深刻化する温室効果ガス、プラスチック問題……。
サステナビリティーをどう推進するか?

提供:デル・テクノロジーズ

サステナビリティーの重要性が叫ばれる中で、強く求められているのが「温室効果ガス排出削減」と「プラスチックの問題」である。この2つの課題は複雑に絡み合って環境に大きな影響を及ぼし、近年における気候変動の要因ともなっているだけに、世界的な規模での対策が急がれている。そうした中で個々の企業はこの課題とどのように向き合い、どんな取り組みを始めるべきなのか。前回に続いて、SDGsやサステナビリティーを専門領域とするニューラルの夫馬賢治氏と、デル・テクノロジーズでSDGsへの取り組みをリードする松本笑美氏に話をうかがう。

深刻化するプラスチック問題に
いかに包括的な手立てを打っていくか

夫馬 賢治氏

ニューラル
代表取締役CEO

夫馬 賢治

サステナビリティー経営やESG投資に関するコンサルティングなどを手掛ける株式会社ニューラルの代表取締役CEO。ニュースサイト「Sustainable Japan」編集長。環境省「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」選定委員などを歴任。『データでわかる 2030年 地球のすがた』(日本経済新聞出版)など著書多数。

松本前回も少し触れさせていただいたプラスチックの問題ですが、国際的に見た場合、どんな動きにありますか。

夫馬プラスチックの問題は非常に複雑で、大きくは温室効果ガスの排出と環境汚染という2つの問題が絡み合っています。

 まず温室効果ガスの排出量を削減するために、ガソリンをはじめとする石油の消費抑制が求められる中で、同じ原油から作られるバージンプラスチックの消費量を抑えていく必要があります。なくせないならば、プラスチックを再生利用する、あるいは植物由来のバイオマスプラスチックに変えていくことが重要だと考えられるようになりました。環境汚染についても、海洋に流出して細かく砕かれたマイクロプラスチックがすでに多くの生態系に影響を与えており、食物連鎖を通じて最終的には人体にも入ってくることが危惧されています。これを防ぐためには、人間社会の中でしっかりプラスチックを回収するフローを担保しなければなりません。

 この2つの課題に対していかに包括的な手立てを打っていくか、国際的にも重要なテーマとして議論されるようになりました。

松本まずは循環型プラスチックサプライチェーンをいかにして構築するか、言い方を変えれば、製品の中で再生率をどう高めていくかがとても重要で、それが結果的に温室効果ガスの排出削減や海洋環境の保護にもつながっていくのですね。

松本 笑美氏

デル・テクノロジーズ
ソーシャル インパクト ジャパンリード

松本 笑美

デル・テクノロジーズにおいて日本のSDGs担当として、ソーシャルインパクト全般に従事。顧客への情報共有をはじめ、東京都女性ベンチャー育成促進事業APT Womenへの海外派遣支援、海洋汚染ごみ削減のためのビーチクリーン活動、教育支援活動、ダイバーシティ活動等、社内外での取り組みを行っている。

夫馬おっしゃるとおりです。この課題と早くから向き合ってきたデル・テクノロジーズの取り組みもぜひ知りたいです。

松本デル・テクノロジーズでは2030年に向けた「Moonshot Goals」という目標のもとで、「お客様が購入された製品と同量の製品の再利用または再生利用を行い、梱包材の100%、製品部品の50%以上に再生可能材料を使う」という取り組みを進めています。経験値から一つ例を挙げると、再生プラスチックの使用は純正プラスチックよりもカーボンフットプリントを約12%削減できることが明らかになっています。

 環境汚染に関しても、海洋から回収したプラスチックを再生利用した梱包材を商業規模で作るためのプログラムを2017年より開始しています。実際にPC製品の梱包材の50%は、こうして海洋プラスチックから再生されたプラスチックを利用しており、いずれ100%にまで高められると見込まれています。弊社は早い段階から循環型経済の促進を掲げて製品を作ってきました。また、製品が再生されることを考慮してすべての構成部材が作られており、部品数の削減やリサイクル素材率を上げる取り組みを続けています。環境課題解決を念頭においた新しいビジネスも、まもなく日本で提供いたします。

 なお、温室効果ガスの排出削減については、2018年までに業務上の温室効果ガス排出量38%削減を達成しました。引き続き2030年までに、業務上発生する温室効果ガス排出量をさらに50%削減するとともに、サプライチェーン売上高あたりの温室効果ガス排出量を60%削減するという目標を掲げています。

夫馬サステナビリティーへの取り組みは、自分たちの現在の取り組みを開示することから始まります。例えば「環境に配慮している」とアピールしたいのであれば、その前に自らの温室効果ガス排出量を開示しなければ、「何を根拠に環境に配慮してると言えるのか」と追及を受けるでしょう。いまや情報を開示することは当たり前となっており、ぜひとも、自分たちの取り組みを積極的に開示する企業が増えてほしいと思います。

図:デル・テクノロジーズの温室効果ガス削減への取り組み
図:デル・テクノロジーズの温室効果ガス削減への取り組み
※SBTi(Science Based Targets initiative)は、パリ協定で掲げられた「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑える」という目標を推進する国際的なイニシアチブ。
図:デル・テクノロジーズが推進する循環型経済
図:デル・テクノロジーズが推進する循環型経済

