提供:アビームコンサルティング

Vol.3

ベネッセコーポレーションと
アビームコンサルティングが
学習環境のデジタル化で共創

デジタルを活用し「子どもたちが主体的に取り組み、
自信を持って人生を築いていく」教育を創造する

【対談】ベネッセコーポレーション 成島由美氏×アビームコンサルティング 財部透氏

通信教育や出版などの事業を幅広く展開するベネッセコーポレーション。進研ゼミの「チャレンジタッチ」で使用する専用タブレットの累計販売台数は500万台を超え、小・中学向けデジタル教育のリーダーとしてのポジションを確立している。同社のデジタル戦略の先駆けとなったチャレンジタッチだが、その誕生にはアビームコンサルティングとの「共創」があった。同プロジェクトをリードした同社執行役員 校外学習カンパニー 副カンパニー長の成島由美氏と、それを支援したアビームコンサルティング 執行役員 プリンシパルの財部透氏に、デジタルを活用した教材の立ち上げとその後の成長について伺った。

時間との戦いだった大規模プロジェクト

成島由美 氏

株式会社ベネッセコーポレーション
執行役員
校外学習カンパニー 副カンパニー長
成島由美

--共創のきっかけについて教えてください。

成島 2011年当時、進研ゼミの受注業務や発送業務のための販売管理の刷新プロジェクトが進んでおり、それを担当していたのがアビームコンサルティングでした。通信教育事業を担当していた私にとっても重要な大型プロジェクトで注目していたのですが、アビームコンサルティングの仕事に対する取り組み姿勢を高く評価していました。

 コンサルタントは難しい言葉を使って煙に巻くようなところがありますが、そういうところがまったくありません。私たちが理解できるようにわかりやすく説明し、利害関係者の調整もしっかりとやっていただきました。これは今までのコンサルティング会社とは違うという印象があり、デジタル教材の開発もお願いしたいと考えるようになりました。

--「チャレンジタッチ」の構想は当時からあったのでしょうか。

成島 いつかはデジタル教材に舵を切る必要があるだろうとは考えていましたが、当時は紙の教材に対する補助的な位置づけでしかありませんでした。ところが、2012年の冬に完全にデジタルに対応した競合サービスが登場したため、構想を前倒しして2014年4月という期限を設定し、タブレット型のサービスの提供を開始しようと決めました。2013年4月のことです。

 決めたのはよかったのですが、大規模な開発プロジェクトであり、社内のリソースだけでは足りません。そこでアビームコンサルティングにプロジェクトをリードしてもらう役割をお願いしました。

財部 大変ありがたいお話でしたが、当時の私たちには子ども向けのデジタル教材を開発した経験が豊富とはいえず、しかもサービス開始まで時間がないというチャレンジングなプロジェクトでした。とはいえ、ベネッセさんの、デジタルを活用してこれまで以上に子供たちにとってより良い教育を提供したいという想いを、何とか一緒に実現したいと考えました。

成島 スタートして半年後にはサービスの開始を予告するプレスリリースを発表しましたが、まさに構想を詰めながら開発を進めていく状況でしたね。

子ども一人ひとりに寄り添ったサービスを

--短期間で大規模開発を成し遂げられたポイントはどこにあったのでしょうか。

財部 商品企画メンバーの皆さんの頭の中にデジタル教材についてのアイデアが蓄積されていたことが大きかったと思います。最初のブレストでやりたいことが次々と出てきて驚きました。私たちはその想いを受け止めながらも、コンサルタントとしてむしろ客観的にお客様のことを考えた視点をそこに組み入れ、一つひとつ形にしていきました。

財部透 氏

アビームコンサルティング株式会社
執行役員 プリンシパル
コンシューマービジネスユニット
公認情報システム監査人
財部透

 もう一つは、リーダーとしての成島さんの事業に対する熱い想いとクリアなビジョン、スピーディーな決断です。実現したい想いを私たちも理解して自分ごと化できたことと、タイムリーな判断をいただけたことにより、プロジェクトに参画しているメンバーは高いモチベーションを持って取り組めました。

