています。例えばDX(デジタルトランスフォーメーション)関連では、我々はデジタルの経験は豊富ですし、モノをリアルに作ることもできる。この強みを生かし、リアルとデジタルを融合させたシステムをワンパッケージで提案できます。すべての人に便利さを感じてもらえるようなソリューションをもっと提供できると考えています。

もう一つ注力していることは人材戦略です。私は常々「企業は人なり」と言っているのですが、いい人材を集め、いい人材に育て上げ、その人たちが十分に活躍できる環境をつくることで、結果的に会社の業績も向上し社会にも貢献できるなど、さまざまな面で効果が出てくると信じています。

事業ポートフォリオの変革
(2018〜2020年度中計/2021〜2024年度中計比較)

事業ポートフォリオの変革

――海外展開は、どのようにお考えでしょう。

現在、中国とインドネシア、ベトナムに拠点を設け事業を展開しています。現地に進出している日系企業を中心としたお客さまとともに需要を開拓していますが、今後は現地企業にも当社の製品を普及させたい。商品構成も、ラミネートチューブだけでなくパッケージ全体に広げ、ASEAN(東南アジア諸国連合)全域で共同印刷のブランド力をアップさせたいと考えています。まだ環境保護への取り組みが遅れている地域も多く、我々が持っている知見は、その点でも貢献できるはずです。

良質な顧客基盤に加え
誠実な社風、優秀な人材が財産

――共同印刷の強みを教えてください。

一番は、良質な顧客基盤です。長きにわたりお付き合いしている会社が数多くあります。加えて社風。お客さまから誠実な会社だと評価いただくことが多く、とてもうれしいですね。私は当社の社員は非常に優秀だと考えており、人材も財産です。「未来起点の変革」を掲げてから、社員の発想も変わり、チャレンジ精神も旺盛になったと手応えを感じています。お客さまからは「よく提案してくれた」「助かった」という声を頂くようになりました。社員の力をまだ100%生かし切れていないのは経営の責任だと認識しており、活躍できる場をもっと増やさなければと考えています。共同印刷の潜在能力はまだまだある。もっと大輪の花を咲かせるよう、3つの強みを生かしていきたいですね。

――日経電子版読者にメッセージをお願いします。

2027年に迎える130周年までには、ポートフォリオの改革を実現したい。そのためにも「印刷」の概念を変えることが大事だと考えています。すでに「それって印刷会社の仕事ですか」と聞かれるような事業を展開していますが、「だから印刷会社なんです」と答えたい。「印刷は幅広い。夢がある。社会に貢献できる」――。そんな存在であることをもっと知ってもらい、印刷会社に対する見方を変えてほしいですね。