提供:東京しごと財団

東京都雇用創出・安定化支援事業「トライアル就労」採用企業・求職者双方がwin・win

東京しごと財団

東京都の「雇用創出・安定化支援事業」を活用する企業が増えている。「トライアル就労」で求職者は給料を受け取りながら最大2カ月間、派遣社員として仕事や社風を見極め、採用企業もミスマッチのない正社員採用を低コストで実現できるwin-winの制度だからだ。2022年1月からこの事業を活用し、4人の正社員化を実現した株式会社マンハッタンコードに取材した。

※記事内容は2022年10月現在

取材回答者
写真左から


飯村 美紀さん 
株式会社マンハッタンコード 取締役CDO
(チーフ・デザイン・オフィサー)

片貝さん 
同社デザイナー

忽那(くつな)さん 
同社デザイナー

未経験者も積極採用
8ヵ月間で正社員4人

――はじめにマンハッタンコードについて教えてください。

飯村当社はフロントエンド領域に特化したシステム開発会社です。2016年3月に創立してからサービス提供者と利用者の関係性を深めることができるようにフロントエンド領域を探究し、プロダクトマネジメント、デザイン、エンジニアリングといった専門技術を使って幅広い事業を展開しています。現在は20人程度の体制ですが、事業拡大にともない、積極的に採用していく方針です。

――お2人の前職について教えてください。

忽那私はサイネージ関連の製造販売会社で営業支援事務を行っていました。

片貝私は幼稚園の先生をしていました。

フォト:飯村さん

飯村さん

――お2人ともウェブデザインの経験はなかったのですか。

忽那・片貝はい。

飯村当社は創業以来、外部採用媒体は使わない方針で、現在の中核人材のうち8人はリファラル(推薦・紹介)採用です。今回、この事業を活用しようと思ったのは、未経験者でも私たちと一緒に会社をつくっていける人材を求めていたからです。技術は継続して業務を行うことで身につけていけるので、採用基準はコミュニケーション能力を重視しています。私自身、前職は管理栄養士として個人事業を行っており、会社設立後は主にデザイン業務を統括しています。彼女たち同様に毎日が勉強です。

――東京都の雇用創出・安定化支援事業は、どこで知りましたか。

飯村システム開発の同業他社から聞き、当社の場合この事業が最適なのでは、と事務局を紹介してもらいました。それからはトントン拍子で話が進み、マンハッタンコードという会社にマッチしそうな人材を当社の募集事情に合わせて紹介いただいています。

――忽那さんと片貝さんはどこでこの事業を知りましたか。

忽那新宿駅周辺にあったデジタルサイネージで見つけ、家に帰ってから調べて登録しました。IT系スタートアップということで初めは親が心配していましたが、今では応援してくれています。

片貝私は求人サイトで就きたい職業を検索していて、たまたま見つけました。子どもと接するのが好きで幼稚園の先生になったのですが、自分の世界が狭すぎるのではと思い、未経験でも採用してくれるということで、新しい世界にチャレンジしようと決断しました。

――今年1月から事業を活用したということですが、正社員採用の人数を教えてください。

飯村1月から8月までの累計で、正社員採用は4人です。

トライアル就労後の採用で
ミスマッチなし

――トライアル就労期間中はどのような仕事から始めたのですか。

飯村まずはタイピングの練習など、パソコンの基礎からスタートしました。「1秒あたり4.5回以上のキータイプ」が基準です。

片貝私はパソコンに慣れていなかったので、正社員採用の前日にやっとクリアできました。

フォト:忽那さん

忽那さん

忽那私は前職でパソコンには慣れていましたが、専門用語がぎっしり詰まった本をいつまでに読了してくるようにと言われて、ちょっと驚きました。

飯村二人の場合はデザイナー志望でしたので、デザイン関連の業務マニュアルを基にスタイリング作業の方法やノーコードツールの操作方法の学習を進めながら、先輩デザイナーとともにWebサイト制作に取り組んでもらいました。また、チームとしての動きやデザイナーの業務内容を知ってもらうために、朝会と定例会、デザイン成果物レビュー会にも参加してもらうようにしていました。