成島 アビームのチームはまさに社員以上の社員になっていました。私たちのお客様のことを自分のお客様のように捉えて真剣に考えてくれました。小学生向けの教育は大人向けのものとは違います。発達段階に応じた教材設計が必要で、その実現には大人の想像力が問われます。

 ところが合理性や正確性を重視するシステム開発の立場からはパターンのバリエーションを絞り込もうとする傾向が強く、私たちとは価値観が違います。アビームはその違いの間に立って落としどころを探ってくれました。

財部 実際に試作品を体験する子どもを観察し、ITの観点からだけで開発するのではなく、もっと子どもたちに寄り添ったものにしたいと考えていました。期限内に完成させることとの両立を考え、優先順位を決めてぎりぎりの対応を続けました。それができたのは絶対的な信頼をいただいていたからです。

ビジョンを共有して三位一体の関係に

--共創には強い信頼関係が必要ですが、それを構築するポイントは何でしょうか。

財部 クライアントはその分野の専門家です。コンサルタントはそれを尊重し、ビジネスの奥深いところにある意義をしっかりと理解したうえで自分に求められている役割、そしてクライアントとの会話を通じて、お客様に提供できるさらなる価値を追求していくべきです。コンサルタントの仕事は独善的では成り立ちませんが、クライアントだけでは気づけない異なる洞察や新たな価値提供がなければ、本質的な共創パートナーとしての役割は果たせないものです。

 この開発プロジェクトでは「子どもたちが主体的に勉強に取り組み、自信を持って人生を築いていくためのものにしたい」という成島さんの想いから、子どもたちの成長に寄与するサービスをつくっていくことに大きな責任とやりがいを感じていました。だからこそ、リーダーとメンバー、私たちが三位一体となって進められたのだと思います。

成島 当社のビジネスは子どもたちの夢にはしごをかけることです。学習を通して誰もがなりたい自分になれる可能性があることを示していかなければなりません。それを理解してもらえたことが大きかったですね。「傾聴力」があると感じました。

成島由美 氏

「当社のビジネスは子どもたちの夢にはしごをかけること。
それを理解してもらえたことが大きかったですね」(成島氏)

--ぎりぎりの対応の中でプロジェクトを任せることに対して不安はなかったのでしょうか。

成島 それぞれが強い想いを持っていたので、不安というより頼もしく感じていましたし、メンバーたちが紙のサービスをデジタル化していく姿を見て日々ワクワクしていました。

 また、目指すビジョンに対するコミットメントがアビームのコンサルタントの方たち一人ひとりに徹底されていました。それがブレることなく取り組んでくれていたので、安心して任せることができました。コンサルタントとしての知見や技術力はもちろんですが、マインド面でのレベルの高さが共創パートナーとして高く評価しているポイントです。

新たな道を切り開く橋をかけていく

--チャレンジタッチの開発プロジェクトにはどのような意義があったのでしょうか。

財部 今、ベネッセコーポレーションは教育のデジタル化のリーダーになっています。その基盤になった10年続くサービスを共創できました。そしてこれからも、新たなチャレンジにより、リーダーであり続けて欲しい。私たちは長く価値を生み続けるための共創パートナーであり続けたいと考えています。

財部透 氏

「ベネッセコーポレーションは教育のデジタル化のリーダーになっています。
そしてこれからも、新たなチャレンジにより、リーダーであり続けて欲しい。
私たちは長く価値を生み続けるための共創パートナーであり続けたい」(財部氏)

成島 当時、デジタル教材に移行するのは15%くらいと考えていましたが、今ではお客様の7割にデジタル教材を活用していただいています。10年通用してきたのは一人ひとりに寄り添うデジタル活用が実現できたからです。