気候変動はいまや経営課題
経営トップのメッセージが重要

松本サステナビリティーへの取り組みが遅れていると言われてきた日本ですが、ここにきて気候変動によるリスクの高まりが、経営者の危機感を高めているようです。

夫馬世界経済フォーラムが発表した2021年版のグローバルリスクレポートでも、今後10年間で最も可能性の高いリスクとして、第1位に「異常気象」、第2位に「気候変動緩和・適応への失敗」が挙げられており、気候変動は世界的な関心事になっています。いまや気候変動は経営課題だと認識されるようになりました。

松本率直なところ、多くの企業にとってこれまでサステナビリティーはあまり身近なものではなかったかもしれません。しかし毎年のようにどこかで集中豪雨が発生し、巨大化した台風に襲われるようになるに伴い、企業もお客様も気候変動は自分事なのだという認識を持つようになりました。こうした意識の変化は、サステナビリティーにとって非常に大きな転換点になりうると思っています。

夫馬実際にお客様や社会から共感や支持を得られやすくなったことで、企業の取り組みもこれまでとまったく違ってくると思います。自分たちがやろうとしていることに対して、「大切なことだ」「応援したい」という賛同の声が増えれば増えるほど、企業にとって大きな自信になりますし、投資家からも評価され、さらに働いている人たちのやりがいにもつながっていきます。

 そうした観点からぜひ松本さんに伺いたいのですが、デル・テクノロジーズではサステナビリティーをグローバルで推進するための体制をどうやって作ってきたのですか。

松本弊社では早い段階からCEO自らがメッセージを発信したことが大きかったと思います。これによりサステナビリティーは所属組織や担当業務を問わず、グローバルの全員が注視すべき問題なのだという会社としての意志が、一人ひとりの社員に伝わりました。

 さらにこれに呼応する形で、すべてのエグゼクティブが常にメッセージを発信し続けています。例えばCCO(最高顧客責任者)は、「目的を持って持続可能でインクルーシブな事業を運営することが、デル・テクノロジーズ、お客様、コミュニティーの成功にとって今ほど早急に必要とされているときはありません。私たちは地球環境を保護し、世界および各国のコミュニティーのエンパワーメントにおいて大きく前進しましたが、するべきことはまだ数多くあります。数世代も続く問題を解決しようとしている中、私たちにはもう一刻の猶予もありません。このため私たちはこれからも技術革新、社員、規模、お客様とのパートナーシップのすべてを活用して、皆が共有している世界へのソーシャルインパクトを促進していきます」と、2019年の時点で述べています。

 こうしたメッセージの発信が2030年に向けたソーシャル インパクトへの新しい戦略ビジョン「Progress Made Real」の基盤を確立し、ひいては2030年の「Moonshot Goals」を目指した取り組みにつながっています。

自社だけでは解決できないからこそ、
仲間と一緒に前進していく

夫馬サステナビリティーについてさまざまな観点から語り合ってきましたが、「自社だけが頑張っても世の中は何も変わらない」と思っていては何も変わりませんし、取り組みを始めるのは非常に勇気が必要なのも事実です。だからこそサステナビリティーに向かうための最も大切な要素として、「仲間づくり」を挙げておきたいと思います。同じ価値観を共有できる仲間ができれば、それまで無理だと思っていたこと、理想にすぎないと思っていたことも、現実的な目標として語れるようになります。

松本その意味ではぜひ私たちも皆様の仲間の1社に加えていただけたらと思います。もともとデル・テクノロジーズは企業や人々のデジタル変革を支援することをミッションとしています。さまざまなITのソリューションを活用することで、サステナブルな企業としての組織や業務、コミュニケーションを実現することができます。また、お客様同士をつなげることで、仲間を増やすことにも貢献しています。

 デル・テクノロジーズがサステナビリティーに関する自らのさまざまな取り組みを紹介し、呼びかけを行っているのは、それが正しい道であると信じているからです。サステナビリティーに向けて取り組みを始めたいけれど、どこから、何から始めたらいいのかわからないと悩んでいる経営者の方がいらっしゃれば、どうか私たちにお声がけください。

夫馬とても心強いメッセージです。これを受けて、多くの企業が発想を転換していただければと思います。自社だけでは何もできない、踏み出す勇気を持てないのであれば、皆で一緒になって目標に向かって行けばよいのです。これにより日本企業だけにとどまらず、海外の企業との間にもサステナビリティーに対する共創の輪が広がっていきます。これこそが新しいビジネスの基盤となることは言うまでもありません。

松本おっしゃるとおりですね。サステナビリティーは、将来がますます予測不能な時代となっていく中で、どうやって企業が生き残っていくのかという道筋を示したキーワードにほかなりません。感度の高い経営者の皆様は、すでにこのことに気づいていると思います。そして気づいているならば、あとは実現に向けた方法を考え、実践していくのみです。デル・テクノロジーズはその取り組みにしっかり寄り添い、皆様がサステナブルな企業となるための変革を支えていきます。

写真:対談風景

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