提供:キャップジェミニ
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欧米の製造業は標準化・ルール先行型だ。業務の標準化による効率性改善やデータの標準化によるデータの一貫性向上など、標準化・ルール化のメリットは大きい。日本の製造業もそれを理解したうえで製造プロセスを組み込まなければグローバルに事業を展開することは難しい。
世界50カ国以上で事業を展開し、テクノロジーに強みをもつグローバルコンサルティングファームであるキャップジェミニは、欧米の製造業のパートナーとして培ってきた豊富なノウハウと実績を活用し、日本の製造業と連携した効率性と生産性向上への取り組みを強化している。同社はどのような強みを持ち、日本の製造業をどう支援していくのか。
クライアントのパートナーとして、デジタルトランスフォーメーション(DX)やテクノロジーイノベーションを実現し、エンジニアリングサービスを提供するキャップジェミニの2人のキーパーソンに話を聞いた。
――グローバルに支援事業を展開するコンサルティングファームから見た日本の製造業の課題はどんなところにあるとお考えでしょうか。
安瀬 よく言われていることですが、課題は3つあると見ています。1つ目は技術継承です。属人化している技術をどのようにして受け継いでいくのかという問題ですが、リソースが限られる中で技術自体をどう進化させていくのかということも問題です。
2つ目はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)で明らかになったサプライチェーンのリスクです。当時は中国から原材料が入ってこなくなって生産がストップしましたが、相手先と連絡すらとれないという事態も発生しました。
サプライチェーンという面では、地政学的な調達リスクもあります。ウクライナ戦争によって小麦が高騰して食品業界は大きな影響を受けましたし、中国からの調達が不安定になるというリスクも危惧されています。
こうしたサプライチェーンのリスクを回避するには、グローバルなサプライチェーン全体の可視化が不可欠ですが、ERP(統合基幹業務システム)以外の情報の取り込みはまだ進んでいないのが現状ではないでしょうか。将来のネットワーク型サプライチェーンの実現に向けた動きを強めなければなりません。
そして3つ目は、デジタル化の問題です。標準化と効率化、自動化を進めながらタイムリーに製品を市場に供給していくには、デジタル化によるサプライチェーンの可視化と同時に、製品開発から量産体制までを一気通貫でつないでいくエンジニアリングチェーンの確立が必須です。
グローバル市場では今まさにサプライチェーンとエンジニアリングチェーンの融合がメインテーマになっています。電気自動車向けのバッテリーを大量生産するギガファクトリー(巨大なバッテリーの製造工場)では、工場を中心にサプライチェーンとエンジニアリングチェーンの流れをいかにつなぐかが大きなチャレンジになっています。日本の中堅・中小企業も今後は無関係ではいられないでしょう。
――製造業に対してキャップジェミニはどのような強みを持っているのでしょうか。
安瀬 当社の強みはデジタルに強いグローバルなコンサルティングファームであると同時に、巨大なエンジニアリング企業でもあることです。グローバルに約35万人もの従業員を有し、そのうちの6万人以上が主にエンジニアリングに携わっています。
グローバルレベルでのサプライチェーンの構築に加え、製造の設計開発プロセスの両方を支援してきた実績を持つ強みを生かし、ビジネス戦略の立案から製品の設計開発、量産体制の確立まで、デジタルを駆使して一気通貫で支援しています。
安藤 製造についての欧米の様々な規格やルールを熟知していることも大きな強みです。例えば、当社は欧州で持続可能なバッテリー産業を推進する「European Battery Alliance」の設立をEU当局の団体と共に支援しました。いわばルールをつくる側に立っているので、規制の動向をみることができます。こうした動向をエンジニアリングプロセスに適応し、日本企業にも展開できます。
――どのようにして製造業を支援してきたのでしょうか。
安藤 ギガファクトリーにおいては、データのハンドリングを含め、設計、シミュレーション、ソフトウエア実装、そして展開までカバーし、データドリブンな製造プロセス全般を支援してきました。特に欧州のバッテリーメーカーでの実績が多数あります。
また、お客様がコアビジネスに注力できるように、キャップジェミニはお客様のDXをテクノロジーで補完・支援しています。例えば、フランスの大手自動車メーカーであるシトロエン(現ステランティスグループ)では、2人乗りのEV(電気自動車)の開発を設計から部品調達、ソフトウエア設計、量産試作まで協業しました。これは、キャップジェミニのエンジニアリングサービスで新しい市場開拓を実現させた事例です。また、車載インフォテインメントの世界大手サプライヤーであるパナソニックASアメリカ社(PASA)とキャップジェミニの連携によりアメリカの自動車メーカーが要求する独自のシステムテストを自動化、実行した事例もあります。
安瀬 これからは研究開発もエコシステムで取り組む時代です。当社はサプライチェーンとエンジニアリングの両方の領域に対応できるという強みを生かして製造業を支援しています。また、世界50カ国以上に広がるネットワークを生かして、SAP、Microsoft、ServiceNow、SIEMENS、ARASなどのパートナーが提供するグローバルスタンダードなソリューションをグローバル展開する支援も得意としています。
――日本企業に対してはどのようなアプローチを行っているのでしょうか。
安藤 企業ごとの課題に寄り添った形で提案することを心がけています。その企業の進め方を理解したうえで、グローバルで培ってきたノウハウを提示していくことにより、気づきにつながるような提案をしていきます。
安瀬 研究開発のパッケージを提案する際にもひと工夫するようにしています。当社はアジャイル開発を得意としていますが、日本企業の多くはアジャイルな手法に馴染みがありません。お互いにまず議論したうえで、その企業向けにアレンジを加えたアジャイル開発の手法を提案しています。
――日本の製造業に対してどのようなメリットを提供できるとお考えでしょうか。
安瀬 まずグローバルで磨き上げてきた世界標準の仕組みをお届けできることです。すでに検証済みで確実に動くというところがポイントです。さらにモノづくりの現場で培ってきたグローバルなノウハウを提供します。地域ごとの特性を踏まえた地産地消を実現するエンジニアリングも併せて提供します。
そして日本企業の方が当社とワンチームになってプロジェクトに取り組むことにより、今、必要とされているデジタル人材としての素養を日本企業の方たちが身につけることができるのも大きなメリットです。ITの方はビジネススキルを、ビジネスの方はデジタルスキルを身につけることができます。
――最後に御社が求める人材像について教えてください。
安藤 当社には純粋なコンサルタント畑の人だけでなく、私のようなエンジニア出身のコンサルタントも大勢います。グローバル化への挑戦としてITとエンジニアリングの融合により新たなモノづくりの提案ができるのではないかと考えて入社しました。
当社はグローバルでチームを構成して仕事を進めていきます。仕事を通して海外の人たちの考え方やモノの見方がポジティブに理解でき、日々新しい発見や学びがあることが私にとっての醍醐味です。
安瀬 キャップジェミニの日本法人は多様な人材を広く受け入れているのが大きな特徴です。25カ国もの外国籍の人材が在籍しており、従業員の7〜8割は英語が使いこなせます。社内では英語で会話をすることが多いです。
また日本発のプロジェクトにキャップジェミニの欧米拠点からメンバーを加えてチームをつくっていくことも当たり前になっています。欧米のギガファクトリーの専門家やスマートファクトリーの専門家と一緒に仕事をすることにより、日本企業にはない知見に触れることができるのも大きな魅力です。
今後は日本からも海外に積極的に人材を送り込もうと考えています。海外で仕事をするチャンスはますます増えていきます。エンジニアの方もコンサルタントの方も積極的に当社にジョインしてほしいと思います。
キャップジェミニ株式会社