財部 デジタル教材への高い支持を得られている背景として、保護者とこどものコミュニケーションと学習意欲の関係を徹底的に分析し、学習体験だけでなくご家庭のコミュニケーション体験も視野に入れて顧客体験全体を変革する考え方を積極的に導入したことにあると思います。例えば、チャレンジタッチで、子どもの学習状況が共有される保護者向けメールサービスは、共働きの保護者が帰宅中に子どもの学習状況を確認し帰宅後にすぐに子どもを褒めることから始めることができる、ご家庭のコミュニケーションに寄り添ったサービスとなっています。データ分析を行ったところ、メールサービスを活用しているご家庭の子どもの学習に対する意欲と自信が高くなり継続率が極めて高いことが確認されています。

成島 学習をデジタル化することではなく、デジタルを活用しよりよい学習環境を創造していくことがベネッセの使命であると気づく非常に良い事例となりました。

--今後はどのような展開をお考えでしょうか。

成島 今年10月、VR(仮想現実)ゴーグルを使った小・中学生向けの新しい学習方法である「ハイリコム学習」の提供開始を発表しました。まず来年1月号の「進研ゼミ中学準備講座」(小6向け)からコンテンツ配信を開始します。学習のつまづきポイントとして空間認識があります。天体などの位置関係や空間軸をイメージしながら解く問題などを理解する重要なポイントです。ベネッセでは学習データの分析からこの躓きポイントを把握していましたので、VRを使い空間認識をすることによりこのポイントを乗り越えるサービスを提供しました。今後も、データ分析やデジタルを活用しながら子どものよりよい学習環境を提供していきます。

VR STUDY ゴーグル
VR ゴーグル

財部 紙、タブレット、VRとそれぞれの長所を生かしたサービスが次々と生まれていますね。10年前に始まったデジタルトランスフォーメーションの文化が根付いている証です。スキルトランスファーだけでなく、それが組織に根付いたこと自体があのプロジェクトのもう一つの価値だと誇りに思います。この先の新しいチャレンジもぜひお手伝いさせてください。

成島 デジタル化した教育が10年続き、タブレット端末も500万台を突破したことが大きな自信になりました。当時、アビームコンサルティングと一緒にかけた橋が道を開き、10年を経て、タブレット端末も500万台を突破したことが大きな自信になりました。現在は、守りの文化を変革し、各領域の先進からのご協力をいただきつつVRやゲーミフィケーション(ゲーム化)などの最先端技術の導入やデータ分析を積極的に取り組んでいけるようになりました。しかし、まだまだ未熟な一方で、デジタルの進化はますます加速しています。今後も新しい学習環境を形にできるよう、アビーム様にご協力をいただければと思います。

成島由美 氏 財部透 氏

profile

成島由美

1992年福武書店(現ベネッセホールディングス)入社、2005年社内最年少執行役員に就任、進研ゼミ統括責任者、グループ会社取締役等を経て2017年学校法人大妻学院理事、大妻中学高等学校 校長に就任。2022年4月ベネッセに帰任、現職に就く。大妻ではSTEM教育強化、入試改革を実施し、低倍率の伝統校を7倍超えの選ばれる私学にモデルチェンジを果たす。長年従事した進研ゼミ事業においては低迷した進研ゼミ中学講座のリニューアル、在籍のV字回復、小学講座チャレンジタッチの開発、進研ゼミデジタル化のリーディングをし、新しいデジタルのゼミは市場へ500万台以上のタブレットが流通するなど、子どもたちの家庭での学びを大きく変化させた。

財部透

米国系クレジットカード決済企業でのシステム開発部門勤務を経て、2002年アビームコンサルティングに入社。中央省庁、総合商社、製造業、小売業、教育機関、金融業などの幅広い業界で、大規模システムのアーキテクチャデザイン・プロジェクトマネジメント・顧客体験設計を経験。コンシューマービジネスユニット プリンシパルとして、クライアントの変革を支援している。

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