サプライチェーン全体でESG目標達成を目指す
デル・テクノロジーズ
環境や人権に配慮した
サステナブルな調達のあり方とは?

提供:デル・テクノロジーズ

SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)への関心の高まりにより、企業の間で環境や人権など社会的責任(CSR)に配慮した持続可能かつ健全な調達の実現に取り組む機運が高まっている。その対象範囲は直接的な取引先だけでなく、原料や素材の出所から製品のリサイクル・廃棄に至るまで、製品のライフサイクルに関わるサプライチェーン全体に及び、あらゆる企業が対応を求められている。こうした状況のなか、日本企業はどのように取り組んでいくべきなのか。サステナビリティ研究の第一人者である慶應義塾大学の蟹江憲史教授と、デル・テクノロジーズの松本笑美氏、佐々木邦彦氏が意見を交わした。

世界に後れを取る日本のSDGs・ESG

写真:蟹江 憲史 氏

慶應義塾大学大学院
政策・メディア研究科 教授

蟹江 憲史

環境や人権に配慮した調達への関心が世界的に高まっていますが、日本企業は実際にどのような状況にあるのでしょうか。

蟹江環境にせよ人権にせよ、日本は世界全体の潮流から一歩も二歩も遅れています。とくに先行する欧州との差は、なかなか縮まっていません。それでも、2020年10月に当時の菅首相が「50年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言してから、気候変動対策を中心に環境への取り組みに力を注ぐ企業が増えてきています。

人権については、日本政府が22年9月に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定したものの、各企業はどこまで対応すればよいのか様子をうかがっている状況です。私が主宰する「xSDGコンソーシアム」でも、「政府のガイドラインが分かりにくい」という声を受け、人権デューデリジェンス(企業活動における人権リスクを抑える取り組み)の取りまとめを外部の法律事務所と共同で進めており、最近になってSDGs・ESGへ関心が高い企業の間で「やらなければいけない」というムードになってきていることを感じます。

写真:松本 笑美 氏

デル・テクノロジーズ株式会社
Japan CDO Office
ESGエンゲージメント ジャパンリード

松本 笑美

松本デル・テクノロジーズの創業者であるマイケル・デルは2000年前後にはすでに、環境や人権への配慮の必要性に気づいていました。欧州から始まった環境や人権への関心の高まりに対しても、早い段階から、いまのSDGsにつながる取り組みを進めており、その取り組みの内容を「ESGレポート」として毎年更新・公開しています。このレポートを目にした日本のお客さまからは、「IT総合メーカーとしてどんな取り組みをしているのか知りたい」という質問が多数寄せられています。ガイドラインが示されていて方向性は分かっても、具体的にどのようにアプローチをして、どんなアクションを起こせばよいのか分からないため、デル・テクノロジーズの取り組みを一つの「事例」と捉えて参考にする企業が増えています。

佐々木私は企業向けのクライアントビジネスを担当していますが、最近はお客さまから「サステナビリティの取り組みはどうしていますか」という問い合わせが増えていると感じています。なかには「PCを購入してから廃棄するまでの間に、温室効果ガス排出量はどのくらいになるのか」と詳細な質問をする方もいらっしゃいます。とくにこの1~2年は、グローバルでビジネスを展開する大手企業を中心に、PCもサステナビリティに配慮したものを選定・調達したいというお客さまが増えてきました。

評価基準の策定が日本の課題解決につながる

写真:佐々木 邦彦 氏

デル・テクノロジーズ株式会社
クライアント・ソリューションズ統括本部
クライアント製品本部
フィールドマーケティング 部長

佐々木 邦彦

環境や人権への配慮をさらに推進するには、どのようなことが必要なのでしょうか。

蟹江お二人の話にもあったように、日本企業の間でも徐々に環境や人権への関心が高まっています。それに対し、政策が遅れているところに課題があると感じます。例えば、SDGsの取り組みを推進するには「SDGs基本法」の制定が不可欠です。しかし日本では、いまだに有識者からの提言より先へ進んでいません。つまり企業が先に進みたくても、法的な基盤が十分でないため「やるにやれない」わけです。

また、目標やターゲットが明確に決められていないのも課題です。50年までにカーボンニュートラルといった大ざっぱなものはありますが、25年、30年にどの段階へ進むべきなのかは明示されていません。まずはそうした部分をクリアにしなければなりません。

それに続くのが「評価基準」です。欧州では評価基準に適合しない限り市場に参入できない例が増えていますが、日本もそれに取り残されてはいけません。日本が自ら世界に通用する評価基準を策定し、世界へ発信していくといった取り組みが重要になります。その際には単に評価基準を満たすデータを示すのでなく、どのようにすれば評価基準を満たせるのか、ストーリーとして分かりやすく伝えていくことが大事だと考えています。