忽那トライアル就労を通して、仕事内容が自分にできることか、やりたいと思える仕事か、また毎日通える会社かなどを確認できたので、とてもよかったです。

片貝単なる見学だけでは分からない、実際のオフィスや社員の方たちの雰囲気を知ることができて、自分が違和感なく働けることが確認できたことは大きかったです。

飯村会社の方針や事業に対して貢献してくれそうか、文化にあっているか、既存社員が一緒に働いていきたいと思うかなど、採用の際に確認していく点は多岐にわたります。トライアル就労は、仕事を通して求職者と企業のお互いの考えを交換できるのが魅力で、着飾った言葉ではなく、仕事の現場で学び、関係性を構築できる環境づくりに大きなメリットがあります。当社の場合は会社の資産形成と文化形成に協力してくれる、協力したいと考えて行動してくれる人を積極的に採用したいと考えているので、トライアル就労期間中にコミュニケーション能力をしっかりと見極めています。このためミスマッチは起きていません。

採用企業には
新人教育の準備が不可欠

――まだ正社員になって数カ月ですが、現在はどのような仕事をしていますか。

片貝ウェブ・マーケティング・ツールを学びながらマーケターの補助業務を、またビジュアルアイデンティティー(VI)デザインを勉強しながら先輩デザイナーの補助業務をしています。会社のインスタグラムで情報発信なども行っています。

忽那デザイナーの補助と、ディレクターの補助業務が中心です。

フォト:片貝さん

片貝さん

――今後はどのような仕事をしたいと考えていますか。

忽那お客様に喜んでいただける仕事ができるアートディレクターになりたいと思っています。まだ駆け出しですので、文章力や説明力、スケジュールや品質などのタスク管理能力を身につけていきたいと考えています。

片貝マーケティング能力を身につけて「売れる」仕組みを考え、それをデザインで表現できるデザイナーになりたいと思っています。

――今後の人事戦略について教えてください。

飯村現在はデザイナー志望の人を募集していますが、直近ではディレクション業務に興味がある人を採用していく方針です。当社は「フロントエンド領域の探究と実現を推進して、世の中で愛される商品やサービスを増やして人々を豊かにする」をミッションに掲げ、システム・アプリ開発だけでなく、デザイン、マーケティング、O2O(オンライン・ツー・オフライン)分野の仕事も進めています。そのため、プロダクトマネジメントやデジタルマーケティングの分野などで活躍してくれる人の採用も考えています。

――最後に、この事業を勧めるとしたら、どのように伝えますか。

片貝トライアル就労期間中には、企業見学だけでは分からないことをたくさん見聞きすることができました。また、これから自分が担当する仕事の内容や、そのために必要な知識や技術を知ることができ、この会社で仕事するイメージが明確になりました。未経験者でもトライアル就労を通じて、新しい仕事に挑戦できる。それを求職者の皆さんには知ってもらいたいと思います。

忽那トライアル就労は、自分にはどのような仕事が向いているのかを実際に確認できるよい機会になります。入社前から自分のことだけではなく、会社のことを考える時間があるのもいい点です。正社員になったときには、先輩社員ともコミュニケーションがうまく取れる状態になっているので、無理や無駄のない仕組みだと思います。

飯村すでに3社にこの事業を紹介しています。理由は3つです。まず、採用のミスマッチが防げること。次に、圧倒的にコストパフォーマンスがよいこと。そして、自社が採用したい人材を事務局の担当者が理解し、マッチしそうな人材を紹介してくれることです。ただし、採用する側にも求められることがあります。私からの助言としては、初心者でもできる仕事を事前に用意し、その仕事のマニュアルや手順などを明確化しておくことを強くお薦めします。簡単な仕事から手伝ってほしいという要望は世の中にたくさんありますが、簡単な仕事だからとマニュアルや手順を用意しておらず、マッチする可能性の高い人材でもミスマッチになってしまうことがあるからです。そのため、求職者が円滑に業務に携われるよう事前に求職者の受け入れ準備を整えてから雇用創出・安定化支援事業を利用することをお勧めします。

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