写真:佐々木 邦彦 氏

デル・テクノロジーズ株式会社
クライアント・ソリューションズ統括本部
クライアント製品本部
フィールドマーケティング 部長

佐々木 邦彦

佐々木評価基準を作るにあたり、ストーリーを伝えるという蟹江先生のお考えは、まさにその通りだと感じます。私たちの製品は、お客さまが製品に求める価値と価格との釣り合いが取れていないと選ばれません。しかし例えば、持続可能な社会を次世代につないでいくために、この評価基準を満たす必要があるというストーリーで腹落ちするまで説明すれば、環境や人権に配慮する重要性への理解はさらに進むでしょう。

松本私も評価基準の策定は非常に重要だと考えています。いまのように明確な評価基準がない状態では、製品の価値が正しく伝わりません。評価軸があいまいだから、例えば植物由来のバイオプラスチックや海洋プラスチックの再生原料を使用する当社製品よりも、石油由来のプラスチックを使用する他社製品のほうが環境負荷に対する評価が高いといったこともあり得るわけです。すでにグローバルスタンダードの評価基準策定に向けた動きもあるので、日本国内への適用を期待しているところです。

デル・テクノロジーズの事例に見る
ESGの取り組み方

デル・テクノロジーズではサプライチェーン全体に及ぶ調達に関して、どのような取り組みを進めていますか。

松本デル・テクノロジーズはサステナビリティに対する取り組みを20年以上にわたり続けており、毎年レポートにまとめています。現在はESGレポートという形で公開していますが、19年に新しい目標として「2030年に向けたムーンショットゴール」を策定しました。

30年に向けた目標には4つの柱があります。そのうちの一つ、「サステナビリティを推進する」という柱では、30年までにお客さまが購入するすべての製品について、同等の製品を再利用またはリサイクルすること、梱包材の100%をリサイクル素材または再生可能な素材から作成すること、製品内容の半分以上をリサイクルまたは再利用可能な材料から作ることを目標にしています。また、50年までにScope 1・2・3で温室効果ガス排出ネットゼロの実現を目指し、30年までにScope 1・2の温室効果ガス排出量を50%削減するという目標も立てています。ちなみに22年時点において、リサイクル素材または再生可能な素材から作られている梱包材の割合は90%を超えており、全世界の施設で使用する電力の55%超が、再生可能エネルギーから調達したものになっています。

人権についても、世界中のサプライヤーと協力しながらサプライチェーン全体で社員の権利・健康・安全を守る取り組みを進めており、RBA(Responsible Business Alliance)行動規範と、現地の法令を順守した労働環境の整備に取り組んでいます。

図:温室効果ガス排出ネットゼロへの目標
図:温室効果ガス排出ネットゼロへの目標

佐々木製品のサステナビリティについては、とくに循環型素材やリサイクル素材の活用を推進しています。例えば、PC製品に使用するプラスチックについては「再生プラスチック クローズドループ(循環利用)」モデルを構築し、第三者機関からも認定を受けています。製品設計もリサイクルを考慮しており、リサイクル業者が分解・分別しやすく作られています。

さらに、製品ライフサイクルの観点から環境に配慮した素材や企業の取り組みといった基準に基づく環境への影響を評価する「EPEAT(Electronic Product Environmental Assessment Tool)」では、製品の多くがゴールド認証を取得しています。デル・テクノロジーズはこうした取り組みをサプライチェーン全体で積極的に推進しています。

蟹江サプライチェーン全体を考慮したデル・テクノロジーズのサステナビリティに対する取り組み、とりわけ循環型素材やリサイクル素材の活用については、製品の差別化ポイントになると思います。リサイクルは各国のローカルルールが優先され、日本でも十分に機能していないところもありますが、今後はどれだけ循環型素材やリサイクル素材を活用しているかが製品選定の決め手になることも十分に考えられます。実際に欧州のスポーツ用品メーカーは、自社製品のカタログにサステナビリティの項目を用意し、誰でも確認できるようにしています。そうした情報がPCやサーバーにも求められる時代が来るのではないでしょうか。

繰り返しになりますが、SDGsの取り組みがこの先も続いていくには評価基準を作ることが大切です。デル・テクノロジーズの目標、および目標に向けた取り組みは、これからの評価基準づくりの参考になるでしょう。サプライチェーン全体のサステナビリティ、あるいは環境や人権に配慮した調達の実現に向けて、今後なんらかの形でデル・テクノロジーズとも協業していければと考えています。

本日はありがとうございました。

集合写真

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